遊戯王部活戦記   作:鈴鳴優

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03.誇り高きシンクロ召喚

 翼との一件から数日。

 愛莉にデュエルを教える場所は相変わらずデュエループの事務所であった。

 そのメンバーに翼が増え悠の教えに翼が反論し言い合いになって愛莉が慌てふためいたりなど慌しい日々になりつつあるのだが、今日はそうではなかった。

 

 なにせこの店の店長である銀次が用事により出かけてしまったために悠が店番をすることになった。現在、店の奥では翼と愛莉だけでデュエルを教えており悠はただレジ前のカウンター席に座っているのだが

 

「暇だ」

 

 今日は土曜日と休日なのに暇だった。

 遊戯王が世界に普及されてからはとにかくカードショップが繁盛し莫大な利益を出し始めてからはカードショップは忙しいものなのだがデュエループのような小さなカードショップは客足が少ない方だった。

 カードを買いに来る客が限りなく少なく大体は無料で利用できるフリースペースで対戦相手を探して来る人ばかりであった。学校が休みということもあり多くの学生が集まっていては盛り上がりを見せていてカードを買いにくる客がいない悠はそれを遠巻きに見ているだけだ。

 

「…………」

 

 退屈で眠くなってきた。

 もうこのまま眠ってしまってもいいかなと瞼が落ち始めうとうととしてきた瞬間、突如背後から凄まじい衝撃が走ったのだ。

 

「っ、痛ぁ!?」

「なに店員が居眠りしようとしてんのよ?」

 

 翼が冷ややかな視線で悠を見ていた。

 彼女の右手は手刀の構えをしておりどうやら悠は彼女のチョップを後頭部からお見舞いされたみたいだ。翼の後ろから愛莉が少し困ったように笑っていた。

 

「あはは、翼ちゃん暴力はさすがに駄目だよ。でも悠くんもお仕事の最中に眠っちゃうのもだめだからね」

 

 翼をなだめながらも悠もさりげなく注意される。手刀を受けた場所をさすりながら悠は二人を見て聞いた。

 

「そっちはどうなんだ?」

「まあ、一段落し終えたからこっちに来たのよ。ちゃんと仕事してるか見てみようかと思ったけど……まあ、案の定居眠りしようとしていたのだけどね」

 

 それは間の悪いことだろう。

 とはいえ、彼女らが事務所に入ってからおよそ2時間が経過されていた。

 休憩をするには十分なほどやったのだろう。

 

「それにしても愛莉。飲み込みが早いよね。それならもう実際にデュエルしてみてもいいんじゃないかしら?」

 

 なんて提案がされるが

 

「あはは、でもわたしにはまだ早いと思うよ」

 

 愛莉は苦笑いをうかべる。

 そういえば彼女自身、デッキを持っているとも聞いたことがないなと悠は思いうかべる。デッキを持たない状態で適当に組んだものを使ったとしてもそれは決闘者として大した強さは発揮できないだろう。 

 

 そんな会話が繰り広げられる中、決闘盤を行ってのフリースペースから凄まじい歓声が沸いた。

 

「おっ……これで5連勝目か」

 

 歓声の方を向いた悠はつぶやく。

 一体、何事なのかと見ていた翼と愛莉だが翼は悠がつぶやいた言葉と同じ言葉を使って何なのだと聞き返した。 

 

「5連勝?」

「なんか勝ち抜き戦みたいなルールでやっているみたいなんだ。それで今、5連勝中」

 

 正直、カードショップのフリースペースを独占するのは注意すべきことだ。

 だがそれらを利用するお客が楽しめてかつ納得しているのなら止める理由もなかった。

 

「へぇ……結構やるってことね」

 

 それにしても5回連続で勝てるということは相当な実力者なのだろう。

 どんな人物なのかと注視していたら、人垣の奥から小柄なロングヘアの少女の高笑いが聞こえた。

 

「あーはっはっはっはぁー!!」

 

 その少女は片腕に決闘盤をつけたまま両手を腰にあてつつフリースペースの中心でただただ笑うだけだった。その傍らにはなんか慌てふためいている少年の姿も見える。少女は天井を見上げるかのように視線を上へと向けつつ大きな声で吼える。

 

「弱い弱すぎるぞ!! この王見葉月(おうみはづき)の前には有象無象しかおらんのか!」

「ちょっと葉月ちゃん! さすがにその言い方は失礼過ぎだよ!」

 

 吼える少女にそれを必死に止めようとする少年。

 それをまったく気にも止めずにスルーする葉月と呼ばれる少女。

 

「…………」

 

 一体、アレは何のパフォーマンスなのかとたたただ言葉も無く見つめる悠と愛莉と翼の3人だった。とりあえず一番最初に口を開いたのは翼だった。

 

「何……あのやけに尊大な感じのお子様は?」

「現在5連勝中の強者だよ」

 

 まさかあんな馬鹿そうな笑いを浮かべる人物が連勝中なんて。

 ちなみに現在進行形で少女は高笑いをやめず、少年はそんな彼女を止めようとしているのだがどうにも聞く耳持たずの様である。

 そんな少女は、連勝で調子付いたのかさらに言葉は酷くなる。

 

