パワプロアプリの冴木創ちゃんがカワイイ。 作:なんJお嬢様部
最初は入団編になります。
パワプロやアプリから何名か同期を入れています。結構意外な選手も混じってますよ!
獅子は黙って爪を研ぐ
目映いフラッシュが私を包む。
絶え間なく灯されるそれに目が眩みそうになるが、努めて笑顔を崩さないようにする。
なぜなら、今の私が臨んでいるのは西京ギガンツの入団会見なのだ。期待の若手として、そして女性選手のホープとして無様な姿は晒せない。
それに、私の隣には愛する○○も並んでいるのだ。彼と並び立つ選手として、あるいは一人の人間として、それに相応しい風格を見せねばならない。
フラッシュの集中豪雨が小雨程度に収まり、そこから私たちの会見が始まった。
「ーーー女性選手である私をここまで高く評価していただいた球団のためにも、あらゆる面で球団の発展に寄与できればと考えています」
二巡目の指名で入団を決めた私は、一位の○○に続いてマイクを握ることになった。
球団側が私に提示した条件は、契約金8000万と年俸1000万+出来高という破格の条件だった。二巡目の選手にインセンティブを付けることは滅多にないし、球団によっては一位指名の選手に提示するレベルの条件だ。
もちろん、この条件にはからくりがある。
「あらゆる面で~」と述べたように、この年俸と出来高の部分には私が試合以外で活躍することも求められている。
つまりは、女性選手として球団の広告塔の役割を果たせというわけだ。
球界史上初の女性選手の私がどれだけの利益をギガンツにもたらせるのかは未知数だが、その額によっては二年目以降は今年の倍以上を出しても構わないとも言われている。上層部が私にかける期待は重く篤い。
(……しかし、全てが順風満帆というわけではない)
これだけの条件を見れば今回の契約は私にとってはこれ以上ないものだ。
だが、私の懸案事項はこの条件の外に存在した。
「冴木選手に質問です。冴木選手は女性選手としては筆頭での入団になったわけですが、
そう、今年球界入りを決めた女性選手は私だけではないのだ。私を筆頭に八巡目までで十人以上の女性選手が各球団に入るという、過去に例のないドラフトだったのである。
故に私には球団唯一の女性選手というアドバンテージはあるが、球界唯一の女性選手というアドバンテージはない。
従って、私に求められるのは他の女性選手を抑えての活躍に他ならない。
「はい、いずれも甲子園で名を上げた名手だと思います。特に三巡目でメディカルメカニクスに指名された恵比留の霧崎選手などは守備位置からも比較されることになるでしょうね」
この質問で私が真っ先に思い描いたのは、恵比留高校出身の遊撃手、霧崎礼里選手だ。
まるで未来が見えているかのような精密なバットコントロールを見せる霧崎選手の甲子園での打率はなんと.650を超える。守備もかなり軽快で、同じ内野手で上位指名を受けた以上、比較は避けられない流れだ。
霧崎選手は同じくメディカルメカニクスに二位指名された往田選手と甲子園で暴れまわり、恵比留高校は今年度の優勝候補筆頭と目されていたが、絶対的エースの闇野が体調不良で戦線離脱してしまい、三回戦で敗退した。
だが、それがなければ彼女はスタメンとして優勝旗が狙えるレベルだったのだ。意識するなという方が無理な話だ。
「ということは冴木選手にとって目下のライバルは霧崎選手というわけですね」
「はい、ですが他にも気をつけるべき女性選手は多いと思います」
「例えばどのような選手が挙がりますか」
「ソルジャースに指名された早川選手は投手での同一リーグなので直接対決もあり得ますし、フリートのオーナーを兼業しているオクタヴィア選手も、あの多彩な変化球を打つのは骨が折れると思います」
打者として気になるのはやはり直接対決があり得る投手だ。
今年は投手として三名の女性選手がプロ入りを果たしたが、どれも癖のある選手ばかりで油断はできない。
彼女たちが男性投手の代わりに一軍に食い込めるかは未知数だが、相手の意表を突く形での短期投入も十分にあり得る話だ。警戒は怠れない。
「なるほど、打者としてはやはり投手が気になる訳ですね」
「はい、やはりチームの勝利には打って貢献しないといけませんから。しかし、彼女たちはライバルであると共に同じ女性選手として球界を盛り上げる仲間でもあります。私たちの活躍が未来の女性選手の道を拓くために、お互いに良い影響を与え合えればそれが理想だと思います」
私たち女性選手は十数名いるとはいえ、何百人といる男性選手からすればほんの一握りだ。
しかも、以前の野球史に女性選手がいないので、私たちの評価がそっくりそのまま女性選手がNPBで通用するかの評価に変わる。
後に続く未来の女性選手のためにも、私たちは皆で活躍して、彼女たちの枠を確保しなくてはならないのだ。
