「被害状況は!?」
「タンク1両……いえ、3両に増えました! おそらくジャイアントオーガーは複数いると思われます!」
「タンク部隊は後退、エアファイター隊に攻撃指示を!」
「それが、ジャイアントオーガーが投入されてからワイバーンが急増し、対応に追われていると……」
「一瞬の隙を突いたか……!」
アルヌス駐屯地司令部は騒々しくなっていた。通信機越しに現状を伝える声と、それに混じってジャイアントオーガーにやられたであろう兵士の断末魔が聞こえてくる。突然の新手の登場に、司令官達も命令する声が自然と大きくなっていた。
そのような喧騒の中、ピニャは少しでも彼らの力になれないかと、自分が持ってる情報の中から打開策を思考する。
「ジャイアントオーガーは、そこそこの知性を持っている。だが弓矢のような細かい芸は出来ない。持つならば剣か棍棒あたりか……」
「殿下。ジャイアントオーガーへの対抗策は……」
「妾も、戦場でジャイアントオーガーを投入するなど初耳だ。だが、さっきも言った通り、奴が手に出来る武器は剣か棍棒。それも人間のような素早い動きではなく、力任せの一撃。その武器を振り下ろす瞬間なら、おそらく……」
「ですが、そのタイミングで砲撃なんてリスクが大きすぎます! 仮に仕留めたとしても、落とした武器がタンクに当たりでもしたら……!」
『俺たちに行かせてくだせえ!!』
突如、野太い声が響いた。
『俺たちビルド隊のエグザマクスなら余ってます!』
「だがお前たちの機体は土木建築用だ! 戦闘用の装甲も武器も……!」
『装甲は鉄骨の衝撃にも耐えられる特殊合金! 武器は大岩を簡単に砕ける削岩機! さらに長時間稼働用のエンジン搭載で、出力は戦闘用に劣りませんよ!』
「ヴィエラ司令! タンク隊の被害増大! 後退中の車輌が全滅するのも時間の問題です!」
「~~~~! ビルド隊は、ポイントN33へ急行! ジャイアントオーガーの迎撃に当たれ!」
『イエス、マム!』
戦場を駆ける巨人たち。だが、カーキ色とは違い、黒と黄色の、明らかに作業用と分かる機体が走っている。彼らの操るラビオットのカメラアイが、暴れるジャイアントオーガーを捉えた。
「見ぃつけたぁ!」
『
「グ? グゴォォォォォ!!」
自分より大きな巨人にジャイアントオーガーは吠える。俺より大きいなんて生意気な。転ばせて頭を潰してやる。彼らはそう思っただろう。手に持つ棍棒を横に薙いで足を狙おうとした。
だが、ラビオットの左腕がジャイアントオーガーの右腕を掴む。ジャイアントオーガーは振りほどこうと暴れるが、掴んでいる手が徐々に腕の肉に食い込んでいく。
「ギイイイイイ!?」
「痛いか? 痛いよなぁ! 鉄板を簡単にねじ曲げるマニピュレーターの握力をなめんじゃねぇぇ!」
そのまま引き寄せ、右手でジャイアントオーガーの顔面を殴り付ける。専用の兜を被っていたとは言えその威力は絶大。脳が大きく揺さぶられる。
「もっと良いもんくれてやるよぉ!」
オーガを掴んでいた手を乱暴に離すと、背負っていた物を手に取る。それは巨大なハンマー。何の仕掛けも無い、ただの質量の塊。それを一気に横へ振り払った。
「どおりゃああああ!」
「ブギッ……!」
兜は壊れ、骨が砕け、その骨片が脳や頭の筋肉をズタズタにする。首の骨がゴキャリと変な音を立て、そのままジャイアントオーガーは後ろへ倒れた。
「よーし、いっちょあがりぃ!」
別の機体は、凄まじい音を立てながらジャイアントオーガーの胴体を砕いていた。
「オラオラオラオラァ! 削岩機もパイルバンカーだっての!」
この男の持論は、「パイルバンカーが鉄の杭を打つなら、鉄の杭を高速で打ち込んで岩を砕く削岩機はパイルバンカーだよね」という物である。それを聞いた兵器開発班は「いや、それはおかしい」と否定したが。
とにかく彼は、ジャイアントオーガーに高速で突っ込み、蹴りで倒すと分厚い鉄の胴鎧に削岩機を押し当て、その激しい打ち込みでジャイアントオーガーを倒そうとしていた。
「グ、ボ、ガ、アァ!」
ジャイアントオーガーからすれば、たまったものではない。分厚い鉄板と地面の間に挟まれ、巨人は鉄板に片足を乗せて押さえ込んでいるのである。押さえ込まれて苦しい体にさらに削岩機による激しい振動もあって、何も出来ずにいた。
「捉えたぁ!」
ついに鉄杭は鎧を貫通し肉に到達、凄まじい振動は内蔵を揺さぶり、ジャイアントオーガーに更にダメージを与えていった。
