盗賊たちの地獄は突然始まった。
いきなり聞こえてきた、キィィィンという音。見上げると羽ばたかない大鷲”が現れ、何かを落としていった。耳をつんざくような轟音に、大半の者が耳を塞いでうずくまった。だからこそ気付かなかった。その大鷲が落とした物が何だったのかを。
ヒュルルルルルルル……バンッ!パラパラパラ!
文字に表すならば、このようになるだろうか。破裂音が気になり空を見上げた瞬間……大量の
「うわぁぁぁぁ!」
「ぎゃああああ!」
「何だ!? 何が起き……ぐぶぅ!」
「ひぃぃぃ!?」
阿鼻叫喚、地獄絵図。そういった言葉が似合う光景がこれ以上あるだろうか。体を貫かれ、腕や足を千切られ、不運な者は空を見上げた途端に顔面を“鉄の矢”が貫通した。それを間近で見てしまった者は悲鳴をあげる。
これが、エアファイター隊が落とした『スプリット弾』と呼ばれるもの。空中で爆発させ、大量の鉄の矢を降らせて広範囲を攻撃するという凶悪な爆弾である。本来はエグザマクスに乗らない歩兵を攻撃するために開発された、まさに“対人兵器”である。
この爆弾の欠点は、味方を巻き込む危険性が非常に高いと言う事である。その為、スプリット弾を使用する際は、味方に退避を促すのが常識だ。
「ま、また来たぞぉ!」
今度は3羽の大鷲が姿を現す。轟音と共に徐々にこちらへ近付いてきた。
「バカめ! 近付いてくるなら射止めてくれる!」
勇敢な弓兵が矢を向けるが、大鷲が突然、タタタタタ!と鳴き声を上げた。弓兵の上半身が吹き飛ぶ。
「こ、この音は、アルヌスの火の魔法と同じ!」
「おのれ、おのれおのれおのれぇぇぇ!! 鳥までもが我々の戦いを!」
「頭! 門にいた連中は中に逃げた! 今なら入れる! 中さえ入っちまえばこっちのもんだ!」
「そ、そうか! お前ら、今だ! 突っ込めぇ!」
『『『『ワァァァァ!!』』』』
防衛対象であるイタリカへと突撃する盗賊たち。普通ならば危機感を抱くだろう。しかし……
《狙い通りだ》
《よし。残りは後続と第3調査班に任せるぞ》
こうして、エアファイター隊はアルヌスへ帰投した。
門の中へと逃げた盗賊たちであったが、彼らを待ち受けたのは市民ではなく、“死神”だった。
「ウフフフフ! アッハハハハ!」
振るわれるハルバート、断末魔を上げることもなく千切れ飛ぶ盗賊の首、ハルバートの持ち主を援護するかのように響く銃声。例えそれを潜り抜けたとしても、義勇兵らによる弓矢と、ピニャ率いる騎士団が、相手の攻撃を許さない。
《簡易型ロイロイ、攻撃開始!》
簡易型ロイロイとは、エグザマクスが背負うコンテナに格納された、名前の通り組み立てが簡単なロイロイである。
簡易型ではあるが、車を簡単に破壊する威力を誇るガトリング砲を搭載。さらに、弾切れになると鹵獲されることを防ぐために自爆するプログラムが入力されている。
スカーが攻撃開始の信号を送ると、簡易型ロイロイは移動を開始。突然現れたクモのような存在に、義勇兵たちは道を開ける。盗賊たちも思わず動きを止めるが、システムだけで動く無人機に慈悲はない。
『攻撃開始』
合図と共にロゥリィが高くジャンプ。その瞬間、盗賊たちが蜂の巣にされていった。
「うぎゃあぁぁ!」
「がっ、げふっ!」
「うっ……」
「オエェ……」
兵士の中には、次々と肉塊に変えられていく光景に耐えきれず嘔吐する者もいた。ピニャたち騎士団は何とか耐えるが、ハミルトンは口を押さえて目を背けてしまう。
「はぁ、はぁ、み、認めん……こんな戦いがあってたまるか……」
悪運が強いと言うべきか。盗賊の頭領が息絶え絶えに地面を這いつくばりながら、街の中心へ進もうとする。
しかし……スカーの乗るラビオットのセンサーが、それを捉えていた。
「きょ、巨人……」
単眼の巨人が、こちらを見下ろしている。ゆっくりと片足を上げ始めた。
「なぜだ……なぜだエムロイよ! こんなのは戦いではない! 我々は貴方に讃歌を捧げるために戦ってきたというのに! なぜだぁぁぁぁぁ!!」
その瞬間、頭領は踏み潰された。踏み潰した存在を気にも留めないかのように、ライフルを構えて残りの盗賊たちに発砲した。
「巨人だぁぁ!」
「そ、外だ! 外へ逃げろ! もう大鷲は居ないはずだ!」
「死にたくねぇ! 死にたくねぇよぉ!」
武器も捨てて、情けない声を上げながら外へと逃げようとする盗賊たち。だが、地球連合軍は彼らに更に絶望を与える。
「えっ……」
「そんな……巨人……」
「あ、あはは……あはははは……」
空から降りてくる巨人たち。彼らもまた、第3調査班からの支援を受けた、エアファイター隊の後続である。使用機体は、背中にブースターを搭載したアルトとポルタ・ノヴァ。各2機ずつ現れた巨人に、盗賊たちはとうとう逃げることも諦めた。戦意が完全に喪失した瞬間であった。
更に現れた巨人たち。逃げ場を塞ぐように現れ、盗賊たちを降伏させた存在に、ピニャは戦慄していた。
「ば、化け物……」
ハミルトンが呟く。
「鋼鉄の大鷲、鋼鉄の巨人、鋼鉄の大蜘蛛……これは神の軍勢なのか……?」
お前たちの栄光など、一時のものに過ぎん。貴様らなど、この手で簡単に砕けるのだ! ピニャには、そのように聞こえた。
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