「ほう、剣舞祭について聞きたい?」
晩酌しているレイカ先生が、真剣な顔をしてくる。
「今年は団体戦なんだろ?」
「団体戦というより、チーム戦だな」
「何人必要なんだ」
「一つのチームに六人、それ以上も以下もダメだ」
「六人か」
「ちょうどいいだろ?」
ちょうどいいとは、Fクラスの人数とチームの人数が同じこと
「こいつらと一緒に戦えと?」
「私はそのつもりでお前達をFクラスに招いたんだが?」
「すまないが、俺は抜ける」
意外にもレオンが拒否する。
「おいレオン、そんなつれないこと言うな、Fクラスだけど」
「実力はあるかもしれないが、俺は絶対に優勝しなければならないんだ」
そういうと寮から出て行ってしまう。
「レオンはダメか」
「ジェルマンはどうなんだ」
「俺は構わないぜ」
こっちはこっちで意外にも躊躇う事もなくすぱっと言う。
「俺と組むに値する実力はあるからな、一応お前らの事は認めてるんだぜ」
ノアとは知り合いで実力は知っており、カズキとは戦ってくなかで認めた。Fクラスの実力が高い事を一番知っている。
「レオン以外はチームを組む。でいいんだな」
「そうだな、あの様子じゃFクラスをチームに入れるやつはいなそうだしな」
「落ちこぼれは落ちこぼれ同士ってことですかね」
「面白いですわ、やってやろうじゃありませんか」
皆は意気投合し、やる気満々だ。
「まぁやる気で何よりだ。それで、お前達の願いはなんだ?」
レイカ先生が聞く
この剣舞祭で優勝した者には神から国の繁栄の約束と共に個の願いを叶えてくれるのだ。
その為、出場者には国の威信や家の名誉以外に個人の願いの為に必死に戦う、真の猛者が集う大会。
そんな大会に神威がまともに使えない者達のチームが国代表は愚か、学園代表になれる可能性が少ない。Fランクチームを拒否するレオンの態度は優勝したい者として正しい判断と言える。
「願いですか」
「そうだな」
「まぁ、ありますわね」
願いはそれぞれ胸の中にある、カズキもその一人だ。
(俺は、願いを叶える為にここへ来たんだ)
「神の力なんて、大したことないのに。あんまり期待しちゃダメだよ」
願い事を考えていた皆に対しリュークが突き放すように言ってくる。
「リュークさん、神様の暴言はいけませんわ」
「でも本当の事。願いは努力で叶えて意味がある」
「努力で叶わないんじゃ神頼みしかないだろ」
ジェルマンが呆れた口調で言う。
「ちなみに俺の願いは無い。欲しいのは最強の称号と最高の勲章、そして誰にも負けない強さだ」
欲しいものは他者から与えられるものではなく、実力で掴み認めさせるもの。ジェルマンらしい欲求だ。
「その為には剣舞祭で優勝。それも初出場で圧倒的力を見せつけてだ」
「確かにそれが一番手っ取り早い方法だ。だが、簡単に勝ち進めるほど剣舞祭は甘くはない」
「はっ、あのレイカ先生に言うんじゃ説得力が違うな」
「……有名なのか?」
「カズキさんは御存知ないのですか?」
「知らん」
「まさか、ここまで世間知らずだなんて」
ノアは驚きを越え呆れた顔に手を当ててる。
「十七の時に剣舞祭を優勝。宮殿テロの阻止。世界ランキング第三位、炎魔のレイカ。神威使いなら知ってて当然ですわ」
「世界で三番目に強いのか」
「神威使いとして登録してある集団だからな、よくわからんよ」
そうは言うが、ほとんどの国が登録してあるのであながち間違いではない。
「そんな人に稽古つけてもらっているのか」
そう思うと、こうして共同生活をしているのが凄い事かわかる。
……まぁ、家事とかほとんどやってないけどね。
「凄いもんだよな」
「私なんか全然さ、世の中には神様に直接鍛えてもらった人もいるんだ。そう思うと全然格が違う」
「それでも、こうして鍛えて頂けるのは光栄な事です」
「嬉しいね、じゃあ早く強くなって良い結果を出してくれ」
「でもよ、だったらなんでFクラスなんか指導してるんだ?」
ジェルマンが聞く。それほど高い功績があるなら優秀な生徒を指導するのが王道だと思うが、Fクラスの指導、それも付きっきりでだ。
誰しも疑問に思った事だ。
「そんなの、お前達が落ちこぼれだからだ」
キッパリというレイカ。それには少しながらイラッとくる。
「だから私が鍛えて一人前にする。前も言ったよな」
確かに入学した初日にそのような事は言っていた。
