パワプロアプリの冴木創ちゃんがカワイイ。 作:なんJお嬢様部
お゛ぉん、冴木ぢゃん゛、ガワ゛イ゛イ゛な゛ぁ!!!
冴木ちゃんのファンがもっと増えるといいに゛ゃあ゛!
パワプロアプリの冴木創ちゃんがカワイイ。(一部修正)
ジリリリ、ジリリリ……
「…………ふぁ~、もう朝か」
目覚ましの音で俺の意識が覚醒する。
寝ぼけ眼で壁のカレンダーを見る。今日は土曜日だ。
小中高と全てを野球に捧げた野球少年の俺にとって、土曜日は一日中野球ができる最高の日だ。
少しくたびれたエナメルバッグに着替えなどを一式詰め込んで素早く出発の準備をする。枕元のスマホを取ろうとしたときに着信音が響く。
どうやらトークアプリにメッセージが入ったようだ。差出人を見るとチームメイトの矢部君。
(何か、急な連絡かな?)
俺はすぐにスマホのアプリを開いた。
~ アプリ起動中 ~
鬼畜眼鏡:○○君、朗報でやんす!
○○:どうしたの矢部君?
鬼畜眼鏡:今日の練習は監督の急用でなくなったでやんす!
○○:それホント?
鬼畜眼鏡:伝言係の鬼鮫君から連絡が来たから間違いないでやんす。
○○:あー、なら間違いないね。せっかく準備したところだったのに。
鬼畜眼鏡:○○君は真面目でやんすねぇ。そんなことよりも今日はオフでやんす!みんなで豪遊するでやんす!○○君も一緒に遊ばないでやんすか?
○○:ん~、せっかくの休日だから今日は家でゆっくりするよ。最近練習キツかったし。
鬼畜眼鏡:そうでやんすか。じゃあまた今度一緒に遊ぶでやんす!
○○:オッケー、また今度ね。
鬼畜眼鏡:それじゃあでやんす!
~ アプリ終了 ~
「あ~、オフかぁ~。今日は久しぶりに家でゴロゴロするか!」
そう言って俺はベッドにダイブする。
思えばここのところは激しい練習ばかりだった気がする。
夏の大会で先輩が引退してから、新体制が整うまでの熾烈なレギュラー争い。そして、その後は宿敵SG高校との練習試合に向けた猛特訓が始まった。
猛特訓でチームの力が高まっていくのに対して、授業中は睡眠学習に勤しんだために、俺の成績はサブマリン投法で放たれたボールのように低空飛行になった。
(…………悲しくなるから考えるのは止めよう)
とにかく、今日はせっかくの休みなのだ。チームメイトもみんな思い思いに休日を楽しんでいる。嫌なことは忘れて俺も今日を楽しまなければ損だ。
と、ここまで考えた時にふと気づいた。
頭の中に最近ずっと気になっている一人のチームメメイトの姿が浮かぶ。
「……あっ、冴ちゃん!」
俺はベッドから飛び起きる。
「冴ちゃん、土日の練習の時スマホ持ってこないんだよな。もしかして、休みの連絡ついてないんじゃないか?」
冴ちゃんとは、チームメイトの一人である冴木 創(さえき はじめ)さんのことだ。彼女は俺たちの大筒高校が有する唯一の女性野球部員でもある。
彼女は女性でありながらも、その野球に懸けるストイックな情熱は誰にも負けていない。人一倍早く練習を始めて、人一倍遅くまで帰らない。その圧倒的な練習量とシャープな守備によって、並みいる男子部員を抑えて内野のレギュラーをもぎ取った実力者だ。
ゆえに監督の信頼も絶大で、冴木さんは監督から直々に野球部の鍵を任されている。基本的に、一番にグラウンド入りするのが彼女なので、鍵を渡しておけば他の部員が待ちぼうけを食らう心配がないのだ。
しかし、矢部君からの連絡が先ほど入ったことを考えると、もしかしたら冴木さんのところに連絡が行ったのは彼女が家を出てからかもしれない。
そうなれば彼女は一人グラウンドで、来ない部員を待ちぼうけだ。
「…………学校、行ってみようかな」
幸いにもまだ部屋着には着替えていないし、エナメルもそのままだ。
俺はエナメルを肩に掛けると急いで家から飛び出した。
