「殿下、アルヌスです!」
「も、もう着いたというのか? 何という速さ……。それにあの要塞は……」
第3調査班の車両に乗せてもらい、アルヌスへと向かったピニャとボーゼス。車の速度に目を回しつつも、目の前にそびえ立つ要塞に言葉を失う。あの巨大な壁の中に、圧倒的な強さを持つ巨人と兵士たちがいると思うと、自分は敵地にいるのだと改めて実感した。
アルヌス駐屯地は、名前の通りアルヌスの丘に設営された、地球連合軍特地派遣隊の基地である。広大な敷地面積を誇るこの基地は、東西南北で大きく分けられている。
南側は居住区。アスファルトによる舗装を受けず、コダ村からの難民たちは作物の栽培などを行い、軍からの援助を受けつつも、もとの生活を取り戻しつつあった。また、非番の兵士たちが寝泊まりしている場所でもある。
北側には司令部がある。各国軍の代表や部隊の幹部等が集まり、支援要請の受諾の決定や作戦執行の指示をする。
西側は機体整備区画及び格納庫。エグザマクスは「パーツの換装によって様々な環境に対応が可能」という利点を持っている。ここでは、そのパーツの換装が行われている他、全ての兵器の整備も行われている。なお、エアファイターの滑走路も敷設されている。
そして、東側は演習場。歩兵、戦車、そしてエグザマクスによる戦闘訓練が行われている。また、地球側で開発された試作兵器の実験なども行われている。
ピニャたちが入ってきたのは、東側付近の入口であった。警備員にあらかじめ連絡されていたのか、隊員証を見せるだけで敷地内に入れた。もっとも、車を降りれば、未知の病原菌対策として消毒・殺菌等の処置を施さないといけないのだが。
(ここが、巨人の兵士たちの陣地……。どの兵士たちも杖を所持しているのか)
ピニャの目に入ったのは、兵士たちが杖と思われるものを突き出すように構えて、指先で合図すると同時に走ったり、散ったり、建物の陰に隠れるような動きをする。
ピニャ達の戦い方は、隊列を維持しつつ、敵に向かって「わぁぁぁ」と喚声をあげながら吶喊することである。そのため彼女たちから見れば、「何をやってるのだろう?」と思わせるのだ。
「連合軍の兵士たちがみな魔導師だとしたら、あの強さは納得できるものだな」
「高度な教育を受けてると言っても良いでしょう。それならば、巨人たちを従えるのも可能かもしれません」
だが、その考えをレレイは否定した。
「違う。彼らが持っているのは武器。ジュウと呼ばれるもの」
「あ、あれが武器!? 誰でも扱えるというのですか!?」
ボーゼスが驚く。正確には、上手く扱えるには訓練が必要なのだが、レレイは敢えて言わなかった。
なお、銃を使っている事に関しては話しても問題ないと判断し、バイスたちは引き止めなかった。銃に関してバレてはいけないのは、せいぜい構造くらいだ。
「鉛の玉を、炸裂の魔法を使って放っている。そして巨人たちも、巨大なジュウを持つことが標準となっている。ジュウは、人間や巨人に関係なく所持することが基準」
「確かに巨人が持つものは形状が似ているが、そう言うことだったのか……」
だが、鉛の玉を筒に入れて飛ばすだけなら、職人たちに作らせればいけるだろうか? ピニャがそう考えたのを読んでか、レレイは言葉を続けた。
「彼らの兵器はジュウだけでは無い。イタリカに飛来した大鷲の他に、巨大な象もいる」
「なに?」
レレイが指を指した所には、歩兵が使用する“人間用の戦車”が並んでいた。
「あの長い鼻から巨大な玉を放ち、敵を吹き飛ばす。センシャと呼ばれている」
「あ、あれが火を吹くというのですか……」
「そして、あのセンシャは人間が使役するもの。当然ながら……巨人が使役するセンシャもいる」
「っ!」
ゴゴゴゴゴと低い唸り声が聞こえ、ピニャとボーゼスは直ぐに外へ顔を出す。
「何だ……あれは……」
先ほどの戦車が子供の象ならば、今目の前にあるものはまさに親の象だろう。
ちなみに彼女たちが見ているのは、エグザビークル・タンクのことである。
(鋼鉄の大鷲に巨象、そして数々の巨人……)
ピニャの目には、演習を終えて整地をしているアルトやシエル・ノヴァ、大量の資材を運ぶラビオット、タンクに乗り込み次の訓練の準備をするポルタ・ノヴァが映っていた。
なお、ここまでエグザマクスをポンポンと出しているのは、ピニャが訪問することを受けて、少しでも軍事力を見せるためである。
「何故だ……何故これほどまでに強力な軍隊が攻めてきたのだ……」
「帝国はグリフォンの、いや、龍の尾を踏んだ」
レレイの声が、やけに大きく響いた。
読んでいただき、ありがとうございました。次回の更新は未定ですが、どうかお待ちください。