ホテル。
ホテルの一室で静まりかえるカズキ達。
別に緊張しているとかそんなんではない。ではなぜこんな静まりかえっているのか。
それは十数分前の話だ。
カズキ達が去った後の広場で大勢の賑わいを見せていた。
神である大男の力により、観客はあの戦いから無傷ですみ、なんかの力で全員目覚めさせたのである。
「明日より剣舞祭を開催する!」
その激闘の跡が残る広場の中央でカルディナルが高らかに宣言をする。
「ルールはトーナメントによる団体戦」
「ちょっと待った!」
その宣言を途中で止める神の一人であるあの大男。
「この面子でそんなつまらんルールで楽しめると思ってるのか」
「しかし、この由緒ある剣舞祭。そう簡単に」
「神の言うことだ。黙って聞け」
笑いながらカルディナルの隣へ行き説明し始める。
「形式は孤島でのバトルロワイヤル。ルールはこの魔石を多く集めたチームの勝ちだ」
ほのかに青白く光る小石を見せる。
「各自一人一つ肌身離さず持つ。一定の距離から離れるとそいつは孤島から消える仕組みだ」
「それじゃあ、強さの有無関係なく奪いとれば勝てるということか」
「その通りだ、ロウラクシアのメンバー少年」
ロウラクシアの席で呟いた一人の青年を指差す。
「一強なんてつまらんからな。何が起こるかわからないほうが面白いだろ」
「一強ってカズキのことか」
「いやあのワルキューレの事かも」
「隊長達もいるのにそれはないだろ」
観客がザワザワし始める。
「俺の娘が出場しているんだ。これくらいのハンデがないとな」
「む、娘!?」
「それと、もう一チームを追加させてもらう」
「え!?」
「ヒノモト、クイナ、バウナ、ネーシャルムーンこの四島から強者を集めた、こいつらも入れなかったら最強は名乗れないぜ」
「そんな、無茶苦茶だ」
「だが面白そうじゃないか」
「でもどうやって観戦するんだろう」
「これは間違いなく歴史に残る大会になるぞ」
急なルール変更、神々の横暴に驚く。
「無茶苦茶だからいいんだ。さぁ、史上最高で最強の大波乱な剣舞祭にしようぜ」
なんてことがあったらしいからだ。
聞かさせたのはついさっき。その場にいられなかったのが残念だ。
歴史上初の神が直接取り仕切る剣舞祭だ。いつもは神の指示で運営はしていたがこれは初めてだ。
「バトルロワイヤはカズキさんの予想通りですね」
「あぁ、ギミックもだいたいは当たっていた」
「もう一つのチーム、それが気になりますわ」
「お前の国だろ。なんか宛はあるのか」
「四島の名前が上がったから四獣は間違いない。問題は残りの二人だ」
「四獣?」
「説明は後でする」
最悪のケースを考えているカズキ。顔が凄まじく険しい。
「なんにしても、神々が直々に見に来るなんて凄い事あるんだな」
本来、神とは人前に姿を現す事はない。カズミや隊長達といった特例を抜かせば剣舞祭で優勝し神々を統べるタイガー様との閲覧だけが唯一だ。それも会った事や話は秘密なのだ。故に不特定な存在であり、それ故に崇め称えられているのだ。
「あまり気にするな。厳格な奴がわざわざ下天なんかしない、緊張なんて無駄無駄」
本当に堅物で気難しい神ならそもそもこんな所へは来ない。
ここにいるほとんどが友好的な神様なのだ。
「そういえば、あの神さまの娘が出るっていってましたけど誰なのでしょうか」
「確かにな。神の子ってすごいな」
「アルガド王国代表メンバーの皆さん、そろそろパーティが始まりますので大広間に集まってください」
部屋に一人の巫女が知らせにくる。
「パーティ?明日試合あるのにか?」
「顔合わせじゃないのか?」
「納得」
その巫女に案内されるがまま大広間へ向かう。
