原作ゲーで言うところの、病院エンドになりますが、病院行きにはなっていません。
『元に戻る』 ←
「本当に…、戻せるのか?」
「…やっぱり、戻りたいよね?」
「あっ…。」
その時、不意に見せた出久の表情に、ハッと勝己は我に返った。
どこか悲しいような…、切ないような顔。
まるでこれから二度と会えなくなることを案じてるような顔。
「じゃあ…。ちょっと待っててね。」
「おい…。」
「先に実験とか、準備をしてから取りかかるから、待ててね。かっちゃん。」
「おい! …っ。」
すると、急な眠気が襲ってきた。
「で…。」
「ありがとう。かっちゃん。僕…、かっちゃんとのこと…忘れないよ。」
「…デ…ク……。」
伸ばそうとした手は、無意味に空を切った。
***
次に目覚めたとき。
世界が……変わっていた。
あの醜悪で、汚くて、臭かった世界は綺麗さっぱりなくなっていて……、醜悪な肉ではなく、自分が知っている親の顔を見たとき、爆豪は決壊したように泣き出した。
久しぶりに聞く、出久以外のまともな声から、後で聞いたが、数週間近くも昏睡状態に陥っていたらしい。
この涙は……、元に戻れた喜びからじゃない。それは急な世界の変わり方に驚いた脳でも分かった。
デクが…出久がいなくなってしまった。
うっかり口に出してしまった言葉で出久を傷つけてしまい、そして世界は…、世界と引き換えに勝己から出久を奪った。
今なら、ハッキリと自分の心が分かる。
自分は、どちらでもよかったのだと。
元に戻る方法があろうとなかろうと、そこに出久がいないのなら、選ぶなら……。
言われるまま、強制されるままリハビリをして、勝己は退院の日を迎えた。
清潔な匂いをさせる母に抱きしめられ、不快な感触もない父親の手のひらが頭を撫でる。
よく頑張ってね。もうだいじょうぶだという言葉も、もう、勝己の心になにも響かない。
戻って来た日常。そこに出久の姿はどこにもない。
戻って来た勝己を、クラスメイトや大人達は出迎えた。
しかし、まるで生気が抜けてしまったような彼に、不思議がる周り。けれど、勝己にはそんなことはもうどうでもよかった。
勝己は、密かに連絡先を交換していた、緑谷医院長とやりとりをしている。
学校の屋上の、晴れやかな空、忘れていた青い色。白い雲。悪臭のない風。
『私はね。君がこれからもずっと出久と共にいると信じていた。』
『けれど、君はそれを選ばなかった。ただそれだけのことだ。』
『君の選択は、間違ってはいないが、正解でもない。』
『あれから出久は、帰りたいと頼んでくるんだ。元いた場所に帰りたいと。』
『私は、君以上の相手に出会える可能性が低いと考えて、出久を帰してやる方法を探している最中だ。』
『出久は、別に君を恨んではいない。それを忘れないでくれ。』
『あの子はね。とても優しい子なんだ。』
勝己は、パチンッと二つ折り携帯を閉じた。
「……会いてぇよ。デク…。」
緑色を見るたび、思い出す。あの濃い緑色の髪の毛。そばかす。大きな目。優しい笑顔。
しかし、もう二度と会えないのだと。なぜだか、それが分かってしまう。
あれから、よくよく考えて分かったことがある。
出久からもらっていた食事。そしてあの夜会のごちそう。
あれは、すべて肉塊だと思っていた人間や動物だったのだと分かった。
棒状の菓子に見えたのは、おそらくは骨だ。そしてそれに張り付いていた果実のような物はその肉。
食事として出されていた物がすべて汚物として見えて感じていた勝己が、唯一食事として認識できたソレは、食事とはかけ離れた物だった。
だがそれを理解したとて、勝己は吐き戻すようなことはなかった。
むしろ、あれから何を食べても、あの時のような感動に出会えず、食が細くなっているほどだ。
あれほど焦がれていたはずのまともな食事が、まるで美味くない。
出久がいない。
出久は、もう二度と自分の前には現れてくれない。
会いたい。会いたい。会えない。
爆豪勝己は、晴れた空を見上げて出久のことばかりを考えていた。
ED1 今生の別れ
このあと、爆豪が自殺したという流れも考えましたが、やめました。
爆豪は、出久の姿や声が、今まで見てきた物と真逆だと理解しています。
それでも会いたいとは思ってるけど……。
とりあえず、これでエンディング、一つ目終わり。