夕方。バイス達はピニャから、イタリカが武装勢力によって攻撃されていることを知った。彼女から支援を受けたこと、そして本来の目的である翼竜の鱗の売却のために、彼らは協力することになったのだが……。
「ピニャ殿下。確か、南門が一度破られているとの事ですが」
「うむ。そのため、4つの門のうち最も脆弱な場所と言えるだろう。そこの防衛を頼みたい」
「……元正規兵だった連中です。殿下の作戦を読んでいる可能性があるかと」
「何?」
「外部の者である私が言うのは何ですが、戦いは教科書通りに起こるとは限りません。盗賊が逃走した経路は?」
「地図を。……大規模の移動をするならば、この道が使えるだろう」
「だとすれば、敵が襲う可能性があるのは……」
「逃走経路から近い東門か!」
バイスとピニャが共に地図を見て作戦会議をしている。その光景に、義勇兵の代表や騎士団団員は訝しげに見ていた。その理由はもちろん、外からやって来た者の癖に色々と口出しをしているからである。
だが、それを制したのは、ロゥリィだった。
「彼らはぁ、戦争が終わっても敵国の残党に悩まされたらしいわよぉ。あの人たちは若いけどぉ、戦いの質の高さは彼らが上かもしれないわぁ。経験者の意見は聞くべきじゃない~?」
戦いの神エムロイの使徒であるロゥリィに言われると、何も言えなかった。
「殿下。私の方でも、増援を寄越せないか聞いてみます。許可されればすぐにでも駆けつける事が可能ですが、いかがいたしましょう?」
「ほう、それは頼もしい。ぜひ頼みたい」
この時ピニャは、それはいくら何でも不可能だろうと思っていた。軽い気持ちで支援を許可したのである。
それが、彼女に大きな影響を与えるとも知らずに。
夜。もしも東門が突破された時の為にと、門の内側にはスカーのラビオットが配置されていた。少しでも隠すために、片膝を地面につく形で待機している。その後方には、ラビオットを通り抜けた盗賊を迎え撃つために市民たちによるバリケードが構築されていた。そこではレレイが魔法で追い風を起こし、テュカたちが矢を放つという算段になっている。
少しでも体力を回復させるためにと、市民たちはバリケードの向こうに居た。だからこそ、スカーはコクピットハッチを開け、新鮮な息を吸っていた。
「お疲れ様ぁ」
「うおっ……ロゥリィさんか。ビックリさせないでくれ」
「うふふ、ごめんなさぁい」
悪びれる様子もなく、ラビオットの片膝に立つロゥリィ。彼女はスカーに問いかけた。
「彼女、敵国の皇女よぉ? 何で協力するのかしらぁ?」
「うーむ。ここで彼女を捕らえたりしても、市民から何されるか分からん。盗賊が襲ってくることに変わりは無いからな。とっとと本来の目的も果たしたいし」
「……それだけぇ?」
「……やっぱりお見通しか」
「エムロイは盗みも殺しも否定しない。動機と覚悟を重視するのよぉ」
「なるほどな。実は、現状を知ったことで隊長さんはある事を思い付いたようだ。俺も思ってた事だけどな」
「それは何かしらぁ?」
「せっかく帝国と繋がりの深い人間がいるんだ。このエグザマクスの力を見せて、圧力を掛ける」
「……ふ、ふふっ。あははは! 素敵ねぇ。とっても素敵よぉ! うふふふふ……!」
妖艶な笑みを浮かべるロゥリィ。
その時だった。敵襲を告げる鐘が鳴ったのは。
読んでいただき、ありがとうございました。
さぁ、次回はいよいよ……蹂躙です。