こうして江美と俺は付き合うことになった。
しかしまぁ分かっていたことだが彼女は根はとてもまともな性格だ。
初詣は一緒に行ったが、それ以外には学校で会うくらいしかない。
SNSでやり取りするのは付き合う前からやってたしな。
まぁそれも時期が時期だし仕方ない。
学校が自由登校になると、いよいよ会うこともなくなってきた。
まぁこれだけの甲斐もあり俺は地元の大手企業に就職した。
俺たちの通う高校はなんちゃって進学校だしFラン進学して後で詰むよりは、たまたまあった大手企業とのご縁を選ぶことにした。
そして今日は江美の第一志望の大学の合格発表だ。
本人の強い希望で俺も一緒に発表を見に行くことになった。
朝、駅で待ち合わせる。
「お はよ う 善 治 く ん」
「おはよう……うわっぎこちない!」
「そ そ ん なこと な いわ よ」
半月ぶりに会う江美はなんだかすべてがカクカクした動きをしている。
「善治くん は 緊張 しない の?仮にも 彼女 の 第一 志望よ?」
「緊張するが……まぁ俺は受かってるって信じているしな」
「ふふっ……なんかそれ聞いて安心して緊張が解けたわ……行きましょ」
そう言いながら彼女は目的地と反対に行く電車に乗ろうとするので手を引いて止める。
緊張解けてないじゃないか……。
「ほら、そっちじゃないだろ」
俺は江美の手を引いて連れて行く。そしてちょうどやってきた電車に乗る。
「江美、本当に大丈夫?」
「ちょっと大丈夫じゃないかも……今思うとあの問題とあの問題と……」
ありゃ……こりゃ相当ナーバスになってるなぁ。
しばらくして大学の最寄り駅に着いた。
「降りるぞ。ほら」
「善治くん……」
「ん?どうした?」
「手握ってて……」
「はい」
俺は江美の手を握って、そのまま電車を降りる。手が冷たい。相当だなぁ。
「手めっちゃ冷たいけど大丈夫か?」
「1人じゃ無理……」
「分かった分かった一緒に行くから。」
俺はあくまで大丈夫と信頼しているからな。こうなったら俺が引っ張っていくしかないだろう。
そうしてなんとか、番号が掲示される近くまでやってきた。番号のところは人が群がっている。
「善治くん、ここで待ってて……」
「1人でいけるか?」
「大丈夫……ここまで来たら平気……」
いつになく笑顔も元気もないまま江美は俺の手を離すとそのまま番号の方へ向かっていった。
体感にして数十分、実際には数分して江美は戻ってきた。
俺が元の位置から動いてなかったことを確認してから駆け出して俺に飛び込んでくる。
急に積極的に来たなぁと思うと俺に抱きついてきた。
こんなことは初めて過ぎて戸惑ってしまう。
「善治くん……ここは抱きしめ返すところだよ……」
「お、おう……」
そうは言っても江美は普段はそこまでには見えないものの案外、華奢で力を入れたらポキッと折れてしまいそうだ。最大限、優しく手を添えるレベルで抱きしめる。
「あった……あったよ。受かってたよ……」
「おめでとう……」
数十秒、その体勢のあとは自然に離れてお互いにとびっきりの笑顔でハイタッチ。
「イェーイ!!」
うん、やっぱり江美はそっちの笑顔の方がよく似合う。
「ちょっと親にも言ってくる。」
そう言って江美は一旦、少しだけ離れて報告の電話を入れた。
江美が報告を終えてから俺たちは近くの喫茶店に入る。
第一志望の試験が終わった後も、まだ滑り止めがあるとかで勉強していたため、ひさびさにゆっくりおしゃべりという感じだ。
「合格おめでとう」
「ありがとう~!」
「ってことで善治くんには言っておきたいことがあるんだけどね。」
「どうした?改まって……」
「私さ、昔は夢があった話って覚えてる?」
「役者になりたいっていう話か?」
「そうそう!そのことなんだけど」
「もう一度目指してみたい……って話か?」
「えー!?先に言っちゃうの!?ってかなんで分かったの!?」
「まぁ諦めたって言ってても舞台に立ったりするのが好きなんだろ?文化祭、後夜祭でそれはよく分からせてもらったしな」
「そう……大学入ったら、勉強もちゃんとするわよ。でもその中で劇団のオーディションとかに参加したりしてもがいてみようと思うの。」
「なるほど。」
「でも善治くんが『ダメだ。おまえに才能は無い』って言うなら……」
「言うわけ無いだろ。江美の人生なんだからさ。才能云々は分からないが、江美はもっと自信を持って良いと俺は思うぜ?」
「そうかな……。じゃあさ、じゃあさ。善治くんは応援してくれる?」
「もちろん!」
「……ふふっ。言質はとったからね」
「あぁ。頑張れよ」
江美は新たな人生の第一歩を歩むことを決めたわけだな……。
俺も4月から社会人だしな。どんなことが待っているのやら。
「ちなみに、私が夢を諦めなかったのは、どっかの誰かさんが諦めない大切さを見せつけてくれたからよ♪」
「なるほどな……だったら、なおさら俺は応援する立場だな。」
そう言って笑い合いながら時間は過ぎていった。
いつまでもこんなまったりとした時間が続くことを祈りたいもんだな。
そしてこう笑いあえる幸せをずっと持って生きたいもんだ。
「改めてこれからもよろしくね!」
「あぁ、よろしくな!」
おしまい
ということで、これまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました
この二人の物語は僕が書く部分についてはこれでおしまいです
この先のふたりの未来はお二人にお任せしようと思います
それではまた、何かでお会いすることがあれば