ホテルにある大広間、以前アルガドでやった広間よりも広い。
流れる優雅な音楽。贅沢に装飾された装飾品。各国の贅をこらした肉料理や魚料理、果物が中央のテーブルに並べられている。
ここにいるのは貴族と代表メンバー、あとは選ばれた者達だけ。
「今年の剣舞祭は大波乱になりそうですな」
「なんせ、神様が介入しておりますからな」
「今年の優勝は歴史に名を残すだけでなく、恩恵もはかりしれませんな」
「今年はレイクロウが勝たせてもらいます」
「なんの、ロウラクシアには優秀な神威使いがいますから」
「ルーンブラッドは神威も魔法も使えるぞ!優勝間違いなしだ」
各国の貴族達は仲良く話してると思わせて舌戦が始まっている。
「はー、よくやってるわ」
「そうだな。こんな姿に着替えてな」
そんな姿を見て心底うんざりしている礼服姿のジェルマンとレオン。
アルガドでやったものとは違い。今回は神々のお膝元でのパーティの為、礼服を着ているのだ。
「そうか?見てて面白いぞ」
中央のテーブルから取ってきたステーキと魚のソテーを食べ葡萄酒を瓶のまま一気に飲み干す。そして礼服ではなく、あの戦闘服のままだ。
「お前な。あの時のヒメギと同じだろ」
「悪い悪い。急成長したから腹が減って仕方ないんだ。血も足りないしよ」
そういって再び料理を取りにテーブルに向かって歩く。
「わざと品の無い振る舞いをしてるな」
各国の貴族が集うこの場所での野蛮な振る舞い。普通ならあり得ないし絶対にやらない。だから恐らくはここにいる全員に普通じゃない、狂っていると心理的に思わせてたいのだろう。
嫌なやつほど距離を取りたくなるもの。やばいやつには話しかけたくないもの。
無駄な人間関係を築きたくない。そう強く感じられる。
「何奇抜な目でみてるんだよ」
変な目で見てくる二人に首をかしげるカズキ。
こいつの一挙一動に意味があるのかないのか全くわからん。
「別に。俺にもそれよこせよ」
「ほいよ。おいしいぞ」
「うま!?」
肉の味に驚くレオン。
「葡萄酒は苦手なんよね、清酒や麦酒も飲みたいな」
「なんだそれ」
「麦酒はドルツェルブの名産品だ。あまり他国には出回らないはずだ」
「清酒はヒノモト、クイナにある酒だ」
「アニマニアには名産の酒ないのか?」
「そんな器用なもんはない。だが、ジンノールという粗悪な酒ならある」
「なんだそれ」
「不純物まみれ、度数の高さ。普通の人間が飲んだらまず死ぬ」
「そんなもん飲ますな」
そういやアニマニアの宴では葡萄酒だったのがよくわかる。
「そういや、他の女子達は?」
「礼服(ドレス)着るのに手間取ってるんだろ?」
「貸し出しがあって良かったな」
「だな、俺持ってなかったからな」
レオンやジェルマンが着ているのは貸し出し、レンタルなのである。
女子もノア以外は持っていないので貸し出しなのである。他国はわからんが、持ってきていないのは恥なのかもしれない。
「あら?皆様ここにおられたのですか」
ノア、ルリー、リュークがやってくる。
「ここって、ほぼ入り口だろ」
「気づかずにスルーしてしまいましたわ」
ノアは目の覚めるようなマリンブルーのドレス。色合いや気品、属性能力も合わさってまるで氷の女王だ。
「憧れのドレス。感激です」
ルリーは純白の真っ白のドレス。普段は隠れて見れないが均衡の取れたプロポーションは普段のルリーとは違って色気が増している。
そんなことは露知らずクルクルと無邪気に回っている。
そしてリュークは……。
「お前、それ」
「いいでしょー。お父さんがいつか着るだろうって見繕ってくれたんだ。持ってきて良かった」
