スパロボDDクロッシングパイロット「コッペパンを一つ所望する」 作:どるき
平行世界を結ぶ謎の光。
ゲートと呼ばれるそれが出現し始めてまだ日は浅い。
ミスリルに所属するウルズチームの三人は実際に平行世界の戦士との邂逅、共闘、そして平行世界への転移という経験を経ていた。
そして自分達の世界に戻ってきて何度目かのAS戦闘の最中、今回の事件は起こった。
「早く使って見せろ。でなければ面白くないぜ」
コールサイン「ウルズ7」
ARX-7アーバレストを駈る相良宗介軍曹は敵の罠に落ちていた。
宿敵ガウルンの悪魔的采配が見事に決まったこともあり、孤立状態で彼のコダールと向かい合う。
相手はイメージを物理的な力に変えるラムダドライバの搭載型。彼の煽る通りに宗介もアーバレストのラムダドライバを操れなければ勝ち目は薄い。
だがこの頃の宗介はまだラムダドライバを使いこなせていない。理解を越えたテクノロジーへの拒否反応、常識という壁が彼を阻んでしまう。
「貴様を倒すのにあんなものに頼らずとも!」
「強がるなって。今日は何時までたっても使いこなせないお前に先達としてアドバイスしてやろうっていうのに。余所者との戦いでソイツを使いこなせないまま死なれようものならつまらないからよぉカシム」
「何がカシムだ」
「悔しかったらラムダドライバを使って俺に一撃入れてみろよ、愛しのカシムちゃんよお」
宗介がラムダドライバを使いこなせないのは迷いのせい。それは真実の一面ではあるが、今この場の彼はもう一つの理由でそれを封じていた。
いくらなんでも本当に「自分にラムダドライバの使い方を教える」ために周到に誘い込むことなどしようものか。
これにはきっと裏があると宗介は感じ取っていた。
確かにガウルンには裏がある。
宗介のラムダドライバが起動しなければ彼の目的は果たせない。
だが宗介にはそれが何かを図る術はない。
「この!」
弾薬はとうに使い果たした。
その全てがガウルンがラムダドライバにて生み出す壁に阻まれている。
残る武器は単分子カッターが二振りのみだが、これも例のごとく防がれるだけだろう。
一縷の望みは懐に飛び込んで壁の内側へとカッターを突き立てることだけ。
だが宗介の客観的な意見としては、それはガウルンのようにラムダドライバを使わなければ到底叶いそうにない。
こうなれば言われなくとも使うしかない。
だが自分にこんな摩訶不思議な力を使えるのだろうか。
悩みを抱える宗介に神は宿らない。
「ガンっ!」
そんな子羊を救うかのように鳴り響く鋼が虚空にぶつかる音色。
コダールを狙う銃弾の音に宗介はハッと正気に戻った。
今のはおそらくクルツの狙撃だろう。
「今だ! やれ、ソースケ」
再び着弾。
いかにラムダドライバで防いだとはいえ狙撃による不意打ちが二回でコダールは僅かに隙を作っていた。
そこを逃すことなく飛び込んだ宗介はカッターの切っ先を胸元に押し当て、そして機体の重みを乗せて刃を落とす。
これが生身の人間同士ならば胸骨の隙間を縫って心の臓を破っていただろう。
だが相手はアームスレイブという鋼の巨人。人体とは異なり、三寸食い込む程度では死には至らない。
「惜しかったな」
「!?!」
この日はずっと防御のみに使っていたそれをガウルンはついに矛として用いた。
イメージを反映する虚弦の力場に姿勢などという概念はない。
完全にマウントをとられていようともお構いなしに、それはアーバレストの胸を穿った。
金属が軋む。
基盤が割れていく。
その一撃はアーバレストの機能を大幅に削いでしまう。
だがアーバレストは完全には壊れていない。
基盤の破損で演算能力が30%ほど低下したし、装甲も歪んで防御力は半減している。
それでも完全破壊は防いでいた。
ガウルンの一撃に反応した宗介の無意識が産み出した防御のイメージ。それを人工知能アルが拾い上げて、ラムダドライバに入力していたのだ。
その防御がガウルンの攻撃を遮ってアーバレストを守護してダメージを減らしている。
「やればできるじゃない。さて……実験は成功しているかな?」
弾き飛ばされたアーバレストが起き上がるのを阻害するようにまばたく謎の光。
ラムダドライバ同士が衝突しただけでは発生し得ない空間の歪みは、うっかりと首を突っ込んだアーバレストごと宗介を飲み込んでいく。
アマルガム製とミスリル製という二種類のラムダドライバ。
そして異世界から流れ着いた赤い鉱石のようなサーキット。
これらを組み合わせた人為的ゲート発生実験はここに完成した。
あとは向こう側に迷い混んだ宗介を回収すればアマルガムの目的は達成である。
ガウルンは迷うことなく宗介の後を追った。
「こちらウルズ6。大変な事が起こった。ソースケが突然発生したゲートの中に消えちまった」
このゲートはしばらく発生し続けるのか。
クルツはダナンに通信を入れたものの、追うべきか追わざるべきかとそこに立ち止まってしまった。