かく言う私も、2011年3月の東日本大震災が起きた時、揺れの強い地域にいました。あの時の衝撃は忘れられません。避難訓練で想定していた事が、実際に学校にいる時に起こるとは思いもしませんでした。
長話になりました。それでは、どうぞ。
ミザリィが連れてきたのは、ハーピィ族のテュワル。彼女が言うには、先程から悪寒がするのだと言う。体の奥底から沸き上がる不安は、彼女が火山地帯で過ごしていた経験と合致していた。火山が噴火する前兆として、地揺れが起きていたのだ。火山と縁の無い帝国で地揺れなどあるはず無いと思いながらも、彼女の不安は消えない。
「かくいう私も、体がゾワゾワしてね……。みんなこの調子だから、商売もできやしない」
テュワルだけでなく、ミザリィや他の亜人族の娼婦たちも、似たような不安を感じていた。そこで、何か知っているであろうラーテル隊の所へやって来たのである。
「なるほど……」
「どうした、リズ」
奥から出てきたのは、ラーテル隊隊長のラーテル。勿論これは、コードネームである。リズがミザリィ達から受けた相談を伝えると、ラーテルはふと、嘗ての経験を思い出した。
(そう言えば……。合同演習で訪れた国は地震大国で、大きな地震が来たときには、基地内の鳥や野良猫が居なくなっていた。………まさか!)
まだ彼が新人だった頃、合同演習として訪れた国があった。だがある時、基地で動物たちを一匹も見かけず不審に思った矢先、大地震に遭ったのである。彼の故郷は地震とは縁が無い国だからこそ、当時の彼が受けたインパクトは強く、故に地震に対して警戒心を持っているのだ。
「隊員に通達、ここから離れるぞ。大地震発生の恐れあり! 繰り返す、大地震発生の恐れありだ! 本部にも通達しろ! 急げ! 建物から離れるんだ!」
拠点内は慌ただしくなり、ラーテル隊は急いで車に乗り込む。娼婦たちも乗せながら悪所を離れつつ、避難を呼び掛けていた。
『地揺れが発生する恐れがあります! ただちに建物から離れてください!』
だが、帝国の住民たちは地震という存在を知らない。大地は動かないと言うのが常識なのである。そのため隊員たちの避難勧告に対して、むしろブーイングが来る始末だった。
「こんな夜にうるさいぞ!」
「地面が揺れるわけ無いだろう!」
「もっとマシな嘘をつきやがれ!」
睡眠を妨害された苛つきからか、車に石を投げる輩もいた。
(おいおい、警告はしたぞ……!)
「なぁ、地震ってそんなにヤバイのか……?」
故郷の関係で地震とは無縁の兵士が尋ねる。
「揺れの強さにもよるが、この国の建物は耐震性が無いから、倒壊の被害は酷くなるだろうな……」
地震を経験したことのある兵士が、そう言った矢先だった―――
ほんの少し時間は遡って、場所はピニャの館。ラーテル隊から通信を受けた第3調査班とニイジマは、すぐにピニャたちを連れて外へと出ていた。
「こんな夜中になんなのだ! 地面が揺れるわけ無かろう!」
ピニャも、当然のことながら地震というものを知らない。夜中に起こされて若干不機嫌である。ハミルトン達ピニャの部下やメイドなども、戸惑いながらもニイジマ達に着いていく。
ちょうど庭の広場に出た所で、地震の最初に起こる小さな揺れ……いわゆる初期微動が発生した。
「来たな……」
「皆さん壁から離れて! 頭を守るようにしゃがんで下さい!」
だが、その初期微動が長い。
「これは……大きいのが来るぞ……」
ニイジマがそう呟いた時だった―――
ズンッ! ゴゴゴゴゴ……!
地面が揺れた。突然のことに帝都では悲鳴が響く。
「キャアアアア!」
「地面が、地面が揺れてる!」
「終わりだ……! この世の終わりだぁ!」
「神よ、どうか、どうかお静まり下さい! 神よぉ!」
悪所を抜けたラーテル隊も、現地の言葉で壁から離れて頭を守ることを、大声で呼び掛ける。
「おいおい、かなり強くないか!?」
「こんなに地震ってのは揺れるのかよ!?」
「いや、これはかなりデカイぞ!」
地震の経験が少ないもしくは皆無の兵士が、大声で驚くのを堪えながら、抱き着いてくる娼婦たちを宥める。
ピニャたちも同じであった。突然の異常現象に身を震わせ、早く揺れが収まってくれと神に祈る。
「おいおい、この揺れは……」
「震度4、もしくは5くらいでしょうか。たぶん帝都は酷いことになってますよ」
だが、バイスとニイジマは平然としていた。頭を守りつつしゃがみながらも、悲鳴をあげることなく冷静に話している姿は、見るものに驚きと勇気を与えるものがあった。
「バイス殿! ニイジマ殿! よく平然としてられるな!?」
「私たちの世界には、どのようにして地面が揺れるのか、理由が解明されています」
「これよりは揺れが小さいが、地震が起こる国出身の奴等もいる。俺やニイジマは、そんな地震のある国で育ったんだ」
「もっとも、この大きさの揺れは中々無いですけどね!」
揺れが収まると、連合軍兵士たちはすぐに立ち上がり、警護兵やメイドに怪我が無いか確認する。その立ち振舞いでさえ、見るものに勇気を与えた。
「しかし、これほどの大きさだと、余震も心配ですね……」
「ま、また揺れるのか!?」
「この世界ではどうか分からないが、用心しておくに越したことは無いだろうな」
ピニャは青ざめる。またあのような揺れが来るのかと。
「こうしてはおれん! 父上が心配だ! 早く避難させねば!」
「あ、そうですか」
「それは賢明だろうな」
「……え? 着いて来てくれないのか?」
「「え?」」
「え?」
地震の直後だというのに、間抜けな静寂が訪れた。
読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、GATE二次創作ではお約束(と思われる)大暴れ回です。原作とは異なる展開を予定していますので、どうかお待ちください。