今回は書きたいものを詰め込んだ結果、いつもより少し長くなりました。それでは、どうぞ。
帝都で地震が発生し、周りが慌ただしくなっている中、ピニャはバイスとニイジマに懇願していた。
「頼む! お願いだ!」
「でも、ねぇ……?」
「一応まだ戦争中だし、俺たち敵国の兵士だぜ? それなのに皇帝に会うってマズイだろ」
「そこを何とか! 頼む!」
地震が発生した後、余震が起こるかもしれないと知ったピニャ。父でもある皇帝を避難させなければと意気込んだが、さすがに敵国のトップに会うわけにはいかないと、バイスとニイジマは拒否していた。
「頼む……。どうかこの通りだ。女である妾が言っても、耳を貸してくれないかもしれん。もし耳を貸してくれなければ、説得してほしいのだ。もし聞いてくれれば、その場に居るだけでいいんだ」
「うーむ……」
「どうします?」
「お前としてはどうなのよ? 外交官としては、会うべきか?」
「不安はありますが、一度会うべきかもしれませんね。それに、余震で何かしらの怪我をされては、今後の交渉に響くかも」
「決まりだな。俺たちはあんたの護衛だ。着いていくよ」
こうして、意外な形で皇帝に会うことが決まったのである。
謁見の間への道には、警護兵は異様に少なかった。その数少ない兵士も突然の地震の恐怖から抜けきっておらず、放心状態だった。そんな兵士たちの体たらくにピニャはため息を吐きつつ、そのまま謁見の間へと入った。
「父上! ご無事ですか!」
「ピニャか。ディアボかゾルザルが来るかと思っておったが……」
皇帝モルトは玉座に腰掛け、堂々としている……ように見えた。実際は顔にうっすらと汗をかき、顔色も少し青く見える。
「陛下、こちらの方は私が知り合った異国の方です。この方々は、先程の地揺れに関して詳しいのです」
「ほう?」
「彼らが言うには、先程の大きな揺れの後、まだ暫く揺れるとの事です。父上、身支度をしてください。ここが崩れたら危険です」
「……うむ。ピニャよ、肩を貸してくれ。このような事は初めてでな……。情けないことに腰が抜けおった……」
ピニャが慌てて駆け寄り、肩を貸そうと近寄った時だった。
「父上!」
やって来たのは、金髪の男。ゾルザルである。彼の手には鎖が握られており、その先には首輪に繋がれた女性たちがいる。肌を隠す程度の薄い服は擦りきれており、所々に擦り傷や打撲などが見られた。その状態を見たエミリーやレイスは、顔をしかめる。
「ゾルザルか。お主も外へ出た方が良いぞ。この者達が言うにはまだ揺れるらしいからな」
ゾルザルが視線を向けると、そこにはバイスたち第3調査班のメンバーが見えた。彼らの武器、服装、それらは臣下や兵士たちからの目撃情報と一致していた。
「杖のようなもの、まだらの服……父上! 彼らは敵国の人間です!」
「兄上!? いきなり何を!?」
「兵士たちから聞いた! 近頃、至るところでまだら模様の兵士たちが彷徨いていると! アルヌスにいる兵士たちが何故ここにいる!」
「ピニャ……?」
モルトがピニャへ視線を向けると、ゾルザルもそれを見た。
「ピニャ! 貴様かぁ! 敵国の人間をここに連れて来るなど、何を考えている!!」
「兄上、父上、話を聞いてください! これは……」
「いいや、ならん! この場で殺してやる! 兵士ぃ!」
ゾルザルの一声で、謁見の間に盾と鎧と剣で身を固めた兵士たちが集まってくる。ゾルザルの臣下も剣を抜いた。その剣先は、バイスたちに向けられている。
一触即発。そんな空気の中、バイスはため息をついた。
「はぁ~~っ。ニイジマさんよぉ。これはもう、防衛しないといけないよなぁ?」
「頼みます。私とて、死にたくありませんから」
「OK。総員、ウエポンズフリー。ニイジマを守るぞ」
『『『『了解!!』』』』
第3調査班隊員は、銃の安全装置を外した。
「らぁぁぁぁ!」
「甘いんだよぉ!」
レイスへと襲いかかってきた兵士が投げ飛ばされ、追い討ちで弾丸を撃ち込まれる。
「死ねぇぇぇぇ!」
「遅い!」
レイスが無理ならエミリーにと狙いを定めた兵士も居たが、足払いを掛けられ転倒されたところに、眉間へ弾丸を撃ち込まれた。
「アルバート!」
「はい!」
バイスとアルバートが、小銃で遠くにいる兵士たちを撃ち抜いていく。
「うあぁぁぁぁ!」
「おっと、危ねえ!」
「ぐぴっ……!」
2人の間を潜り抜けてニイジマをナイフで突き刺そうとしたのを、バイスが頭をつかみ、そのまま首の骨を折る。
「えぇい、たかが4人に何をしている! 隊列を組んで押し込め!」
ゾルザルの命令で隊列を組む兵士たち。だがバイスたちも横に並んで、連射モードに切り替えた小銃を構えた。
「オープンファイア!!」
けたたましい連射音に続いて、兵士の断末魔と、肉が抉れ血が飛び散る音が響いた。兵士達が次々と倒れていく中、大きな声が上がった。
「お願い! 私たちを助けて!」
声を上げたのは、ゾルザルの鎖に繋がれていた奴隷の一人だった。
「私たち、もう帰る国がないの!」
「私たちの故郷は、この男に滅ぼされたわ!」
「もう此処にいる意味なんて無い! お願い! 助けて!」
一人が大声を上げたのを切っ掛けに、次々と奴隷達が助けを懇願する。だがゾルザルは、顔を真っ赤にして女性を蹴りあげる。
「貴様ぁ! 誰のお陰で生きてられると思ってる!」
「あうっ!」
奴隷が腹を蹴られるのを見て、レイスとエミリーは怒りに満ちる。そんな中、バイスは新たな命令を出した。
「現地人の救助要請を確認! レイス、エミリー!」
「「Yes,sir!」」
最初にレイスが、次にエミリーが飛び出す。
「この数を前に、愚かな! やれ!」
槍を構えた兵士がレイスを突き刺そうとするが……
「はっ、だから甘いって言ってんだろ?」
何もできずにレイスを通過させた。それから少し遅れて……兵士たちの首から血が噴出する。レイスは手持ちの拳銃で敵を次々と撃ち抜いていった。
「っ!? こ、こいつ……」
「ひっ!?
