「お前ら、いよいよ公式戦が始まる。ランク上位三チームに入れば学園代表として出れる」
「じゃあ、とっとと三年のAクラスを倒すか」
「それは無理だ」
「なんでだよ」
「その前に一学年だけでトーナメントをやる、上位四チームだけが公式戦に出れる」
「んだよそれ」
「仕方ないだろ、入りたての下級生と上級生では実力者の差は歴然だ。完膚無きまでにやられた不様な姿を全校生徒に見られたくないだろ?」
「………」
「そういうことだ、まずはEクラス辺りに当てられるだろうな」
「順序を踏んで実力を見せないといけないんだな」
「ものわかりがよくて助かるよ」
「レオン、チームは見つかりそうか?」
「いや、まだだ」
何チームか声をかけてみたらしいが、やはりFクラスを招き入れるチームはいないそうだ。
「どうやら、実力を見せないと入れてくれないみたいだ」
「なんだ、じゃあダメじゃねぇか」
「いや、エキシビションマッチに出るつもりだ」
「なんだそれ」
「前座試合だ前座、確か危険種と戦うんだろ?」
危険種とは、人間などに害をなす凶暴な生物の事を言う。
「だ、大丈夫なのですか」
「俺は危険種とは何度も戦った事がある、何よりあいつらの肉は旨い!」
「まさか食べるつもりか?」
「食用だったらな、中には毒を持ってるやつやまずいやつもいるからな」
「そういうね」
「それで、俺の実力を見せる。神威なんて使わなくても強い事を」
「なるほど、アピールには持ってこいだな」
「まぁ頑張れよ。敵となったら容赦しないぜ」
「こちらもだ。手加減など一切しない」
カズキとジェルマンが戦った試合会場とは違う、天井があるドーム状の試合会場。そこに一学年全員が集められる。
「これより、一学年公式トーナメントを開始することを宣言します」
試合会場の中央でレイカ先生が開幕を宣言を上げている。
「ただいまより、エキシビションを行います」
アナウンスが流れると、リングにレオンが入ってくる。
「レオン・ビースタルク対ファングボア」
運ばれてくる柵の中には茶色い剛毛と巨大な角を持った巨大な動物が寝ている。
「Fクラスのレオン選手、ファングボアに勝てるのでしょうか!」
「実況は一学年の多弁記者ことミチノ・エポウスがお送りします」
ブザーと同時にファングボアに刺激を与え起こすと、柵を
壊しレオンに向かって突進してくる。
「ふん」
逃げる事なく正面で受け止める。後ろへ押されるも、徐々に速度は落ちて完全に止める。
「うおおおお」
角を掴みファングボアの巨体を上へ持ち上げる。そして、地面に渾身の力で叩きつける。
自慢の角が折れ、白目を向いている。悲鳴をあげる時間もなく絶命した。
「な、なんとレオン選手、一分もかからずファングボアを仕留めた!」
「なんという力、これが本当にFランクの実力なのか!?」
「すげぇ、なんだあの力」
「真正面から潰したぞ、おい」
その強さに生徒達は動揺の声、何よりレオンを褒め称える声が一番大きかった。
「俺は剣舞祭で優勝する中で役に立てるはずだ。強いチームのスカウトを待っている」
そう宣伝し、沸き上がる試合場から去る。
「こりゃいいアピールだな」
「そうですわね」
レオンの実力は確かに凄いものだ、神威無しで三級の危険種を倒してみせたのだ。カズキ達のチームも同じく欲しい逸材でもある。
「ですが、神威が使えないってハンデがありますわ」
「よくてもCクラス辺りでしょうか」
「まぁAクラスはないだろうな」
どんなに強くても生身で神威使いに勝つ可能性は極めて低い。神威武装(ミスフォルツァ)と属性能力(アトリファクタス)はそれだけ強力なものなのだ。
その事を考えるとやはり誘うチームが居たとしてもレオンが望む強いチームとは考えられない。
「好きにさせてやればいいだろ、あいつの事なんだしな」
「俺もだ、まぁ戻ってくる時は心広く受け入れてやろうぜ」
「はぁ!?何言ってんだお前、裏切りだろ」
「裏切りって、あいつには事情があるんだろ?じゃなきゃこんな事はしない」
「んなの知るか、俺達じゃ力不足だから見限ったんだろ。弱い役立たずと見下してるから平気でおりれるんだ」
