鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典- 作:渚のグレイズ
──────それは、三日前のこと………───
「ちょっと・・・・・ちょっと待ってくださいよ!!」
「んー?なぁに、質問でもあるの?」
「ありますよ!!この資料を見てください」
契約者であることがバレた僕は、藍原友奈の助手として彼女の手伝いをしていました。
しかしその途中で、僕は、おぞましい事実を、知ってしまったんです………
オリハルコンから抽出された素粒子は、魔力をエネルギーにキューロンへと結合します。
その後キューロンは、邪気をエネルギーにしてどんどん結合していき、最終的に
その事実を知った僕は、藍原さんに実験の中止を求めました。けれど………
「おっ、順調に育ってるじゃなーい♪」
「なんて暢気な・・・・・これは明らかに異常事態でしょう!?」
「
その言葉に、僕は耳を疑いました。
「・・・・どういう意味ですか?」
「陰と陽、二つの
「・・・・・・・・・・・・は?」
「そこから抽出された素粒子は、言うなれば受精卵ってとこね。私は
「──────あなたが、何を言っているのか、分かりませんよ」
「私がおかしいって思ってるでしょ。でも違うよ、私はちゃんと真実を話している。その事はちゃんとデータが語っているでしょ?」
否定したかった。けれど、彼女の語っている事が真実である事は、僕が集めたデータが裏付けていたんです。
「これから産まれてくるであろう彼らの事を私は、キューロンで構成されたアンドロイド──────『
「キューロ・・・・ノイド・・・・」
嬉々として語る彼女の様子は、まるで、筋肉について語っている時の友ちゃんみたいでした。
「AIは・・・・・・最高峰のAIを造るって話は、何処に行ってしまったんですか・・・・・!?」
「勿論造るよ?」
「は?」
何を言っているんだ、とでも言わんばかりの態度に、さしもの僕もすっとんきょうな声を上げたものです。
「実をいうと・・・・
「──────────────え」
照れた様に暴露する彼女の言葉に、僕は再び耳を疑いました。
「これまで出来上がったキューロン結合体は全部、小脳とそれに付随する脊椎くらいにしか成らなくてねえ・・・・・仕方ないから、その小脳をカプセルに詰めて量子コンピュータと接続する方針にしたんだよ」
正気の沙汰とは思えない行いに、僕はもう限界でした。
その日の内に僕は、キューロノイド研究に関係する資料や機材を、破壊する事を決意しました。
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「しかし、藍原さんは僕のその行動を読んでいたみたいで・・・・・」
「なるほどなあ・・・・阻止されて、あの牢屋に閉じ込められてたっちゅーワケや」
瑛次くんが頷く。
彼からもたらされた情報は、突拍子の無いものばかりで、現実味が感じられなかった。けれど、瑛次くんが言うことなんだから・・・・・・
「エージが嘘言っとるんやないっちゅーのは分かるんやけど・・・・」
「まあ、現実味ありませんよね」
「信じてあげたいのは山々なんだけど・・・・・ごめん・・・・・」
「
瑛次くん?
「ファリ・ドゥ」
「はい、我が主」
瑛次くんのネックレスに付けられた指輪が光り、紳士服を着た金髪トンガリ頭の青年が現れた。
その手に、カプセルに入れられた人の脳みそを持って………
「っ・・・・・・!」
目の前で起きた出来事に、理解が追い付かない。
「──────エージ、そのおっちゃん」
「おっちゃん・・・・・ですか。まあ確かに、貴女方から見れば、おっちゃん処かおじいちゃん位の年齢ではありますが・・・・」
「ファリ・ドゥもショックを受けたりするんだ・・・・」
肩を落とすファリ・ドゥさんに瑛次くんが静かに突っ込む。
いやいや、そんな事よりも!
「そのカプセルの中身・・・・それって・・・・・」
「おや?先程までの話を聞いてなかったのですか?
「これ・・・・が・・・・?」
どこからどうみても人間の脳みそだよね・・・・これが、金属から出来たっていうの・・・・?ほんとに?
「ちゃんと"生きて"ますよ。今も霊力探知で周辺情報を獲得しています」
「へ・・・・へえ・・・・」
「んー・・・・エージの話が事実なんは分かった!んで?藍原友奈の目的は、結局何なん?」
「────────」
そうだ。私もそれが気になっていた。こんなものを造って、その人はいったい何をしようとしているんだろう・・・・
「藍原さん─────藍原友奈の目的は─────」
一度瞳を閉じ、意を決した瑛次くんは、瞳を開けて告げた。
「キューロノイドによる、神樹様の抹殺です」