◇◇◇
大筒高校に着いた俺は、駐輪場に自転車を置くとすぐにグラウンドの隅にある部室へ向かう。グラウンドに他の部活の姿はない。ここのグラウンドは二面とれるほどの広さがないので、使用予定の部活がなくなったらグラウンドは空になる。
部室に近づくと部室の入口前に人の姿が見える。
少しくせっ毛な後頭部の毛を短く横に靡かせたその髪型に、俺はとても見覚えがあった。
その人物は腕組みをして壁にもたれ掛かり、その眉毛は逆八の字になっている。どうやらかなりご立腹らしい。
更に近づくと向こうが俺に気づいたようで、こちらに顔を向ける。それを確認してから俺は大きく手を振った。
「おーい、冴木さん!」
「む、○○。やっぱり君か」
案の定、部室の前に居たのは冴木さんだった。やっぱり彼女には練習中止の連絡がいっていなかったのだ。
俺の姿を確認した冴木さんの表情が少し緩むが、それでもまだ少し怒っているようで鋭い視線のまま話しかけてくる。
「今日は随分と遅かったな。他の奴も全く来ないしどうなっているんだ。SGとの試合も近いのに、少し弛んでるんじゃないか」
練習中止を知らない冴木さんは、いくら待てども来ない部員たちに憤懣やる方ないといった様子だ。
まあ、今の彼女には他の部員はサボりに見えても不思議ではない。みんなの名誉のためにも早めに訂正しておこう。
「冴木さん、そのことなんだけどさ…………」
「ん?」
ことのあらましを説明すると、冴木さんはポカーンとした表情になった。いつも凛々しい彼女には珍しい表情だ。
全部聞き終わったあと、冴木さんは俺から視線を逸らして頭を掻いた。
「なるほど、練習は中止か。…………これからは私も練習の時にスマホを持ち歩かないといけないな」
「練習の時にスマホを持ち歩かないのは真面目な冴木さんらしいけどね」
「それで周りに迷惑をかけていたら意味がない。○○、今日はすまなかった。わざわざ私のために来てくれたんだろう」
「頭は下げなくていいよ冴木さん。チームメイトなんだから助け合わないと」
申し訳なさそうに頭を下げようとする冴木さんを手で制する。
彼女に会えたら良いなという軽い気持ちで、ちょっと気を利かせて学校に来たぐらいなのでそこまで気を遣わせてしまうのはなんだか申し訳なかった。
「そうか。ありがとう○○、君がチームメイトでよかった」
下げかけていた頭を戻した冴木さんはそう言って俺に笑った。白い歯が眩しい爽やかな笑顔。
(…………ちょっと、ドキッとした)
冴木さんは普段は全く女子高生らしくないのに、たまに見せるふとした仕草がとても可愛らしい。これが俗に言うギャップ萌えというやつなのだろうか。
表面上は平静を保って、内心胸をドキドキさせる俺には気付かずに、冴木さんはグラウンドに目を向ける。
「しかし、連絡が中止となるとこのグラウンドがもったいないな」
「そうだね。うちはそんなにグラウンドが広くないから別の部活は練習を入れられないし」
人影の無いがらんとしたグラウンドは、その本来の役目を果たすことなくどこか寂しそうだ。
そんなグラウンドをひとしきり眺めたあと、冴木さんがこちらに振り返る。
「なぁ○○、君が良ければ少し二人で練習して行かないか?」
「えっ?」
「都合がいいことに私も君もユニフォームを着ている。せっかく準備をしてここまで出てきたんだ、少しぐらいグラウンドを使わせてもらわないか?」
「………そうだね。わざわざ着替えて来たんだ、ちょっとぐらい練習しないともったいないよね」
頷いて同意すると、冴木さんはまた嬉しそうに笑う。
爽やかで、惹き込まれそうな魅力的な笑顔。この笑顔を今は俺だけが独占しているのだと思うと、なんだかそれが無性に嬉しかった。
