さらに週明け、月曜日はまったく何も起こらず、気付いたら仮入部期間も最終日だ。
これまでの見学者、4名!
ここから30人入部なんて考えられないな。せめて虎谷は入部してほしいんだが……。
部室に行くと演劇部が集まっている。文芸部のスペースにはもちろん誰も……いた!
いつもは誰もいないのに今日は誰かいる!
少し浮かれてステップを踏みながら向かうとそこにいたのは上田だった。
いや、俺はそれでいいんだよ?
だが、日が日だけに新入生を期待してしまうじゃないか。
「ハロ~。ごめんね~新入生じゃなくて。」
俺の考えは上田に読まれていたようだ。まぁここまできたらどんと構えるしかないな。
「一応、私も部員のフリして新入生の子が入りやすいようにしているのよ。」
「分かってる分かってる。ありがとうな。」
ちょっと顔を膨らませながらプンプンしている上田はやっぱりかわいい。
「こんにちはー」
続いて、ちょこんと顔を出したのは虎谷だった。演劇部にも見学は来ていたし、どちらの部員も来てほしいと息をのむが……。
彼女はトコトコと俺たち文芸部の側へやってきた。
「こないだ渡したアレどうでした?」
「アレって小説か?ん、普通に面白いし続きが読みたくなった。上田は?」
「そうね~まず文体が丁寧でとても読みやすいわね。中身もとても面白いし鈴木くんが言うように続きが読みたくなったわ。」
「フフッ……あ、これお願いします。」
俺たちの感想を鼻で笑って流し、虎谷は何やら紙を取り出した。部長として俺が受け取る。
入部届。まさか俺がこれを受け取るような日が来るなんてな。
「じゃあ改めて……文芸部にようこそ!」
「ようこそ~!」
俺と上田で新入生の入部を歓迎した。
「フフッ……ありがとうございます。で、この人は?」
この虎谷という新入生は鼻で笑うような笑い方が基本みたいだな。
で、虎谷が気になるのは上田みたいだ。そりゃそうか。前はいなかったもんな。
「え?私?」
「はい。入学式の日に何か挨拶してましたよね?」
「うん。私ね、生徒会長の上田江美っていいます。文芸部員じゃないんだけど、時折、こうして文芸部の手伝いをしているの。1人じゃ大変だろうからね」
この部室に足繁く通うキッカケはそれじゃないだろ……なんてツッコミは野暮だろうな。
あれ?でもそれなら演劇部は辞めないか?なんかややこしいぞ。
まぁそこはそのうち本人が語るかな。
上田と虎谷が挨拶と互いに自己紹介をしてから俺は改めて部活のことを説明する。
「じゃあ部活はとりあえず週三回だから。明日からよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
虎谷はちょこんと頭を下げてから退室する。ってか俺の部活紹介って活動日だけかよ。
「良かったわね~新入生が来てくれて」
虎谷が退室したのを見てから上田が話しかけてきた。
「そうだなぁ。」
「でも、なんだか不思議な雰囲気の子ね」
「確かにそれは俺も思う。悪い子では無さそうだが。」
「歓迎会とかする?」
「あぁ……考えたこと無かったな。なんせ新入生が来るなんて初めてだし俺が新入生の頃から1人だしな」
「そうよね~。歓迎会とか打ち上げとかに連れ立って行く演劇部を寂しそうに見てたもんね。」
「おまっ……それも見てたのかよ」
「まぁ演劇部で人間観察は片っ端からするように指導されてたしね~」
「愛しの彼からか?」
「こら~!そういう言い方しないの!」
うっ……怒られた。が、否定はしないのかよ!
怒り方もマジな方じゃないし、さては言われたがったな?
俺、自分から地雷踏んで自爆したな。話を戻そう。
「新入生歓迎会やるなら上田も来るか?」
「え?いいの?」
「上田が良いならな。ってか仮に虎谷しか入部しなかった場合、俺と虎谷の2人で……っていう方が色々マズいだろ。」
「そう~?好都合じゃない?色々と手を出したりとか……」
「アホか!ってか生徒会長がそれを推奨すんな」
「へぇ~鈴木くん結構マジメなんだね」
「えぇ?あ、あぁ……?いや、今のは上田がおかしなことを言ってただけじゃないか?」
「そう~?私は後輩を可愛がろうねって意味しかないわよ~?」
「はーいはい」
「っていうかさ、私ばっかり色々話してるけど鈴木くん大丈夫?」
不意に謎の心配をされても焦る。
とりあえず上田と話をする分には楽しいから大丈夫だぞ。
「まぁ前からそんなに口数多い訳じゃないもんね。にしても他に新入生来ないわね……」
真横で演劇部に新入生が複数人来ているのを見るとやっぱりなんだかなぁと思ってしまう。
結局、他に入部届を持ってくる新入生もおらず、新入生は1人で確定してしまった。
「まぁ……こればっかりは仕方ないわね」
上田はあくまでフォローをしてくれる。が、ここで一応、俺も確認しとくか。
「廃部の件はどうなりそう?」
「部員が2倍になりました!で先生にはかけ合ってみるわ。結局どうなりそうかは虎谷さんにも言わなきゃだしね。」
新入生に入部した途端、廃部の予定を告げる。かなり酷な話だが……
「酷なのは先生たちよ……。先生たち大人の事情に私たち生徒会や文芸部みたいな少人数の部活が振り回されているんだから……」
いつも朗らかで明るい笑顔の上田が珍しく疲れた表情を見せた。
上田にこんな顔をさせた学校の運営にはキレたいし、なんなら上田の味方として守ってあげたいという気持ちはやはりある。
ただ上田の隣にいるのは俺じゃないんだよな。
最後の1文。
切ないなぁ……