「それにしても先ほどのエクシーズ使いも呆気ないものだったな」

「……っ!?」

 

 少女の言葉にピクリと反応するエクシーズ使いの翼。

 

「脅威も感じることも無くただ潰されるだけだとは、エクシーズは負け犬の召喚法でしかないな。やはり誇り高きシンクロ召喚こそが至高!」

 

 エクシーズ召喚に対して酷い罵倒だった。

 愛莉は『あわわ』と口元を押さえて不安そうな様子を見せる。翼の反応が怖いのだが、彼女は怒りどころかむしろニッコリと笑っていたのが余計怖さを増していた。

 

「……ちょっと待ってて二人とも。あのお子様をわからせてくるから」

「え、えっと……翼ちゃん?」

「大丈夫。大丈夫よ愛莉。ちょっとデュエルするだけだから」

 

 あ、これは完全にド怒りだと愛莉は理解した。

 下手に止めようならどうなるかわからない。だからでこそ愛莉は

 

「ほ、ほどほどにね……」

 

 と、言葉をかけて見送るしかなかった。

 

「ふふふ、次の挑戦者は誰だ!」

 

 フリースペースの中央で連勝中の少女はもう高笑いは気の済むまでやったのか、さらなる対戦相手を求めていた。そこに上がるのはエクシーズ召喚を貶されて怒りのあまり笑顔になってしまった翼。彼女は決闘盤を構えてすでにやる気満々だ。

 

「私がやらせてもらうわ!」

「ふん、いいだろう」

 

 少女もまた決闘盤を構える。

 ここからデュエルが始まる……と、思ったのだがその前に翼は対戦の前に怒りを落ち着かせたのか表情を戻し少女に問う。

 

「あんた、エクシーズ召喚が負け犬の召喚法って言ったよね?」

「言ったとも! シンクロ召喚こそが至高、それ以外は有象無象でしかない!」

 

 言った。言い切った。

 エクシーズ使いの前に言ってしまった。

 

「わかったわ! あんたをぶっ倒してわからせてやるから!」

「ふん! いいだろうかかってくるが良い!」

 

決闘(デュエル)!!』

 

 先攻は葉月と呼ばれていた少女。

 

「まずは《緊急テレポート》を発動しデッキから《サイキック・リフレクター》を特殊召喚。効果により手札に加えた《バスター・ビースト》を捨て加えた《バスター・モード》を公開することで捨てた《バスター・ビースト》をレベル3上げ蘇生する」

 

 

《サイキック・リフレクター》

☆1/闇属性/サイキック族・チューナー/DEF300

 

《バスター・ビースト》

☆4→7/地属性/獣戦士族/DEF1200

 

 葉月はまず手札1枚から流れるようにカードを展開していき場にモンスターを並べ、サーチを行いレベルを操作する。相手のデッキの情報はわからないが先ほどから高笑いで『誇り高きシンクロ召喚こそ至高』と断言しているほどなのだからシンクロ召喚メインなのだろう。

 

 そして、相手の場にはチューナーとレベルを操作されたモンスターが存在する。

 

「いきなり来るのね」

「無論! 葉月はレベル7となった《バスター・ビースト》にレベル1の《サイキック・リフレクター》をチューニング! 我が魂《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》をシンクロ召喚!」

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》

☆8/闇属性/ドラゴン族/ATK3000

 

 《サイキック・リフレクター》が1つの緑の輪となり《バスター・ビースト》を包み込む。7つの星と1つの星、それぞれが直線へと列を繋ぎ光が弾けた瞬間、溢れ出る炎より出現するのは悪魔の名を持った傷だらけの竜だ。

 

「レッド・デーモン……」

「まだまだ! 葉月は《チェーン・リゾネーター》を通常召喚し効果によりデッキから《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚。そしてレベル8の《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》に《チェーン・リゾネーター》をチューニング! 進化せよ我が魂、レベル9《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》!!」

 

《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》

☆9/闇属性/ドラゴン族/ATK3200

 

 シンクロ召喚したモンスターを素材とし新たなるシンクロ召喚を行っていく。竜は力を増大させその身を進化させたのだ。

 

「続けてレベル9《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》にレベル1《シンクローン・リゾネーター》をチューニング! 超越せよ我が魂、レベル10《琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル》!!」

 

《琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル》

☆10/闇属性/ドラゴン族/ATK3500

 

 進化は止まらずさらには魔王の名を持つ竜へと成る。

 

「墓地へ送られた《シンクローン・リゾネーター》の効果で《チェーン・リゾネーター》を回収し、手札から《クリエイト・リゾネーター》を特殊召喚しベリアルの効果でリリース、《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》を蘇生させる!」

「アビス……やっぱり場に残してきたわね」

 

 翼は顔をしかめる。

 アビスと呼ばれたあのモンスターは相手の場のカードを1ターンに1度、効果を無効にさせる効果を相手ターンでも使用できるのだ。加えて高い攻撃力を持つあれを突破するのは難しいだろう。

