スパロボDDクロッシングパイロット「コッペパンを一つ所望する」 作:どるき
あの少年が特殊な工作員ならば、怪我をして倒れていた場所の近くに何かを残しているのではないか。
そんな懸念を持って辺りを探ったスヴェンはそれに出会う。
白を基本とした鋼の体を持った巨人。
かつての自分を彷彿させるその姿をスヴェンは見上げた。
「これは……猟兵機? それも透明に見えるように偽装する機能を持った」
スヴェンが発見したのはECSで存在を隠匿していたアーバレストだった。
今は無人だが搭載された支援AIアルが主の帰りを待っている。
そんなことをスヴェンは知らぬが、親近感のあるその白い体に興味を惹かれていた。
「ちょっと乗せてもらいますわよ」
スヴェンはアームスレイブの構造などまるでしらないのだが、猟兵機ならばお手のものだ。
かつての自分に照らし合わせてコックピットを開いたスヴェンはそれに乗り込んだ。
すると機体内のパネルがチカチカと光だして、侵入者に何かを訴えはじめた。自分でもそうするだろうとスヴェンはそれを見越して語りかける。
「ごきげんよう。白い猟兵機さん」
「あなたこそ何者だ?」
アルは目の前の少女にそう問いかけた。
これはアルが「人間を支援する存在」だから気づいたことなのだが、アルはスヴェンが生物学的な意味での人間とは異なると見抜いて何者かと聞いていた。
スヴェンも似たような存在ゆえにその意図を感じ取っていた。同類相手では察しが鋭いのかと見破られた体で話を続ける。
「わたくしはパン屋の看板娘スヴェン。ですが、あなたの感じた通り、わたくしはあなたの同類ですわ。あなたの主様の身柄はわたくしが預かっています。主様の身柄と引き換えに、いろいろ教えていただけません?」
ブラフを含んだスヴェンの問いかけを前にアルは彼女が求めたことを答えていく。
そしてスヴェンはその見返りとして、自分がスヴェルゲンという人間型猟兵機であることと、元は猟兵機の支援AIアーヴェイとしてルートと戦場を共にした存在だとアルに語った。
アルに平行世界だのブラックテクノロジーだのと言われてもスヴェンには本当のことか図りかねるが、ただ一つだけスヴェンでもハッキリとわかることがある。
それはアルの宿るアーバレストがワイルティアよりも進んだ技術で作られているということ。同じ人工筋肉を用いた駆動系でありつつも、猟兵機だった頃の自分より軽くてパワーも高いことが見てとれる。
それにこれだけ見事な人型ロボットでありつつも、アーバレストにはレザニウムが一切使われていない。人間型猟兵機となった今のスヴェンの体を含め、この世界ではレザニウム無しではなし得ないASという存在が実際にここに存在していた。
事実を端的に並べた場合にアルの言葉を疑う材料はなかった。
「いろいろ教えていただいて感謝しますわ」
「アーヴェイ殿。そろそろ軍曹殿の居場所に案内してもらえないか?」
「それは構いませんが、このアーバレストでは目立ちますわよ。ECSなる装置は動いても平気ですこと?」
「肯定する」
「では失礼ながら操縦させてもらいますわ。わたくしも自分が動かすのは初めてですが」
「了解(ラージャ)。特例としてアーヴェイ殿の操縦を許可する」
「感謝しますわ。その前にひとつ寄り道しますのでご了承を。それとアーヴェイの名はくれぐれも他の方の前では密に」
「了解」
交渉の末、自分を宗介の元へと導く為にアルはスヴェンの搭乗を許可した。
いままでルートを体の中に包んで戦った事はあれど、自分が別の猟兵機……いや、アームスレイブに乗るなど初めてだなと、トッカーブロートを目指すスヴェンは微笑んでいた。
猟兵機とは似て非なる存在とはいえ順調に操縦できるのがアルのお陰なのはスヴェンでもわかる。
これだけ優秀なAIとコンビを組むあの少年はさぞ好青年なのだろうかと、最初の警戒はなんだったのかと言わんばかりにスヴェンはアルによって絆されていた。
「いてて……って、どこだここは?」
そんなスヴェンが寄り道の先である教会に到着した頃、彼女たちの幸せを踏みにじらんとするものがオーガンベルツにやって来ていた。
先程まで首都ベルン郊外で戦闘中だった銀色のロボット。
そう、宗介のアーバレストを追ってゲートを潜ってきた異世界からの禍が。