真っ赤な深紅のドレス。胸元を大胆にも広げた露出の激しいものだ。そして背中にはなにかの紋章なのだろうか繊細と大々的に刻まれている。
「リュークさんのは、ちょっと露出が」
「ドレスといってもいいのでしょうか。自分に自信がないと着れないといいますか」
「まぁ、すげぇな」
「あぁ」
ジェルマンやレオンも思わず見とれてしまう。
前々から思ってはいたのだ。同じ生き物とは思えない美しさと。
「あっ。いやらしー目!見るだけならいくらでもいいよ」
そういいながら上目遣いでこちらを見てくる。
「はっ、品の無いやつ」
「なーにか言った?」
「いでででっ。じょ、冗談じゃないですか」
カズキの頬をつねるリューク。
「あんたにはワルキューレがいるんだから、シャキッとしなさい」
「家族揃ってそんな事いうんだから、俺の心配しすぎ」
「やかましい。さっさと会ってこい」
「やだね。敵なんだから試合終わってから」
「私情を挟まないのは素晴らしい」
「あざあざっす」
「……お前らさ、なんかすげー仲良いよな」
「確かに。不気味ですわ」
「そうかな?」
「いつからそんなに仲良くなったのですか?」
「んー、私の正体に気づいた時からかな?」
「正体?」
「おー、カズキ!見違える姿になったな!」
ここでタキシード姿の三メートルはある巨漢オーウェンが声をかけてきた。タスカと同等かそれ以上か、同じ人間とは思えない程の大男だ。
「おいおい、オーウェン。やっぱデカイなお前」
背伸びをするも、全く身長差が埋まらない。
「まあな!お前がそんな大きくなるなんて驚いたぞ」
「おう。同い年になったからこれで同等だぞ」
「よくわからんが、ケリをつけてやるからな」
「お前とだけはまだ、決着がつけてなかったからな」
「さっきギガンド様に御会いしたからな。負ける訳にはいかない」
「隊長達全員同じこと思ってる。俺もだ」
神々が直接見に来てる。更に負けられない理由が出来てしまった。
「はっはっはっはっ、互いに負けられない戦いだな」
カズキも無様な戦いをしたらカセン様に殺されてしまうのではないかとビクビクする。と笑いながら話す。
「試合が明日だってのに話してきていいんか?」
ジェルマンが会話にまざってくる。
「確か名前はジェルマンか。うちのマーチスがやたら評価していたぞ?明日戦えるのが楽しみだ」
「けっ、余裕だな」
「まあ一応神様の下で鍛えてますからな」
分厚い胸筋を張りながら誇らしげに言う。
オーウェン・バリフォード。神伐隊でイザベラとは別で最強と言われる男。今回の大会でこいつがどんな動きをするかで全てが変わってくる。
「レオンだったか?いい体つきしてるな!タスカ程の巨体ではないが、野性味溢れる戦士の肉体だな。珍しい極度の混血族だから明日戦えるのを楽しみにしてるぞ」
レオンの体つきをまじまじと見ながら褒め称える。
要注意人物と皆には警戒するようにと伝えてあるが、目茶苦茶フレンドリーに接してくるから気が抜けそうだ。
「おやおやカズキさん。随分と大陸の人と仲良くなっているな」
ここでオーウェンと勝るも劣らないほどの巨漢の男が声をかけてくる。
「ぬ!?ハルクさん!?」
「久しぶりだなぁカズキ!」
「おぉ!?アカシ!元気してたか!」
「あいわからずだなお前は」
「カナデ。やっぱ来たか」
「私達もいるよ」
「チェンさん、リプカさん」
「誰だこいつらは」
「四国から来た代表者達。四獣と俺の悪友だ」
「お初にかかりますネーシャルムーンから来たハルク・イエスマンです」
獣の毛皮で作った胴着を身につけた巨漢が紳士に挨拶をする。
「クイナからチェン・フーだよ。よろしくね」
軽装具を身につけた短い白髪の元気な少女。