 

「それだけでは無いぞ! 手札から《復活の福音》を発動し墓地の《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》をも復活させる!」

「っ……!?」

 

 さらに最初に素材になった傷だらけの竜までもが場に戻る。

 これで葉月の場にはシンクロモンスターの竜が3体並ぶことになったのだが、おそろしいのはこれに加え《復活の福音》が墓地へと送られたことだ。《復活の福音》は墓地にある時、墓地から除外することで1度ドラゴン族の破壊を無効にできるという効果を持つ。

 予想以上の布陣の展開に翼は厄介だ、と表情をしかめる。

 

「さらにカードを2枚伏せ、葉月はこれでターンエンドだ」

 

 葉月 LP8000 手札1

 

①レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト

②琰魔竜レッド・デーモン・アビス

③琰魔竜レッド・デーモン・ベリアル

 

 □□■■□

 ①□②□③ 

  □ □

 □□□□□ 

 □□□□□ 

 

 翼 LP8000 手札5

 

 相手の場には3体の攻撃力3000をも超える超級モンスターたち。さらにレッド・デーモン・アビスの効果で1度カード効果を無効にされ破壊しようにも墓地の《復活の福音》で防がれてしまう。

 

 成程、連勝するほどの実力なわけだと翼は思考する。

 

 まず葉月が伏せた2枚のカード。

 それの1枚は不明だが、片方はサーチした《バスター・モード》だろう。そして葉月の残り1枚の手札も墓地から回収した《チェーン・リゾネーター》。この布陣さえ突破できれば十分に勝てると彼女は踏んだ。

 

「行くわ! まずは《RR-バニシング・レイニアス》を通常召喚し効果発動。手札からRRモンスターを場に出すけど何かあるかしら?」

「いや……構わん」

 

《RR-バニシング・レイニアス》

☆4/闇属性/鳥獣族/ATK1300

 

 翼は内心、心の中で舌打ちした。

 ここでレッド・デーモン・アビスの効果を使ってくれれば儲けものだったのに、と。どうやら葉月は真っ向から迎え撃つつもりらしい。随分と強気だった。

 

「なら、手札から《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚し《RR-ネスト》を発動! 2枚目のバニシング・レイニアスを手札に加え、2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚、ランク4《RR-フォース・ストリクス》!!」

 

《RR-フォース・ストリクス》

★4/闇属性/鳥獣族/DEF2000

 

 翼がメインとするエクシーズ召喚を成功させる。それを見ては葉月はくすりと笑った。

 

「やはりエクシーズ使いか……いいだろうシンクロ召喚こそが至高だと教えてやる!」

「その言葉、いつまで言えるかしらね? まずはフォース・ストリクスの効果で素材を取り除きデッキから2枚目のバニシング・レイニアスを手札に加えて、さらに墓地へ送られたファジー・レイニアスの効果も使い同名カードを手札に加え《闇の誘惑》でファジー・レイニアスを除外する」

 

 デッキを回転させていく。

 これでエクシーズ召喚を行ったにも関わらず手札枚数はメインフェイズ開始時と同じ6枚となった。

 

「《RUM-レイド・フォース》を発動! 場のフォース・ストリクスをランクアップさせる! ランクアップエクシーズチェンジ! 《RR-ブレイズ・ファルコン》!!」

 

《RR-ブレイズ・ファルコン》

★5/闇属性/鳥獣族/ATK1000

 

 フォース・ストリクスは炎へと身を包み真紅のボディを持った隼へと成る。未だ動きを見せない葉月は「ふん」と鼻で笑った。

 

「撃ち堕とす! ブレイズ・ファルコンの効果で素材を1つ取り除き相手の特殊召喚されたモンスターを全て破壊する!」

 

 RRと呼ばれるモンスターたちは全体的に攻撃力は決して高く無い方だ。対する葉月は高打点のモンスターを並べる戦術を駆使する。ならば戦闘に頼らず効果にて破壊するのがもっとも効率的なのだろう。

 

 だが、翼はそれが通用しないことは理解している。相手にはそれを防ぐ手段があるからだ。まずは先に防ぐ手段から潰していくために効果を使うのだ。

 

(さあ、アビスか福音か……どっちを使うのかしら)

「させるわけが無いだろう! 罠カード《デモンズ・チェーン》を発動しブレイズ・ファルコンの効果を無効にする」

「ちっ……《デモンズ・チェーン》を伏せていたのね」

 

 誤算だった。

 相手の手は2枚だけでなく3枚。

 けれど、これで逆に相手の伏せも手札も全て判明し動きやすくなったのだ。まだ手も足も出なくなったわけではない。

 

「手札の《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》を捨て場のブレイズ・ファルコンをランクアップ! さあ焼き尽くしなさいランク6《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》!!」

 

《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》

★6/闇属性/鳥獣族/ATK2000

 

 戦闘機とも見間違える機械仕掛けの鳥が飛翔する。攻撃力は2000といまだ葉月の竜に勝ち目は無いものの、翼はさらに相手モンスターの除去を試みる。

 

