Fate/Grand Order 時空歪曲特異点 Re:CREATORS   作:色々し隊

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火星の王 その2

軍服の姫君から逃れ、通信機ごしにダヴィンチちゃんと状況の整理をしていた。

 

少し過去の東京にレイシフトするはずが『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の世界に飛ばされ主人公の一人であるオルガ・イツカと出会う、まではいい。しかし驚くことがあった。原作では絶対にありえない程死ぬ。とにかく死にまくる。逃げる時でさえ、キツツキがどこからかやってきてオルガの背中をぶち抜き死ぬ。道路で転んで死ぬ。その度にどこからか歌が聞こえオルガはお決まりの様に  とポーズを決め地面に横たわり『止まるんじゃねぇぞ…』と溺死の体で弱々と口にする。

 

何故、こんなに死ぬのか困惑する。私が知っているオルフェンズはまだ二期中盤だが、オルガは死んでいない。むしろ《MA/モビルアーマ》を打ち倒し火星の英雄として祭り上げられている。そういえば、彼の仲間であるはずの鉄華団の遊撃隊長『三日月・オーガス』の姿を見ていない。本編では一緒にいることが多かったのだが、どうしてだろう?

 

立香

「ねぇ、オルガ?」

 

オルガ

「あん?なんだよ?」

 

立香

「相方の三日月君はどうしていないの?」

 

そう聞くとオルガは寂しそうに今まで自分が経験したことを包み隠さず二人に話す。

 

オルガ

「俺は死んだんだ。さっきの場所でな。マクギリスに乗った俺たちは地球でギャラルホルンの『アリアンロッド艦隊』と戦って負けて、火星に逃げて、団員だけでも助けられねぇか考えても何も出なくてなぁ。でも、アジーさんやクーデリアが力を貸してくれて何とか生き残る目処がついたと思ったら殺されちまった。その後はいきなり目が覚めて死ぬ二分前(車の用意できましたー)を繰り返してたんだよ。でも初めてだったぜ。死んでからライドとチャド以外の顔を見るなんてな!

 

悪りぃ、巻き込んじまって……」

 

深々と頭を下げるオルガを見てただ事ではないことを実感する。原作でのオルガはこんな弱々しくなどない。家族のため奮起し降りかかる火の粉は力尽くで振り払う獣だった姿はどこにもない。そこにあるのはただただ死ぬだけだった運命(脚本)に振り回される人形

 

ん?

 

その時、立香に電流走る。

 

立香

「…って!ネタバレ〜〜!!」

 

マシュ

「先輩!?どうしました!?」

 

立香

「死ぬの!?エッ、えっど!」

 

 口を抑える立香のポケットの通信機から声が聞こえる。先ほどまで通信していたダ・ヴィンチちゃんが未だ状況が掴めていないオルガに話しかける。

 

ダ・ヴィンチ

『あーあ、オルガ・イツカ君聞こえてるかい?現在我々は《特異点》の修復に勤しんでいる。今回もそれを解決するために二人に頼んで我々の世界線の現代である地球にレイシフトする筈だったのだけれど…何かの不具合か『火星』しかも創作世界にレイシフトしちゃったのだネ。つまるところ我々は『別の世界』の住人ということになる。』

 

ダ・ヴィンチの説明に半ば無理やり相づちを挟む。そんな中に一つ、彼が引っかかった『ワード』があった。

 

オルガ

「創作世界?

 つまり俺達鉄華団は、どこかの誰かに『造られた』ってことか!?」

 

ダ・ヴィンチ

『そういう事になる。創作の存在がこうやって目の前にいるとは興味深い。ロマンに教えたら喜ぶだろうね〜

 立香ちゃん、もう一度レイシフトをする。今度はちゃんと目標へ辿り着けるよう準備は徹底している。任せたまえ!』

 

 糞ッ!と口から漏れ、握り拳に力が入る。

 

 それもそう、今までの自分達の人生が誰かに造られていたのなら、さらにその人生が過酷かつ残酷な物だったら、怒りが込み上げてくるのも無理もない。運命が変わった今なら救えるかもしれない。可能性が低くても鉄華団全員生還ルートがあるかもしれない。今すぐ鉄華団本部へ戻ろう。足を進め車へ戻ろうと立香達の元を去る。

 

???

「それでいいのか?」

 

 何者か、気付けば背後に一人の白人が立っている。余裕を崩さず佇む姿勢は彼が比較的高い地位にいたであろう名残。

 目的は未だ不明、しかし去ろうとしていたオルガに白人は己の信念を語る。

 

???

「『試練』には必ず『戦い』があり『流される血』がある。

 君にとっての『試練』は恐らくは“彼”が教えてくれた通りだろう。しかし君たちにとっての『強敵』は、果たしてどちらだ?『月外縁軌道統合艦隊』か “自分達全てを生み出した” 『神』か?

 理解できる筈だ。戦いの犠牲が出るからこそ、大切なものが手に入る。『強敵』であればある程、返ってくるものが大きくなる。今君がしなければならない『行動』はたった一つ、彼女たちと共に世界を超える事、違うか?」

 

 迷う。白人の言葉が自分に刺さる。数多の『強敵』をねじ伏せ続け、栄光を手にしても止まれず止まらなかった結果破滅した。それが『運命』逃れられず到達してしまった事実、だがいま運命を覆す機会が訪れたのだ。本部へ戻り逃げるのもいいだろう。だが先ほどの言葉が脳裏をよぎる。より大きな『試練』を選べば見返りが大きくなるかもしれない。ならば、

 

 気がつけば戻っていた。全速力で走り、疲れ切った身体からカッスカスの声で懇願した。

「連れて行ってくれ!」その選択は正解か間違えか、今はわからない。だが成し遂げれば逃げる以上の事が叶うかも知れない。自分達全てを創造したのなら、『運命』だって買えられるかもしれない。そんな微かな希望を胸にオルガは立香と契約を結ぶ。

 

 カルデアのサーヴァントの代わりとして、戦えないマシュの代わりとして、拳銃片手に旅立つ先は『創造主』の世界。


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