日常系は推理モノより事件が多い!?   作:あずきシティ

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【9話】ハッタリーポッター

新年だ。気付いたら年が明けた。

まぁお正月なんでお正月らしく家でぐーたらさせてもらった。学校も休みだし最強だな。

そうは思いつつ、本気で何もしていないタイミングは何故か寂しさを感じる。贅沢慣れかな。あぁ恐ろしや。

 

 

ということで、気分転換も兼ねて初詣に行くことにした。家の近所の神社ではなく、少しだけ電車に乗って、有名な神社へ行く。人混みは好きじゃないが、大勢の人で賑わっている場所の方が気は紛れると思ったからだ。

神社の最寄り駅に着くとそこから神社までは大混雑だが、片側通行にするなどの対策は行われており、人の波におされて、流されるがままに神社まで向かっていく。感覚としては向かうと言うより運ばれるの方が、しっくり来るんだが。

 

 

「お、鈴木ー」

 

流されて神社に向かっているとそんな声が聞こえて立ち止まる。帰る客の波の中から声の主が姿を現した。庄司先輩だ。珍しい人と会うなぁ。

 

「あけましておめでとうございます。」

「あけましておめでとうございます。」

 

いつもフランクな庄司先輩だが、新年一発目の挨拶だけはとても丁寧だ。さらに庄司先輩だけでなく、演劇部員たちもいっぱいいる。

 

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

「あけましておめでとうございます。こちらこそ今年もよろしくお願いします。」

 

礼儀正しい演劇部員たちが挨拶してくるので俺も礼儀正しく挨拶を返す。そして

 

「鈴木くんも初詣?あけましておめでとうー今年もよろしくね!」

 

上田もそこにはいた。

 

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」

 

俺も文言こそ変わらないが、さっきの演劇部員たちの時と違い軽い言い方で挨拶する。

 

「これから初詣なんだ?私たちはこれからカラオケなの。じゃあまた学校始まったらね~。」

「おう。じゃまた学校始まったらな~」

 

人混みの波の中で長時間立ち止まる訳にもいかず、これだけの挨拶で俺たちは別れる。

 

演劇部with上田でカラオケか。楽しそうだな。というか元は同じ部活とはいえ、ホント仲良いなぁ……と、正直うらやましい。マジでなんで辞めたんだよ。

 

 

結局、その後は誰かに会うこともなく初詣を終わらせた。演劇部とは同じ部室だしカラオケ乱入も考えたが、よそう。俺は同じ部室なだけの部外者だからな。

 

 

結局、冬休みはそれ以外に特にこれと言うこともなく始業式の日を迎えた。この日は部活もなく終了。そして翌日、新年初部活の日を迎えた。いつもは上田の来ない曜日だったが、今日はやってきた。

 

「改めて、あけましておめでとうございます。今年もよろしくね♪」

 

そんな月並みな挨拶を交わす。ちなみに演劇部は何か仕込んでるらしく、しばらく部室ではないところで活動するらしい。

 

「また来週から週1回、原稿もらうから頑張ってね!」

 

そういえばテスト前までそんなことしていたなぁ。ほんの1ヶ月前なのに、なんだか既に懐かしい気持ちになる。

 

「それと前に長編なら6週以内って言ったけど、あれはクリスマスフェスティバルに間に合わせるためだから、もうどんだけ長編でも良いわよ?私が最後まで読みたいから卒業までに終わらせては欲しいけど。」

 

お世辞なのか事実なのかは別として読みたいと言ってくれるのは純粋に嬉しいな。

 

「だからその気ならハッタリーポッター並みの長編もどんと来いだよ!」

 

それは俺ができる気しないな。

 

「じゃあ今年も頑張ろうね!いざ廃部阻止!」

 

最初は乗り気じゃなかったが、上田のこの笑顔を見てると裏切りたくはないような気持ちになる。俺って単純だな……。

上田が退室し、演劇部もいない。少し寂しい。ハッタリーポッター並みのモノは書けないにしても、数週間連続モノくらいは書きたいかなぁと構想を練る。

 

ただ気持ちとしては一番最初の読者である上田の好みに合わせたものにチャレンジしてみたいというような思いがある。

とはいえ、何を書いても、まともかつ肯定的な感想をくれるものだから、上田がどんな作品を読んでみたいのかがさっぱり分からん。

 

確かに俺の部活だし、俺が書きたいから書くというのが一番だと言われれば、その通りなんだが……廃部阻止の件といい、部活動の内容といい俺というより上田が主導権を握っているような気がするんだよなぁ。生徒会長をやってるくらいだし、上田には人を束ねたり動かしたりする才があるのかもしれないが。ただ、そうして上田が主導権を握ったことは確実にいい方に進んでいる気がする。

 

それに結局、上田には世話になりっぱなしだし、それのお礼もしなければならないと思いつつ出来ていないな……。

 

そういえば、上田が言っていた気になってる人って誰なんだろう。あの会話の流れだと、気になるのは恋愛的な意味だよな……多分。上田の交友関係は広いからなぁ……上田のクラスも俺はよく知らんし、生徒会関係も分からん。

演劇部関係も他校まで知ってる奴はいそうだし、俺がいる文芸部のような弱小部活で他の部も廃部危機とか言って首を突っ込んでるかもしれん。

ただ俺のところに来るのは生徒会長としてではなく個人としてとも言っているし、まさか俺……?ってそれはさすがに自惚れすぎだな。

 

 

 

……いかん、小説を書くのには必要ないことばかり考えてしまう。逆転して考えよう。このモヤモヤ感を利用して恋愛小説を書いてしまおう。

 