「エアレイドの効果! エクシーズ召喚に成功したことで相手のモンスター1体を破壊し攻撃力分のダメージを与える。《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》を対象とする!」

「墓地の《復活の福音》を除外し破壊を無効とする」

 

 戦闘機の如く頭上から大量の爆弾を降らす爆撃を淡く光るバリアがレッド・デーモン・アビスの身を守った。これにより破壊は失敗に終わりダメージを与えることすらできない。

 

「けど、使わせた……墓地の《RUM-レイド・フォース》と手札の《RR-バニシング・レイニアス》を除外し捨てた《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》をライフを半分払い発動!」

 

翼 LP8000→4000

 

 豪快にも初期ライフ丸々の半分、4000をも支払う博打に出た。これにより墓地のRRエクシーズモンスターを特殊召喚しランク2つ上げ進化させることができるのだ。

 

 このタイミングで大量のライフを支払う行為。

 これは間違いなく大逆転の一手を放つためだろうと踏んだ葉月は動き出す。

 

「ならばそれは無効だ! 《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》の効果により《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》を無効にする。ふははっ、ライフを無駄に使っただけだな」

 

 レッド・デーモン・アビスの吹くブレスにより《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》のカードは塵と化してしまった。これにより新たなモンスターを呼び出すことは失敗に終わってしまったものの、これで葉月の防ぐ手は全て無くなったのだ。

 

「まったく、ここまでしなきゃならないなんてね……けれど、これで準備は全て整った! 《ラプターズ・アルティメット・メイス》をエアレイドに装備させ攻撃力を上げてバトルフェイズ!」

 

《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》

ATK2000→3000

 

 攻撃力が上昇しその数値は3000と《レッド・デーモズ・ドラゴン・スカーライト》と並ぶ。バトルフェイズに入り狙いは勿論、攻撃力で適わぬ相手では無く互角の相手。

 

「エアレイドでスカーライトに攻撃するわ!」

「ふん、相打ち狙いか。だがそれは無駄だ! 《バスター・モード》を発動させ《レッド・デーモズ・ドラゴン・スカーライト》を進化させる!」

 

 起動されるのはサーチされたカード《バスター・モード》。その効果は一定のモンスターをリリースさせることによってデッキからより強力になったモンスターを呼び寄せるものだ。ただ、これを待っていたといわんばかりに翼はあるカードを発動させる。

 

「なら私は手札からライフを半分支払い《レッド・リブート》を発動させる! この効果で《バスター・モード》は無効! そしてセットされ直しデッキから罠カードをセットしなさい!」

 

 翼 LP4000→2000

 

 さらにライフを支払い発動させるのは罠カードを無効にさせるカウンター罠カード。この効果によりモンスターを呼び出すことは失敗。ただコストとして《レッド・デーモズ・ドラゴン・スカーライト》をリリースしただけで終わった。

 

「ぐ……葉月は《戦線復帰》を伏せる」

「さて、これでまず1体目。攻撃対象を失ったことで《RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド》で攻撃対象を《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》に変更するわ!」

 

 まず1体目のドラゴンは排除することに成功した。そして次は、と選ぶように攻撃対象としたのは攻撃力3000となっているエアレイドに対し3200のアビスなのだ。攻撃力がわずかに足りないというのに攻撃を行い特攻を行う。

 

「だが、返り討ちだ!」

 

 攻撃力の劣るエアレイドでは勝てるはずも無く炎を纏った拳を叩きつけられエアレイドは墜落する。

 

翼 LP2000→1800

 

「けれどレヴォリューション・ファルコンはもう1度、飛翔できる! エアレイドは相手によって破壊された時、EXデッキから《RR-レヴォリューション・ファルコン》を特殊召喚するわ!」

「それにチェーンし戦闘ダメージを与えた《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》の効果で墓地から《サイキック・リフレクター》を特殊召喚する!」

 

《RR-レヴォリューション・ファルコン》

★6/闇属性/鳥獣族/ATK2000

 

「特殊召喚した《サイキック・リフレクター》の効果でデッキから2枚目の《バスター・ビースト》を手札に加える」

「構わないわ! バトルフェイズは続行! レヴォリューション・ファルコンで《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》へと攻撃!」

 

 蘇る革命の翼が攻撃を行う。

 それは炎に身を纏い葉月の竜へと突撃を行うのだが、攻撃力は先ほどよりも下がり2000となっている。本来ならば勝ち目は無いのだが、ここでレヴォリューション・ファルコンの効果が発動される。

 

「ダメージステップ開始時にレヴォリューション・ファルコンの効果発動! 戦闘する特殊召喚されたレッド・デーモン・アビスの攻守を0にする」

 

《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》

☆9/闇属性/ドラゴン族/ATK3200→0

 

 レッド・デーモン・アビスが無力化される。

 これによりレヴォリューション・ファルコンの攻撃力が上回り突撃し悪魔竜の一体を撃ち貫いたのだ。これで2体目。先ほどのリリースと違い破壊される自分のドラゴンを見て葉月は恨めしそうな視線を翼に向けた。

 