「どうなるかはお前達次第だ。あと少しで学園公式戦が始まる、今年で出たければ死ぬ気なんて言葉じゃ足りないほど努力する必要がある」
「上等だよ。上級生だろうが、最強だろうがぶっ潰してやんよ」
「当然ですわ。わたくし達が代表になり、剣舞祭で優勝してみせますわ」
ジェルマンとノアはやる気満々である。
「その前に人数を集めろ、でなきゃそれ以前の問題だ」
確かに規定人数のちょうど六人だったのだが、レオンが抜けて五人となった。この穴を埋めなけばならないが、Fクラスとなると誘っても誰も入ろうとはしない。
「……レオンを説得させる、それしかないだろ」
「で、でもどうやって」
ルリーが聞く。絶対優勝を狙っているレオンをチームに引き戻すのはそう簡単にはいかないはず。
「俺達が、実力者と認めてもらえればいいんだろ?」
「なら、簡単だな」
だが、カズキとジェルマンは笑いながら言う。
「俺達が、他のチームよりも優れていることを証明する」
「まずは学年最強になる。そこからだ」
「ど、どうやって?」
「出場資格として六人は必須だが、学園公式戦は人数関係ないんだろ?」
「確かに、規定は無い」
「ま、まさか」
「俺達(五人)であいつが納得出来るレベルまで進む。簡単だろ?」
「む、無茶ですよ。神威をまともに使えるのはノアさんだけで、他は纏うが限界なのに」
ただでさえ神威をまともに扱えないのに、人数まで一人減るとなるとかなりのハンデで、覆すのは難しい。
「考えが甘いってか?」
「はい」
「弱者が強者に勝つ方法。それは、策だ」
「作戦さえあれば勝てる……ってことですね」
一対一で戦う個人戦なら難しいかもしれないが、今回は団体戦、時と場合、作戦によってどんな強者でも倒せるチャンスは出てくる。
「ですが、策も技量も覆す力と言われる力に対応できますの?」
「まぁ一筋縄じゃいかないが、そこは知恵だよな」
「チームのフォーメーションも考えなくてはいけませんね」
「だから、互いの力を知らなければいけない」
「そうだな」
「俺とカズキは知っての通り接近戦しかできない。前戦にでる」
「わたくしは弓での遠距離」
「ルリーさんは、なにかありますの?」
「わ、私は………その、えっと」
「そいつは魔法が使えるぞ」
「え!?」
「私はもう寝るから、後はじっくりやってろ。あまり夜更かしはするなよ」
そう言って欠伸をしながら自室へと戻る。
「魔法……ってことはルーンブラッド出身!?」
ルーンブラッド 神威以外に魔力をというエネルギーを持ち、魔法というものを使える。使用者は主に女性でそれらを魔女と呼ばれる。
「じゃ、じゃあ魔女?」
「い、いえ、そんな……魔女だなんて」
「魔法使えるのか?」
「す、少しくらいなら」
「どんなのを使えるんだ、火か?氷か?」
「えと、あの」
迫って聞いてくるノアとジェルマンに困惑している。そこにカズキが中に入って止める
「見ろ、ルリーさんが困ってるだろ」
「うぅ」
怯えた目をしたルリー。体を震わせており、あと少しで泣きそうだ。
「ごめんなさいルリーさん」
「いいんです。私が泣き虫だからいけないんです」
「お前も、あんな風に聞くなんて意外だぞ」
「ドルツェルブの軍を退けたんだ。そりゃ気になる」
過去にルーンブラッドに侵略したドルツェルブだが、3日と持たず撃退されたとのこと。その記録には火の球や氷の刃といった魔法でやられ、神威とは違う異様な力の前でやられたとの事だ。
「で、何が出来るんだ?まさか、何も出来ない訳じゃないだろ?」
「えっと、火の球(ファイヤーボール)とか氷の刄(アイスエッジ)とかな基礎でよかったなら」
「それは凄いですわ」
「あぁ、作戦の幅が広がる」
ルリーの力に期待が高まる二人。神威の力が無いこのチームにとっては大事な戦力となる。
「補助は無いのか?」
「え?」
「確か、回復とかバリアとかそんなのなかったか?」
「一応学んではみましたが、使えるかはどうか」
「そうか」
「遠距離はルリーとノア、接近はカズキとジェルマン」
「じゃあ私は中距離やるよ」
「リュークさんは何ができるのですか?」
「なんでもできるよ」
なぜかえっへんと胸を張るリューク。
「剣使いだから俺達と接近戦でいくか?」
「いや、俺達全員が前へ出たらを二人の護衛がいない」
