日常系は推理モノより事件が多い!?   作:あずきシティ

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【13話】妹か?

卒業式の日がやってきた。

俺は送る先輩もいないし、登校するつもりはなかったが、やはり気になって登校してしまう。

もちろん気になるのは上田の動向だ。

あれだけ話はしたんだし、結末に関しては向こうから連絡が来るだろうと予想する。

と、なれば上田が「今すぐ駆けつけて!」なんて言ってくる可能性も0じゃないわけだし、とりあえず登校しておいた方が良いだろう。

 

そんな邪な考えの俺はハナから卒業式が終わるくらいの時間に登校する。

今日はさすがに演劇部員たちが部室にたむろしているようなので、それを避けて教室で待機だ。

卒業生は自分たちの教室に行くはずだし、送る側の在校生は基本的に部室などの先輩との共通の思い出の場所に集まるだろう。2年生の教室は基本的に誰もこないのだ。

 

俺はここで上田からメッセージが来るのを待つ。

俺の予想は「振られちゃった。庄司さん彼女いるって♪」と案外、メッセージなら朗らかに来るかな……。

ただ実際に会うとかなり精神的にキてて……という風になりそうだ。とりあえず、向こうが呼び出さなければ俺から呼び出すのもアリか?

「残念だったね。とりあえずご飯でも行く?今回は俺ごちそうするよ?」

くらいな感じか?

いや、これだと攻めすぎか?

下心アリアリみたいだし警戒されるか?

あくまでお友達ポジションだし、向こうが話したがるまで一旦、あっさりした返しがいいかな?

そんな風にしばらく考えているうちに卒業式の終了から1時間半が経とうとしている。

 

 

そしてSNSでメッセージが届いた音が鳴る。送信主は上田だ。きた……。

 

 

若干、震える手を抑えながらSNSを開きメッセージを読む。

 

 

「後押ししてくれてありがとう!」

 

 

 

お?なんだこのメッセージ……。続いて画像が送られてきた。

手と手が握られた、その部分だけの画像だ。顔は写ってないし誰と誰の手なのか分からない。

と言いたいところだが片方の手はいかにも女の子のか細い手、もう片方は剛毛とかそんな分かりやすい情報は無いものの、明らかに男の手だ。

 

 

 

……?

 

急にめまいがしてきた……。

 

上田が他人のこんな写真を撮って俺に送ってくるわけがないよな……。

 

つまりこのか細い手は上田の手か。

 

で、状況から考えてこの特徴の無い男の手は庄司先輩……しかないよな。

 

画面が滲んで見えだしたため一旦、目を閉じて深呼吸。

 

改めて画面を見直し、さっき見たのが何かの間違いではないことを確認する。

 

 

なんとか絞り出した俺の返信は一言だけ。

 

 

「おめでとう」

 

 

それ以上は、何も送れなかった。

上田からは「ありがとう♪」とだけ返信が来て、それ以上は何もない。「おめでとう」に対して「ありがとう♪」と返ってくると言うことは、何かの間違いやドッキリではなく、告白がうまくいったという意味なんだよな?

 

ここで、ふと思い出す。なんで俺がここまでガックリくるのか。

上田に対して好意を抱いていたのは事実だが、庄司先輩には彼女がいるのだから振られるだろう。

そんな風に考えていたからだ。

なのに告白は成功し2人は付き合い始めた。

 

じゃあ、あの演劇部の後輩女子はなんだったんだ?

この2日の間に破局した?

あんなにラブラブに見えたのに?

そもそも最初からそんな関係じゃなかった?

分からんな……。後輩女子の名前すら分からないのに情報が少なすぎる。

 

名前が分からない……ということは、まさかと思うが、あの後輩女子は庄司先輩の妹か?

そう思えば確かに話はつながる。

くっそ……名前くらい覚えるか聞いておけばよかった。

完全にぬか喜びじゃないか……。

 

ひとつだけ良かったと言えるのは上田に嘘を吹き込まなかったってことくらいか。

 

 

 

俺にとっては完全に終わったがな……。

 

 

 

ここまでスッキリ、片が付いたんだ。今日は逆に安眠できそうだ。

 

 

まぁここ数日は俺の誤解により、ずっと安眠していたんだけどな。

 

 

 

 

 

翌朝、目覚めて何も考えずいつものルーティーンで学校に向かう。

登校中に思い出したが、今日もまだ休みだな……。部活のある曜日だし、帰っても何もすることはない。そのまま登校する。

部室でも何も手につかず、ぼんやりとしていると昼も過ぎて午後になる。俺、もしかしたら廃人になるかもなぁ……と、頭の悪いことを考えていると部室のドアが開いた。

 

 

「おはようございますー」

 

 

挨拶しながら、上田が入ってきた。

 

「おっ鈴木くん!ちゃんと来てるね!」

 

いつもの調子で上田は声をかけてくる。

 

「ん?今日はいつもの原稿の日じゃないよな?どうした?」

 

俺は極力、平静を装いながら答える。すると上田は1枚の紙を渡してきた。

 

「はい、これ。新入生関係の日程表よ!」

 

そこにはいつ入試でいつ合格発表、いつ入学式などの細かい予定が書かれていた。

 

「合格発表と説明会の日から新入生争奪戦は始まっているわ!まずはビラ配りだから頑張ってね!」

 

いつもの調子で上田はスケジュールの書かれた紙を手渡してきた。そうか、もう新入生が来る季節なんだな。

 

「ビラの作り方は裏にまとめといたから!とりあえず合格発表と入学式ではビラ配り以外禁止のルールだし最初が肝心よ!頑張って!」

 

渡された紙の裏を見るとビラの作り方、具体的なビラ用の用紙の保管場所や各部で使える枚数、裁断機の使い方など細かい情報が手書きされていた。上田の気遣いが、かえって俺の心を揺さぶる。

 

「廃部阻止のための大事な新歓よ!じゃあ新入生獲得頑張って!」

 

いつもの明るい調子で上田は去っていく。果たしてこの間、俺はどんな顔をしてただろうな……。




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妹だったオチなんて現実で起きたら笑えませんからね!!!

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