アルヌス駐屯地司令部の応接室。質素ながらも一目見て腕のいい職人に作られたであろうと分かる調度品に囲まれながら、ピニャとボーゼスはこの基地の司令官が来るのを待っていた。
すると、ノックと共にドアが開かれた。この時2人は緊張しており、ノックの音が聞こえた途端に反射的に立ち上がった。入ってきたのは金髪碧眼の女性を先頭に、黒髪で鼻が少々低い男、褐色肌で眼鏡を掛けている男など複数の幹部である。
「失礼します。この基地の司令をしている、ヴィエラです」
ヴィエラと名乗った女性を皮切りに、他の幹部も自己紹介をする。外で見た兵士とは違い制服であることから、戦闘用と典礼儀式用とで服を使い分けているのだろうとピニャは悟った。だが、彼女が何よりも驚いたのは、軍の最高の立場として女性がいる事である。
この世界では、未だに女性の立場と言うのは低い。皇女であるピニャも例外ではなく、彼女が騎士団を立ち上げた時も、「子供のお遊び」と周りから嘲笑された事がある。
(つまりこの方は、周りから認められるほどの功績を挙げた女性と言うことなのか……)
ヴィエラのことを羨ましく思いつつ、全員が椅子やソファに座り、会談が始まった。
「成る程。確かに、我々としてもこれ以上の戦闘の継続は、今後の活動に影響を及ぼすでしょう」
「それだけではありません。Gシティに侵攻した帝国軍の兵士を捕虜としてはいますが、今後の扱いが課題になっているとのことです。捕虜をいつまでも持ち続けては、余計な支出になります」
異界の地へ進軍した兵士たちが帰ってこなかった事は、ピニャも聞いていた。そのため捕虜となっていることに少し安堵したが、すぐに「身代金はいくら払うことになるのだろう」と考えていた。ファルマートでは捕虜を返却してもらう際に身代金を払うのが常識なのである。
「そ、その、捕虜の中には、家の跡継ぎになる者も居るのです。その者たちだけでも返却してもらいたいのですが……」
「成る程。しかし、それは我々だけでは判断しかねます」
「と、申しますと?」
次の一言が、ピニャとボーゼスを驚愕させた。
「我々より上の者と各国首脳の判断を頂かないといけません」
「…………え?」
「我々はあくまで、各国の軍隊を少数集めて、この世界へ派遣されたに過ぎません。各軍の最高司令官と、同じく各国首脳の判断が必要になります」
「待ってください! この軍隊は、様々な国から集まっていると言うことですか!?」
「む? あっ、そう言うことか。はい。地球連合軍とは、軍事同盟を結んだ国々によって成り立っている軍隊です。今回我々がこの世界へ派遣されたのは、貴国の軍隊が同盟国の街を襲撃したことから、派遣に協力するという規約によって、各国から集結して集めたのです」
「何と……」
思わず立ち上がって質問したボーゼスはヘナヘナと座り込み、ピニャは顔を両手で覆って天井を仰ぐ。
この軍隊は、まだ全ての戦力を集結させていないのだ。しかも異界の国々が集まって出来ているのだと言う。
その理由は、同盟国が襲撃された事。よく考えれば当たり前だ。同盟相手が攻撃を受ければ、他国は報復することに協力するだろう。
諸王国連合のように他国の軍を集めたとしても、驚異になるからと切り捨てるか否かで、ここまでの差が出ていたのだ。
魔導師の少女は、先程「帝国は龍の尾を踏んだ」と言っていた。その通りだ。帝国は、一国を攻撃したことによって異界の国々全てを相手にしなくてはならなくなった。これでは、負けるのも必然となるだろう。
(何としても、何としてでもこの戦いを終わらせなくては! それも早急に!)
ピニャは、より講和への思いを強くした。
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