エグザマクス隊が門を破壊した事で、元老院の兵士たちは厳戒態勢に入った。まさか帝都で最も堅い門を破られるとは思わなかったが、敵が侵入していることは事実。兵士たちは敵を迎撃すべく、すぐに動き出した。
「薔薇騎士団の拘束へ向かった兵士達からの連絡がありません!」
「くっ、まさかチキュウ連合軍とやらにやられたか! 敵巨人達の動きは!?」
「門を破壊後、帝都に侵入! 迎撃隊をことごとく返り討ちにしています!」
「何としても持ちこたえさせろ! 巨人共を元老院に近付けさせるな!」
「隊長! 敵歩兵が元老院に侵入したとの事です!」
「元老院にはまだ兵士達が居る。彼らに任せておけ!」
彼らはエグザマクスを脅威と感じるがあまり、地球連合軍の歩兵達を甘く見ていた。門の破壊のどさくさに紛れて侵入するとなれば、その数は少ない。まだ自分たちには大量の兵士達がいるため、それで押し潰せる。そう考えていたのである。
だからこそ、彼らは考えていなかったのだ。“死神ロゥリィ”をはじめとする、現地人の脅威がいることを。
「アッハハハハ!」
「ロゥリィを援護だ! レイスがエグザマクスに回ってくれて助かったぜ……」
元老院の豪華な廊下が、血に染められていく。帝国兵の断末魔がコーラスとなり、ロゥリィの笑い声とバイスたち地球連合軍の銃声が伴奏となる。
バイス達のなかで最も前に出ているのは、当然ながらハルバードを振るうロゥリィである。常人ならば持ち上げるだけで腰を痛めるそれを、時には片手で振るう。その凶悪な刃は、鎧は愚か肉まで切り裂き命を刈り取る。その光景を見ていたバイスは、今はエグザマクス隊の方に配置されているレイスが此処に居たら、ロゥリィと共に暴れていただろうなぁと思っていた。
「テュカ!」
「うん、お願い!」
レレイがテュカの後ろに立ち、杖を光らせる。その間テュカは弓矢を構え、帝国兵の喉に狙いを定めていた。
「はぁぁっ!」
「今!」
テュカが矢を放ったその瞬間、レレイは魔法で突風を起こす。それは追い風となり、矢を更に加速させた。
「がっ!」
「うぐっ!?」
「ぐへぇ!?」
「……提案しておいて何だけど、凄い貫通力ね」
「でも、敵は更に混乱した」
加速した矢は一人では飽きたらず、3人の首を一気に貫いた。ワンショット、スリーキルと言えるだろう。
ロゥリィの存在と銃撃による混乱に、さらに魔法で強化された矢の一撃を受けて、帝国兵たちの思考はグチャグチャになっていた。
ロゥリィのハルバードが敵の群れに大きな穴を空け、突き進むバイス達を追おうとすれば、テュカの矢とレレイの魔法が彼らを襲う。これによってバイス達の進行スピードは予想よりも早かったのだった。
対チキュウ連合軍の指揮権を皇帝から与えられたゾルザルは、苛立っていた。バスーン監獄と帝都に連合軍の兵力が向かっている以上、最初のアルヌス奪還戦よりも楽に敵を落とせると思っていた。だと言うのに未だにその吉報が入ってこないのである。只でさえワイバーン隊は竜舎を攻撃されて飛び立てない上に、門を壁ごと破壊すると言う蛮行すら彼らはやってのけているのだ。敵陣地を落とせば、捕虜となったレンゴウ軍の指揮官や、陣地内にいる住人たち(コダ村の難民たちのこと)を人質に取り、敵に降伏を与えることが出来るはず。
それなのに、全く情報が入ってこないのだ。それもその筈。アルヌスへ出陣した帝国兵たちは全滅。かろうじて生き残った者も、シエル・ノヴァのレーダーによって徹底的に捜索された後に拘束。アルヌス攻撃隊は帝国への伝達手段を失っていたのだ。