「レオンは、俺達がバカにされた時に本気で怒ってただろ」
あの時のレオンは演技として見るには無理があるくらい凄まじいものだった。
「そんな奴が、そんな事を思うか?」
「…………」
「とにかく、俺達はこのあとの試合に勝つ。負けたら終わりなんだぞ」
負けた瞬間剣舞祭の出場権が無くなるトーナメント戦、全てにおいて負ける訳にはいかない。
「わかってる」
「か、勝てるかな」
「大丈夫大丈夫、気楽にいこうよ」
「リュークさんは少し緊張を持った方がいいですわ」
初戦を前にしてソワソワするFクラス。
次々と試合が進み、いよいよカズキ達の出番になった。
「今回は具体的な作戦は無しで互いに臨機応変に対応する、だよな?」
控え室で改めて作戦を確認をとるカズキ。
初戦は相手の情報がないので作戦は立てられなかった。その為、今回は戦況に応じて動く超基礎以前の作戦であるが故に個々の実戦力が計れる。
「そんな無茶な」
「だが、今これが出来なかったら、これから仲間を疑いながら戦う事になる」
「信頼を築こうってわけですわね」
「信じるは強さ、頑張ろう」
「ノアさんとルリーさんの援護を期待してるよ」
相手はEランクの生徒で作られたチーム、全員が神威武装(ミスフォルツァ)を使える。だがここで作戦なしで負けていれば勝ち進めない。
「よーし、やってやろうぜ」
意気揚々と試合場へ上がる、レオンが戦っていた場所には木材やバリケードなど障害物がおいてある。
各チームが入った所で試合開始のブザーが鳴り響く。
「いくぞカズキ」
ジェルマンはバトルトンファーを両手に持ち走り出す。
「バカ、正面から攻めるな」
「前線なら特攻あるのみ!攻めて攻めて攻めて攻めてぶっ潰し蹂躙する。それがオルガノート家だ!」
「脳筋が、だが乗った」
カズキも刀を抜き後に続く。
「あっ、ちょっと」
「男子は自分勝手でダメですわね」
「それを支えるのが私達の役目」
「そうですわね」
女子が呆れる中、男子は嬉々として敵陣へ乗り込む。
「はっはー、どうしたどうしたそんなもんか」
剣を模した神威武装(ミスフォルツァ)を持った三人を相手にするジェルマン。
「Fクラスが調子に乗るな」
振るう剣を受け止め力で弾き返す。すかさず鉄球を横に振るい生徒を倒す。
地面に倒れたまま動かない生徒は虚空の原子となり消える。
「たわいもねぇな」
「Fクラスとて狂人だ。気を抜くな」
「同時にいくぞ」
一人が剣を振り回し牽制しジェルマンの行動を制限、その隙にもう一人が攻撃する。単純だが厄介な戦法。
「っと、かすっただけでこの威力かよ。神威ってのは恐ろしいな」
ほんの少し剣先がジェルマンの右腕に掠める、それだけで切り傷が出来る。まともに受ければ骨なんて簡単に斬れる。
「このままいくぞ」
「おう」
手応えを感じた二人は一気に攻めようと同時に攻撃をしかける。
「ぐはっ」
矢が一人の胸を射抜き、傷口から徐々に凍り始める。
「氷の矢だと!?」
放たれた方を見ると高台に弓を持ったノアがプラチナブロンドの髪をかきあげている。
「わたくしもいますのよ」
「ちっ、うおおぉぉ」
「ふん」
振るう剣を弾きトンファーを縦に振り下ろす。
ゴンと鈍い音と共に男子生徒は倒れ光の粒となる。
「っし、片付いた」
「ふっ、わたくしの援護のおかげですわね」
「あ?んなの余…おい危ねぇぞ」
「え?」
ノアは振り替えると短剣を持った男子生徒が襲いかかっていた。
「きゃっ」
腕を捕まれ逃げる事も弓を射ることも出来ない。
「死ねい」
胸部に突き刺す瞬間、生徒の動きがピタッと止まった。
「かっ、あがっ」
「ざーんねん、惜しかったね」
背後からリュークが短剣を握る腕を取り、喉元に指を突き立てている。
「ノアさん、もっと周りを見ないとダメだよ」
「あ、あの」
「なに?」
「はやく。とどめをさしてあげたらよろしいかと」
「え?」
声を出すことも出来ず必死に抵抗する生徒、だがリュークを振り払う事はおろか喉元を突き刺す腕すらも動かすことが出来ない。
やがて握っていた短剣を落とし、ばたばたともがいていたのだが動かなくなってしまった。