そんな決意を秘めた私の言葉に、質問した記者達は大きく頷いてくれた。
「冴木選手、貴重な言葉をありがとうございました。それにしても、冴木選手はコメントの言葉選びがお上手ですね。受け答えの風格からいえば冴木選手が一位指名を受けたみたいに見えますね」
「ええ!? ちょっとひどくないですか!?」
記者の言葉に思わず○○が突っ込みを入れる。
彼のコメントは既に終わっていたが、彼はコメントの中でたまにとんちんかんな回答をして、その野球バカっぷりを遺憾なく発揮して会場の笑いを誘っていた。
「俺って風格ないのかな? 少しはあると思うんだけどなー。冴木さんもそう思わない?」
「答えにくい質問を私に振るなよ○○。というか今は私の番だぞ」
「あっ、そうだった!」
慌てて口元を手で押さえる○○の姿で、会場はまた笑い声に包まれた。学校でも愛された野球バカはどうやらプロの世界でも愛される選手になりそうだ。
「冴木選手、ありがとうございました。同じ高校出身なだけあって○○選手との相性はバッチリですね。今後の活躍を期待しています」
「「ありがとうございます」」
「……って、何で○○もお礼を言うんだ、私のコメントだぞ」
「あっ、また間違えた!」
流れるようにミスを重ねる○○に再び会場がどっと沸いたところで、私の番が終了してコメントは次の選手に移った。
なんだか美味しいところを全部持っていかれた感が否めないが、それもまた○○の魅力だ。
それに、見せ場を彼に持っていかれるのは彼女の私としては特に問題はなかった。
他の選手がやり取りをするなかで、○○の方をちらりと見ると、彼は申し訳なさそうな視線を私に送る。
それに気にするなというような視線を送ってから、私は再び会見に集中した。
◇◇◇
「よっしゃー! 疲れたけどこれで会見終了だな!」
会見が終わり会場を出た瞬間に叫び声を上げたのは、西京ギガンツドラフト三位入団の木場嵐士だった。
覇道高校の至宝とまで称された彼は、MAX152㎞/hの伸び上がるようなストレートと三種のキレのある変化球を武器にするバランスの良い投手だ。
彼ほどの投手が三順目まで残るほど今年のドラフトは投手が豊作だったのだ。
しかし、同じチームに入団する私としてはこれ以上ないほど心強い同期だといえる。
「いやー、マジで疲れたな! あれだけ喋っても一円の得にもならないのに損した気分だぜ!」
木場の言葉に同意して首を縦に振るのは5位入団の兼倉洋平だ。
彼は高校時代からある意味有名な選手で、先物取引で多額の借金を背負ったかと思えば、出所の分からない宝石を高額で売りさばいていたり、対外試合では他校の選手に怪しいもうけ話を持ちかけたりと、とにかく金銭面の話題に事欠かないのだ。
彼の入団時の契約内容は、契約金がわりとして1000万相当の球団親会社の西京ホールディングスの株式を要求、年俸は400万+インセンティブという球界史でも類を見ない破天荒なもので、その独特な金銭感覚が先程の会見でも話題になった。
ちなみに、彼は会見でも「今年の抱負は?」と記者に問われて、「今年は穀物関係の相場が熱い!」などと野球そっちのけで先物取引の話を始めるなど、ある意味で記者達の度肝を抜いた。
(……とりあえず、兼倉には妙な取引を持ちかけられないように○○にも釘を刺そう)
野球バカな○○は、後先考えることなく兼倉の怪しい話に乗っかりそうなので彼女としてその辺りも気をつけなければと、私は決意を新たにした。
「……洋平はもう少し金以外のことも考えた方がいいぞ?」
私がそんなことを考えている内に、○○ではなく兼倉の方が先に釘を刺された。
兼倉に釘を刺した人物は四位入団の須藤零人、兼倉と同じダン&ジョン高校出身の速球派投手だ。
公式戦でMAX160㎞/hを叩き出した超高校レベルの右腕は、球団から中継ぎや抑えのワンポイントを期待されている。実は今年のドラフトではいちばん一軍で活躍の機会があるのは彼かもしれないと目されている。
「いーや、プロになったからにはやっぱり金だぜ須藤! 引退までにいくら貯められるかが、俺たちのセカンドライフの明暗を分けるんだぜ!」
金にがめつい兼倉を諌める須藤に、兼倉が反論する。
(……確かに、兼倉の言うことも一理ある。)
プロ野球選手の選手生命はそんなに長くはない。どんな一流選手でも、もって40歳というところだし、その年になると年俸も右肩下がりだ。
特に女の私などはプロの世界でいつまで通用するのか想像もつかない。金銭というよりも、むしろいつまで金銭に見合った働きができるのか、その不安は私の中にもあった。
「だから、お前らも早い内から資産運用しとけよ! ……そうだ○○、契約金で一億もらったお前にいいもうけ話があるんだが……」
「ストップ! 兼倉君、○○に怪しい話を持ちかけるのはやめろ。何かあったら全て私を通せ、いいな?」
(兼倉……こいつ、やはり油断ならないやつだ!)