「なぜ何も連絡が無い! ジャイアントオーガーも投入したのだぞ! だと言うのに何を手こずっているのだ!」
「殿下、どうか冷静に……」
「黙れ! チキュウ連合軍め……! 帝国の門はおろか城壁すらも破壊するとは……! どこまで帝国を馬鹿にすれば気が済むのだ! くそ!」
八つ当たりとして水の入った陶器が床に叩きつけられ、破片と水が床にぶちまけられる。荒れ狂うゾルザルを、側近はオロオロと見るしか無かった。
そんな時だった。部屋の外から兵士たちの断末魔が聞こえてくる。そしてその声はどんどん大きくなっていき、パンッ!という忌まわしい音とドカドカと走る音が、どんどんこちらに近付いてきた。
そして、ゾルザルの部屋の扉が蹴破られ、バイス達が突入してきた。
「見つけたぞ!」
「ちぃっ! 連合軍共が! 兵士!」
近衛兵が隊列を組んで、ゾルザルを守ろうとする。
「今日はあの血塗れの女(レイス)は居ないようだな」
「だがお前を討ちたい女はいる」
「ゾルザルぅぅぅぅ!!」
バイス達の中から1つの影が飛び出してきた。その影は隊列を組んでいた近衛兵たちを飛び越し、一気にゾルザルへナイフを突き立てようとする。
「殿下!」
「邪魔だ!」
側近が剣を抜いて迎え撃とうとするが、彼が剣を振るうよりも早く影……テューレがナイフを振るって側近の喉を切り裂いた。
「テューレ……! 貴様、俺に生かされた恩を忘れたか!」
「何が恩よ! お前は私の身体と引き換えに故郷を見逃すと言う契約を破り、一族を散り散りにした! そんな奴に感じる恩義なんて塵一つありはしないわ!」
「ふん、俺に抱かれている時は嬉しそうに鳴いていたと言うのにな! 兵士ぃ!」
「オープンファイア!」
ゾルザルが後ろの列にいる兵士にテューレを殺すように命じようとするが、それを阻止するようにバイス達が発砲する。
「思いっきりやれ! 近衛兵は俺たちがやる!」
「感謝します! ゾルザル覚悟!」
「テューレぇぇぇ!!」
ゾルザルは倒れている側近の剣を手に取ると、テューレの振るうナイフを防ぐ。そのまま剣を振るってナイフを砕き、足払いでテューレの姿勢を崩した。
「ぐうっ!」
「愛玩具しか役目の無い兎が! 貴様は楽に死なせん!」
テューレが倒れた所を馬乗りになり、彼女の白い首に掛けてゆっくりと絞めていく。
「かっ! はっ、ぁ、がぁっ!」
「ハハハハハ! 苦しいか! 鳴け! もがけ! 俺に生意気な口をきいた罰だ!」
その時、肉を切り裂く音が聞こえた。そして感じる左腕の痛み。見るとテューレの手には予備のナイフが握られており、それがゾルザルの左腕に傷をつけた。あまりの痛みに首を絞める手を離してしまう。
「ぐっ、うううっ!?」
「お前が……死ねぇぇぇ!!」
起き上がり、ゾルザルを押し倒す。そのまま胸の真ん中にナイフを突き立てた。
「あぐうううあぁぁぁ!!」
「楽に死ねると思うな!」
何度も何度もナイフを突き立てる。一ヶ所ではなく、右胸左胸と何度も刺し続けた。最初は抵抗しようとしていたゾルザルの手も、段々と力を失う。
そして……とうとうその手は完全に落ちた。
「ルームクリア」
テューレが落ち着いたと同時に、バイスの声が響いた。
ゾルザルは原作通り死亡、テューレは見事復讐を果たしました。
さて、次回でいよいよ完全決着です!