Fate/if   作:大葉景華

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幕間の物語

俺の密かな楽しみがサーヴァントの召喚の場面に立ち会う時だ。あの召喚サークルの不思議な光、かっこいい英霊。 基本的に召喚に立ち会うのは召喚するマスターは勿論、所長のオルガマリー所長と所員をまとめるドクターロマン。 そしてダヴィンチちゃんは毎回参加している。

俺もほぼ毎回参加している。 俺でも知っているような英霊から、ヨーロッパ人しか知らないサーヴァントや、その逆のサーヴァントが現れたりするから面白い。

そんな中、今回の召喚実験では面白いのが見れた。 召喚実験の後、すぐにそのサーヴァントに会いに行った、

 

「クーフーリン!」

 

俺が声をかけたのはレイシフト先の冬樹で出会い、そのままカルデアに召喚されたサーヴァント。 ケルトの大英雄。 クランの猛犬クーフーリンだった。

 

「ん? 誰だ、お前?」

 

奇妙なことに、クーフーリンはおれの俺の事を覚えていないようだ。 俺が戸惑っているとフードを被り、杖を持ったクーフーリンが廊下から現れた。

 

「ん? 坊主じゃねえか。 何してるんだ……って、そこにいるのは俺じゃねぇか」

 

「え? どゆこと?」

 

俺が聞き返すと二人のクーフーリンが答えた。

曰く、サーヴァントによっては適正クラスによって複数クラスに跨って顕現できると言う話でそれのせいで複数に跨って同じサーヴァントが顕現し、此度の現象が発生したらしい。

 

「へー。 理解はしたけどいまだに信じられないよ。 同じ人がこの場に二人いるなんて」

 

そう言われて、二人のクーフーリンが顔を見合わせる。 当たり前だが全く同じ顔だ。 服装や得物の違いが無ければわからないだろう。

 

「そういえば、クーフーリンが戦っているとこあんまり見てないや。 冬木の時は周りを見ている余裕なんて無かったし」

 

「お、それならいっちょやってみるか!」

 

と、ランサーの方のクーフーリンがキャスターの方のクーフーリンの肩をたたいて言う。

 

やってきたのはシュミレーションルーム。 二人のクーフーリンがそれぞれ槍と杖を構える。 鏡合わせの様に全く同じ構えだ。

 

「じゃあ……、、用意、はじめ!」

 

両者全く同時に飛び出す。 そこからの戦いは完全には目で追えるものでは無かった。 速さだけならアルトリアと大差ないだろうが、とにかく動きが立体的で双方槍術だけでなく超接近戦で体術まで使うからとにかく目まぐるしい。 しかし、流石にクラスと得物の差か、じりじりとキャスターが後退する。 そしてついに背中が壁につく。

 

「どうだ? 模擬戦闘だ。 ここいらでお開きにするか?」

 

ランサーがキャスターの喉元に槍を当てながらニヤリと笑う。 キャスターは諦めた様に杖を放り投げ、降参と言うように両手を挙げる。

 

「ああ、流石俺だ。 こんな杖でゲイボルグに正面からやっても勝てねぇわな。 だがな、面倒くさいがルーンってのは便利なもんだぜ!」

 

瞬間。 ランサーの足元から木の根の様な物が生え、襲い掛かる。 ランサーも咄嗟に跳び上がり、天井を蹴って態勢を整えようとすると、何かにぶつかり空中に張り付けになる。

 

「くっ。 てめぇ……なんにも仕掛けてこないと思ったら。 ルーンを空中に固定していやがったのか」

 

「おうよ。 一人で戦う時は槍使った方が手っ取り早いが、誰かと組んで戦うことが多くなりそうだからな。 こっちも悪くないぞ」

 

「……。 そうかもな。 降参だ」

 

今度は正真正銘決着だ。 キャスターがランサーを解放し、フードを被りなおす。

 

「っと、どうだった坊主? 負けちまったが俺の槍術は? 中々なもんだろ?」

 

「凄いよ! 全然目で追えなかった!」

 

俺が興奮してそう叫ぶと二人は満足して俺の頭を乱暴に撫でる。

 

「よし、運動の後は飯とするか! キリシュタリアの奴が美味い茶を入れられるんだ」

 

「お、そいつぁご相伴にあずかりたいねぇ」

 

「ねえねえ、今度俺に槍を教えてよ」

 

「いいぜぇ、まずは握り方からだな」

 

そうして、俺たちはキリシュタリア達の所に向かうのだが、そこにいたカイニスとどちらが最高の槍使いかを決めるためにシュミレーションルームにとんぼ返りする事になったのはまた別の話だ。

 

 

ランサーのクーフーリンの召喚の時の一見以来。 俺はよくクーフーリンといることが多くなった。 そんな中。 カルデアの中では自由行動となっているから最近俺から離れていたアルトリアとばったり出会った。

