地球連合軍総司令部。そこの会議室において、加盟国の首相と連合軍支部の司令官が集まり、緊急会議を開いていた。
「さて、諸君。もう一度話を整理しよう。特地派遣隊の報告によると、我々が相手をしている帝国の皇女が、派遣隊と接触した。内容は、講和の動きを進めたいと言うものだ。皇女は帝国皇帝に、戦闘を止めるように呼び掛けると言っている。条件……と言うよりは彼女が頼み込んだ内容は、こちらの世界で捕虜とした帝国兵士の返還となっている」
「しかし、何でまた講和の姿勢を取り始めたのでしょうか?」
「ある小隊が、交易都市防衛の依頼を受けたらしい。その依頼主が件の皇女さまという訳だ」
「なるほど。エグザマクスの戦闘を見て、軍事力を察したと言うことか。少しでも国家を存続させようと早めに動く辺り、なかなか有能なんじゃないか?」
一部がピニャの動きを称賛する一方、本題である『捕虜を返還するか否か』については、難しいと唸る者もいた。
「捕虜の返還については、私の方は賛成です。一部の国民に至っては、いつまで異世界の侵略者をここに居させる気だと、過激な思想を持つ者たちが集会を開く始末です」
「彼らへの食事や衣服の支出も無視できない。それに、あまり長い間捕虜にさせ続ければ、返還した際に『我々は侮辱された』と、あらぬ事を帝国に言いふらされるかも。早めに返還すべきです」
「だがなぁ……。皇帝がこれを受け入れずに、徹底抗戦の姿勢を取る可能性もある。早く返還したら、向こうの兵力を増やすことになるんじゃないか?」
「だからと言って『返還しない』なんて言葉を送ってみろ。それこそ、相手に抗戦の姿勢を取らせてしまうぞ!」
解決が難しい問題に、全員が頭を抱える。
そんな中、一人の首相が手を挙げた。
「発言よろしいでしょうか? 『返還するのは難しいが、皇帝が講和の姿勢を取ったと言質が取れれば、すぐに返還出来るように用意する』とお伝えするのはどうでしょう」
「ふむ……。確かにこの言い方なら、『返還しない』とは言っていないな」
「だが、言質を取るのはどうやって?」
「派遣隊員の護衛のもと、外交員を向かわせては如何でしょう。会話の様子を録音してもらい、それで判断するとなれば……」
問題は、どの国の外交員を向かわせるかだ。どこか1国のみとなれば、その国に「帝国との講和を結びつけた」という功績がつくのだ。その功績を巡っての争いなど、あまりにも無意味すぎる。かといって、加盟国全ての外交員を向かわせるのも、護衛を大量に用意せねばならず、それが相手に「武装勢力による威圧を受けた」と受け取られかねない。
「俺としては、被害を最初に受けたN国が良いと思っている」
「私も同意見です」
「直接被害を受けた国からの訴えとあれば、向こうも知らぬ存ぜぬは出来ないでしょうな」
「わ、私の国ですか!?」
「N国首相。ここは一度、ガツンと相手に言ってやるべきです。ここで尻込みしたら、相手はますます調子に乗るかもしれませんよ」
周りのがN国を推す中、N国首相と軍幹部は小声で話し合う。
「…………分かりました。我が国が責任を持って、優秀な外交員を派遣しましょう」
「よく言った!」
「我々も、護衛に相応しい隊員を派遣するように指示しよう」
「例の捕虜たちについては、収容施設にリストがある。そのコピーを渡してから、向こうの出方を様子見だ」
こうして、帝国との交渉が纏まりつつあったが、別の問題を口にした瞬間、また表情が険しくなる。
「ところで、非加盟国のうちブラックリストに載っている国家の方はどうなっている?」
「それは私の方から説明します。調査によると、一部の国では軍需工場や造船所などが稼働状態にあるとの判断が出ています」
「中には、軍事力拡大を公表する国もある。『異世界からの侵略者から自国を守るため』だとさ」
「ですが、そう言う名目で我々に対抗するべく、兵器を蓄えている可能性も否定できません」
「N国では非加盟国からのスパイがないか、徹底して調査、警備を進めています」
未だに残る課題に、全員がため息をつく。
「眼前の帝国、背後の非加盟国、敵に囲まれるのは精神的にキツイな」
誰かの言葉に、全員頷いた。
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