「では、早速部室から道具を出そうか。…………でも○○、君はいつもユニフォーム姿だからわざわざ着替えてきた訳ではないのでは?」
「え?俺、ユニフォーム以外も普通に着てるよ?」
「…………むむ?そうか、私の勘違いだったか?」
そんな風に他愛の無い会話をしながら、道具を取るために俺たちは部室のなかに入って行った。
◇◇◇
「○○!」
「よし、こい!」
掛け声と共に白球が冴木さんの手から放たれる。一瞬の後にグラウンドに乾いた音が響く。白球は逸れることなくグラブの中に収まっていた。
グラブを開いて球を確認してから、俺は額の汗を拭う。冴木さんも帽子を取って、腕のインナーで汗を拭き取っている。
「ふー、結構投げたね」
「そうだな。こちらもいい感じに温まってきた」
俺の言葉に冴木さんも同意して、肩をぐるぐると回す。
軽く練習などと最初は言っていたのだが、やはり現役の高校球児が二人揃えばそんなもので済むはずもなく。気が付けば、お互いにがっつりと全力投球の応酬が始まっていた。
ここまできたら、もうこの程度で練習は終わらない。冴木さんもおそらく俺と同じ気持ちだろう。
「次は、何しようか?」
冴木さんに問いかけると彼女はしばらく顎に手を当てて考える。
「そうだな……じゃあ次は軽くノックでもしないか?」
冴木さんの提案に思わず顔をしかめる。
「うっ…………ノックかぁ。二人だと後逸したときに厳しくないかな?」
「ふっ、その緊張感がいいんだ。ミスできないように追い込まれれば、その分気合いも入るだろう」
確かに、冴木さんの言うことも最もだ。練習といってもやはりある程度の緊張感がなければ人は成長しない。適度なストレスは人の成長を促すのだ。
だから俺は冴木さんの言葉に頷いた。
「うん、確かにそうかもしれないな。分かったやろう!」
「よし、それじゃあ始めよう。もし、後逸してグラウンドが荒れたら後で全部トンボがけだからそのつもりでいるように」
「えー!?ウソー!?」
「ははっ、後逸しなければ問題はないだろう?」
後逸すればトンボがけという地獄のような言葉で少し気持ちがぐらついたが、その後の冴木さんの笑顔で俺は何も言えなくなった。
(やっぱり冴木さんの笑顔は反則だ)
結局何も言えないまま守備位置に入って、冴木さんはバッターボックスに入る。俺がポジションについたことを確認して冴木さんが声を出す。
「よし○○、10球交代でいくぞ。ゴロやショーフライも混ぜるからそのつもりで構えろ!」
「いつでもこい!」
バシッとグラブを拳で叩いて気合いを入れる。
冴木さんはパワーこそ男子に及ばないがバッティングではちゃんと打ち分けができる技巧がある。気を抜かないようにしないと際どいコースを抜かれることになるだろう。
「一球目、ファースト方向!」
「っ!…………よしっ!」
宣言通りの方向に球が飛ぶ。飛び付かないと間に合わない絶妙な距離。反射的にダイブして差し出したグラブに白球が吸い込まれる。練習とは思えないほどの際どいボールだ。
すぐに姿勢を整えてボールを脇に転がす。冴木さんは既に二球目を放つ体制だ。
「いくぞ○○!構えろ!」
「よし!」
掛け声と共に腰を落として、俺は放たれる次の白球に備えた。
◇◇◇
「はぁ、はぁ、よし…………こい!」
「ふぅ…………よしいくぞ○○!」
あれから数回ずつ俺と冴木さんは攻守交代してノックを続けていた。今はまた俺がノックを受ける番だ。
目まぐるしい交代で二人とも息が上がり始めている。しかし、それでもお互いにまだ一球も後逸していないのは集中力のなせる技だと言えた。
バッターボックスに立つ冴木さんは真剣な面持ちでバットを握る。
その息は荒く、額には一房の髪が張り付いて、上気して薄く朱がさした頬を透明な汗が流れ落ちる。
(…………なんか、少しえっちな感じがする!)
