スパロボDDクロッシングパイロット「コッペパンを一つ所望する」   作:どるき

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やりすぎのオートマタンウェイトレス

 教会までたどり着いたルートの瞳に写った光景は凄惨の一言だろう。

 クルツ自慢のライフルは砲身が曲がっており、まるで「スナイパーが前に出てボコられていたら世話がない」とでも言いたげである。

 首を捕まれてだらりと両手足を下げる様子からは、操縦者の身の安全すらルートには怪しく見えていた。

 

「遅かったじゃないかカシム。もう少しでお友達をやっちまうところだったぜ」

 

 対峙するアーバレストを宗介が操っていると認識しているため、ガウルンはいつもの口調で挑発してきた。

 だが目の前にいるのは宗介ではない。

 彼ならば嫌うであろうカシム呼びも暖簾に腕押しで、ルートは返事もなく構えた。

 かつてアーヴェイと共に戦場を駆けた専用機よりも一体感があり指先の一つ一つまで自在である。

 これならば武器がなくとも戦えると、ルートはブジツの構えを取る。

 

「ん~その構えはカシムじゃねえのか?」

 

 目の前のアーバレストを操縦しているのが宗介でないのならば用はない。

 そう続けるようにガウルンは単分子カッターを引き抜く。

 とりあえずラムダドライバの稼働には影響が出ない程度に機体を痛め付けた上で、オペレーターを引きずり出して宗介を誘き寄せる餌にでもなってもらおうか。

 そんな考えで刃を向けた。

 ガウルンからすればカッターで戦うのは武器としてラムダドライバを使って壊しすぎないように自重するためのハンデ。その上でASに初めて乗った現地人になど負けるつもりはなかった。

 

「さっきの街からどのくらい離れているのかは知らねえが、今度はその機体でリベンジか? カシムと何処で知り合ったのかはしらねえが、遊ばれたのがよっぽど悔しかったのかよ」

 

 ルートの構えはブジツのもの。

 そしてガウルンはベルンでの戦いでソフィアのそれを既に見ていた。

 ガウルンはその構えからアーバレストに乗っているのがソフィアだと誤解し、顔どころか性別すら知らない彼女を虚仮にした。

 ルートにはガウルンの言葉の意味などわからないが「猟兵機乗りとして腕利きで、加えてブジツを納めた使い手」で思い浮かぶ人物など彼にとっては幼馴染みのお姉さんなソフィアくらいのもの。

 なのでここに来る前にガウルンがソフィアと戦ったのであろうことは容易に想像がついた。しかもそれは何らかの理由で決着は水入りのままということも。

 

「黙っているのなら面白くないね。カシムを誘き出すために伊達にしてやろうじゃない」

 

 デッドウエイトと化していたガーンズバックを投げ捨てるとコダールは走り出す。

 鋭敏なジグザグステップはラムダドライバを使った慣性制御を生かしており、生身の人間が体重移動を駆使するかのように鋭敏である。

 教科書通りの操縦しかできない新兵ならば簡単に翻弄されるであろうコダールの動きだが、アーヴェイを仲介してアーバレストとの一体感を得ていたルートにとっては見切れない動きではない。

 

「おらよ!」

 

 ラムダドライバを活用してこその空中疾走により空中で向きを変え、アーバレストの右腕を狙う弾丸と化したコダールの切っ先が肩間接に突き刺さった。

 

「?!」

 

 ……かに思われたが、ルートが無意識的にイメージする体重移動をラムダドライバで再現したアーバレストはコダールの攻撃に喰らいついていた。

 右前腕を盾のように振るってカッターの刃を反らし、そのまま捻りを加えた左の張り手でコダールの右肘を撃ち貫く。

 仮にこれが生身ならば右肘は折れていたであろうし、仮にこれがブドーの使い手が決めた技ならば派手に投げ飛ばされてオペレーターは嘔吐していたであろう。

 そのどちらでも無いからこそ虚弦斥力で肘をガードしたコダールは破損には至らない。

 

「今のは驚いたが……今度のはどうかな?」

 

 斥力の盾で掌打を防いでいたコダールは空中である。

 このままならば仰向けに着地するであろうそれをガウルンは再び虚弦斥力で動かして見せる。

 コダールの重心を右腕に固定した状態で下半身を強い力で跳ね上げて、子供が人形でブンドド遊びをするかのように踵を落とす。

 無茶苦茶な軌道だが、例えるならばこの場を俯瞰する神の掌が力一杯にコダールを打ち付けてくる訳だから、アーバレストの装甲やルートの受け流し技術だけではとても防ぎきれない。

 ガウルンはアーバレストを壊しすぎぬように加減しているため完全破壊には至らないだろうが、これを受けたら戦闘不能は避けられない。

 十トン強の踵落としがアーバレストの伸びた左腕を狙った。

 

「ランガート大尉。想像してください」

「想像? いったい何を」

 

 あと数秒でコダールの踵が迫るというこの状況でアーヴェイは問いかける。

 ラムダドライバを発動させる準備は自分が整えた。

 実際に機体の制御を円滑にするぶんには安定して稼働している。

 あとは切り札に定めていた矛としてそれを発動させるだけ。

 最強の矛にして最強の盾であるこの力を発揮しなければ相手のそれは防ぎようがないとアーヴェイは分析している。

 そしてその分析をアルも裏付けしていた。

 

