「急いだ方が良いわ。 私のマスターが竜殺しのサーヴァントの気配を感知したらきっと殺しに向かうでしょう」
それだけいい残して黒ジャンヌのサーヴァント。 マルタは消滅した。 黒ジャンヌの乗る邪竜『ファブニール』を打倒するために竜殺しの逸話を持つ英雄は必要だ。言われた町に向かうと既に火の手が上がっている!
「キリシュタリア! 町が燃えている1」
「ああ。 向こうは竜に乗っている事に加えてこちらは一度マルタに襲われている。 私たちの足止めの意味も込めて襲わせたのだろう」
「のんびり話している場合か。 町中だと乱戦が予想されるからアナスタシアの援護も無理だろう。 僕とはぐれの二人で町の住民の避難を誘導する。 そっちは任せるぞ」
「ああ、気をつけてな。 ジャンヌはどうする?」
「私はもう一人の私に会いに行きます。 彼女とは決着を付けなければなりません」
町の中心部は広場になっていた。 普段なら噴水の周りに住民が集まり井戸端会議に勤しむ筈だが、噴水は無残に破壊され、そこにいるのは竜に乗った落ちた聖女。 黒いジャンヌダルクともう一人。 大剣を構えファブニールを睨み付ける男がいる。 おそらく彼こそが竜殺しの英雄なのだろう。
「その呪われた体で良くここまで粘りましたね。 流石は竜殺しの大英雄ジークフリートですね」
ジークフリートと呼ばれた男はボロボロになりながらも剣を黒ジャンヌに向ける。
そこにアルトリアとカイニスを先頭に俺たちが割り込む。
「大丈夫ですか? 私の盾の影に!」
「ああ、すまない。 君たちは?」
「あの黒ジャンヌを倒そうとしている者だ。 私はキリシュタリア・ヴォ―ダイム。 一応このメンバーのリーダーを務めているものだ。 貴公はニーベルンゲンの英雄ジークフリートで間違いありませんね?」
ジークフリートが首肯する。 そう話している間にも邪竜の猛攻は続いており、アルトリアとカイニスが必死に応戦している。
「もう一人の私! フランスを救おうとした貴方がなぜ今度はこの国を滅ぼそうとするのです!」
ジャンヌが叫ぶ。 それを聞いた黒ジャンヌは哀れな者をア酒笑うように声を上げる。
「まだ分かってないんですか!? まだその程度の認識なんですか? 決まっているでしょう。 復讐よ! 私を救国の聖女などと祭り上げておいて最後は魔女と石を投げつけたこの国に復讐をするのです1 そのために私はサーヴァントとなって生き返ったのです。 かつて神の声を聞いた気になってこの国を救うなどという幻想に囚われたジャンヌ・ダルク。 貴方こそ偽り。 私こそがジャンヌ・ダルクとして正しいあり方なのです!」
「……私が間違っているとか、貴方が正しいとか、そんなことは私には分かりません。 私の言える事はただ一つ。 私は貴方を倒します」
白と黒。 空中と地上。 秩序と混沌かがみ合わせのように相反する二人が対峙する。
決着は、近い。