日常系は推理モノより事件が多い!?   作:あずきシティ

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※この作品の世界ではコロナウイルスは猛威を振るっていません。
※大勢での会話をしながらの飲食は、感染症拡大のリスクがあります。


【17話】新入生歓迎会

そして新たに部員が2人になって初めての部活。さすがの上田も暇じゃないのか今日は来ない。

俺は一通り、部室のパソコンの使い方を教える。

 

「じゃあ今度から書いてきた作品はパソコンに打ち込んどいたらいいですか?」

「え?あぁ出来そうならやっててくれ。文芸部の共有フォルダに入れてくれるとありがたい」

「分かりました。」

 

虎谷は一度でサラッと俺が言ったことを把握し、原稿を取り出してパソコンに打ち込み始める。かなりスピードも速い。

俺としては文化祭まで時間もあるし、もうちょっと落ち着いてのんびりやっていっても良いと思うのだが。

 

「でも鈴木さんと会長が早く続き読みたいって言ったんですよ?」

 

あぁそれでか……。あまり無理はしないでくれよ。疲れました辞めますなんて聞きたくないからな。

 

「無理はしてないです」

 

言葉を投げると、ちゃんと返ってくるな。

素っ気ないし、何を考えてるかイマイチ掴めないこともあるが、根はいい子なんだな。

以降、虎谷は黙々とパソコンに打ち込んでいるため、俺も黙々と原稿を書くことにする。なんだか不思議な感覚だ。

 

「ちなみにノルマとかあります?」

「ん?んーこの半年くらいは一応、週1で短編か長編なら1話分は作ろうって決めてたかな。」

 

上田からの指示だけどな。

 

「分かりました。」

 

虎谷は短く返事をしたらまたパソコンに戻る。ってか新入生で入部して1日目で「分かりました」って言ってこれに乗っかるってマジで何者だよ。

 

 

……

………

 

 

しばらくして下校時間がやってきた。帰る前に虎谷に上田のことについて伝えておく。って言っても何曜日に来て原稿をもらい何曜日に来て感想を伝えてくれるとかそういう事務的な話だ。

 

「印刷が良いんです?それともデータですか?」

「ん?一応、データで渡してる。間に合わないときは手書き原稿かな。それで渡したら次来るときにはワードに打ち込まれてデータでくるんだよ。あまり頼りっきりも良くないからなるべくはデータにしてUSBで渡してるかな」

「フフッ……分かりました。渡す分はデータで用意します。」

 

また鼻で笑われた……。多分、深い意味は無いんだろうな。

 

「じゃお疲れ様です。」

 

気付くと虎谷はとてつもないスピードでパソコンを片付けて、荷物をまとめて帰っていく。なんだ……あの速さ。

俺も片付けて部室を出るが、やはり虎谷はすでに下校した後。なんちゅう速さなんだよ……。とんでもない新入生が入ってきたもんだ。

 

あ、歓迎会のこと相談出来なかったな。

 

--

 

 

さて、それから数日。彼女は週三回の部活のうち1日だけはパソコンに向かって原稿を打ち込み残り2日は原稿を書くか、俺と雑談するか、演劇部を眺めるか……というこれまでの俺の活動と同じ事をし始めた。まだ入部して1週間も経たないうちから、もうすっかり馴染んでいる。

ちなみに今日は上田が原稿の受け取りに来る日だ。下校時間まで30分ほどになってから俺はパソコンを立ち上げて、これ専用に使ってるUSBにデータを移すのだが……。

なんだか見慣れないファイルが3つくらいある。

俺のじゃないなら虎谷が作ったファイルか。俺はとりあえず聞いてみる。

 

「虎谷ー。上田に渡すデータ用意してるんだが、どれを渡せばいい?」

「全部いっていいですよー」

「はい?」

「3つくらいですよね?全部出来てるんでいいですよ」

「え!?全部!?もうこんなに書いたの?」

「短いですけどね」

「え!?すげぇ……やばいよ。ちなみに俺も読んでも?」

「いいですよ。」

 