「ぐ……よくも葉月のモンスターを!!」

 

葉月 LP8000→6000

 

「けど、これで終わりじゃないわ! メイン2にレヴォリューション・ファルコンのもう1つの効果を使う。エクシーズ素材を持っている時、相手の場のモンスター1体を破壊し攻撃力の半分のダメージを与える。ベリアルを破壊!」

 

葉月 LP6000→4250

 

 追撃をしかける様に、エアレイドは飛翔し大量のミサイルの雨を降らし魔王の名を持つ悪魔竜を爆撃した。もはや防ぐ術が無いベリアルは大量のミサイルを受け爆裂四散してしまったのだ。

 

「ぐぬぬ……」

「私は《貪欲な壷》を発動してデッキのモンスター5枚を戻して2枚ドロー。そして1枚伏せてターン終了」

 

 《貪欲な壷》で戻されるのは、《RR-バニシング・レイニアス》《RR-ファジー・レイニアス》《RR-フォース・ストリクス》《RR-ブレイズ・ファルコン》《RR-レヴォリューションファルコン-エアレイド》の5枚。それらを墓地からデッキへと戻され新しくカードを引く。

 

 これで葉月の場には《サイキック・リフレクター》と対象を失った《デモンズ・チェーン》のみ。モンスターを全滅とはいかなかったものの葉月の場に存在していた3体の強力なシンクロモンスターを除去できたのだから戦果としては十分すぎるほどだろう。

 

 葉月 LP4250 手札2

①サイキック・リフレクター 守

①デモンズ・チェーン(対象:無し)

 

 □□②■□

 □□①□□ 

  □ □

 □□③□□ 

 ■□□□□ 

 

 翼 LP1800 手札1

③RR-レヴォリューション・ファルコン 攻

 

「葉月のターン! もう1度手札の《バスター・ビースト》を捨て《バスター・モード》を手札に加えて公開! 《サイキック・リフレクター》の効果で《バスター・ビースト》をレベル7にして蘇生させる!」

 

 1ターン目と同じ流れでレベル7と1のモンスター。非チューナとチューナーが揃う状況を作り出した。またこれでシンクロ召喚で呼び出せるレベルは8。数あるレベル8シンクロモンスターの中から葉月はまた『あの』モンスターを呼び寄せる。

 

「もう1度だ! レベル7の《バスター・ビースト》にレベル1の《サイキック・リフレクター》をチューニング! 再び現れろ我が魂《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》!!」

 

 蘇るように出現する2枚目の《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》。同じパターンで同じモンスターを蘇る。葉月にはまるでこのカードへ執着しているかのようにも見える。もっとも、現在の状況においてスカーライトの効果は十分に発揮できる。

 

「スカーライトの効果だ! このカード以下の攻撃力を持つ特殊召喚されたモンスターを全て破壊し破壊した数×500のダメージを与える! くたばれ! レヴォリューション・ファルコン!」

 

 戦闘において特殊召喚されたモンスターの攻守を問答無用で0にするという強力な効果を持つモンスターとはいえ効果破壊には弱い。スカーライトは地面へと拳をたたきつける瞬間、地面よりあふれ出る炎がレヴォリューション・ファルコンを襲いかかる。その瞬間、伏せられていた1枚のカードが表となる。

 

「ならこの効果にチェーンにして《RUM-レヴォリューション・フォース》を発動! この効果でレヴォリューション・ファルコンをランクが1つ上に上げる! ランクアップエクシーズチェンジ! 現れなさいランク7《RR-アーセナル・ファルコン》!」

 

《RR-アーセナル・ファルコン》

★7/闇属性/鳥獣族/ATK2500

 

 破壊される瞬間、RRモンスターを進化させる。しかし、《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》の効果は止まらない。

 

「ふん! モンスターをランクアップさせたところで所詮は攻撃力2500。スカーライトの効果の範囲内だ!」

 

 スカーライトの効果は自身の攻撃力以下を全て破壊するという効果。葉月の言う通りランクアップさせ別のモンスターへと変えたところで攻撃力はスカーライトを下回っているために破壊効果を受け付けてしまう。そのまま溢れる炎に包まれてはアーセナル・ファルコンは焼き尽くされ飛び火が翼へも襲った。

 

翼 LP1800→1300

 

 だが、翼の狙いは別にあった。

 

「知らないの? アーセナル・ファルコンは『RR』モンスターを素材としている状態で墓地へ送られればEXデッキから新しい『RR』モンスターを呼び出せる。現れなさい《RR-エトランゼ・ファルコン》! そして墓地のアーセナル・ファルコンはエトランゼのエクシーズ素材となる」

 

《RR-エトランゼ・ファルコン》

★5/闇属性/鳥獣族/DEF2000

 

 翼の狙いは後続を残すこと。

 これによりキャノン砲を備えた機械仕掛けの隼が翼の場に出現する。もう残りライフ1300しかない翼において下級モンスター1体の直接攻撃でさえ危ういこの状況を凌ぐための手段とも言えた。

 