「リプカ・ヴァミリア。バウナにきたらウチのリゾートに泊まっていってね」
短いズボンにシャツとかなりラフな格好をした褐色肌のおっとりとした女性。
「ヒノモノの侍。タカオ・カナデ」
カズキやダテが時折身に付けていた着物姿の長い黒髪の少女。腰には刀をかけている。
「同じくコンジョウ・アカシ」
カナデと同じく着物姿なのだが、腰には刀はかけていない。
「アカシ以外が四獣な」
「おい、俺はオマケかいな」
「そういう訳じゃないさ。分かりやすく説明しただけさ、お前の厄介さは俺にしかわからん」
「なんだそれ」
「で、五人しかいないぞ。あと一人は!?」
ジェルマンが口を挟む。規定では六人だ。それ以上もそれ以下もない。
「ん?もうお前の後ろにいるぞ」
「え?」
アカシの声と共に振り返ようとすると、顔面に強い衝撃が走る。
吹き飛びはしないが軽い尻餅をつく。
「この程度の気配も感じられないとは弱者にもほどがあるわよ!」
目の前には巫女服姿の女性が凄い表情でカズキを睨んでいた。
「え!?」
その少女の顔を見て皆は思わず驚いて声を上げてしまった。
あまりにもカズキに似ているのだ。
「ね、姉ちゃん!?」
「久しぶりねカズキ」
「姉ちゃーーん」
「いい加減姉場馴れぐらいしなさい!」
抱きつこうとするカズキの顔面を再び殴る。
「ぐぇっ」
「あんたねぇ!話聞いたわよ!」
「え?」
「ワルキューレとの婚約を破棄したいだのゴミみたいな事を抜かして!」
倒れるカズキの胸ぐらを掴み無理矢理立ち上がらせる。
「いい!!あんたみたいなグズで!弱虫で!泣き虫で!意気地無しが!あんな綺麗な人に言い寄られてるだけで奇跡なのよ!頼りない軟弱者に来てくれる人なんかいるわけがないんだからさっさと結婚しなさい!イオリ家の、いえヒノモトの恥さらしが!!」
「………」
「お、おいおいここで姉弟喧嘩はやめないか」
「これくらい言わないと、いいや足りないくらいだわ」
「ほら、泣いちゃったじゃない」
リプカの元へ行き、抱きつくとすすり泣きが聞こえる。
「リプカ!甘やかさないの!」
「よしよし、全く昔から何も変わらないのね」
「はっはっはっ、泣き虫カズキか。強いのか弱いのかわからない肩書きだよな」
「感情豊かで人一倍傷つきやすい子なのだ。たった二人の姉弟なのだから優しくしておやりなさい」
「ふん」
「ところで君。なかなかいい筋肉をしているな」
「お?わかるなか?あんたも凄い筋肉だな」
ハルクとオーウェン。互いに見つめ硬い握手をかわす。
「少し語らないか?」
「俺もそう思っていた所だ」
「すまない、少し自由行動をとらせてもらうよ」
そういうと二人してどこかへ行ってしまう。
「私もルーンブラッドに興味あるから席はずすわ」
「うちはロウラクシアの人とはなしたいから、カズキくんもう大丈夫?」
「……ウン」
「よし強い子だね。試合楽しみにしてるからね」
そういうとチェンとリプカもどこかへ行く。
「見苦しい所を見せたなお前ら」
「あぁ。俺はお前という存在がわからないよ」
強いのか弱いのかもうなにもわかんなくなってきた。
「自己紹介が遅れたわね。イオリ・カズミよ」
カズミがチームメイトの自己紹介を軽くする。
それに続くように軽い挨拶をし始めるFクラスの面々。
「へぇ。あなたがアルバートン家のね」
ノアの顔を見てポツリと呟くカズミ。その得体の知れない迫力にぞくっとしてしまう。
「あんたら、うちの弟が世話になってるね。苦労してるでしょ?わがままで半端に強くてさ」
「いえ、そんなことはありませんわ」
「なんて礼儀正しいこと。あなたのような人と友達なら安心ね」
「そうそう、安心してね」
「あら?リューク様、カズキが失礼してない?」
