鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典-   作:渚のグレイズ

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真っ暗闇の中を落ちた先は、配水管の中だった。

「ぷはぁ!・・・・・・まったく、瑛次の奴・・・・・」

底は案外浅く、立って移動する事は可能なようだ。
しかし、こんな場所を配水管が通っていただろうか・・・・?

「───────待てよ。この水、まさか!?」

瑛次作のスコープを使用し、水を調べると────

「なんて事だ・・・・・()()()()()()()()()()()()()()()!!!」

この配水管が何処まで続いているのかはわからないが、もし、この水が四国中に配布されでもしたら・・・・

「・・・・・なんとかして、脱出しなくては」

まとわりつく寒気を振り払うように、私は何処かも知らない出口を探して、歩き始める。






第六話

「・・・・・宜しかったのですか?」

「──────────」

 

ファリの言葉には答えないで、僕は友ちゃんによく似た女性に問いかける。

 

「その図面。魔方陣のものではありませんね?」

「そのとーり~♪よく分かったね」

 

十小節の分室(セフィラ・スコア)』とは、カバラ式魔術の極北で、十個の魔法陣を"生命の樹"の(カタチ)に繋ぐことで、その魔法を半永久的に持続させられるようになる、という特別な代物。

但し、少しでも扱いを間違えてしまえば、その莫大な魔力量に耐えきれず、"十小節の分室"は崩壊。詳細な記録は無いが、とにかく大惨事が起きる、と言われている。

 

「それを機械に組み込もうだなんて・・・・何をするつもりなんですか・・・・?」

「只の機械なんかじゃないよ~?」

 

そう言って奥からカートで運んできた水槽を見せびらかしてきた。水槽の中には黒い水が入っている────待って、この水、まさか・・・・・!?

 

「『邪気』・・・・ですね。瑛次様方がおっしゃる処の」

「なんだって!?」

 

やっぱりこの人が、昨今の邪気泥棒・・・・!

 

「よっこいしょ・・・・・これを見て!」

 

革手袋をはめた手で、水槽の邪気の中から何かを取り出すと、それを僕の目の前に見せつけてきた。

 

青鈍色の輝きを放つ黒い金属。これって────

 

「・・・・・ミスリル?それにしては、色が黒いけど」

「ぶっぶー!ちょっと違うんだな~♪まあ、これを発見したのって私だし、大赦もこれの存在を隠蔽してるみたいだから、知らないのも無理は無いけど・・・・」

 

大赦が・・・隠蔽?それほど危険だってこと?

 

「いったい・・・・これは・・・・?」

「ミスリルを邪気の中に漬け込むことで、ミスリルはその強度を増すの。物理的にも、魔術的にも、ね」

「ミスリルを邪気の中に漬け込むだって!?」

 

人が邪気に触れると、(程度の差はあれど)忌人化してしまう。

そうでなくとも物を妖忌化させたり、植物なんか枯らすどころか燃やしてしまう。

そんなものの中に、漬け込むだなんて・・・・!

 

「なるほど・・・・・ミスリルの持つ『邪気吸収』の特性が過剰反応を起こした結果、といったところですね」

「お、悪魔さんの方は理解があるね」

 

確かに、ミスリル金属には邪気を吸い取って内部に溜め込む特性を持っている。

けど、それだけで強度が上がるなんて・・・・・

 

「私はこの、強化されたミスリルを『オリハルコン』と名付けて、大赦で発表したの。これがあれば、人類は更なる発展を遂げるだろうと思って・・・・・でも、大赦の老害達は、私の研究成果を握り潰したのよ・・・・・・!!」

「え・・・・?」

「それだけに飽き足らず、私の仲間を"処理"した上、私を、大赦直属の研究室から追放までしたんだっ!!!」

「そんな・・・・事が・・・・・」

「─────おかしいですね?」

 

どういう、こと・・・・?

 

「たかが金属一つに、そこまでやるとは思えませんが・・・・?」

「大赦────いいえ、神樹は人間がオリハルコンを精製する事を良しとしなかったのよ。何故か分かる?」

「──────いいえ」

 

 

 

 

 

「かつて、勇者達が終末戦争時に用いた神威の武具。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「そんな・・・・そんなバカな!?」

 

終末戦争時に勇者様方が用いた武具は、神々がその力の一端を分け与えただけの物。

この人の語るオリジナルとはつまり─────

 

「現代人達が語る、神話の中に登場する数々の武器は全て、オリハルコン製だった。という訳ですか・・・・・」

「らしいよ」

「そして、貴女はそのオリハルコンを精製してしまったが為に、神の怒りを買ってしまった・・・・と」

「ほーんと、身勝手だよねぇ。カミサマって奴はさあ!!!」

 

怒りに任せて、女性が足下にあった機械を蹴飛ばした。

大赦から追放された科学者・・・・・あれ?それって確か、五年前にニュースで─────

 

「思い出した・・・・・貴女は、藍原(あいはら)友奈さんですね?大赦直属の『旧暦技術復興機関』に所属していた」

「あら、私のこと知ってるの?嬉しいなぁ」

 

知ってるも何も、僕が魔導技術に興味を持ったきっかけになった人なんだ。写真よりもだいぶ窶れてしまっていたから、気付けなかったけど・・・・忘れたりなんて、するもんか。

 

「僕、貴女の記事を読んで、魔導技術に興味を持ったんです・・・・『いつかこの技術で、人々に明るい未来を用意してあげたい』そう言っていた貴女は、いったい何処に行ってしまったんですか・・・・?」

「─────────そんなの、もう忘れちゃったよ」

「そんな・・・・・!?」

「それより・・・・・私の研究に、協力してくれるよね?」

「─────────」

「今更断るなんて、しないよね・・・・?」

「──────────瑛次様」

 

気づけば、後ろに沢山の人がいた。この人達は・・・?

 

「彼らも私と同じ。大赦に切り捨てられた人達だよ」

「───────ファリ」

「彼らの持つ拳銃やナイフ、()()()()()()()()()()()

「やっぱり・・・・」

 

この様子だと、もう既に藍原博士の仲間全員が、オリハルコン製の武器で武装しているのだろう。

流石、僕が憧れた人。大赦を追放されても、その科学力は健在ってわけだ。

 

「────────わかり、ました」

「うふふ、そうこなくっちゃ♪」

 

どのみち、今の僕には博士に従うより他に道が無い。

 

「・・・・・・ごめんね。友ちゃん」

 

どうか、僕よりも素敵な人に出会って、幸せになって下さい・・・

そんな、身勝手な事を祈りながら、僕は博士の後ろを着いて行く。

 




─オリハルコン─


神話の武器───通称『宝具』の素材となる特殊金属。
大量の邪気にミスリルを漬け込むことで精製できる。

ミスリルよりも耐久性が高く、武器の素材としてはオリハルコンの方が優秀。
しかしその分加工し辛く、発見当初は武器どころかインゴットの鋳造すら困難だった。
が、しかし………

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