「所詮場にモンスター1体を残したところで何になる? 《チェーン・リゾネーター》を通常召喚しその効果によりデッキから《シンクローン・リゾネーター》を特殊召喚! そしてレベル8のスカーライトにレベル1の《シンクローン・リゾネーター》をチューニング! 再び現れろ《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》!」

 

 守りを固める翼に対し攻めの姿勢を見せる葉月が見せる次のプレイはまたしてもスカーライトをさらに強力なモンスターへと進化せることだった。フィールドのあらゆる効果を無効にできる凶悪なモンスター《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》が再び姿を見せる。

 

「だが! それだけでは終わりではないぞ! シンクロ素材になった《シンクローン・リゾネーター》の効果で墓地の《クリエイト・リゾネーター》を手札に戻し《戦線復帰》を発動! 墓地からスカーライトを蘇生し再び効果を発動する! エトランゼ・ファルコンも撃破だ!」

 

 先ほどの《レッド・リブート》の効果で伏せられた罠カードの効果により墓地へと送られたスカーライトが守備表示で蘇生させられる。効果の発動に表示形式は関係なく再び攻撃力がスカーライトよりも低いエトランゼ・ファルコンを破壊するのだ。

 

翼 LP1300→800

 

「まだまだ! エトランゼ・ファルコンも相手によって破壊された場合、墓地から『RR』エクシーズモンスターを呼び出せる。再びアーセナル・ファルコンを場に出し破壊されたエトランゼ・ファルコンはエクシーズ素材となる」

 

 効果によりダメージは受けつつも葉月の攻めをいなすかのように受けながら後続を絶やさない。さらに場に戻した《RR-アーセナル・ファルコン》はまたしても『RR』素材を持っているために墓地へ送られれば後続をさらに出すことができる。それはまるでループするかのようだった。

 

「成程。これでいつまでも耐えられるか。葉月は手札の《クリエイト・リゾネーター》を特殊召喚する」

 

《クリエイト・リゾネーター》

☆3/風属性/悪魔族・チューナー/DEF600

 

 翼の後続を残すコンボはEXデッキのエトランゼ・ファルコンの数までしかループは行われないのだ。特にランクアップを重ねるデッキでEXデッキを圧迫させてしまうために3枚積みしてるかも怪しい。少なくともなくなるまで攻めれば良い話だ。

 

 だが葉月も馬鹿ではない。

 このコンボは確かに守るのに最適だがアーセナル・ファルコンで出て来るのがエトランゼ・ファルコンのみとは考えない。この攻めを逆手に取り一発逆転のカウンターを狙えるRRモンスターが存在することも知っている。

 

 故に、葉月の次の一手は

 

「ならこいつだ! レベル8のスカーライトにレベル1の《チェーン・リゾネーター》とレベル3の《クリエイト・リゾネーター》をダブルチューニング! さあ限界に至れ! レベル12《琰魔竜レッド・デーモン・カラミティ》!!」

 

《琰魔竜レッド・デーモン・カラミティ》

☆12/闇属性/ドラゴン族/ATK4000

 

 2体のモンスターが光の輪では無く炎の輪へと変化を果たしスカーライトを包み込む。直線に並ぶ星の数は12。モンスターのレベルの限界値であり頂点。大きな災難の意味を有する最強の竜が出現した。

 

「カラミティのシンクロ召喚成功時のターンに貴様はフィールド場でカードを発動できずさらにこのカードは戦闘破壊したモンスターの元々の攻撃力のダメージを相手に与える! いくら壁で防いだところで風前の灯のライフを削ればいいだけのこと!」

 

 翼の残りライフはたった800。

 これではアーセナル・ファルコンを戦闘破壊されることで2500のダメージを受けて翼は敗北してしまう。

 

「バトル! カラミティでアーセナル・ファルコンを攻撃!」

 

 強大な4本の腕を持つ竜が吐くブレスを吐こうと息を吸い込む。この攻撃が通れば翼が敗北すると言う最中に、一筋の光が直線を描きカラミティへと進むのだった。

 

「この攻撃は通さないわ! 手札の《RR-ブースター・ストリクス》の効果を発動! このカードを除外し攻撃モンスターを破壊する!」

 

 それはフィールドの効果の発動を許さないカラミティが及ぶことのない手札からの発動。加えて場の隣に存在するアビスもまた手札から発動されたのでは無効にすることもできず、効果破壊耐性を持たないカラミティは奇襲の一撃を受けては破壊されてしまった。

 

「ぐぬっ……生意気なっ! カラミティが破壊されたことでレベル8以下のドラゴン族・闇属性のシンクロモンスターであるスカーライトを蘇生させる!」

 

 優勢だったはずが、一気に追い込まれた気分だった。

 翼の場にはたった1体のエクシーズモンスター《RR-アーセナル・ファルコン》がいるだけなのに、その壁がずっと高い壁に見えてしまうのだ。それも破壊した瞬間にEXデッキから新たな『RR』を呼び出す効果。葉月の場のアビスもスカーライトも強力だが、それらを超えてくるモンスターが存在するのだ。

 

 ここは攻撃しないで守りに徹するのが懸命なのだろう。

 