「してないよ。仲良し仲良し」
「それはよかった」
「でもなんでこっちに?」
「リューガ様が招待してくれたので、御言葉に甘えてね」
「あははは、波乱だね」
「私はこのあと可愛い妹に会ってくるから、これで失礼するわ」
「私も稽古があるからこれにて」
「俺は飯食って寝るから、あばよ!」
そういうと四島連合のみんなどっかへ行ってしまう。
「な、なかなか濃いやつらだったな」
「お前、姉がいたんだな」
「そうだよ。母さんを差し置いて歴代最強の姫巫女って呼ばれてる自慢の姉ちゃん。出会ったら逃げろ勝てないから」
「そんなにか」
「短期間ではあるが、タイガー様の姫巫女を勤めた事もあるからな」
「なっ!?」
「母さんがタイガー様の姫巫女を勤めてたから、その延長なんだってさ」
「カズキさんのお母さん」
ノアだけが知っている。カズキの両親は既に亡くなっている事を。
「さて俺もミアに挨拶してこよ。奉納神楽見事だったし」
「え?あれ踊ってたのって」
「なんと俺の妹なんですよねーこれがよ!」
「髪色違っただろ」
「そら養子だからな」
「よ、養子」
「血の繋がりなど関係ない。ミアはイオリ家にとって大切な妹なんだ」
「そうだ!その通りだなカズキ!」
「じいちゃん!?ばあちゃん!?」
ヒノモト特有の民族衣装を着た二人の男女。
男の方はカズキと同じくらいの屈強な体格を持ち、顔や服の隙間から見える肌から夥しい程の傷が見える。女の方も大きな背丈であり着物を緩く着ているのか肩を露出しその豊満な体をこれでもかと見せつけている。
「こ、この人があのクニヨシか」
「てことは、テラさんの姉キラ・ヴァレンタイン」
「お?若いのにこの老いぼれの名を知ってるとはな」
「私達もまだまだ有名人ね」
かの大戦を終えるきっかけとなった人物だ。歴史に埋もれるにはまだまだ時間が短過ぎる。
「見ていたぞカズキ。カズミに酷く叱られていたじゃないか」
「いつまでたっても甘えん坊なんだから」
「わざわざヒノモノから出て見に来たの?」
「そうよ。なんていっても可愛い孫がでるんですもの」
「あとクラウザーの頑固ジジイに話があってな」
「話って?」
「ワルキューレを嫁として嫁ぐってな」
「は?」
「あいつカズキを婿入りしろって手紙よこしやがって。惚れたのそっちなんだから嫁がんかい!」
「しょうもな」
「馬鹿者ぉ!イオリ家を潰えさせない為に必死なんだ」
確かに姉ちゃんは結婚はしないとか言っていたからな。
頼みが俺なのは仕方がないことだ。
「それにリオスの墓参りしないとな。お前はちゃんと手を合わせてきたのか?」
「勿論。一回だけ」
「ならばよし!」
「私もテラちゃんに顔出さないと怒られちゃうかな。そろそろ結婚したかしら」
「行き遅れババァなんだから無理無理!母さんみたいに愛嬌なくっちゃ」
「もうあなたったら」
「んー、今日も可愛いぞキラ!」
周りの目も知ったことかと言わんばかりにイチャイチャする二人。
「なんか。すごいですね」
「あぁ。イメージとかけ離れている」
「惚気は今に始まった事じゃないからな。ってかこれが普通じゃないのか?」
「いや、違うだろ」
「凄いですね。カズキさんが孫なのにあんなに若々しくて」
「運動!食事!睡眠!あとちょっとの勉学と労働!これが若さの秘訣だ」
笑いながらルリーに言うクニヨシ。
「ただの規則正しい生活だろ」
「ぬあっはっはっはっ。気持ちだ気持ち」
「これはこれはクニヨシさんではありませんか」
一人の老人が声をかける。
「ぬ?誰だお前」
「ほら、アルガドの貴族ジョンソン家の」
「じょんそん?おぉ!?バッカスか!我が戦友よ!ちょっと老けたか?」
