『
地球圏に取り残されたバイロン人の大部分が降伏したことにより、地球連合軍の勝利に終わったのである。
その後世界は、バイロン人への差別問題、一部バイロン軍残党によるテロ、地球連合軍非加盟国による軍事行為に悩まされる。
そして長い年月が経ち、戦後の問題が徐々に片付きつつあったその時に、また新たな脅威が現れたのである。
N国、Gシティ。若者が集まる場所として栄えているこの街は、その日はとても暑い日だった。他国からの観光客、パッと見普通のカップルだが実は女性がバイロン人という二人組など、様々な人々が、いつも通りの日々を過ごしていた。
「……なぁ、何だあれ?」
誰が呟いたのか、1人から2人、3人、4人と多くの人々が突如現れた物に目を向ける。半透明な建造物は、やがて灰色へと変わり、何人かは「あぁ、石で出来てるのかな?」と考えていた。
だが、歴史に詳しい者、建造物に詳しい者が呟いた一言が、野次馬たちに危機感を持たせた。
「あれ……まさか、空間転移門じゃないか?」
構造上は門である事、そして突如現れたという事が、結論付けた一言である。
若者たちでも、かつて空間転移門によって大戦争が起きたことは知っている。
つまり、目の前の建物から何かが来る。
そこから、野次馬たちは避難を始めた。通報を受けた警察が避難誘導しつつ建造物には近づくなと警告し、施設内にいる人々も、書いている途中の書類を放り出し避難場所へ逃げ始める。
異星人との戦争によって刻まれた教訓が、まさに生死を分けたのである。
門が開かれ現れたのは、見た者に「コスプレ大会?」と思わせるような軍勢だった。中世の時代に見られたであろう鎧や弓、剣を持つ者、馬に乗る者で溢れていた。だが何よりも目を引くのは、オークやトロル、ワイバーンといった、架空でしか見られない生物も居たことだった。
『何だここは……』
軍勢を率いる隊長の1人が、目の前に広がる数多くの摩天楼に驚く。
『人も居ない。逃げたのか?』
『だとすれば、我々に降伏したと見るべきでは?』
異世界の蛮族の国を侵略するのも、これなら容易い。兵士の大半がそう思っていた時だった。
「止まれ!」
異界の言葉で、現地人が叫んでいた。数多くの盾を構え行く手を阻んでいる。
「ただちに武装を解除せよ! 従わない場合、攻撃の意思があると見て、我々も相応の手段を取る!」
『何と言っているのでしょうか』
『分からんな。だが、向こうにも兵力がいるならば手段は1つ!』
隊長が剣を空へ掲げる。
『突撃ぃぃぃ!』
剣を構え、槍を構え、兵士たちは雄叫びをあげて、目の前の軍隊に突撃する。
こうして、異世界とのファーストコンタクトは、武力の衝突という最悪な形で始まったのである。
「攻撃開始!」
機動隊長の命令によって、銃声が鳴り響く。
「隊長、未確認生物は巨大です! エグザマクスの派遣を!」
「既にやっている!」
「まずい、数が多いぞ……!」
相手のシールドが薄いのか、銃撃によって敵兵士は次々と倒れていく。だが、如何せん数が多い。向こうはライオットシールドを叩き斬ろうと、何度も剣を振るってくるため、シールドを持つ腕が痺れてくる。隙間から他の隊員が敵を撃ち殺してはいるが、波のように襲ってくるためキリが無かった。
「援護する! 代われ!」
「助かる!」
他の地区の機動隊も駆けつけるが、そこへ新たな問題が出てくる。
「っ! 弓矢だ!」
「ぐああっ!」
「矢は抜くな! 誰かコイツを下がらせろ!」
後方に居る敵部隊が矢を放ち、空から矢の雨が降り注ぐ。隊員の何名かが腕に刺さり、負傷する。さらにワイバーンが空から襲いかかり、隊員を食い殺す。
「ぎゃあああ!」
「アキモト! くそ、人食いトカゲが!」
徐々に追い込まれつつある機動隊だったが、そこへ“希望の巨人”が現れる。
《こちらエグザマクス! すまない、遅れた!》
「謝罪は良い! 未確認飛翔体を頼む!」
《任された!》
突如現れた単眼の巨人に、異世界の兵士は祖国の言葉で、『サイクロプスか!?』と驚愕する。
eEXM-17 アルト。それが、巨人の名前である。
ワイバーンに乗る兵士は巨人に驚くものの、すぐに剣を抜いて突撃する。
(あれほどの巨体ならば、空を飛べる俺が!)
弱点と思われる目へ向かい、相棒の速度を上げる。だがそれも、叶わなかった。アルトの手が、ハエを払うようにワイバーンを兵士ごと建物の壁へ叩きつけたからである。
アルトがマシンガンを撃つことで、ワイバーンは羽虫のようにボトボトと落ちていく。さらに落ちた場所が敵兵士の中だったため、相手の被害は更に増大した。もちろん、機動隊の方へ落ちると予測される方は建物の壁へ叩きつける等をして、被害を出さなかった。
『撤退だ! 撤退するぞ!』
『蛮族が巨人を従えるなど……!』
だが、そうは問屋がおろさなかった。空から別の巨人が降りてきたのだ。こちらの方が、よりサイクロプスに見えたことだろう。
バイロン軍が扱っていた機体、bEXM-15ポルタ・ノヴァである。
『ど、どれほどの巨人が居るのだ!?』
『隊長! “門”への退路が巨人によって塞がれています! 敵兵士も多数!』
『囲まれたというわけか……!』
こうして、異世界の軍勢は撤退も許されず、生きていた兵士は全員が捕らえられた。
この戦いは、後に『Gシティ侵攻』という名で、歴史の教科書に載ることになる。
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