そんな邪な考えに対して、天罰はすぐに下された。
「ショーバウ……っ!ピッチャーライナー!」
「えっ!?」
冴木さんの指示が咄嗟に変わり、鋭いボールが迫る。
慌ててグラブを動かすが、余計なことを考えていたために一手行動が遅れる。ボールはグラブをすり抜けると、俺の体に突き刺さった。
「はうっ!?」
「あっ…………」
そのあまりに悲惨な光景に冴木さんも思わず絶句する。
放たれた白球が吸い込まれた場所。
それは俺の股間の男のシンボルだった。
ブッブー!
○○の弾道が1下がった!
「あ、ああ…………あぁ…………」
「○○!」
声にならない呻きを上げながら崩れ落ちる俺に冴木さんが駆け寄ってくる。
「大丈夫か!?しっかりしろ○○!」
「冴木さん…………」
「痛むか?痛むよな?というか、痛まなければそれはそれでまずいんだが…………とにかく、しばらくはじっとしているんだ」
痛みで名前を呼ぶことしかできない俺に冴木さんがぴったりと寄り添う。顔が触れそうなほどに近づいて、彼女の手が優しく背中を撫でてくれる。
上気した頬が。
荒い息づかいが。
心配そうな瞳が。
流した汗の匂いが。
少し硬い手の感触が。
ありとあらゆる冴木さんの情報が怒濤となって五感に押し寄せる。
(……………あっ、これはまずいやつだ)
ピコーン!
○○の弾道が2上がった!
(……………勃ってしまった)
生物は生命の危機に瀕したとき、子孫を残そうとする本能が働くと言うが、今の俺にもまさにそれが起こった。
死の危機に瀕して萎びていた男のシンボルは、今では逆にズボンの中でこれでもかとその存在を主張している。
冴木さんがこんなにも俺のことを心配してくれているのに、そんな中で俺は冴木さんに反応して男のシンボルをおっ立てている。
(ごめんなさい冴木さん。俺は本当にスケベで最低なクソ野郎です)
股間の痛みとスケベな自分への不甲斐なさでしばらく顔をしかめていた俺だったが、冴木さんの声で我に帰る。
「少し落ち着いたか○○?どうだ、立てそうか?」
「………えっ?」
確かに、少し時間が経って多少痛みは引いている。今なら歩くことはできなくても、立つ位なら何とかできるはずだ。
そう、できるのだが。
(…………今立ったら間違いなく勃っているのがバレる!)
そう、今俺の男のシンボルは大絶賛スタンディングオベーション中だ。生地の厚いユニフォームのズボンの上からでも明らかに大きくなっているのが分かるレベルである。
そんな状態で立ち上がれば股間の膨らみがバレるのは不可避。特に冴木さんは間違いなくボールが当たった股間の無事を確認しようとするので隠すことも不可能だ。
今できることといえば、ただひたすらこの体勢で耐えてシンボルが鎮まるのを待つだけだ。
(だから冴木さん、お願いだから今だけは俺のことを少しそっとしておいてください)
「…………ごめん。今はまだちょっと立てないかも」
何とか言葉を絞り出すと、冴木さんの表情が更に険しいものに変わる。どうやら彼女の中で俺の怪我はかなり深刻なものにランクアップしたらしい。
「○○、ケガはそこまで痛むのか?」
険しい表情の冴木さんが尋ねてくるのに対して力なく頷く。
「少しね。だから冴木さん、今は少しーーー」
ーーーそっとしておいてくれないか。
その言葉が口から出ることはなかった。それよりも先に冴木さんの口からとんでもない言葉が飛び出したからだ。
「○○、私に君の股間を見せろ」
「ふぇっ?」
時が止まった。
今、冴木さんは何て言った?
股間を見せろ?
俺が?
冴木さんに?
そんなことーーー
「ーーーむっ、無理無理無理!?絶対に無理だから!」
衝撃的な発言から何とか立ち直り、慌てて首を振って拒絶する。
しかし、冴木さんはがっしりと俺の両肩を掴むと真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。
こんな眼差しで見つめられて愛の言葉でも囁かれた日には、世の少女たちはみんな彼女の虜になってしまうだろう。
しかし、その口から出るのは愛の言葉ではなく。
「恥ずかしがっている場合か!ケガの具合によっては早く処置しないと大変なことになるぞ!」
俺への気遣いの言葉という名の死刑宣告だった。
こんな状況でなければ嬉しさのあまり涙してその言葉に従うところだろうが、今は状況が状況だ。
冴木さんには申し訳ないがここは心を鬼にしてでも拒絶しなければならない。
(そう、今の俺は一匹の修羅!近寄るものは何人たりとも斬る!)