「クニヨシさんがお変わりないだけですぞ」
「おいおいクニヨシが来てるぞ」
「久しぶりじゃないか」
「たまにはこっちにも顔だせよ」
クニヨシの周りにみるみる人が集まってきてある。
どれも有名な貴族達で、かの大戦で名を上げた者達ばかりである。
当時の敵も味方も分け隔てなく集まっているのを見るに本当に全世界を平等に暴れたのだと察する。
「すごい有名人ですね」
「私達は邪魔ですね」
「巻き込まれないうちににーげよっと」
その場からそそくさと逃げ出すFクラス一行。
「あちゃー、はぐれちまったな」
移動してる間に、一人また一人と声をかけられそれぞれ離脱してしまいまた一人になってしまった。まぁそのうち出会うだろう。
暇なのでまた酒と飯でもかっ食らおうと中央のテーブルへ足を運ぶ。
「カズキ」
「……」
漆黒の黒いドレスを身に纏ったワルキューレ。その圧倒的な存在感は周りを威圧する。まるで近づく者を焼き焦がす炎だ。安易に近寄ることすら許させない。
だが少なくともカズキにとっては息をのむような愛しき人。
「さーて、この肉旨かったから皿ごと貰いたいな」
ばっちり目が合った。だが、あんなことがあったのだ弁解の余地無し会うのが気まずい。敵同士だから試合前に馴れ合いたくないではない。ただただ会わせる顔がないのだ。
わざとらしい不気味な独り言を聞こえるようにぼやきながら料理を取り皿につめこむ。
「まって」
「……」
ワルキューレのか細い声を振り払うように小走りで大広間から逃げるように去る。
「はぁ」
テラスでため息をつきながら肉と酒を自棄になりながら静かに貪る。
「明日に剣舞祭が控えているのに随分飲んだくれているな」
レイクロウの代表メンバーにして一番隊隊長イザベラ・サルワートルが声をかけてくる。
彼女は礼服ではなくいつも通りの軽甲装姿であり、騎士としての責務を常に全うしているようだ。
「イザベラ隊長か。敵なのに声かけてくんな」
「固いことを言うな。こうしてゆっくり話す機会など稀なんだ」
「けっ、堅物が何か言ってら。別に話す事はないだろ、少なくとも俺はな」
各隊長の中で一番関わりが少なくそれといって話すような事もない。だが、強さ人望統率力は尊敬するべき所が多い。
それくらいしかないのだ。だから変に気まずい。半端に知り合い故に尚更だ。
「余興はなかなか面白かったぞ」
「神様の無茶振りは今に始まった事じゃないからな」
「確かにな」
「……」
「……」
「……無理に話題をつくらなくてもいいんだぞ?」
「無理じゃない。私は楽しいぞ」
「そっか」
「……」
「……」
「……」
「……飲むか?このような場だからか、なかなかいい味だぞ」
「遠慮する。明日があるからな」
「違いない」
「……」
全くと言っていいほどに会話が弾まない。気がまずくなる。
「…カズキ。お前、天使と悪魔と一緒に戦うって本当か」
「??何言いってる。戦いなんてないし、天使と悪魔が手を組むなんて無理だろ」
どこでその話しを聞いたか。思い当たる節が有りすぎるから特定するのは止して、ここは知らないふりをしよう。てことで、すっとぼけた表情で聞き返す。
「すっとぼけた表情だな。そんな誤魔化しはきかないぞ」
「そうか?俺は初耳なんだが」
「白々しいな」
「そうか」
「シラを切るならそのままで構わん。私の戯言とでも受け取ってくれ」
そういい話しを続ける。
「相手があのラシンらしいじゃないか。元神伐隊二番隊隊長にして、隊員の命を引き換えに悪魔に堕ちたラシン・ルイワール」
自らの手で皆殺しにし、悪魔に捧げた。許しがたい外道だ。