「大尉にとって最も強いモノ。目の前の敵を無力化できる力を」

 

 どんな形でもいい。

 ラムダドライバに指向性を持たせるために必要なルートなりの強さのイメージをアーヴェイは求めた。

 今のルートは軍人ではないのだから殺す必要はない。

 制圧出来ればそれで良いと。

 

「くっ!」

 

 歯を食い縛ったルートはアーヴェイの注文通りに想像を働かせた。

 ルートにとって最も強く、最も便りになって、そして最も愛しいモノのカタチを。

 

「ぶっつぶれろ!」

「うちの主様に何してくれていますの!」

 

 そしてルートがイメージした通りにそれは現れた。

 最初にゲートが開かれた際、アーバレストの胸部に打ち込まれていたレザニウムが剥がれ落ち、それが核となった虚弦斥力の塊。

 それは巨大なスヴェンの形となり、スヴェンがここに居るかのようにコダールの主を怒鳴り付ける。

 巨大スヴェンの腕はコダールを操るモノとは別の神の掌のようにコダールを受け止めると、足を掴んで逆さ釣りにしてしまう。

 

「す、スヴェン?! ちょっとやりすぎじゃないか」

 

 ついルートもそう言ってしまう。

 虚弦斥力の塊でしかない巨大スヴェンをルートは思わず止めようとするが、先程までの一体感は何だったのかとばかりにアーバレストが重い。

 

「アーヴェイ?!」

「大尉殿……彼女ならここには居ません」

 

 ルートは何事かとアーヴェイに語りかけるがアーバレストの中に彼女はいない。ならば目の前の巨大スヴェンはもしかしなくても彼女なのかとルートはその姿を見つめる。

 本来ならばアーバレストは宗介が乗るために調整されており、強引にシステムをルート用に調整していたアーヴェイがいないのならば、もうルートは先程までのようにアーバレストを乗りこなせない。

 だがこの戦いにはもうルートの力は必要ない。

 コダールはある理由もあって斥力の塊となったスヴェンに敵う相手ではないのだから。

 

「何故テメーがラムダドライバを? それに機体が……動かねえ!」

「そのレザニウムが運のツキですわ」

 

 何故ならコダールの頭部スペースにはレザニウムがぎっしりと詰まっていたからだ。

 今回ガウルンがアマルガムから請け負っていた作戦目的は三つ。

 一つ目はレザニウムを触媒にコダール、アーバレストのラムダドライバを使って人為的にゲートを開くこと。

 二つ目はウィスパードと呼ばれる能力者の脳細胞を触媒に同じ手順で帰りのゲートを開くこと。

 そして三つ目は平行世界からレザニウムを回収してくること。

 ルートらの世界における神の破片であるレザニウムは宗介の世界から見ても魅力的な高性能エネルギー機関かつ、高性能集積回路である。

 偶然ながらレザニウムを手に入れたアマルガムがそれに着目しないわけがない。

 ベルンからオーガンベルツに転移したあとに回収していたレザニウムをガウルンは頭部に収納していたわけだが、この世界で数少ない神の加護を受けていたスヴェンの前では「機体内部にレザニウムを隠していたが故に」コダールは彼女の加護の支配下に入っていた。

 機体のシステムに組み込んでいた訳ではないため直接触れる必要があったのだが、こうして虚弦斥力の塊となったうえ触れたスヴェンには、もはやコダールなど赤子の手を捻るようなもの。

 

「あがが……このままやられるかよ!」

 

 最後っ屁の攻撃も相手が虚弦斥力そのものでは効果は薄い。それでもギリギリで間に合ったと言わん態度でガウルンは攻撃していた。

 二機のラムダドライバがウィスパードの脳細胞を触媒ぶつかり合い、力負けしたコダールを中心にゲートを開く。

 

「成功だ。じゃあな、巨大なお姉ちゃん」

「せめてこれは置いていきなさい!」

 

 ゲートを通って転送されていくコダールからスヴェンは頭を引きちぎると、光に飲まれていくその姿を見送った。

 そしてコダールが消滅したのを確認したところで巨大なスヴェンも姿を消した。

 レザニウムに宿っていたスヴェンの魂は無事に体へと戻っていたのだが、この場ではルートにそれは確認できない。

 どういう仕組みか知らないが、アーバレストのシステムに乗り移っていたはずの彼女が虚弦斥力の塊となり、そして雲散霧消してしまったのだ。

 彼女がこのまま消えてしまうのではないかという不安から「すぐに戻る」とアルに言いつけたルートは全速力で来た道を戻る。

 

「お帰りなさいませ主様。終わったのですねいつものように」

「ああ」

 

 そして泥だらけの姿で店に戻ってきたルートを意識を取り戻したスヴェンがいつものように出迎えた。

 安堵して自分に抱きつくルートの様子にスヴェンは赤面し、彼女は再び気絶してしまいそうなほどに真っ赤な顔になってしまった。

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