Fate/if   作:大葉景華

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第一特異点 最終決着

ジャンヌ、アルトリア。 そして黒ジャンヌの三人がまず飛び出した。 次いで数瞬遅れてマシュが、さらに遅れてアナスタシアと俺たちが構える。

 

「参る! はあああああああ!」

 

「えぇい!」

 

アルトリアが正面から切り込み、ジャンヌが後ろから旗を振り下ろす。 が、それらを剣と旗で軽々受け弾き飛ばす。 遅れて打ち込まれたマシュの盾も蹴りの一撃で吹き飛ばす。

 

「くそっ、アナスタシア、援護!」

 

「了解よ、マスター」

 

アナスタシアが人形を掲げると近づくだけで凍り付きそうな吹雪が放たれるが、それも旗の一振りで炎に阻まれてしまう。

 

「くそっ……やっぱり聖杯からリソースを得られているサーヴァントと真正面からぶつかっても勝ち目がないぞ! どうするカドック!」

 

「……供給される魔力は確かに半無限でも、それを受け取る器は無限の容量を持っている訳では無い。 一撃ですべてを吹き飛ばすほどの力を打ち込めばいけるかもしれない」

 

全てを吹き飛ばす……。 アルトリアの宝具約束された勝利の剣(エクスカリバー)がまさにそうだ。 でも、俺の魔術回路が弱いせいで宝具を打つ為には令呪によるバックアップが必要で、その令呪は最後の一画。 確実に当てるために隙を作らなきゃ。

 

俺はカドックに目配せをし、アルトリアとマシュに合図をする。 二人とも俺の意図を汲み取ってアルトリアが下がり、マシュ、そしてジャンヌが同時に跳び出して黒ジャンヌを抑え込む。 その隙にアナスタシアがジャンヌを囲むように魔法陣を作り始める。

 

「このっ! 厄介な!」

 

剣と旗を二人がかりで抑え込み、陣が完成する。

 

「準備出来たわ。 しっかりやりなさい」

 

ジャンヌと、マシュが飛びのくと、氷の壁が現れ、俺達と黒ジャンヌを阻むものは消え失せた。

 

「アルトリア! 最後の令呪だ! あの黒ジャンヌに! この時代に終止符を!」

 

アルトリアも聖剣を振りぬきながら叫んだ。

 

「ええ、マスター! 立香、この聖剣は今この瞬間の為に!」

 

俺の腕から最後の令呪が消え、アルトリアが上段に構える。

 

「っは! 来なさい! 私はすべてを否定する! 分かっているのよ! 私が偽りの復讐心を宿された傀儡であると。 だけどそれがどうした! それでも私は今、ここに生きている! 私は貴方たちとあの本物の聖女を倒してこの時代で生きる!」

 

黒ジャンヌがそう吠えると周りから炎に包まれた張り付け台が突き出てきた。 恐らくあれが黒ジャンヌの宝具あろう。

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮!」

 

と、剣を振りかざし、宝具を打とうとしている黒ジャンヌの目の前にジャンヌが旗も剣も投げ捨てて跳び出して、困惑している黒ジャンヌを抱きしめた!

 

「はぁ!? っちょ、アンタ! いきなり何を?」

 

「……。 ごめんなさい。 私は、貴方の事を何も分かっていませんでした。 単なる私の模造。 この時代を修正する際のただの敵かと思っていました。 私の似姿がこの時代の狂いの原因である理由が知りたかった。 でも、貴方もただの被害者。 一人ぼっちの子猫同然でしたのね」

 

「ジャンヌ! その様な世迷言を聞く必要はありません! 竜の魔女である貴方こそが神の声を聞いた真の聖女で……」

 

「黙りなさいこの出目金!」

 

聖杯を持っている男をジャンヌが一括すると、あまりの迫力に俺たちまで後ずさりする。

 

「確かにあなたは歪められて生まれた存在です。 ですがもう一人ではありません。 貴方が消える時、私もまた消えるでしょう」

 

二人のジャンヌを、光が包んだ。

 

光が収まると、そこにいたのは黒ジャンヌだけだった。 同時に、アルトリアが膝をつく。

 

「アルトリア!?」

 

「すみません。 ジャンヌがいたことにより、拘束が外れきれず……。 魔力のオーバーフローで私にも……」

 

アルトリアも倒れ、エクスカリバーが手から落ちる。

 

「おお! 流石は聖女ジャンヌ! あの攻撃を食らっても耐えられるとは流石としか言いようがありません! お待ちください。 このジル・ドレ。 すぐに回復して差し上げ……」

 

「黙れ! 出目金!」

 

さっきよりも数段大きな怒声が響く。黒ジャンヌが俺に剣を向けながら叫ぶ。

 

「確かに私の復讐心、存在そのものはこいつに創られた! 私はあの女の偽物。贋作だ! だけど! それでも! だからこそ私は消えるわけにはいかないんだぁ!」

 

竜の描かれた旗は折れ、鎧は砕け、片腕が折れても彼女の眼には今までよりも激しい炎が揺らめいていた。

その炎は今まで己が身を焼いた炎より生じる復讐の炎ではなく、生きたいと。 生まれて初めての己の中より燃え滾る炎が瞳に宿っている。

 

「良いだろう、貴公のその精神。 賞賛に値する。騎士の誇りにかけて、私が……」

 

と、アルトリアが立ち上がろうとするのを俺が制する。

 

「なにをする気ですか?