俺はすかさず、虎谷の書いた小説を印刷しカバンに入れる。

出来上がったものの完成度がどの程度か分からないが、質より量だったとしてもこれだけあれば将来は有望だ。

それに入部前からあんなのを見せられているわけで、中身もとてもゴミとは思わない。

 

まさか小説家志望なのかな。まぁそのあたりは、機会があれば聞いてみるか。

今、いきなり聞くのはなんだかぁ……って感じだしな。

さて、上田に渡すデータの準備が出来て、後は上田が来るのを待つのみとなった。

 

「ねーねー鈴木さん」

 

ん?虎谷が声をかけてきた。何だろうか。

 

「ご飯行きましょーよ」

「はい?え?今から?」

「はい。」

 

お?いったい何が起きてるんだ?と、このよくわからない状況の中で、さらに上田がやってきた。

 

「お疲れ様ー原稿取りに来たよー」

 

とりあえず虎谷の発言は置いといて、俺は原稿を上田に渡す。

すると、虎谷はさっきの調子で上田にも声をかける。

 

「鈴木さんとご飯食べに行くんですけど、上田さんも来ます?」

「えぇ?いいの?」

 

上田は若干、驚いた顔をしながら俺と虎谷を見比べる。

というか俺はもう行くこと確定なんだな。

まぁいいが。

俺は虎谷と2人にされても何を話したらいいか、会話の迷子になりそうだし、上田の「いいの?」は俺に向けたものだろうから、俺は上田に軽くうなずく。

 

「本当にいいの?じゃあお言葉に甘えて……」

「じゃあ行きますよ。鈴木さん、はい準備して」

 

え?気付いたら虎谷は下校の準備が完了している。

上田はそもそも原稿を受け取ったら、そのまま帰るつもりだったらしく、もう行ける。

俺だけがパソコンを片付けたり色々と帰り支度をしなければならなかった。

この後、虎谷に散々、煽られながら急いで部室を後にした。

 

 

上田と虎谷と俺の3人で高校から近くの繁華街に向かう。

 

「どこ行くんだ?」

「どこがありますか?」

「うーん……まぁ色々あるわね」

 

3人が3人とも目的地不明かよ……。

結局、悩んでても仕方がないため、たまたま見つかったサイ世リヤに入る。

まぁ高校生だしな。ここは身の丈にあったところにしないと。

まだ早めの時間であり、すんなりと入店し席へ通された。

 

「せっかくだし、これを新入生歓迎会ってことにするか?」

「いいですよ」

「私もいるけどいいの?」

「いいですよ」

 

上田はどうしたいんだろうかと疑問だが、それはともかく3人の合意を得た上で適当にシェア出来そうなピザとかとドリンクバーを注文する。

荷物番もしながら交代でドリンクを取ってきたところで虎谷が話しかけてきた。

 

「じゃあ新入生歓迎会ということで文芸部の部長さん、ご挨拶をどうぞ。」

 

えぇ……ここで無茶ぶりかよ!?とはいえここは先輩らしくまともに挨拶しよう!

 

「えーこの度は御日柄もよく足下の悪い中、」

「どっちなのよ」

 

上田からツッコミを受ける。あれ?今日の天気ってなんだっけ?

 

「曇りでどっちでも無いんで続けてください。」

 

なかなかキツい指令が虎谷から飛んでくる。慣れてないことはやっぱり難しいが、続けるか。

 

「ご参加いただきありがとうございます。そして虎谷さん入部ありがとう、これから文芸部としてよろしくお願いします。それと……」

「お待たせいたしました、こちらマルゲリータになります。」

 

俺のしゃべりを割って店員が料理を持ってきた。つくづく邪魔されるなぁ。

 

「はい、無理お願いしてすいませんでした。」

 

虎谷が俺に謝りだす。

半笑いだし謝罪と言うより冗談半分の雑な振りに応えてくれてありがとうという感じだ。

 

「私はもっと短い言い回しが好みだなぁ~」

 

上田が冗談めかして茶化す。分かった分かった。次はさっぱり簡潔に

 

「これからよろしく!乾杯!」

「乾杯~」

 

バッサリとセリフを切られた俺の心情はともかく、こうして明るい空気のまま歓迎会が始まった。

 

「でさ、でさ、なんで文芸部入ったの?」

「なんとなくですかね」

「え~ほかに気になった部活とかある?」

 

上田は楽しそうに虎谷に話しかける。虎谷は俺と話すときと同じような調子だ。

ははーん、さては上田が後輩がいることを楽しんでるな?

