日常系は推理モノより事件が多い!?   作:あずきシティ

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【29話】ワンチャン

この後、ボンゴの達人など適当なゲームで遊んでから、喫茶店に入ることにした。

店の外にある食品サンプルでパフェの上にケーキが乗った見るからにヤバそうな食べ物に上田が反応したからだ。

入店し席に案内され店員が注文を取りに来る。

 

「鈴木くん甘いのイケる?」

「まぁだいたいは……」

「じゃあショートケーキNYカットケーキパフェを2つでお願いします」

 

さて、食品サンプルではSNS映えしそうなヤバいヤツだったが、どんなものが運ばれてくるかな……。

 

しばらくして店員が高さ30cmはあろうかという物体を持ってきた。

パフェの上にドスンとケーキが乗った食品サンプルで見たヤツだ。いや、食品サンプルよりもワンチャンさらにデカいかもしれん。それが俺たちの目の前に置かれた。

 

「思っていたより大きいわね……」

「なんかパフェからケーキがはみ出してるし」

 

どうやって食べるんだよコレ。

一応、取り皿も渡されたが……、大人しく取り皿にケーキを落として食べることにする。

まぁ見た目はSNS映えだからこういう飾りつけになるんだろうな。

 

「え?このままいかないの?」

 

上田はパフェからケーキがはみ出した部分から手を着け始めている。よくそのままいくな。

 

「ん~!おいしい~!」

 

そうだな。にしても幸せそうな顔してケーキを食べるもんだ。

しかもはみ出したケーキも落とさず、うまくすくっている。ものすごい器用だ。

 

「やっぱり甘いモノはいいわね~!」

「確かにうまいな。これはいい」

 

ギッシリとクリームが詰まったケーキを食べ進める。

これはいろんな意味で破壊力抜群だ。

 

「上田は甘いものが好きなんだな」

「そうね~いろんな意味で甘いモノが好きかしら」

「いろんな意味?」

「スイーツはもちろん好きだし、他には甘過ぎる将来の夢とか?」

「ってそんな触れづらい自虐ネタかよ」

「まぁ見通しと自己分析は甘かったわね~」

 

中学生の自己分析とかがしっかり出来過ぎていたら逆に怖いわ。

 

「上田はもう役者になる気は無いのか?」

「無い!!…………けど、そんなきれいさっぱり諦められるものかというと正直、微妙ね……。でもまぁこのまま大人になって、まぁまぁな会社に就職して、それっぽく……っていうのも、悪くはないかな。それも一つの幸せよ」

 

なんとなく本心じゃないなぁ、と直感する。

が諦めたからこそ、こんな風に言い聞かせているのかもしれない。

俺は1年生のとき、同じ部室で上田のことはあまり印象に無い。

つまり特別に大根役者だったとかって言う訳じゃ無いはずなんだが……。

本人としてはそれでは不足なんだろう。

 

「それに今は生徒会長として色々経験させてもらったし。就職の時に面接の話の種くらいにはなりそうじゃない?だからあんまり深く考えるようなことは無いわよ。」

「なるほどな……。確かに演劇部でいたままなら生徒会長の経験は出来なかったか……ん?いや、兼任は出来るよな……?」

「先生曰わく『会長職は掛け持ち出来るほど甘くないから帰宅部じゃないと』だって。まぁ本音は廃部とかを断行するのに部活してる人じゃ都合が悪かったからだと思うけど」

 

上田が生徒会長なのはそんな裏事情まであったのか……。

 

「おかげさまで大人の世界の………まぁ汚さ?みたいなのも知ってしまったし。」

 

そう語る上田の顔はどこか寂しげだ。ちなみにそんな話をしながらも上田はケーキを食べ進め、ケーキはあと一口にまできている。

それをパクッと食べて、ほっこりした顔をしている。俺はまた思いつきで気になったことを聞いてみる。

 

「ちなみにこの将来の夢から今までの経緯って他に誰が知ってるんだ?」

 

親と親しい友人、庄司先輩、あとはもしかしたら石橋先生あたりかな。

そう思っていたが答えは意外なものだった。

 

「夢だった話も含めて知っているのは鈴木くんだけかな。」

 

えっ?俺だけ?

 

「まぁ聞かれたら答えてもいいかなぁって人は何人かいるけど、聞かれないし」

「なんか俺がデリカシー無かっただけじゃないかな……」

「いやいや、それはないって」

 

上田は笑顔で否定してくれるが、確かにデリカシーが無かったかもと思うのは事実だ。

 

「それに退部した理由とかも誰にも言わなかったし……ホントはちょっと誰かに聞いて欲しかったところもあるかな」

 

女の子は単に話を聞いて欲しいだけ、ってどっかで聞いたことがあるな。

そういうことか……?

 

「って私の話は前もしたじゃん。今日は鈴木くんの内緒話を聞くわよ~」

 

そういえば、そんなこと言ってたな。ただあいにく、俺は公明正大に生きているもんだからな。

 

「そんなこと言って~。虎谷さんとか彼氏いなかったら狙ってたんじゃないの?」

 

まぁ無いな。いい子だとは思っているんだが、それとこれとは話が別だ。

 

「ふぅ~ん。じゃあさ、じゃあさ、部活じゃなくてクラスとかでも気になる子とかいないの?」

 

マジか……。話の方向はそっちに向かうのか。

それ俺に告白しろと言っている……わけは無いだろうが、そのチャンスになるのか?

 

俺がパタッと黙ってしまったのを上田はどう思ったか知らないが、彼女は話を続ける。

 

「沈黙……ってことは、いるんだね~。まぁ面白がってるのもあるけど、私さ一応、生徒会長だし顔も広いつもりだから協力してあげるわよ?ほら言っちゃいな」

 

協力っていうか、あなた自身なんですが……。

 

「ほらほら、ここだけの話にしとくからさ。……それとも、私ってそんなに信頼無い?」

 

 

 

「……上田だよ。」

 

 

 

 

 

「………えっ?」

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