アルヌス駐屯地司令室。派遣隊員を仕切る司令官たちが、今日も話し合っている。
「議員たちへの根回しはどうなっている?」
「今のところは順調です。妨害も起きていないそうです」
「ここまで交渉に関してアクシデント無し、か……。何か不気味だな」
「時間も考えると、もうそろそろでしょうか?」
「うむ。主戦派が何らかの妨害をしてくるだろう」
キケロ卿をうまく丸め込んだ後、ニイジマは彼から忠告を受けた。
――徹底抗戦を唱える議員が多い。今はまだ大丈夫かもしれないが、どこかであなた方の動きを嗅ぎ付け、兵隊を引き連れて来る者が現れるかもしれない。
ニイジマはすぐにこの事を司令部へ報告した。その結果、上層部は主戦派の動きをより一層警戒する方針を決めた。
極端な話だが、元から講和派の議員や、主戦派から講和派へ鞍替えした議員を「帝国に反する者」として、粛清しようと動きかねない。会談の席で兵隊を差し向けられれば、例え優秀な訓練を積んだ連合軍兵士であっても、数の暴力に押し潰されるだろう。そうなれば外交員ニイジマの命も危ないのだ。
「何としても、それだけは避けないとな」
「もし向こうが攻撃してくれば、帝都に侵入している部隊が報復を行えます。主に迫撃砲で」
「逞しいな。さすが『ラーテル隊』だ」
何かあったときの為に、帝都には既に小隊を派遣している。どうやら悪所を治めている組織の1つと戦いになったと報告があったが、今は撃退に成功し、悪所での娼婦たちから信頼を得たようだ。今は情報収集に務めていると聞いている。
「今回のパーティーは、我々の武器の威力を披露するんだったか?」
「はい。エグザマクスの披露をという意見もありましたが、それは彼らにとって劇薬になりかねません。まずは携行武器の紹介からです」
「なるほどな」
会談が上手くいくことを祈りつつ、煙草を灰皿に押し付けた。
その頃パーティー会場では、ピニャとニイジマに招待された貴族たちが料理に舌鼓をうっていたり、異世界での文化や遊び、テーブルゲームなどを楽しんでいた。子供たちは異世界の甘味に感激し、貴婦人は世界で作られるファッションを知りどうにか再現できないかと悩む。そして当主たちはというと……。
「こちらのリストです」
「お、おぉ……! 確かに儂の弟の名前だ! 生きてた! 生きていた……!」
「私の娘が、婚約者が戦死したと悲しみに暮れておったのだ……。生きていたと聞けば元気になるだろう!」
捕虜のリストのコピーを見せ、各国の首脳の言葉を伝える。余談だが、なぜ原本ではなくコピーなのかというと、捕虜のリストを戦死者リストへと改竄されるのを防ぐためである。もし改竄されれば「異世界で戦死した兵士に報いるため」と言いがかりをつけられ、戦況が長期化する恐れがあるからだ。
話を戻そう。主戦派の議員たちは、まさか相手をしているのが一国ではなく複数の国であった事に驚き、たちまち帝国に勝ち目はないと考え始めた。中には当然疑う者もいたが、捕虜のリストの作成とその持ち込みの許可をした印として、地球連合軍総司令部の印が押されているのを見ると、口を閉ざした。
「では、こちらへご案内します」
兵士の一人が、メインである携行武器の紹介の舞台へと、議員を案内した。
読んでいただき、ありがとうございました。30mmの公式サイトのラインナップを見ると、エグザビークルに潜水艦みたいなものが追加されていたりと、カスタマイズの幅が広がりそうですね。
それでは、次回もお待ちください。