鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典- 作:渚のグレイズ
その言葉を、私は幾度となく吐きかけられてきた。
それでも努力し、懸命に知恵を振り絞り、そうして葛葉流剣術は誕生した。
だが、それも完成とは程遠い。研鑽の余地は大いに有り、改修すべき事柄も多々ある。
それでも、私は決して諦めない。
「積み重ねた物は、いつか、お前の助力となる」
仁根以外で、唯一の身内での味方であったお婆様は、生前にそう私に言って下さった。
だからこそ、その言葉に従い、私は努力を怠らない。
全ては、四国に住まう無辜の民の為に………
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「誘拐事件の調査協力?」
「せやで」
仁根との散歩(何故か蓮華まで着いてきた)を楽しんだ翌日、静から言い渡されたオーダーは、どう考えても我々が扱うには分不相応な物だった。
「なんで私たちが?そういうのって、警察のお仕事なんじゃ・・・・」
「アカナの言う事は尤もやな。せやけど、これはおカミの決定なんや・・・・みんな、頼むで・・・・」
上の決定・・・・つまり、このオーダーを発令したのは、現筆頭巫女か、或いは・・・・・
「えっと、とりあえず任務については分かりました。それで、具体的には何を・・・?」
瑛次の質問に、静は象頭町周辺の地図を広げて答える。
「今回の任務では、男女別々に別れてもらうで。カツとエージはこの辺、アカナとロックはこの辺の調査や」
「なんでいつものペアじゃないんですか?」
「今朝、神託で『そうしろ』って言われたんや。堪忍な」
友奈の問いに静はあっけらかんと答えた。
「神託かぁ・・・・じゃあ、しょうがない・・・かな」
「瑛次、葛葉の足を引っ張らないようになさい」
「ど・・・・努力します・・・・!」
「問題無い。蓮華も瑛次も、私にとっては然程大差は無い」
「良かったわね、瑛次。葛葉は貴方の事を『弥勒には劣るけど、優秀で必要な人材』と思っているそうよ」
「お前のそういう所、本当に凄いと思うよ。見習いたいとは、小指の薄皮程にも思わないがな」
何はともあれ、オーダーは下った。
疑問は有れど下されたならば、遂行するのが我々の使命だ。
各員、早々に準備を行い、指定ポイントへと向かうのだった。
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さて、何気に初めてだな。瑛次と組むのは・・・・
「気負わず、いつも通りにやれ。戦闘は私がやる」
「お・・・・お願いします」
こいつはいつもオドオドしている。
その癖、魔導知識と機械知識は、鏑矢随一だ。
姉と違い、自分に自信が無いのだ、こいつは。
「・・・・・瑛次」
「は・・・はいっ!?」
「私は、お前の知識に関しては、尊敬に価する物であると思っている。蓮華の様に・・・・と迄は言わぬが、自信を持て。お前は、他者に誇れる物を持っているのだから」
「─────先輩」
「・・・・・・・・・・・・行くぞ」
・・・・流石に、誰かを褒めるのは照れ臭いな。
等と考えていたら、目の前に一人の女性が現れた。
くすんだ赤い髪の長身細身の女性だ。顔つきが、何処と無く友奈に似ている気がする。
「はじめまして~♪乃木葛葉くんと、弥勒瑛次くん・・・だよね?」
「───────────だとしたら?」
瑛次の前に進み出て、目の前の女を睨み付ける。
「まあまあ、そんなに怖い家屋しないで欲しいなぁ」
女は嗤って、懐からアンプルのような物体を取り出した。中には黒い泥のような何かが入っている。
まさか・・・・あれは!?
「・・・・・邪気!?まさか、貴女が集めていたんですか!?」
「ピンポンピンポ~~ン♪だ~~いせ~~いか~~い♪」
「・・・・・それをどうするつもりだ」
「え~?分かってる癖にぃ~~」
「・・・・・・・・・・・・チッ。何が目的だ」
あの量、周辺の通行人を"忌人化"させるには充分な量だな・・・・・
瑛次も居る今、下手に動けない。ここは相手に従う他無いだろう・・・・
「じゃ、あたしに着いてきてね~♪」
言われるがまま、私と瑛次は女に着いていく。
しかし、このまま奴の言いなりになるつもりは毛ほども無い。
その為にも、蓮華達に状況を伝えなければ………