日常系は推理モノより事件が多い!?   作:あずきシティ

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前回のあらすじ
今日はバレンタインデーです。


【10話】なんとか接点を増やそうと…

放課後は早速、生徒会室に……行くと、さすがにがっつきすぎだな。

とりあえず今日は活動こそ無いものの部室に行く。

演劇部はどこかに旅立ったまま帰ってこない。まだ校外活動が続いているみたいだ。

俺以外は誰もいない部室で20分ほど、いつもやらない掃除をして小綺麗にする。

 

 

さて……そろそろ生徒会室に行くか。

 

 

生徒会室の前で深呼吸。そこまで緊張する話ではないし、なんなら昨日、上田が受け取らなかった原稿も持っているから、それを渡しに来た口実もある。我ながら作戦の完成度は高いはずだ。

 

え?コソコソする意味がないんじゃないかって?

いやいや、日が日だけに関係ない人間にあらぬ誤解をされるかもしれないからな。感謝を相手に伝えるはずが迷惑をかけてしまうというのは避けたいところだ。

 

なんて考えていると、生徒会室に着いた。

中から上田の声は聞こえるが、会話というよりは独り言みたいだ。他には誰もいる気配がしない。

盗み聞きは趣味じゃないし、さっさと渡すもん渡して帰ることにするか。とりあえずノックしてみる。上田から返事はなく、独り言が続いてる。

もう一度、ノックした。が、やはりスルー。独り言が続く。思い切って突入してみる。もちろん挨拶もする。

 

「こんにちはー失礼しまーす」

 

俺の挨拶をスルーして上田は独り言を続ける。まさか俺が来たことに気づいてないのか?さすがに同室ともなると独り言は嫌でも耳に入ってくる。

 

「はぁあー結局、義理だと思われちゃったなぁー……あそこで『違うんです』って言えたらなぁ……」

 

あら……なんだかかなり困ったような顔をしているなぁ。というかこんな独り言って、もしかして俺に気づいていない?

 

上田の独り言はさらに続く。

 

「言えたら苦労しないよね……いつも告白しようとして、できないでいるし今さら逆に無理よねぇ……はぁあぁー……」

 

そろそろ俺の存在にも気づいてもらいたい。会話に入り込んでみるかな。

 

「渡せたなら、相手に多少なり意識させられたんじゃないか?」

「んんーそう思いたいけど、これまでも色々やってきたつもりなんだけど、あんまり響いてないみたいなのよね……」

「強引にでも意識させるには、いっそ告白するしかないのか……」

「そうなんだけど、それが出来れば苦労しないわよ……」

「まぁそうだよな……。っていうかそもそも誰なんだよ。」

「庄司さん……んー庄司さんはどう思ってるのかな……」

「確かに庄司先輩って、なんとなし分からんなぁ……」

「鈴木くん……」

「ん?なんだ?」

 

急に上田のトーンが低くなった。

 

「いつからいた?」

「え?『義理だと思われた』のあたりから?」

「うっ……」

「一応、2回もノックしたし入ってからも挨拶したぞ……」

「……。」

 

上田がみるみる青ざめていく。なんか見たことない表情だな。このままここにいるのは良くないかな……。さっさと用を済ませて帰るとするか。

 

「じゃ俺はハッピーバレンタインってことでチョコレートと、渡せなかった昨日の分の原稿を置いて帰るから。」

「待ちなさい……。」

 

そそくさと帰ろうとしたところ止められてしまう。マジかよ……。

 

「ゴディババアのチョコじゃん。ありがとう。」

「どういたしまして……じゃ」

「そうじゃなくて聞いたわよね?」

「……何を?」

「さっきの私の独り言」

「……はい聞きました。」

 

するとまた上田は沈黙。俺も沈黙。どうしたらいいか俺も分からんからな。

分かったのはただ一つ。上田のいう気になる人が庄司先輩だったということだけだ。

 

 

「はぁぁぁー」

 

 

クソでか溜め息をつく上田。一応、俺は上田の味方になるしかないか……。

 

「ねぇ、どうしたらいいかな?」

 

上田は、おおざっぱな質問を投げてくる。

 

「わかんねぇよ……。というかもしかしてアレか?文芸部によく顔を出してたのって……」

「庄司さんとなんとか接点を増やそうと……」

 

マジかよ。健気過ぎるだろ。自分のことならイチコロにされていただろうな。

 

「あ、もちろん文芸部を廃部にはしたくないっていうのに嘘はないよ?」

 

そりゃそうだろうけども……俺の心境は複雑だ。

 

「鈴木くんごめんね。変なこと聞かせちゃって」

 

そこをお詫びされても……俺が答えに困る。

 

「ゴディババアは本当にありがたく受け取っとくから。ありがとう!あと出来れば今日のことは内緒にしてね!いつかは……自分で決着をつけられると思うから」

 

俺は生返事だけして帰っても良かったはずだ。だが、そうはできなかった。

 

「いつかは……ってもう庄司先輩の卒業まで半月しか残ってないぞ。さらに言うと、もう3年生の先輩が登校するのは卒業式とその前日だけだ。」

 

諭してみるが、俺としてもこの後、どう転んでほしいか分からん。なんともデリケートな問題に直面しちゃったなぁ……。俺の話を聞いてどう思ったか知らんが、上田は何かを決意したらしく話し出した。

 

 

 

「決めた!卒業式の日に告白する!それでこの気持ちとも決着をつける!」

 

 

「その決断、なんで俺に聞かせたんだよ……」

「誰かに言ったら、実現出来そうな気がして」

 

有言実行の精神か……。上田らしいと言えば上田らしい気がするな。

 

「鈴木くんごめんね!帰るところだったのよね?」

「あ?あぁそうだった……。」

「じゃまたね!お疲れ~」

 

それ以上の深い話をしたりしないまま、流されるように俺は帰宅することとなった。

そうか……上田は庄司先輩が好きで卒業式の日に告白するのか。俺はその背中を押したような形になるのかな……。

 

 




青春は待ってくれないぞ!!!
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