鏑矢達の月光曲 -契約者達への鎮魂歌・外史典- 作:渚のグレイズ
葛葉と瑛次が行方不明になって、一週間が経過した。
二人の消息は依然として掴めず、シズさんと友奈は、少し窶れていた。
かく言う弥勒も、ここしばらく箸の進みが悪く、ほんの少し、体重が減った。
(正直、これには自分でも驚きだわ・・・・確かに、葛葉も瑛次も、弥勒にとってとても大切な人。それでも弥勒ならば、普段通りに振る舞えると思っていたのに・・・・)
血を分けた姉弟と、唯一弥勒の伴侶足り得る
「皆さ───ぐふっ!?げほっ・・・・げほっ・・・・」
「仁根ちゃん!?」
そんな時、訓練場に仁根が駆け込んで来たのだった。
しかし生来の身体の弱さ故に、訓練場に足を踏み入れた途端、咳き込んでその場にしゃがみこんでしまった。
「仁根、そんなに無理をしては駄目よ。それで、何があったの?」
「げほっ・・・・げほっ・・・・ごほっ!!ごほっごほっ!!!」
「仁根ちゃん、大丈夫・・・・?」
「一度落ち着きなさい。背中をさすってあげるから、それに合わせて深呼吸をするのよ」
「すぅ・・・・・はぁ・・・・・すぅ・・・・・はぁ・・・・・」
うん。平気そうね。呼吸も大分落ち着いてきた。
「それで仁根ちゃん、いったい何があったの?」
「今日は確か、シズさんと一緒だったはずよね?シズさんは─────」
と、その時。件のシズさんが訓練場に駆け込んで来た。
「アカナ!!ロック!!お役目の時間や!!!忌人が出おったで!!!!!!」
「なんですって!?」
「忌人が!?場所は何処なんですか!?」
「何処も何も、今─────」
一瞬後ろを振り返ったシズさんが、何かに気付いて弥勒達に向かって飛び込んで来る。
「
次の瞬間には、シズさんが立っていた入り口が粉砕され、馬面の奇っ怪な形状をした忌人が地面から現れたのだった!!
「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!」
「なっ・・・・!?」
「なに・・・これ・・・・?こんな忌人、見たことないよ!?」
「ウチかて、こんなん知らへん!せやけどな・・・・」
「忌人であるならば、弥勒達の敵よ!!はぁぁぁ!!!」
先ずは動きを封じる呪符を使用する。が、馬面の忌人には全く効果が無い様子。
「瑛次の呪符が効かない!?生意気っ!!」
「レンち下がって!てやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そこに友奈が割り込んで来て、忌人の馬面にパンチを決めた。流石友奈ね。
「怯んだ!今がチャンスや!!」
「言われなくとも!はぁぁぁぁぁぁ!」
尽かさず弥勒は『霊力刀』(瑛次作)を抜刀し、忌人に斬りかかった。
「!!!」
「くっ・・・・・浅いっ・・・・・!」
が、忌人は弥勒の剣筋を見切り、寸での所で回避してしまった。せいぜい切っ先が馬の鼻っ面を掠めた程度。
しかしそのおかげか、馬面にヒビが入り、右半分が砕け散った。
「仮面だったの・・・?」
馬の面の下に素顔が見える。いつもの、口なのか目なのかよく分からない顔だと思い、気にも止めなかったのだが─────
「─────────────にーさま?」
「・・・・・・・え?」
仁根の、その一言で、場の空気が、変わった。
「────────ホンマや」
「葛葉・・・・先輩・・・・・?」
葛葉の顔をした忌人は、素顔を庇うようにしながら、来た道を帰って行ってしまった。
「───────────────あり得ないわ・・・・・そんなの・・・・・・・なにかの・・・・・間違いよ・・・・・・・!」
目の前で起きた事実を認めたくなくて、思わず弥勒は、弥勒らしからぬ事を口走ってしまうのだった………