心の中ではかっこよく決めても現実では股間をひたすらに隠して踞っているだけなのだが。
しかし、そんな一匹の修羅の前に現れたのは。
その修羅をも凌ぐ羅刹だった。
「ええい、埒が明かない!○○、後ろに倒すぞ!」
「ええっ!?わ、わわっ!?」
一向に股間を見せようとしない(当たり前である)俺に痺れを切らした冴木さんがついに実力行使に出たのだ。
両肩を掴んだままだった手が一気に押し込まれ、俺は地面に押し倒される。
何とか踏ん張ろうと努力したが、不安定な体勢だったことが災いして、なすすべもなく脚を開いて仰向けに転がってしまった。
すると当然、その股間が冴木さんの目に晒されるわけで。
「こ、これは!?○○!すごく腫れているじゃないか!?どうしてこんなになるまで隠していたんだ!」
「ぎゃー!?ち、違うんです!これは違うんです!」
「何が違うんだ!おい、○○少し触るぞ。感覚があるかどうか確かめろ。なければお前のスマホで救急車を呼んでくる」
「触っ!?やめてえぇぇぇー!?」
次から次へと飛び出す恐ろしい発言に必死に抵抗しようとしたが、抵抗虚しく俺の手が股間を庇うよりも先に冴木さんの手が俺のシンボルに触れた。
「これは…………かなり腫れているんじゃないか?○○、普段のお前のサイズはどれぐらいだ?」
「うぇっ!?そ、そんなこと言えないよ!」
「しかし、それが分からないと、どれぐらい腫れているかが分からないだろう。わがままを言うな」
「わ、分からなくていいから!」
「状況は一刻を争うんだぞ!なんだかさっきからますます腫れてきたし、硬さも……………」
そこまで言って、急に冴木さんの言葉が止まる。
彼女の顔が一瞬真顔になったあと、その視線が俺の顔から再び股間に戻る。そして、俺のシンボルに添えられた冴木さんの手が少し動く。
「………………」
「…………あっ」
それに反応して俺の男のシンボルがピクリと動く。
その瞬間。
冴木さんの顔が今までに見たことが無いほど真っ赤になった。
(あっ、かわいい…………じゃなくて、終わった)
全てを悟った俺が諦めて目をつぶった次の瞬間。
「~~~っ!///な、何を考えているんだこの変態!///」
「ぎゃー!?」
冴木さんの渾身の右ストレートが男のシンボルに突き刺さり、俺はその意識を手放すことになった。
ブッブー!
○○の弾道が2下がった!
◇◇◇
「うーん………?」
男のシンボルに一撃を浴びてからしばらくして、俺の意識は再び現世に舞い戻った。
倒れたのはグラウンドだったはずだが、なんだか今はひんやりした空気が体を包んでいる。それに頭の下に柔らかい感触。
もしかすると気を失っている間に冴木さんがどこかの木陰にでも運んでくれたのかもしれない。
そんなことを思いながら目を開けると。
「ああ、○○。気がついたのか」
「あ、冴木さん………」
そこには俺のことを見下ろす冴木さんの顔があった。
「ここは?」
「野球部の部室だ。気を失った君を背負って運んで来たんだ。今はベンチを二つ繋げてそこに寝ている状態だ」
「なるほど」
道理でひんやりしていると思ったら、それはここが室内だったせいらしい。ベンチから伝わる冷たい感覚に身を任せて、もう一度目を閉じる。そして一つの疑問。
(…………今ベンチにねているなら、頭の下の柔らかいこれは何だろう?)