 

「アルトリアは下がっててくれ」

 

そう言いながらエクスカリバーを拾う。 アルトリアが片手でも軽々振り回せるそれは、俺が両手で扱うにも余るものだった。 それでも、なんとか構える。 黒ジャンヌもボロボロになりながらも剣を構える。

 

「名乗りは上げないわよ。 私たちはお互い騎士ではありませんからね」

 

数秒の沈黙。 そして両者叫びながら突進する。 先ほどとは打って変わって遅く、お互いの剣は振り回すだけで剣技も減ったくれもない。 しかし、俺たちは本気だった。 生きるため、自分の未来を勝ち取るために俺たちは剣を振るう。 聖女と魔術師。 二人が剣を取り存在を示しあう。

しかし、その時間は長くは続かなかった。 流石はサーヴァント。 聖杯のサポートが無くても人間の俺なんて相手にならない。 少しづつ俺の方が押されていく。

遂に俺の剣が大きく弾ける! 黒ジャンヌの剣が俺の喉元に迫る。

 

「マスター!」

 

アルトリアの声が響く。 俺は黒ジャンヌの一撃をかろうじて躱し、回転の勢いで剣を振りぬき、黒ジャンヌの胴体に深々と剣を突き刺した!

 

 

「…………。あーあ。 負けちゃった。 ま、いいわ。 最後に気持ち良かったし。 ねえ、藤丸立香」

 

「うん」

 

「あんたは最後まで負けんじゃないわよ」

 

その末期の言葉を残して光となって消え去った。

 

俺もついにエクスカリバーを落とし、膝をつく。 呼吸が荒い。エクスカリバーの力に振り回されて前人の筋肉がズタボロだ。 もう呼吸をするのもしんどい。

 

「認めぬ! 認めぬぞぉ!」

 

出目金が叫ぶ。

 

「何故! 何故なのですか! 何故ジャンヌが敗北する!? ああそうか! まだ未完成なのですね? よろしい! ならば我が聖杯の力を持ってさらなる貴方を生んで……」

 

「『幻想の鉄処女(ファントム・メイデン)』」

 

ジルドレェの背後にアイアンメイデンが現れ、何かを叫ぶ暇もなく処刑する。現れたのはアサシン。 吸血鬼カーミラだった。

 

「お前……。 生きていたのか」

 

「それも今ので終わったがな。 聖杯の所有者が消え、時代の修正力が強まっている」

 

事実、城が崩れ始めカーミラの体も光に包まれていく。

 

「……いくのか」

 

「ええ。 この時代では私は倒されるべき敵。 さようなら。氷のキャスターとそのマスター」

 

それだけ言い残してカーミラは消え去った。

 

「……さて、もうそろそろこの時代は終わる。マシュ。 聖杯の回収を」

 

「あ、はい! マシュ・キリエライト、聖杯を回収します」

 

盾の回収機構に聖杯を回収する。 それと同時にドクターロマンから連絡が入り、聖杯の回収を確認した事。 すぐにレイシフトの準備をする事と言われた。

 

「やっと現代に帰れるのか」

 

「ふん。 しかしこれでやっと第一の特異点が終わったばかりだ。 気を抜くんじゃないぞ。 大体お前の戦法は令呪からの宝具に頼りすぎているんだ。 それもこれも基礎がなってないからだ! いいか!」

 

カドックが俺を指さしながら叫ぶ。

 

「帰ったらみっちり基礎から叩き込んでやるからな!」

 

その言葉を最後にカドックとアナスタシアがレイシフトする。

 

「アルトリア。 マシュ今回はありがとうね」

 

「いえ、今回の戦いで私はまた強くなることが出来ました。 次の戦いも必ずや勝利に導いて見せます」

 

「先輩。 今回はありがとうございました」

 

俺の視界もだんだんぼやけていく。 この時代にいられるのもあと数十秒だろう。

初のレイシフト。 初の人理修復。 失敗とイレギュラーだらけの大変な旅だったけど、今回は何とか生き残れた。 安堵と次への希望と不安を胸に現代へ俺は帰る。

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