いくら神威や弓、魔法の技量があっても接近戦となれば、その弓も魔法も不利になる。となれば周りを守る役割も必要になる。
「二人が逃した敵を斬る、それでいいでしょ?」
「そうだな、その方が助かる」
「基礎となるフォーメーションは出来たな」
「後は作戦とかだな」
「相手が決まらんと考えれねぇよ」
「そう、ですわね」
「ならトレーニングだ!」
てことで、学園から出て街を降り海岸へ向かう。
「あっつ、死ぬぞこれ」
「あ、ご、ごめんなさい」
「気にすんな、ガンガン攻めてこいやぁ!」
ルリーが放つ火の球(ファイヤーボール)を掻い潜るジェルマンだが、近づくにつれその速度や威力が高まり避けるのが困難になる。
「ぐわぁぁ」
「はい消火」
ファイヤーボールが直撃し全身が燃え上がるジェルマンにバケツに入った水をかけるリューク。
「はぁ、はぁ……ああああ」
「ごめんなさいごめんなさい、や、やっぱり」
「この程度で悲鳴をあげるなんて情けねぇ。もっかいだ。テメェもしっかり俺を当てろよな!」
「で、でも」
「大丈夫。私がしっかり消火するから」
リュークが持っているバケツを見せる。なぜか親指をぐっと立て自信あり気に言う。
「こいオラァ!」
「い、いきますよ。えい」
「熱っ。くそ、まだまだ」
「がんばれー」
ジェルマンは攻撃を避ける訓練を、ルリーは当てる訓練をする。そんな中、カズキはノアが放つ矢を斬っていた。
「す、すごい」
全ての矢を残すことなく斬ってみせたカズキに目を見開くノア。
「弓は軌道が分かれば簡単に避けれるし、切り伏せることもできる」
「ですが、私の属性能力(アトリファクタス)は氷。触れたものを瞬時に凍らせる事が出来ますわ」
以前見せて貰った時は射抜いた的を凍らせていた。援護にもってこいの能力だ。もし発動してれば刀が、もしかしたらカズキ自身も凍っていたかもしれない。
「能力を過信するな」
だが、カズキは叱るように言う。
「わたくしの力が信じられませんの?」
「じゃあルリーさんのファイヤーボールを凍らせれるか?」
「それは……」
触れたものを瞬時に凍らせられるが、火を凍らすほどの威力はさすがに無い。
「そういう事だ、能力にも相性がある」
「そうですわね。慢心が過ぎましたわ」
「頼るなとは言わないが、自信が崩れたら動揺から強さが脆くなる。それだけはやるな」
「……はい」
「俺も指摘してくれ」
「そうですね、わたくしから見た感じではありませんわ」
「いや、なんかあるだろ」
課題を求めるカズキ、ノアは顎に人差し指を当て考える。
「あ、ジェルマンと戦った時は攻撃を受けすぎかな?とは思いましたわ」
確かにあの時は、攻撃を多く受けすぎていた。打撃にしろ斬撃にしろ爆発にしろ、避けれるものもくらっていた。確かに指摘される部分でもある。
「なるほど、参考になる」
「あれはわざと受けていたのですか?」
「その辺はノーコメントで」
「なんですの、ノーコメントって」
「覚えていない」
「なるほど、そうでしたの」
「俺も防御とかしっかりしないといけないんだな」
「ちなみにカズキさん、その剣はなんでも斬れるんですか?」
「あぁ斬れる」
「それも過信なのでは?」
キッパリ言うカズキに、呆れた顔をするノア。
「過信じゃない、でも一応言わないといけないかな?って思ってね」
「なんですの、その言い訳」
「いろいろあるのさ」
「もう門限の時間だから、はやく帰るよ」
リュークが懐中時計を見せながら走ってくる。
「もう時間か」
「ちっ、門限とかめんどくせーな」
時間内に学園内の寮の敷地内にいなければならない。特にFクラスの寮は先生も一緒に住んでいるから守らなければならない。
「寮前でトレーニングでもするか?」
「上等だ」
「明日の授業に支障が出ないようお願いしますわ」
「その、ペナルティはちょっとキツイです」
「連帯責任はつらいね」
「まかせろ、ほどよく鍛えるから」
「いつもやってるから差し支えねーよ」
入学してから今まで自主でトレーニングを続けてきた男子達。いまさら心配する必要はないのかもしれない。
「急いで帰らないと遅れちゃうよ」
「門限までどれくらいだ」
「うーん……10分?」
ここから学園まで走って約15分、寮となると時間が足りない
「全力ダッシュか?」
「だな」
「……走れ!」
疲れた体に鞭を打つように全力で走って帰るのであった。
つづく