俺はメチャクチャなことを考えながら、メモ帳に登場人物やストーリーを考えて書いていく。これを小説にする……って恥ずかしいな。ただ多少の自己犠牲を使えば更なる情報は引き出せるかもしれないし、何より俺が書くのはフィクションだから。割り切ってしまえ。これまでと違う系統の小説だが、上田はどんな顔をするか楽しみだ。

 

 

俺が一人勝手に恥ずかしい思いをしながら書いた恋愛小説は上田には、いつものように好評だった。

 

そういつものように、だ。

 

つまり狙ったような効果は得られなかった。ただ書き始めると書いてるのは楽しいため、やっぱり挑戦は楽しいなぁと思う。

上田は、ここまでなることを想定して演技をして俺を釣ったのか?……いやいや、さすがにあり得ないか。なんとなく上田が超人のような気がするときがたまにある。

 

 

 

さてさて、そんな風に思っていながら数週間が経った。

今日の部活は上田が来る日のはず……なんだが来ない。クラスが違うから分からないが、もしかして風邪でもひいて休んでいるのか?

そうも思ったがカレンダーを見て、分かった。

 

そう今日は2月13日だ。

 

確かに単純な体調不良等の可能性もあるが、日付から考えると明日の準備でもしてるんじゃないかと考えた方が自然だと俺は思いたい。

 

というか、 上田が体調不良で苦しんでいる姿を見たくないっていう方が強いのだが。

 

嘘かホントかは分からんが、あんなことを言っていた訳だし、上田にとって明日は大事な日なのかもしれんしな。今日、文芸部に来ないのは仕方ない。とりあえず平常通りに部活をして、下校時間となる。

 

そういえば上田には感謝していて、何かお礼をしたいと思いながらも、何もできていないことを思い出す。年末から、そのことを考えていた。

明日、2月14日はイベントデーだ。ちょうどいい機会だな。

 

俺は下校途中にコンビニに寄る。棚には色々なチョコレートが陳列されていて、どれも美味しそうだ。

さすがに手作りするだけの能力は無いし、そもそもなんとも思っていない(はずの)男子から、そんなのを貰っても上田は困惑するだろう。百貨店の高級品だと気を遣わせるかもしれない。そこで俺はコンビニの中の高め商品をプレゼントすることにした。

 

色々見て回るとゴディババアのチョコレートを発見。これなら高級感もあるし喜んでもらえるんじゃないかな。

 

コンビニなので包装はなく、店員はそのままコンビニ袋に入れる。これでいい。飾り気は無いし、余計な気は遣わせないはずだ。

 

コンビニを出てからは明日、このゴディババアをどうやって渡すか考える。

クラスに乗り込むか?いや、教室はあの期待しながらも期待していない風を装う空気でどこも気まずいだろうし。一応、人目につかない場所の方がいいか?下駄箱に入れる……のは古典的過ぎるな。

放課後渡しに行くか……。上田なら生徒会室にいるだろうし。

それと聞いた話だが、生徒会は上田以外はまったくやる気がないらしい。

これも大人の事情で、どうやら生徒会がやる気で色々やると教師の仕事も増えるから、あまりろくでもなさそうで何もしなさそうな生徒ばかりを担いで生徒会役員にしたと上田から聞いた。

じゃあ、そこで会長だけは何故、やる気のある上田なのかというとこの無気力生徒会でも束ねて最低限必要な活動をしてくれて、なおかつ教師の言うことを素直に聞いてくれそうだからだということらしい。闇が深いな。

 

そういうわけで、生徒会として必ず何かが必要なタイミング以外は生徒会室には上田しかいないということらしい。

 

つまり放課後の生徒会室なら上田しかいないはずだし、日頃の感謝だけを伝えてゴディババアのチョコレートを渡し帰る。うん、一番いい作戦だ。

 

まぁ生徒会室に上田すらいなかったら後日にすればよい。俺が買ってきたのは市販のチョコレートだ。感謝を伝えたいのが一番の目標だから、2月14日に必ずしもこだわる必要は無い。

 

それならそもそも2月14日の上田は個人的な用事で忙しいかもしれないし、最初から後日に渡そうかな……。

 

いや先延ばしにすると結局、恥ずかしくなったりして賞味期限が切れたりして渡せなくなりそうだ。14日か遅くとも15日には渡そう。

メッセージカードを用意して、簡潔に……

 

いつもありがとう。これからもよろしく。

鈴木善治

 

これでヨシ。これならなんも深読みされることも無いだろうし。あとは明日だな。

 

翌日、2月14日バレンタインデーを迎えたが、実際問題は特に何事もない平日だ。下駄箱に何か仕込まれていることも無ければ、誰かが休み時間に尋ねてくることも無かった。当然と言えば当然だがな。

 

上田の姿を見ることも無かった。まぁ上田と俺はクラスも離れているし、放課後以外は見かけることもほとんど無いので、いつも通りと言えばいつも通りだ。ゴディババアのチョコレートはちゃんと持っている。

家に忘れるなどという古典的なボケはしなかった俺を褒めてくれ。

 

 

そして放課後がやってきた。

 

 




さぁさぁ初詣から一気にバレンタイン前半まで来ましたよ~!

闇の深すぎる生徒会……
決してほかの登場人物を出すのがめんどいとかそんなんじゃないですよww

でも今回はね~極力モブキャラは出さないようにして名前がついてる登場人物は全員が何かしらで登場人物のうち誰かしらとは濃厚接触という形にしたいと思ってます。

ってこんなこと言うとネタバレになるかもだなwww

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