気になった俺は目をつぶったまま、頭の下の柔らかなそれに手を伸ばす。
すると。
「わっ、コラ、○○!どこを触ろうとしているんだ!?」
「ぐへぇ!?」
冴木さんのげんこつが頭に飛んできた。
「イテテ…………どこって、それは頭の下の何かを」
「それは私の太ももだ!」
「ええっ!?」
慌てて跳ね起きて確認すると、そこには確かに冴木さんの太ももがあった。つまり、意識を失っていた間、俺は今までずっと冴木さんに膝枕してもらっていたことになる。
その事実に気付いたとき俺は愕然とした。
(何で俺はこんな肝心なときに気を失っているんだ!? こんな貴重な経験二度とできないかもしれないのに俺はなんて無駄な時間を…………)
ショックにうちひしがれていた俺だったが、すぐに我に帰りもう一度冴木さんの太ももに目を落とす。
(…………もう一回ぐらい、調子が悪いふりしたら膝枕してもらえるのでは?)
そう考えて、起き上がった時と同じ軌道を描いて再び冴木さんの太ももに頭を乗せようとして。
「…………また気を失いそうなら二、三発ぐらい気付けに殴ろうか?」
「ヒエッ、もう大丈夫でーす!」
背筋の冷える冴木さんの言葉でベンチにしっかりと座ることになった。
それからしばらく俺たちは二人並んでベンチに座る。
会話がない。
気まずい沈黙が部室を支配する。
(な、何か話さないと!でも、何を話せばいいんだ?)
普段なら野球のことを何でもいくらでも話せるのにこんなときに限って頭が回らない。
今まで感じたことのないもどかしさで頭がこんがらがっている。どうにかしなければ。
そうやってあせる俺に。
「○○」
「え!な、なにかな?」
話しかけてきたのは冴木さんの方だった。
思わず聞き返した俺に対して彼女は頭を下げる。
「さっきのノックのこと、すまなかった。ボールを当てたこともそうだが、その後の対応もまずかった。反省している」
「えっ、そんなに気にしなくてもいいよ!あれは俺も悪かったし、冴木さんが頭を下げるほどのことじゃないよ!」
慌ててフォローを入れると冴木さんの頭が上がる。その顔に浮かぶ表情は凛々しく真剣なものだ。
「それでもやはり謝っておきたい。私の行為は君への配慮を欠いていた。謝罪を受け取ってもらえるだろうか?」
冴木さんの手がベンチの上に置かれた俺の手の上に伸びる。その手が固く俺の手を掴む。彼女の真剣な想いがその強さからひしひしと感じられた。
(ここはこちらも真剣に受け止めないと)
俺は冴木さんの目をしっかりと見つめてから口を開く。
「分かったよ冴木さん。君の謝罪は確かに受け取った。だからさっきのことはもう気にしなくてもいいから、これまで通り接してくれると嬉しいな」
「ありがとう、○○。これまで通りよろしく頼む」
「うん、こちらこそよろしく冴木さん」
お互いに挨拶を交わして会話が終わる。これで何とか俺たちの関係は元通りだ。
事が収まるところに収まったことへの安堵から心の中でほっと胸を撫で下ろす。
しかし。
「…………」
「…………」
きっちりと話をつけて会話が終わったのに俺たちの間の空気はぎこちない。
それもそのはず。
なぜなら、先ほど重ねられた冴木さんの手がまだ俺の手の上にあるからだ。固く結ばれたその手は、心なしか先ほどよりもその力が強くなってきた気がする。
気になって冴木さんの方を見ると彼女と目が合う。彼女は一瞬目を逸らすと、すぐにまた視線を合わせてこちらを見た。その表情は先ほどと同じ凛々しいものだが、瞳の奥に若干の戸惑いが見て取れた。
微妙な空気が部室に流れる。
しばらく見つめ合ったあと先に口を開いたのはまた冴木さんの方だった。
「○○」
「どうしたの冴木さん?」
俺の返事に冴木さんの視線がまたぶれる。しばらく床に視線をさ迷わせたあと、彼女が再び口を開く。
「あー、その、だ。もしかするとこれは私の見当違いで、全く的はずれなことかもしれない」
「えっ?」
「いや、もしかしたら君にとっては少し失礼で、ことによっては不快な思いをさせるかもしれない」
「…………冴木さん?」
今まで見たこともないようなはっきりしない態度に俺も少し困惑する。
そのまま黙って彼女のことを見ていると、彼女は視線を色々なところにさ迷わせて何か考え事をしているようだった。もしかするとそれは次に話す言葉を選んでいるのかもしれなかった。その間もずっと彼女の手は俺の手をぎゅっと握ったままだ。
それからしばらくして、彼女は床の一点をしばらくじっと見つめると「よし」と一言呟いてからこちらを見た。
「話すことがまとまった。○○、一度だけ言うからよく聞いてくれ」
「分かった」
かつてないほど真剣なその表情に返事をしてからごくりと唾を飲み込む。
一瞬の沈黙。
彼女の口が開く。
「○○、さっきの君の、こ、股間のことなんだが、あれはその、つまりそういうことだと考えてもいいのだろうか」
「…………!」
その瞬間、俺に電流走る。
(た、確かに若干いい雰囲気で終わりかけたけど、その事は全く未解決だった!)