「あ、落ちゃった?おかしいな、脈は止めてないけどな~」
「気道を潰し続ければ窒息死しますわよ」
「あれ?潰していたの?力加減間違えちゃった、長く苦しめてごめんね」
生徒をその場に横にさせ周りを見渡すリュークは
「あそこにカズキが二人と戦っているよ」
見つけだし試合場の端を指差す。
「すぐに援護に行きましょう」
「あっ、終わった」
その場に炎の球が放たれ一面が燃え上がる。それと同時に試合終了のブザーが鳴る。
「カズキ、お前なにしてるんだよ」
「なにって、なにが?」
「お前ほどの実力者があの程度にてこずってるんじゃねぇよ」
「いやだって、殺さない程度に攻撃するって難しいじゃん?」
「はぁ!?お前何をいってんだよ」
「え?」
「アストラルエーテが使われていますのよ」
「あすとらるえぇて?」
何にもしらないカズキにノアが分かりやすく教える。
アストラルエーテとは、神威で作った別世界の事で、致命傷を負うとその場で強制的に排除される。そこで受け傷は出ると消えるが、ダメージは多少ながら残る。
その為に絶対に安心なわけではなく、ダメージが強いとしばらく体が動かせなくなったり、昏睡状態、最悪は二度と目を覚まさない可能もある。
「簡単にいえば、別世界で殺し合いをしているのですわ」
「余計にわからない」
「ようは、死ぬ寸前で勝手に止めてくれるんだ」
「なるほど、だから全員あんなに殺気を放っていたのか」
殺すような攻撃をしてきたから不思議に思っていたが、その心配がないから本気で振るっていたのか。
「命を軽んじる危険なやつだな」
「これを仕様しないと余計に命を軽んじる事になりますわ」
確かに、アストラルエーテを使わないで神威武装(ミスフォルツァ)を使って戦えば多くの死者を出すだろう。
「そうだな」
「次から躊躇わずぶっ殺せ」
「はいはい」
「それにしても、よく神威使いの動きに追い付けましたわね」
神威使いとして半端なFクラスは別として、それ以外のクラス、神威武装(ミスフォルツァ)を使える者は身体能力を倍増するのとができる。
それなのに常人であるこの二人は動きについてこれている。
「俺は軍人だぞ?この程度なら余裕だ」
「俺も、これくらいなら普通に対応できる」
二人は鍛えに鍛え、常人の範囲を越えていたのであった。
それならば、多少は上げられても常識の範囲内なのだ。
「俺達も倍増できればいいんだけどな」
「ん、じゃあノアさんも倍増しているの?」
「当然ですわ、身体能力だけでなく集中力も上がりますので確実に狙射てますわ」
「ですが、これから高いランクと戦うのですからかなり実力に差が出てしまいますよ」
「確かに、次の相手はCクラスですわ」
観客席から試合を見ると、Cクラスのチームの一人がEクラスのチーム全メンバーを圧倒している。
六人の接近攻撃の中、ダメージを受けることなく試合を終わらせた。
「ほー、強いなあの男」
確かにいい動きだが、神威で身体能力を倍増してもらっていると考えると素だと弱いんだなって思ってしまう。
「セルト・クラハス、Cクラスきっての実力者ですね」
「知ってるのか?」
「えぇ、神威の扱いだけじゃなくて剣術の腕前も噂になるくらいありますわ」
「こいつが敵将か、だがどんな力を持っているのかわからないと作戦が立てられない」
恐らく他のチームの力を隠す為に一人だけで戦い制圧したのだろう。今の試合だけじゃなくてその後の事も結構考えているな。
「斬撃波(シュナイデン)、斬撃を放つちとやっかいな属性能力(アトリファクタス)だ」
しかめっ面をしたジェルマンが言う。
「なるほど、じゃあ迂闊に動けないな」
チームのフォーメーションを見る限り遠距離攻撃が四人、遊撃が一人、接近攻撃が一人。そしてシュナイデンの能力を考えると巧妙なチームだ。罠や狙撃をどう掻い潜るかが勝利に繋がる。
「寮に戻ったら作戦会議ですね」
「そうだな」
試合を全て見なくてもいいのだが、視察を含む娯楽としてほとんどの生徒は最後まで見ている。
カズキ達もすぐに寮へ戻ってもいいのだが、一学年のほとんどの実力を見れるいい機会なので、最後まで残ってしまうのであった。
つづく