こうして、パイルバンカー好きの兵士に狙われたジャイアントオーガーは、絶命するまでその振動に苦しむのであった。
土木建築を得意とするビルド隊がジャイアントオーガーを相手にしている頃、ある1輌のタンクが敵歩兵集団に照準を定めていた。
「計器異常無し」
「エネルギーカートリッジ、装填完了」
「冷却剤、準備オーケー」
「良し! 今こそ、この『エグザビークル・ビームタンク』の試験の時だ!」
地球連合軍はビーム兵器の研究を進めていたが、その扱いの難しさ故に兵器として運用できずにいた。現時点では携行武器として扱うことはまだ難しく、『エグザビークル・タンクをビーム砲台として運用してはどうだろうか』と言う考えのもと設計されたのが、このビームタンクである。
「前方兵士にビーム発射の通達はしたか!?」
「既に通達済みです! 射線上からの退避を確認!」
「ビーム発射ボタン、車長に回します!」
ビームタンク車長は、照準装置のカーソルを見て狙いを定める。が、あることに気付く。
「おっと。総員、対閃光ゴーグル着用!」
開発班の説明によると、ビーム発射時に凄まじい光を発するらしく、タンク搭乗員は目を守るためにゴーグルを着けることを必須とされていた。
全員がゴーグルを装着したのを確認すると、カウントを始める。
「エネルギー充填完了まで、カウント10! 9、8、7……」
自然と冷や汗が流れる。今まで扱ったことの無い武器だから、当然だろう。
「3、2、1……照射ぁ!」
この時、帝国兵士達には光が見えた。一瞬キラリと何かが光ったかと思った瞬間、光に飲み込まれた。
幸いにもビームの射線上から外れていた帝国兵士たちも、それは見えていた。
「な、何だこれはぁ!?」
「何と言う眩しさ……! まさか、雷か!?」
「そんな馬鹿なことがあるか! こんなに晴れていると言うのに……」
そしてビームの照射が終わると、先程までそこに居たはずの兵士がいなくなっていた。更にその高温は、直撃はせずともビームの近くに居た者を苦しめていた。
「あづいぃぃ……! あづいよぉ……!」
「俺の右腕が無いんだ……何が、何がぁぁぁぁいだいぃぃぃぃ!!」
「おぉい……誰か水を……水をくれぇぇ……! 何で俺から離れるんだぁぁ……!」
あまりにも凄惨な光景に、一部の兵士たちは嘔吐した。
一方ビームタンク内では、トラブルが発生していた。
「おい! 砲塔の熱が下がってねえぞ! 冷却剤注入のスイッチは押したんだろうな!」
「押しましたよ! ですが冷却剤の効果を熱が上回ってます!」
「想定外の温度か……! 総員ただちに降車! このままだと蒸し焼きになっちまうぞ!」
ビームタンクから搭乗員たちは降り、無線機でトラブルを報告。エグザマクスが持ってきたロイロイ(有人タイプ)に乗り込み、駐屯地へ帰投した。
帝国軍のテントにて、隊長は青ざめていた。
「馬鹿な……何故こんなことが……。奴らはバスーン監獄と帝都へ兵を向かわせ、基地が手薄なのでは無かったのか……?」
伝えられる報告はどれも被害報告ばかり。敵陣地までたどり着いたと言う報告は全く聞こえない。
「報告! ジャイアントオーガー隊が、敵の巨人軍によって全滅しました!」
「馬鹿な!? 凄まじい怪力を誇るジャイアントオーガーだぞ!? 一匹も残ってないと言うのか!」
「それが、鉄の巨像が後退したら、入れ替わるように巨人が現れたと……」
「おのれっ! ならば空だ! ワイバーンなら陣地に侵入できるはずだ!」
その時、キィィィンと言う音が聞こえた。不審に思った隊長をはじめとするテント内の兵士達が外へ出る。
「なっ、巨人が空を―――」
その瞬間、空中戦仕様のアルトのマシンガン攻撃で兵士たちはミンチへと変わった。何名か逃亡を図る兵士も居たが、森林に擬態していた陸戦仕様のアルトがこれを阻止した。
こうして、地球連合軍にも被害は出たものの、アルヌス駐屯地の防衛に成功。侵攻してきた帝国軍は全滅したのである。
読んでいただき、ありがとうございました。
私の中のパイルバンカーは、鉄杭をかなりの威力で打ち込むイメージです。削岩機の仕組みは詳しくありませんが、空気を圧縮して高速で鉄杭を打ち込んでるイメージがあります。ならば、削岩機をパイルバンカー代わりにしても問題ない……ですよね?
さて、いよいよ帝都侵入です。終わりも近くなってきました。次回の投稿がいつになるかは未定ですが、どうかお待ちください。