土煙を上げながら、イタリカへの道を進む集団があった。
「ボーゼス、早すぎだって!」
「殿下からの救援なのよ! 急がないといけないのはパナシュも分かってるでしょう!?」
「だからって飛ばしすぎだ! 馬がもたない!」
ボーゼスと呼ばれた金髪の女性を、短髪の女性が引き留める。
彼女たちは、ピニャの率いる騎士団“薔薇騎士団”の団員である。盗賊がイタリカに攻撃をしているため増援が欲しいと連絡があり、一刻も早く助太刀すべく、馬を走らせていたのだ。
「もう少し冷静になれ。熱くなりすぎるのは、君の欠点だ」
「うっ……」
「もうすぐイタリカだ。焦りすぎて一人で突っ込もうとするな。見ろ、他の奴等をかなり引き離してるだろ」
「……ごめんなさい」
「姫様を思う気持ちは、私たちも一緒だからな」
「えぇ。ありがとう、パナシュ」
その後何とか息を整えつつ、イタリカへと到着した。
「良かった……。街は無事みたいね」
「あぁ。早く姫様に会わないと」
門番にピニャ・コ・ラーダの要請を受けた者だと伝え、街の中を通る。しかし彼女たちの目に映ったのは、驚くべき光景だった。
「なっ……!」
「巨人だと……!」
単眼で剛腕の巨人が、怪力の大男が10人いても持ち上げるのが困難であろう巨大な木材を、両脇に何本も抱えて歩いているのだ。イタリカの住人たちは巨人に怯えて逃げ惑うどころか、運んで欲しい場所まで道案内をしている。
なお、この巨人はスカーの操るラビオットである。
「何が、何がイタリカに起きてるの?」
戦いによって壊れたであろう建物を直している巨人たち(後続のアルトやポルタ・ノヴァ)に怯えながら、ボーゼス一行はピニャの待つ伯爵邸へ足を運ぶのだった。
時間は、盗賊を降伏させてその後処理をしていた所まで遡る。
今回の戦いは、完全に“巨人の兵士たち”のお陰であった。盗賊が攻めてくる場所の予測から迎撃まで、全てにおいて貢献したと言っても良いだろう。義勇兵の中から少数の死者が出てしまったものの、盗賊たちの死者と比べれば圧倒的に少ない。そのお陰もあって、イタリカの市民たちは感謝を“巨人の兵士たち”に捧げている。勝者の権利は彼らのものと言っても過言ではないだろう。
ピニャは、今いる“巨人の兵士たち”の中で最も偉い立場にいる者と、今回の戦いについて交渉をしていた。その偉い者とは、後続のポルタ・ノヴァに搭乗していた、ミカエルである。機体から降りるところは見られていないため、ピニャからすれば「このような兵士はいたかな?」という程度の認識であった。
「イタリカ復興のために労働力が必要だという意見は、了解しました。こちら側の要求としては、情報収集のために数名を選出したい事と、捕虜は人道的に扱ってほしいという事です」
「ジンドウテキ、とは?」
この時ミカエルは、この世界での捕虜の扱いは虐待なのだろうと察した。
「人道的とは、捕虜に対して虐待を行わないことです。市民と平等にとまでは言いませんが、明らかな過酷労働などが、虐待に当たると考えていただければ良いかと」
「ふむ……承知した」
今まで「捕虜に対しては虐待が当たり前」という価値観であったピニャたちは、随分と変わった要求をするなと思った。
「あともう1つは、要求と言うよりはお願いと言いますか……」
「お願い?」
「今回の戦闘で破損した防壁や建物の修復を、お手伝いできないかなと」
「…………は?」
「捕虜という労働力は確保できたかもしれませんが、中には高所など危険の多い作業もあるかもしれません。そこだけでも良いのでお手伝いできないかと」
「そ、そうか……」
「それに、他の隊員からお聞きしましたが、殿下の率いる騎士団がまだ到着していないとか。帰路の途中で我々と団員が衝突して協定破りになっては、たまったものじゃありません」
「っ!」
ピニャは失念していた。増援を要請したは良いものの、“巨人の兵士たち”によって戦いが終わったことをまだ伝えていなかったのだ。恐らくボーゼス達は既に出発し、馬を走らせているだろう。もし彼らを帰らせたら、事情を知らないボーゼス達と衝突しかねない。そうなれば、協定を破ったとして彼らが報復してくる可能性が大いにあるのだ。
「分かった。団員が到着したら、妾の方から説明しよう」
「感謝します」
その後、関税の件なども話し合うのだが、ファルマートの常識では明らかに勝者の権利を捨ててるような内容であったため、ピニャ達を内心驚かせたのは余談である。
読んでいただき、ありがとうございました。ボーゼスとのトラブルを入れちゃうと原作そのままで面白くなさそうなので、この作品ではトラブル無しにします。
それでは、次回もお待ちください。