鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典- 作:渚のグレイズ
「つまり・・・・・えっちな事したんやな?」
半眼になって直球弩ストレートな質問をするのは、私たちのお目付け役の巫女、桐生静。エセ関西弁がトレードマーク(?)の中学三年生。ちなみに私も中三だったりするが、上下関係に厳しい静とは違い、私は別にそこまで頓着しない主義だ。
現在、我々は寄宿舎の静の部屋に集合している。『鏑矢』の仕事が終わった後は、この部屋にて報告会を行うことになっているからだ。
しかし・・・・・もう少し部屋の整頓を心掛けた方が良いのでは無かろうか?一見、綺麗に見えなくもないが、ギチギチに押し込められた戸棚が、今にも破裂しそうになっている。整理整頓くらい出来ないのか、コイツは・・・・そんなだから男が一人も寄り付かないのだよ・・・・
「カツ・・・・今、失礼な事考えへんかったか?」
「気のせいだろ」
「・・・・・・まぁ、ええわ。んでアカナ、えっちな事、したんやな?」
「えっと・・・・・・うん♥️」
「『うん(はーと)』や、ないわぁ!!ど阿呆ゥ!!!!!!」
しぱーん!と静が、何処からともなく取り出したハリセンで友奈の頭を叩く。
「フッ・・・・良いじゃないですか。愛し合う二人の時間は大事、ですよ?」
コイツはコイツで何を言っているのか。そして、当事者の片割れたる瑛次は、さっきからずっとおろおろするばかりと来た。
まともなのは私だけか。
「・・・・・なんでこんな連中が」
「にーさま、神樹様のご判断なのです。信じてあげなくっちゃ、なのです」
「・・・・・・・・・仁根か」
私の呟きに答えたのは、今やって来た少女。私の妹の仁根だ。
「おっ、待っとったでーヒトっち~」
「ねーさま方、遅れてすみません、なのです~」
「仁根ちゃん、身体は大丈夫かい?」
「はい~、今日はいつもより調子が良くて・・・・ちょっと近くをお散歩してきてしまって・・・・」
「ふぅん、それで遅れて来たのね」
仁根は私の三つ下の妹で、生まれつき体が弱い。
今日はいつもより顔色も良く、私の方から誘ったのだ。
「気持ちは理解できるけど、約束の時間に遅刻するのは良くないわ。貴女はいずれ弥勒の義妹となるのだから」
「れんげねーさま・・・・ごめんなさい、なのです」
「人の妹に何を吹き込んでいるか」
まあ良い。蓮華の言う事には一理ある・・・・義妹云々は理解出来ぬが。
「仁根、お前も乃木家に産まれたのだ。その名を汚すような行いは慎みたまえ」
「・・・・・・はい、申し訳ありません、です」
「──────────散歩なら、この後いくらでも付き合ってやる。それで我慢してくれ」
「!!はいっ♪」
やれやれ、たかだか散歩の約束をしただけで、暗い顔だったのが華やかな笑顔に大変身だ。我が妹ながら、単純な奴。
「フフフ・・・・♪」
・・・・・何故か蓮華がこちらを見て微笑んでいるが、私には関係有るまい。
「はいはーい!ヒトっちも来たことやし、定例の報告会、始めよかー」
「では弥勒から」
静の号令から、部屋の空気は一変する。
真っ先に手を挙げたのは蓮華だ。
「瑛次のスキャニング結果を元に、周辺を探索した処、憑依体が一体ずつ、それぞれ男性とOLに取り憑いていたのでこれを除去。その際、"忌人化"の兆候は見られませんでした」
「前回同様、今回も
蓮華の報告に続いて、私が私見を交えた報告を行う。
静は「ふむ・・・・・」と呟き、少し沈黙する。
「あのー・・・・・」
おずおず、といった雰囲気で手を挙げたのは瑛次だ。
「もし、これが前回と同一犯だとすると、多分ですけど、相手はきっと、良くないことを企んでいるとおもいます・・・・・どんなことかまでは、わかりませんけど・・・・・」
その意見には賛同だ。どのような目的があるにせよ、邪気なんて物を集めているのだ。ろくでもない事に使うに決まっている。
「どうしてそう思うの?瑛次くん。もしかしたら、ボランティアで協力してくれているのかもしれないのに」
能天気な事を言う・・・・・コイツは邪気がどんな物なのか、理解しているのだろうか・・・・?
「あのね、友ちゃん。邪気は集まれば集まる程、その力を増していくんだ。妖忌が邪気を溜め込むのは、そうやって成長しようとしているからなんだよ」
「そうだったんだ!?」
駄目だコイツ・・・・・そんな基礎知識すら無いとか・・・・・・
「沢山邪気を溜め込んだ妖忌が、忌人に進化したこと、前にあったよね?妖忌や憑依体が忌人になる前に対処するのも、ぼくたち『鏑矢』のお仕事の一つなんだよ」
「そっかー、気脈を正すだけがお仕事じゃないんだねー・・・・」
"
人の形をした邪気の塊。知性も人並みで、個々に自我を持つ存在。
かの『終末戦争』に於いて壁の外の人類を駆逐したのが、忌人の群れなのだと、お婆様は語ってくれた。
そんな物が、この四国に再び蘇ったとしたら、どうなるのか。そんなもの、火を見るよりも明らかだ。
「食い止めねばならぬのだ。我々が・・・・お婆様達が命懸けで護った、この四国を護る為に・・・・」
「にーさま・・・・」
「・・・・・せやな」
「うん・・・・!」
「が・・・・がんばります!」
「貴方に言われるまでも無いわ・・・・!」
私の意志に、皆が同意してくれる。
時折、『何故』と思う事はあるが、それでも、彼女達の持つ志は、神樹様に見初められるだけの事はあると、そう思う。
そうして、今日の報告会は終了した。
キャラ紹介③
─乃木仁根─
葛葉の妹。文武両道の天才児。
出産時の"事故"により、生まれつき体が弱く、激しい運動はできない。
葛葉と違い、剣に槍に弓に…と、ありとあらゆる武具を使いこなせるが、病弱故にそれが充全に発揮されることはほとんど無い。
普段はベッドの中で空想の世界に浸りながら過ごしているが、体の調子が良い日は、葛葉との散歩を楽しんでいる。
モデルは勿論、乃木園子(小)。イメージとしては、綺麗な園小