俺が冴木さんに介抱されながら股間をおっ立てていたことはもう彼女にがっつりバレてしまっている。
ここでちゃんと返事をしなければ、二人の関係は元に戻るどころかマリアナ海溝よりも深い亀裂が走ることになるだろう。
(ど、どうする俺!?)
悩みながら俺はちらりと冴木さんの顔を伺う。彼女は顔を逸らしてその視線は天井の方を向いている。その頬は今までで一番赤く染まって、首筋や耳元まで色づいている。
その姿を見たときに、俺の心は一瞬で固まった。
冴木さんがこんなにも恥ずかしい思いをしながら先に言葉を出してくれたのに、どうして俺が怯んでいるんだ。
むしろ、これは本当なら男の俺から言わなければいけないことだったのに、何女の子に勇気を出させてるんだ。
(情けないぞ、俺)
俺は一瞬目をつぶって天を仰ぐ。呼吸を整え丹田に気を巡らせる。最後に一つ深呼吸。
(よし、もう大丈夫。ここからは俺が決める番だ)
かっと目を見開いた俺は、これまでの人生で野球に捧げてきたのと同じぐらいの熱を込めて言葉を発した。
「冴木さん、その事だけど、冴木さんが思っている通りで間違いないよ」
「…………っ!」
冴木さんが息を飲み、その呼吸が止まる。
それでも、俺の言葉は止まらない。
「これだけでは足りないと思うからはっきり言うね。俺は冴木さんのことが好きだよ。俺がこれまでずっと野球に人生を捧げてきたのと同じぐらいの情熱で冴ちゃん、君のことを愛してる」
「○○………」
「本当にずっと前から冴ちゃんのことを追いかけていたよ。冴ちゃんが本当に野球のことが好きで好きで、自分の全部を野球に捧げてきたことが分かって、俺以外にもこんなに野球に熱くなれる人がいるんだって嬉しくなって、それからずっと好きだった」
一息で言い切った。
前からずっと用意していたようにあっさりと言葉が出た。
いや、多分これは気づかなかったけれど、ずっと心の中に用意してあったのだ。
初めて彼女に会ったそのときから。
「冴ちゃん、俺はほんとに信じられないぐらいの野球バカで、ドジでアホで、しかもスケベだったりするけど、冴ちゃんのことに関しては本気だから。こんな俺でもよかったら、冴ちゃん、俺の彼女になってくれますか?」
そこまで言ってから俺は冴ちゃんの手の上に更に俺の手を重ねた。
言いたいことは全部言った。
これで断られてもスパッと諦められるくらいに俺の中から想いが全部出ていった。
後は返事を待つばかり。
真っ直ぐに冴ちゃんを見つめて、俺はその時が来るのをを待った。
◇◇◇
どれ程の時間が経っただろうか。
永遠のように長かったようにも、瞬きほどのの一瞬だったようにも感じる。
俺が待ったその時は突然に、しかし必然として訪れた。
「…………○○」
「…………冴ちゃん」
冴ちゃんの口が開いて名前を呼んでくれる。それだけでも俺は十分に幸せだ。
(でも、今日の俺はその先が欲しい)
ただ黙って次の言葉を待つ。
「もし、○○が自分のことをドジでアホでスケベでって言って私からOKが貰えると思っているなら、やっぱり○○は相当な野球バカだな」
「ぐはっ!?」
(や、やっぱり正直にいいすぎた!?)