 だが、

 

「葉月は! 葉月は『王者』になると決めたのだ! ここで引くわけにはいかない! スカーライトでアーセナル・ファルコンに攻撃!」

 

 何が葉月を突き動かすのか、理屈ではなくただ己の心の叫ぶままに攻撃宣言を行うのだ。傷だらけの竜が炎を纏った拳を付きたてアーセナル・ファルコンを破壊する。この瞬間、アーセナル・ファルコンの効果が起動する。

 

「アーセナル・ファルコンの効果! EXデッキから現れなさい究極の隼! 《RR-アルティメット・ファルコン》を特殊召喚しアーセナルはエクシーズ素材となる!」

 

《RR-アルティメット・ファルコン》

★10/闇属性/鳥獣族/ATK3500

 

 現れるは究極の名を持つ隼。その攻撃力はアビスやスカーライトを超える3500でありあらゆる効果を受け付けない効果を持つ。そのモンスターを前に現在の葉月のモンスターでは成す術がないのだ。

 

「くっ、葉月はカードを2枚伏せてターン終了」

「このエンドフェイズにアルティメット・ファルコンの効果が発動するわ! あんたのモンスターたちは全て攻撃力を1000下げる!」

 

《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》

ATK3200→2200

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》

ATK3000→2000

 

 葉月 LP4250 手札0

①琰魔竜レッド・デーモン・アビス 攻

②レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト 攻

③デモンズ・チェーン(対象:無し)

 

 □□③■■

 □□①□② 

  □ □

 □□④□□ 

 □□□□□ 

 

 翼 LP800 手札0

③RR-アルティメット・ファルコン

 

「さてこのターンで撃ち堕とすわ! 私のターン! アルティメット・ファルコンの効果発動。エクシーズ素材を取り除いて相手モンスターの攻撃力を1000ダウンさせカードの発動をできなくさせる!」

「ぐ……《バスター・モード》を発動する! スカーライトをリリースしデッキから《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》を特殊召喚」

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》

☆10/闇属性/ドラゴン族/DEF2500

 

 効果の発動ができなくなる前にと葉月は負けじとスカーライトを新たなモンスターへと変質させる。それでもこれは迎え撃つというよりも攻撃から身を守るためなのか守備表示だ。そのままアルティメット・ファルコンの効果により葉月のモンスターは攻撃力が下がりあらゆるカードの発動が封じられた。

 

《琰魔竜レッド・デーモン・アビス》

ATK2200→1200

 

《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》

ATK3500→2500

 

「そして《RR-トリビュート・レイニアス》を通常召喚しデッキから《RR-ファジー・レイニアス》を墓地へ送りその効果で手札に加えて特殊召喚する」

 

《RR-トリビュート・レイニアス》

☆4/闇属性/鳥獣族/ATK1800

 

《RR-ファジー・レイニアス》

☆4/闇属性/鳥獣族/DEF1500

 

 そうして翼はさらにモンスターを並べる。ファジー・レイニアスは前のターンで2枚使用して1枚は除外しもう1枚はエクシーズ素材となったものの《貪欲な壷》でデッキに戻したために使いまわすことができた。

 

「私はレベル4のトリビュートとファジーでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! ランク4《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》!」

 

《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》

★4/闇属性/鳥獣族/ATK1000

 

 現れるのは攻撃力たった1000の新たな隼。そのモンスターこそが最後の決め手だった。

 

「ブレード・バーナー・ファルコンは私のライフが相手の差が3000以下の場合、攻撃力を3000上昇させる!」

 

《RR-ブレード・バーナー・ファルコン》

ATK1000→4000

 

 瞬間、ブレード・バーナー・ファルコンは燃え上がり攻撃力は一瞬にして場のどのモンスターよりも高く上昇したのだ。これで準備は整ったのだと攻撃の宣言を行う

 

「さあ、バトルフェイズよ! ブレード・バーナー・ファルコンでアビスに攻撃!」

 

葉月 LP4250→2450

 

 超攻撃力を持った隼は弱体化し果たした竜へと突撃し撃ち貫く。大きなダメージを与えたのだが、このターンで終わらせるつもりの翼はそれだけで済ますはずがない。

 

「ブレード・バーナー・ファルコンが戦闘破壊を行った時、素材を1つ取り除くことで《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》を効果で破壊する」

「ぐぬ……」

 

 戦闘破壊に効果破壊で葉月の場のモンスターを焼き尽くす。本来《レッド・デーモンズ・ドラゴン/バスター》には破壊されることで《レッド・デーモンズ・ドラゴン》を墓地へと戻す効果がありそれで壁にすることができるはずなのだが、アルティメット・ファルコンの効果の前に発動ができずに壁すら残せなかった。

 

「さあ、これで終わり! アルティメット・ファルコンでダイレクトアタック!」

 

 最後の守りを破壊し尽くされ葉月のモンスターはゼロ。

 手札もゼロ。場に伏せていた《王魂調和》も発動することが許されずに身を守る手段も術も持たない葉月はただ翼の最後の攻撃を見ていることしかできずにいた。

 