流れるような早さで、○○に絡んで行こうとする兼倉にピッチャー顔負けの牽制を送る。
機先を制された兼倉はげんなりした表情で私を見た。
「冴木は○○のマネージャーか何かよ! ……じゃあこの際冴木でもいいや。実はブラジルの新規のバナナプランテーションで共同出資者を募っていてだな……」
「いや、今どきバナナって明らかに詐欺だろ、それ」
「……マジで?」
あからさまに怪しい話に、木場からのキレのある突っ込みが入ると兼倉が愕然とした表情で木場の方を向いた。
「お前、もう親会社の株式持ってるんだから大人しく株だけ運用してろよ」
「株じゃガツンと儲からないだろ! ……やっぱりバナナはないか。じゃあ、予定通り小麦の先物でいくのが正解か……?」
「……ほどほどにしろよ、洋介」
相変わらず金のことばかり口にする兼倉に、須藤も呆れたような突っ込みしかできないようだった。
その時。
「……まぁ、お金のことは色々あるかもしれないけど、俺たちはもうプロ野球選手なんだから、まずはやっぱり野球で稼がないと!」
さっと口を開いた○○の言葉に、お金のことを考えていた兼倉の顔が上がる。
「お金はともかくとして、とりあえずはみんなで一軍に定着することを目指そうよ。しっかり結果を残せばお金なんかは後からいくらでもついてくるさ」
そう言って私たちの方を見た○○に、真っ先に反応したのは木場だった。
「○○のいう通りだ! やっぱりプロになったからには目指すは一軍のエースだぜ! そして俺は今度こそスバルに勝つ!」
木場はぐっと握り拳を固めて気合いを入れる。
彼は最後の夏に同じ地区のパワフル高校に予選で敗れ甲子園を逃すという苦汁を舐めさせられている。
特にパワフルのエース、星井スバルとは因縁浅からぬ間柄であり、プロ入りした星井との対決は彼にとっての悲願である。
「そうだな、俺も『時速100マイルの男』としてプロ野球に名前を残したいしな」
須藤もうんうんと頷く。ストレートへの飽くなきこだわりがある彼にもプロで実現したい夢があるのだ。
「……もし俺が一軍で活躍すれば、メディアへの露出、グッズ販売、メーカーとコラボ……。すごい金の匂いがするぞ!」
「……」
兼倉は相変わらずだった。
そんな様子に若干呆れつつも、私も自らの抱負を口にする。
「私も、目指すは女性選手初の日本一だ。単なる客寄せパンダで終わるつもりはないからな」
(……そうだ。私はまだまだ高みを目指す。野球の道に終わりはないんだ)
○○の言葉で、みんなその闘志に火が着いた。
やはり、彼は「持っている」側の人種らしい。
願わくは、私もそちら側の人間でありたいものだ。そう切に願う。
「よーし、目指すは全員一軍で日本一だ!みんな、やるぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
○○の掛け声で全員が拳を突き上げて気炎を放つ。
こうして私たちのプロ生活は始まったのだ。
というわけで、入団編でした。
アプリからの仲間キャラは覇道高校から木場嵐士、ダン&ジョン高校から兼倉洋平と須藤零人でした。
須藤はくろがね商業の銭形乱蔵と迷ったんですが、銭形を兼倉と組ませたらグラゼニみたいに銭の話しかしそうにないのでやめました。
あと、銭形は育ててないからイベント未読だったので……
それでは、次はオープン戦編でお会いしましょう。
もしかすると、間に小話も挟むかも?