7月初旬のテスト終わり、俺たち文芸部は6月号の冊子を配布場所に置きに行く。
ホントは6月末に配布したかったが、上田に「テスト期間中に出したら、それをダシに廃部させられるかも」と忠告され、やむなくテストが終わってからとなった。
いつの間に文芸部はそんな反社会的勢力みたいな扱いになったんだ。
ちょっと変なことしたら迫害されるのかよ。
まぁテスト期間中は部活禁止だし、仕方ないと言えば仕方ないのだろうけど。
そういうことでテスト明けの配布分までで文芸部としての実績を夏休み前にまとめて廃部阻止に向けて先生に直談判しにいく予定だ。
「先生に直談判しに行くときは虎谷も来るか?」
「嫌です。」
それ以上、入り込む隙間はなく断られる。虎谷と多少は打ち解けたつもりなんだが……、いや打ち解けてきたからハッキリ意思表示をするようになったと考えよう。
よそとの折衝、交渉は先輩として出来る数少ないことだしな。
と、ここで演劇部を覗いてみると例の後輩女子はなんとなくいつもより暗そうに見える。
気のせいかもしれないし、そういうタイミングなだけかもしれないが。
そんな風に思っていると、演劇部の休憩時間になって水原が俺のところにやってきた。
「ちわっすちわっす。」
「ん?どうした?」
水原は、こうしてたまに遊びに来るのでいつも適当にあしらっている。
「いやぁ~ほらあれ」
水原はそう言いながら目配せする。いつになく小声で話しかけてくるので、あまり他人に聞かせる話でも無いのだろう。水原の視線の先には例の後輩女子だ。
「別れたんだってさ~……で負のオーラが出ててヤバいから遊びに来たw」
だからリアルの会話で草を生やすな。
だいたい、なんでそれで水原が気まずくなってるんだよ。
「いやさぁ……ここだけの話、庄司さんの庄司さんはだらしないから、『すぐ別れるぞ~』『すぐ浮気されるぞ~』ってからかってたんだけどね。」
「最低だな。ってかなんだよ『庄司さんの庄司さん』って。」
「ストレートに言うと、庄司さん、女癖が悪いというか浮気癖?そういう話をよく聞くのよさ。うちとこの他の先輩とか他校の先輩から後輩から……」
「マジ?」
「だから、からかってたらマジでそうなってワイが気まずい。」
水原の話は全部を鵜呑みにするわけにもいかないが、上田の件と合わせて考えるに割とホントっぽい話に思える。
「ちなみに破局した理由とかは聞いたか?」
上田の件が気になるというのもあり、ついつい俺は水原の話に乗っかってしまった。
「なんかね、お察しの通り浮気っすわ。大学で良い彼女が見つかったんだとよ」
うわぁ……ってかその彼女を俺、繁華街で見たぞ……。
「私からしたら庄司さんのそういうところは尊敬できないし、破局した方が幸せでええとすら思うんだけどね。」
人の幸せを他人が語るべきではない、と水原に忠告したかったが今の話を聞いていたら言えないな……。
「鈴木さーん。ちょっと」
虎谷が俺を呼んでいる。水原との会話を打ち切って俺は部活に戻った。
虎谷は、なんかのサイトを開いて俺に言った。
「こういうのに応募とかどうですか?」
そのサイトには『学生小説大賞』などと書かれている。
「ん~良いかもしれないな。こういうところで取り上げられれば部としての存在を認めてもらえそうだ。」
それに、この大賞がどんなものか知らんが虎谷の文才なら何かしらの賞には引っかかるだろう。
「じゃあ応募しました~」
虎谷はあっさり言う。仕事が早すぎるだろ。というか俺がOKする前から準備してたな!?まぁ良い意味での暴走はいいか……。
「どの作品を送ったんだ?」
「ん~『クズな俺と今カノと元カノ(未来形)』です」
「ってそれ俺の書いたヤツじゃねぇか!!しかも内容がアレで校内誌への掲載はボツになったし」
「えぇ~だってこれ一番面白いですよ?それにもう送りましたし……」
「ま、マジか……」
「ちなみにこれ、未発表作品に限るらしいので」
「なるほど。ボツにならない虎谷の作品は、未発表のストックがなかったわけか」
「はい!」
いつになくキラキラした眼差しでドヤッている虎谷に文句は言えないな……。
それにこういう賞を見つけてきたのは虎谷の手柄だしな。とはいえやってくれたぜ……。
俺の一二を争う黒歴史をどっかに投稿しちまうとは……。
そんな虎谷のかわいい?いたずらもありながら今日の部活は終了となった。
いよいよ廃部阻止に向けて俺も先生と交渉をする時が近付いてきたな……。
どんなことを言ってどんな交渉をすべきか考えなくてはな……。
それ、私が言うべきことじゃないんだよなぁ
と思うことに限って言いたくなっちゃうことが多いですよねぇ
多いですよねぇ
多いですよねぇ……