「彼は同じ隊長として期待と信頼があったのだがな。なんで悪魔に成ってしまったんだ。なにが彼をそうさせたのか全くわからない。でも、神の名を汚し私達を裏切り罪を重ねた彼を止めたいんだ。他の隊長達も同じだと思う」
基本他人に興味を持たないメーテルが激昂し憎悪を燃やすくらいだ。他の隊長達ならそれ以上だろう。
「参加させろとは言わない。カズキが誰よりも仲間思いなのは知っている」
毎日慰霊碑に向かって黙祷し、こまめに清掃しているやつだ。仲間が死んだ時も人知れず泣いているやつが、死ぬかもしれない戦場へ仲間は連れていきたくないのは理解できる。
「でも、少しくらい私達を信じてもいいんじゃないか?」
「……戯言はそれくらいにしな。耳鳴りしてきた」
「……」
「……別にお前達が弱いとはこれっぽっちも思った事はない。今でも頼りにしているつもりさ」
「ならば」
「これは俺の戯言だ。気にするな」
「………」
「わざわざ戦火に飛び込む必要はない。生き延びた命を大切にしろ」
折角平和な世の中になってきているんだ。その平和の立役者の一人なんだからのほはんと生活しても罰は当たらないはずだ。それに死んでいった仲間の分までしっかり生きなければならない。
「それが信用してないって言ってるんだ」
だが、それが気に入らないのか怒声に近い声をあげる。
「信用してるから死んでこいって言えるのか?」
「っそういう事を言ってるんじゃない!」
「おいおい戯言に怒ってどうする」
「わ、私は……心配なんだ。お前がまた無茶をするんじゃないかって」
「俺を知ってるのに変わった事をいうな。無茶するに決まってるだろ。それに心配される筋合いはないはずだ」
「そ、それは、だな」
なんだかもじもじとして歯切れが悪くごにょごにょと喋る。いつもならスパッというのだが、珍しい。
「私は、お前の事が」
「カズキ ここにいたの、か」
ワルキューレがやってくる。くそ、もう見つかってしまった。
「イザベラ。話はまた後だ」
「どうして避けるの」
ワルキューレの弱々しく震えた声が二階から飛び降りようとする足を止める。
「俺は、キューちゃんが思っているような男じゃない。姉ちゃんの言う通り意気地無しで泣き虫な」
「ソレは 昔から 知ってる」
うむ。それはそれで嫌だな。
「キスしようとして吐かれてもか」
「それは ちょっと いや だいぶ ショック」
それはそうだ。あんなのされたら普通はショックを受ける。あ、俺はしないよ。たぶん。
「でも。全部含めて愛してる」
「ぐっ」
その真摯にカズキは瞬いでしまう。
「いい彼女じゃないかカズキ。女の子にそこまで言わせて逃げるのか?」
カズミの肩をポンと叩き諭すように言ってくる。
「イザベラ。お前までも言うか」
「ワルキューレとの関係はアリスから聞いた。そうとう熱いそうじゃないか」
「イザベラ 確か 一番隊の」
イザベラを見て一気に敵視するワルキューレ。カズミに近寄るな。誰でもわかるように訴えてくる。
「私は邪魔なようだ。試合が終わったらゆっくり話そう。君とは話が合いそうだ」
そういうと静かに大広間へと足を運ぶ。
(私じゃ争いにも入れないか。気づくのが遅すぎたな、この気持ちに)
その足取りはどこか悲しく重いものだった。
「イザベラ。どういう 関係 なん だ」
「ただの仕事仲間だ。大切な」
「大切 か」
「あいつはすげぇからな。関われば分かる」
なんていっても俺が認めている隊長だからな。
「そうか」
「キューちゃん」
「もう 何も言わなくていい」
「え?」
「わかってる。カズキが言いたいことは」
不敵に笑うとカズキの手を寄り添うように取る。
「剣舞祭 終わったら 話そう」
「そう、だね」
二人も大広間へと足を運んだ。
つづく