上田は1年で演劇部を辞めているし、生徒会では会長として気を張ってるだろうし、落ち着いて後輩と遊べるというのが新鮮なのだろう。

俺からしても初めての後輩だし、かなりワクワクしているのが正直なところだ。

 

そんな風に2人の微笑ましい様子を眺めている。

ぼやーって眺めている様子を上田はどう思ったのか、俺にも話題を振ってきた。

 

「虎谷さんホントかわいいわ~。鈴木くん、どう?」

 

どうってなんだよ。俺はそのとんでもない文才に圧倒されっぱなしだ。将来は小説家になりたいとかなのか?と疑問には思う。

 

「いやぁ~特に小説家になりたいとかって事はないですね。」

 

なるほど。ホントになんとなく入部しただけってことかよ……。

うちの部に小説ガチ勢がいなくて良かった。下手をしたらプライドズタズタにされてしまうところだぞ。

 

「じゃあじゃあ将来の夢とかあるの?」

 

上田は将来の話を掘り下げようとする。

 

「ないですねー」

「へぇ~そっか……」

 

と、上田は話の掘り下げに失敗して少しだけ落ち込む。何だろう、虎谷は話のかわし方がうまい気がする。

 

「ちょっと……虎谷さん防御力高いわ……」

「そうだなぁ……まぁいい子なのは分かっているんだがな~」

「仕方ない。かくなる上は……」

 

後輩という存在に慣れていない上田は、普通に盛り上がりそうな話題を探そうとしたらしい。

 

「じゃあさ、じゃあさ、高校始まって3週間くらい経ったけど気になる人とかできた?」

 

それ、今のご時世、地雷じゃないっすかね……。

 

「うーん……」

 

虎谷は珍しく少しだけ困った表情をする。が、特に躊躇いもなく言う。

 

「無いですかね。というか私、彼氏いますしね」

「へぇ~そうなんだ~え?いつから?うちの高校?」

「4年くらい前からですかね?うちじゃないです。」

「4年!?めっちゃ長いじゃない!?へぇ~」

「まぁまぁ」

「鈴木くん残念だったわね♪」

 

はい?

何が?

 

確かに4年も付き合ってるなんてどえらい話だなぁとは思ったが、すごいなぁ。終わり。まる。だけだぞ。

なんというか表情は変わらないが、なんとなく虎谷が楽しそうに見える気もする。

やはり女子なんだろうな。こういう話題は好きなのだろう。

ただ俺は今、この手の話題に触れると自爆しそうだ。上田に任せておくことにしよう。

 

 

 

サイ世リヤの歓迎会はこうして数時間、だべりながら楽しく話をして終わった。

相変わらず虎谷に謎は多いし、今日分かったのは長く付き合ってる彼氏がいることくらいだが、それでも最初とは変わってきていると思いたい。

虎谷も上田と打ち解けたのか何なのか分からないが、最後には会長ではなく"上田さん"と呼んでいた。

 

「上田さんも文芸部に入部してくださいよ」

「う~ん、やっぱり会長としてそれは出来ないわね。ごめんだけど」

 

そんな声も聞こえ、虎谷も勧誘はしていたようだが上田は入部してくれるということはなかった。

 

今日は楽しかったし、虎谷もある意味では馴染んできたかと思うが……それ故に廃部になる話もしづらくなったな……。上田が廃部阻止に動いているわけだし、あれ以降、何も言ってこないから事態は好転したと捉えていいのだろうか……。




日常回ですね。
高校生がサイ世でたむろする日常。

あったでしょ?私の記憶にはないけどさwwww
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