文化祭まであと数日。文化祭で販売する同人誌は印刷が完了しあとは製本するだけとなった。自分で言うのもなんだが、かなり順調に行ってる。
理由は明確で虎谷がすべてをちゃっちゃと片付けてしまうところにある。彼女のおかげですぐに物事が片付いてしまうのだ。
ちなみに同人誌の中身もだいたいは虎谷の作品になっている。先輩のメンツなんて関係ない。
「2冊にまたがって掲載しているのは鈴木さんの作品ですけどね」
虎谷はそんなことを言っているが、それも俺に作品まとめる能力が無いからの話だ。
「だいたい俺作のんなんてそれ1本だけだろ」
「私は気に入ってますよ。」
「ありがとよ。それを信じておくぜ」
「多分、2冊にまたがったおかげで2冊とも売れますよ」
虎谷がなんだか優しいコメントをしてくれている。今回は真に受けておこうか。
「そうよ~!私もちゃんと買うから、自信を持っていきなさい!」
そう言うのは上田だ。
ちなみに上田は文化祭を前に生徒会長として文化祭の配布物などはすべてに目を通しているらしい。祭り上げられただけの会長なのにご苦労さまだな……。
そして今は人数が少ない文芸部のために今は製本作業の手伝いに来てくれた。本当にありがたい。
「まぁ困ったときはお互い様よ♪」
「上田が生徒会長として困ってるのを見たこと無い気がするんだが……」
「ん?そんなことも無いかなぁ。石橋先生の要求に合わせて詭弁考えるの結構大変なのよ?」
「あー……『今のままではいけないと思います。だからこそ今のままではいけないと思っている。』みたいな?」
「そんなの却下されるわよ」
オレ流ポエムへの評価は手厳しいなぁ。まぁ詭弁を考えるのは向いてないからそれ以外のところで何かサポート出来ることがあればするか。
「って言ってももうすぐ文化祭で私の任期も終わるけどね。」
「そうか……割と早かったな。」
「終わってみるとあっという間ね……ってまだ文化祭本番が残ってるわよ!」
「あっそうだったそうだった。」
「あれ、前日の準備とかヤバいのよ?」
「そうなのか?」
「私も経験無いから分からない」
上田はそう言いながら笑う。
確かに生徒会長になる前は生徒会の役員とかでも無かったわけだし、知らないか……。
「じゃあ鈴木さんも手伝いに行ったら良いんじゃないですか?」
虎谷がいきなり意味不明なことを言い出した。
「あ!それ良いわね!」
上田もそれに乗っかる。なんでそんなノリノリなんだ!?
「だいたい俺は生徒会に入ってないのにダメだろ」
「あら、ボランティア的なのは募集してるし大丈夫よ♪」
「それ誰が参加するんだよ……」
「ほとんど参加者はいないわね……文化祭に参加する部活とかだと、自分のとこで精一杯みたいだし」
確かに言わんとすることは分かるが……。
「それにほら、大人たちの陰謀で生徒会役員でまともにやる気ある人が……」
「あっ……」
どうやら、俺に拒否権は無いらしいということを察する。
「それに困ったときは……?」
「お互い様だな。よし、じゃあ前日は準備を手伝うことにするよ」
「ありがとう♪」
「いいぜ。今は文芸部の手伝いをしてもらってるわけだしな。」
よく考えれば俺個人としては拒否する理由も無いわけだしな。
文芸部の方が前日に準備出来ないという点はあるっちゃあるが……。
「今日、全部製本するんでそれは大丈夫ですよ」
虎谷はきっぱり言い切った。確かに異様にハイペースな虎谷を見てると行けそうな気はしてくるな。
しばらくして下校時間は過ぎてしまったが、予定していた分が完成した。
これまでに見たことのない冊数だ。
「お疲れ様!」
俺の声に2人はパチパチと拍手する。
「これだけあると壮観ね~」
「これを売り切れば存続の道も……!」
「見えるかもしれないわね!」
上田はいつも通りににこやかに返してきたが、さすがに売り切れば門前払いされる現状は打開できるだろう。
「じゃあ私は生徒会の方を覗いてから帰るから!お先ね!」
上田はそう言って生徒会室へ向かっていった。俺たちは帰るとするか。
と虎谷はいつものように最速で下校せず残って話しかけてきた。
「ねーねー。あれで良かったですか?」
問いかけの意味が分からず、聞き返す。
「はい?何が?」
「上田さんに手伝ってもらったお礼の件」
なるほど。そのことか。
まぁ本人が困るくらいなら俺が手伝いに行くくらいナンボでも……って感じだな。
なんなら虎谷も来るか?
「いえ、私は邪魔をする気はないので」
「邪魔?いやいや虎谷の能力ならまさに百人力だろう。」
「フフッ……じゃあお疲れ様です~」
虎谷は意味深な笑いを残して帰っていく。
出会って半年になるが、やっぱり何を考えてるか掴めないときはあるなぁ……。まぁいいか。俺も帰ろう。