(でも、大切な告白だから隠し事はしたくなかったし……)
(……もしかして失敗?)
(覚悟はしてたけどやっぱり少しはくるな、これ)
愛する冴ちゃんの容赦のない言葉に、固めたはずの俺の決意が少し揺らいだその時。
「ふふっ」
「えっ?」
今まで聞いたことのない可愛らしい笑い声が聞こえた。
驚いて俯いていた顔を上げると、俺を見て冴ちゃんが笑っている。
それはいつもの爽やかな笑顔ではなく、優しくかわいい少女の微笑み。
その微笑みを崩すことなく彼女は俺に言葉を告げる。
「○○は野球バカだから、普通の女の子にはその言葉は響かないかもしれない。でも、私は君と同じ野球バカだからその言葉に込められた想いがよく分かった」
「冴ちゃん……」
「○○、私は君と同じ野球バカだ。私には野球しかないし、野球以外のことは無理だ。だから君の彼女になっても普通の女の子のようにかわいいことはできそうにない」
そこで冴ちゃんの言葉が少し途切れる。
そして、これ以上ないほどの真剣な眼差しで俺を見つめてから、彼女の口が動く。
「……でも、それでも良ければ私は君の彼女になりたい。君の隣で苦しいこと、楽しいことを全部君と一緒に感じたい。○○、私を君の彼女にしてくれないか?」
冴ちゃんのもう一つの手が、更に手の上に重ねられる。
二人の顔がぐっと近づく。
俺は最後の問いへの返事の代わりに。
彼女の唇に唇を重ねた。
甲子園への熱い思いを一つに重ねたその場所で。
俺たち二人は本当に一つになった。
◇◇◇
「じゃあ、冴ちゃんこれからよろしくね」
「こちらこそよろしく頼む、○○」
あれからしばらくして、グラウンドへのトンボがけを終わらせた俺たちは部室の荷物を回収して外に出た。
「○○、いくら野球バカの君でも分かっているとは思うが」
「うん、明日から俺たちのことは絶対秘密だね」
恋人同士になった俺たちは、あのあと部室でいくつかの約束ごとを交わした。
高校生活中は二人の関係は秘密にすること。
三年の夏が終わるまでデートなども一切無し。全てを野球に捧げること。
二人の時以外はいつも通りの名前で呼ぶこと。
野球にかけた青春は俺たち二人だけのものじゃない。
俺たちの両親や、監督、マネージャー、矢部君たちチームメート、みんなの夢と青春がそこにはかかっている。
だから最後の夏の、その最後の一瞬が終わるまでは全てを野球に捧げると決めたのだ。
「戸締まり大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
冴ちゃんはユニフォームを着替えて制服姿になっている。新しい関係になった今では見慣れたはずのその姿すら新鮮に見える。
鍵を閉めて制服のポケットにしまう冴ちゃんを待って俺は声をかける。
「冴ちゃん、今日これからヒマ?良ければ一緒にデートしない?」
俺の言葉に冴ちゃんが真底呆れた表情になる。
「君は本当にバカなのか?さっき全てを野球に捧げるって約束しただろう」
ため息混じりに頭を抱える彼女に、俺は笑顔で言葉を続ける。
「だってあの約束、期限は明日からでしょ?今日の内はまだセーフなのかな、って」
「それは…………」
迷う彼女に手を差し出す。
「行こうよ。今日はみんなオフなんだから、せめて今日くらいは恋人らしくしても誰にも文句は言われないよ」
目の前に差し出された手をまじまじと見つめて、一つの大きなため息を吐くと彼女は俺の手を取った。
「本当に君は仕方のないやつだ。だから彼女の私がしっかり手綱を握っていないとな」
力強くその手が握られる。
その手の先には彼女の満面の笑顔。
その笑顔を連れて、俺たちは全速力で走り出す。
この熱い青春も今と同じように、二人で全速力で駆け抜けられることを願いながら。
<了>
冴木ちゃんスキ。しんどい。はぁ、マヂ無理。