「ふぅ~ん。じゃあさ、じゃあさ、部活じゃなくてクラスとかでも気になる子とかいないの?」
マジか……。話の方向はそっちに向かうのか。
それ俺に告白しろと言っている……わけは無いだろうが、そのチャンスになるのか?
俺がパタッと黙ってしまったのを上田はどう思ったか知らないが、彼女は話を続ける。
「沈黙……ってことは、いるんだね~。まぁ面白がってるのもあるけど、私さ一応、生徒会長だし顔も広いつもりだから協力してあげるわよ?ほら言っちゃいな」
協力っていうか、あなた自身なんですが……。
「ほらほら、ここだけの話にしとくからさ。……それとも、私ってそんなに信頼無い?」
「……上田だよ。」
「………えっ?」
煽られて、つい言ってしまった。まぁいつか伝えようとは思っていたしな。これほどのタイミングは無かったから良いだろう。俺は改めて言う。
「改めて、俺は上田のことが好きなんだ。付き合ってほしい。」
「えっ……?私?」
「はい」
本人は想定しない切り返しだったようで、なんだか困惑している。
なんなら俺も言う心積もりなんてしてなかったからな。
どうやって話を続けたらいいか分からない。
やがて先に話し始めたのは上田だった?
「ドッキリ?それとも罰ゲーム?」
もちろん、テッテレー!ドッキリ大成功とはならない。
「ドッキリでも罰ゲームでもない。ガチ……」
「えぇ?えー……どの辺が……?」
何?急に志望動機を聞かれるとか面接か?とはいえ答えて欲しいなら答えなきゃな。
「なんてったってかわいい。いつも良い笑顔を見せてくれるし話しやすいし、それでいて真剣に物事には向き合ってくれるし、一緒にいて楽しい。あとは直感とか……」
俺はこれまで言葉にしなかった感情を、なんとか言葉で絞り出す。
恥ずかしくて多少、うつむきながらしゃべってる俺に対して上田はニコニコと聞いていた。
そして俺の口上を聞いた後は、嬉しそうに話し始めた。嬉しそう……?だったと思う。
「はい、よくできました!……鈴木くんがそんな風に想ってるなんて知らなかったし、人から告白されることなんてないから、なんて言ったらいいか私も分からないなぁ~」
えっ!?まぁ、唐突だったのは認めるが……。
そこで上田がそれだけ言って黙ると俺も色々となにを言えばいいのか分からないんだが……。
とはいえ、分からないで済ますわけではもちろんなく、少し沈黙の後に上田は話し始めた。
「ありがとう。鈴木くんの気持ちは分かった。……ただ私の気持ちが分からない……もちろん、鈴木くんのことは好きなんだけど、恋愛的にどうかと言われると……ちょっと分からない……。」
上田は眉をハの字にして笑いながら謝ってくる。
上田にこんな顔をさせるなんて、なんかこっちこそ申し訳ないな。
「……とりあえず保留でいいかな?」
「保留?」
「うん。『とりあえず友達からで』とか言うところなんだろうけど、そもそも私たち友達じゃん?だから保留。ゴメンね、すぐに答えは用意できない……。」
「そっか……。」
社交辞令……とは思いたくない返事だ。上田の性格的にも社交辞令ではないはず。
「よし、じゃあ保留を解除してもらえるように頑張る!」
「そ、そんな……私のために頑張るよりもっと他に良い人がいたり……」
「じゃあ頑張らずに頑張る!」
「プッ……くっくっくっ……何それハハハ」
「おっ笑ってくれたな。いつもの笑顔に戻ってくれたな」
「だって『頑張らずに頑張る』って一行で矛盾してるんだもん。」
そう言いながらツボに入ったのか笑続ける上田。
そうだよ、俺が見たいのはこの笑顔だったんだ。
俺はアイスが溶け始めたパフェを食べながら、上田を見る。上田はいつの間にかパフェは食べ終えていて、それで俺をつついて話を聞こうとしていたらしい。
そしたら告白に繋がったと。
待たせるのも良くないので俺もパフェをさっさと食べる。あぁもちろんおいしく味わってはいるからな。一応、振られたわけじゃないしパフェの味も分かる。おいしい。
そして会計の時には俺は先に店を出された。
「さっきの約束、次は私に大人しくおごられること!ほら先に出といて」
なんとなくカッコ悪い気もしたんだが、上田にもプライド的なものはあるのだろうな。
「鈴木くんお待たせ~」
「ごちそうさまでした」
「さっきのサイ世リヤもあったしお互い様よ。……そっかぁ……もしかして今日ってデートしたくて私を誘ったの?」
「お?おぉ……その通りだな。」
「ふ~ん。そっかぁ~じゃあ手くらい繋ぐ?」
「はい?」
「それくらいいいわよ?ほらデートなんだし」
そう言いながら上田は手を差し出してきた。
参ったなぁ、そんなことは考えてなかったんだが……とは思いつつその手を握った。
「ってカッコつけて言ってみたけど、かなり恥ずかしいわねコレ……」
「すまん、離そうか?」
「……いや、いい。この後はどうするの?」
いいんかい!?
どういうつもりかは読めないが、上田の手はあたたかく、でも夏なのにそのあたたかさが心地よかった。と気持ち悪い感想を垂れ流す前にこの後の予定だな。
時計を見ると夕方。そろそろラッシュアワーも近付いてくる頃だ。
「実はそろそろ帰ろうか?って思っててな」
「え?あぁそうなんだ。あんなこと言うくらいだから、もっと夜遅くまで色々予定を考えていたのかと」
「うーん……付き合ってもいないし、今日告白するつもりも無かったし、夜遅くまで連れ回すのは悪いなって考えていたからな」
「そっか……鈴木くん真面目だね。」
「そりゃ一応、真剣勝負だからな」
「ハハッ……じゃあ改札まで送ってくれる?今日はそこで解散ね」
「ういっす!」
そのまま歩いていき、割とすぐに駅の改札までたどり着いた。
「じゃあまたね!」
そう笑顔で手を振る上田。俺も振り返す。
「おぉまたな!」
上田はそのまま改札から消えていった。俺も帰るか……。
そう言えば最後に『またね』って言ってたな……。今日は楽しんでもらえたのかな……。