レイスは目を見開き、口角を吊り上げて
「どうしたよ? かかって来いよ」
「女一人に何を手こずっている! 殺せ! 殺せぇ!」
兵士たちは自棄になって剣を振るうが、レイスは笑ったままダガーを振るう。
彼女が
1つは、彼女が乗るエグザマクスの戦闘スタイルが一定しないこと。普通の歩兵として戦う事もあれば、狙撃として後方支援を行い、時には近接特化型の機体として最前線で戦う。そうすることで、敵に正体を特定させない。
もう1つは凄く単純で……彼女と敵対した者は、必ず死ぬからである。すなわち、亡霊にされるのだ。
レイスが大暴れする中を、エミリーが奴隷たちの元へ駆け寄る。すぐにダガーで彼女達が繋がれている鎖を断ち切った。
「女ぁ! 貴様ぁぁ!」
「黙りなさい変態!!」
「うっ、ぐっ……!?」
近くにいたゾルザルが彼女を殴ろうとするが、エミリーは罵倒すると同時に、ある場所を蹴った。“男の一番の急所”と言えば分かるだろう。
普通の衝撃でさえ痛いアソコを、軍人として鍛えられた脚力で蹴られ、ゾルザルは地面を転げ回ることになった。それを見たニイジマとバイスとアルバートは、無意識に内股になった。
「私たちの基地で手当てするから、もう少し待ってて下さい」
「え、あ、はい……」
ウサギ耳の女性に声をかける。声をかけられた本人は、怒濤の展開についていけず、放心に近い状態だった。
一方的な蹂躙は終わり、謁見の間は死屍累々の光景となった。返り血で染まったレイスはつまらなさそうに呟く。
「温いな」
あまりにも凄惨な光景に、ピニャも他の貴族も、口が出せなかった。
そんな中、ニイジマは皇帝モルトへと向き直る。
「改めまして、初めまして皇帝陛下。我々は、あなた方と敵対している世界から参りました」
「いやはや、まさか此処まで堂々としているとはな。貴国らの戦い方から臆病者かと思っておったが」
「単刀直入に申し上げますと、我々と講和を結ばないかと思ったのですが……」
「断る」
「異界へ進軍した貴国の兵士らを捕虜としておりますが?」
「無事であると言う証拠はどこにある? ましてや、仮に無事だとしても、我が国が簡単に平伏するとでも?」
「……言い直しますと、話し合いに応じる姿勢を見せていただければ、私たちは捕虜を返還する準備がございます」
「ここまで謁見の間を血と屍で汚しておいて、話し合える立場にあると思っておるのかね?」
「…………分かりました。では、その言葉を、上の方々に知らせましょう」
ピニャは絶望した。とうとう講和には至らなかった。完全に交渉は決裂してしまった。だが、せめて考え直してくれないかと父に言葉を掛けようとする。
「父上、どうか考え直してください! あれほどの練度を誇る兵士たちを相手に戦うなど……」
「ピニャよ。お前には失望した。アルヌスの敵を調査せよと命を受けておきながら、敵にほだされ、ましてや我に降伏せよと申すとはな」
「そんな! そのようなつもりは決して!」
「失せよ! お前はもはや皇族でも帝国人でもない! 貴様の騎士団は解散だ!」
「そん、な……」
目から光が消え、座り込むピニャ。そんな彼女を、ニイジマは立ち上がらせた。
「では、我々はこの辺で。それと皇帝陛下。あなたの領土が更地になる覚悟だけは、しておいた方がよろしいかと」
そう言うと、囚われていた奴隷たちと放心状態のピニャを連れて、ニイジマ達は去っていった。
「あぁぁぁぁ! これ絶対にクビだ! 外交官として絶対にクビだぁ!」
「いやー、これ、どう報告書に書けば良いんだよ……。ヴィエラ司令官に殺されちまう……!」
ニイジマとバイスは、帰りの車の中で頭を抱えた。
読んでいただき、ありがとうございました。完全に交渉は決裂という形になりました。次回はどうなるのか、どうかお待ちください。