「嫌だ。葉月は……負けたくなんてないのに……」

 

葉月 LP2450→0

 

 残りのライフを全て奪いつくし機械音と共に翼の勝利が決定した。瞬間、観客たちからの歓声が沸き翼は「どうよ」と呟いた。そのまま敗北し項垂れる葉月の前に立ち

 

「どう? これでも、まだエクシーズが負け犬なんて言えるかしら」

「……」

 

 まだエクシーズを馬鹿にされたことを気にしているのか意地悪な質問をする。敗者に対してもはや否定することができない質問だ。なのだが、葉月は項垂れて視線を合わせない。

 

 途端──

 

「うっ……ぐすっ、葉月はまだ負けてない次やれば勝つのは葉月なのだから」

「って、ちょっと泣いてんの!? なんか私が悪いみたいじゃない!」

 

 敗北し葉月はぐすりと涙を流していた。

 そこにフリースペースに上っていた愛莉が一言。

 

「翼ちゃん。確かにあの子も口が悪かったけど、翼ちゃんも翼ちゃんで子供相手に大人げないよ!」

 

 愛莉に叱られてしまった。

 翼は反論できずに「うぐ」と言葉を飲むだけだ。なのだが、泣きじゃくる葉月は『キッ』と愛莉を睨んだ。

 

「葉月は子供では無い! 15歳だ! 高校生だ! 遊凪高校に通っている!」

『えっ……!?』

 

 葉月の言葉に愛莉と翼は口を開けて驚いた。

 何せ彼女を背が小さいからと言って小学生ぐらいかと思ったら同い年だったのだから。

 しかも同じ学校という情報とのオマケ付き。

 

「覚えていろよ! 今度、あった時にはぎゃふんと言わせてやるからな」

 

 と、涙をふいて捨て台詞を投げて不機嫌そうにドカドカとわざと地面を叩くように歩きこの場を去っていく。その時、傍らにいた男の子が申し訳なさそうに二人の前に立った。

 

「気を悪くさせてしまったらごめんなさい! でも葉月ちゃんは本当は悪い子じゃないんです!」

 

 ペコペコと頭を下げその後「失礼します」と言いつつ「待ってよ葉月ちゃん!」と言いながら彼は葉月の元へと追いかけるように走っていきそれを見送って行った。

 

 いったいあの二人は何だったのだろうか。

 

 フリースペースは勝ち抜けのため続けて翼が勝負をすることもできるのだが、翼はこれ以上デュエルするつもりも無く抜けて、他の二人がフリースペースに入るって行く。そうして愛莉と翼は悠のいるカウンターへと戻った。

 

「勝ったんだね」

「まあ、当然の結果よ」

 

 と自信満々の翼。

 実は図太さではあの葉月と良い勝負なのかもしれない。

 

「それにしても翼ちゃん。さっきのデュエルも凄かったよ。とっても格好良かった!」

「そ、そう……ありがと」

 

 なんてやり取りをしていたら用事で出ていた店長である銀次が帰ってきた。

 

「帰ったよ。いやいや町内会の用事でね……僕もこんな性格なせいでね割と面倒な仕事を押し付けられちゃったりするもんだよ。留守番ありがとうね」

 

 たはは、と苦笑してしまう銀次。

 

「おや……愛莉ちゃんと翼ちゃんもいらっしゃい。今日もデュエルの勉強かい?」

「はい。銀次さんもお疲れさまです」

 

 愛莉と翼ももう何日もデュエループに通っているためにもう顔見知りだ。こうして名前で呼び合うぐらいにはなっていた。銀次は「そういえば」と言いながら愛莉へと向かい一言。

 

 

 

「愛莉ちゃんは、デュエル暦って一体どれくらいだい?」

「え……?」

 

 その質問に愛莉は呆気に取られた。

 悠や翼に習っているのだから初心者。

 それも数日程度なのだろうと思われるのだが、

 

「え、えっと……」

 

 愛莉は銀次の言葉に口ごもってしまった。

 言葉を濁すかのように目を泳がせ何か言ってはいけないことかのように。その様子を見た銀次は軽く息を吐き何かを悟ったような様子だった。

 

「ごめんね。意地悪な質問をして──ちょっとね。昔、君の名前に聞き覚えがあってねずっと引っかかっていたんだ」

「えっと、銀次さん。何、言ってるの?」

 

 やや緊張した雰囲気が流れ翼が一体何なのか、と聞く。それに答えるように銀次は語る。

 

「町内会で会った他のカードショップの店主に会ってね。わかったんだ。昔……5年くらい前にね多くのショップの大会で優勝して有名になっていた子がいたんだ。でも、ある日からその子はパッタリと大会に来なくなってしまっていた」

 

 まさか、と悠と翼は愛莉へと視線を向けた。愛莉は表情を強張らせ両手を胸に当てながらまるで怯えている様だった。しかし、そんな様子でも銀次は躊躇無くその人物の名前を言うのだ。

 

 

 

「その子の名前は──最上愛莉。君のことだよね?」

 

 

 

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