 

「おや、マスター。 今日も訓練ですか」

 

「うん。アルトリアはまたご飯食べてるの?」

 

「ええ、最近召喚されたアーチャーのサーヴァントが大変美味しい料理を作ってくれるので」

 

「へー、飯を創るのが得意な弓兵ねー。 なんてやつなんだ?」

 

クーフーリンが尋ねるけど、アルトリアは首を振る。

 

「それが……。 尋ねても答えてくれないのです。 大した英霊では無いからアーチャーと呼んでくれれば良いと」

 

「へー。 無名の弓兵ねぇ。 いっちょ顔を拝むとするか!」

 

そうして食堂にたどり着くと、確かに赤いマントをきた褐色の肌に白髪の男が中華鍋を振るっていた。 俺達に気が付くと、鍋を置き、声をかけてくる。

 

「今日は早いな騎士王。 む、そこの槍兵は、ケルトの大英雄。 クーフーリンとお見受けするが」

 

「ああ、そうだ。だが、俺がお前を知らないんだよなぁ。 真名を教えてくれよ。 弓兵」

 

クーフーリンが睨むも、アーチャーは首を傾げるだけだった。

 

「いやなに、君が私を知らないのは単に私がそれほど高名なサーヴァントでないからだよ。 私は名乗るほどのサーヴァントではない」

 

そういって再び料理に戻ろうとする。 しかし、ふと、と言うようにこちらを見る。

 

「今回は味方だ。 戦闘において肩を並べる事もあるだろう。 その時君たちに少しでも助力できたら改めて名乗ろう」

 

今度は本当に話を打ち切り、俺たちに背を向けてしまった。

そうして出された料理はチャーハンだった。

 

「おいしっ」

 

「うめぇ! やるじゃねぇか! これからもちょくちょく食わせてくれよ!」

 

「はい、今日も美味しいです。 アーチャー」

 

「……。 相変わらず美味そうに食べるのだね。 セイバー」

 

そうして弓兵は今日も食堂の守護者として鍋を振る。

 

 

深夜。 微妙な時空の歪みを解消するために俺とマシュ。 そしてあんまり顔を合わせた事が無かったマスターと解決に向かった。 しかし、予想以上に時間がかかってしまい、帰りがこんな時間になってしまった。

帰還してからも、レポートに時間を取られ、なんだかんだ夕飯も食べ損ねてしまった。このまま寝てしまいたいけど小腹がすいたから何かつまもうとしていると、キリシュタリアの部屋からわずかな明かりが漏れている。 ノックすると、カイニスが出迎えてくれた。

 

「なんだお前か。 丁度良い、入れよ。 おい、マスター。 いい加減休め」

 

そう言いながらキリシュタリアを机から引きはがす。 机には大量の資料があり、その量は数時間程度では網羅できないほどだった。

 

「ああ、立香か、いらっしゃい。 今お茶を入れよう」

 

「俺がやるよ。 今日は朝から休みだったよね? 一体何時間資料集めしていたのさ?」

 

「朝からずっとだよ。 さっきまでカドックが手伝ってくれていたしそこまで手間じゃないよ」

 

そういうキリシュタリアの笑顔には、隠しきれない疲れが見える。

 

 

「次の特異点のめどがついたんだが……」

 

「なにか問題が?」

 

実は、とキリシュタリアが答える。

 

「特異点が同時に二か所発見されたんだ。 それでメンバーを考えているんだが……。 上手く決まらなくてな」

 

資料を俺に見せながら珍しく愚痴を零す。 俺も目を通すが、確かによく考え、練られている。 今の戦力と、カルデアの魔力の貯蔵量。 それぞれの相性までも考えられている。

 

「凄いな。 良くここまで考えられているよ」

 

「ほとんどはカドックのおかげだよ。 私の周りには頼りになる人が多くて助かるよ。 勿論君もだよ。 立香」

 

真正面から言われたら少し恥ずかしい。 ごまかすために紅茶を呷ると火傷した。

 

「そういえば。 立香は一般からの候補生だったな。 一体どうやって君はここに呼ばれたんだ?」

 

「ああ、それはね……」

 

と俺の過去の話を少しする。

 

放課であることを告げるチャイムを、屋上で一人聞く。 転落防止のフェンスに背を預け、特に何をするでもなく空を見ている。 空もいつもと変わらない。 青く、白く。 そして中心にはすべての色を集めたような強い光。

 

「藤丸。 何してんだ?」

 

「ああ、いや。 特に何も。 空見てた」

 

俺の言葉につられてクラスメイトも空を見る。 しかし、顔をしかめてすぐに視線を校庭に移す。

 

「なー。 あいつ凄いよな」

 

あいつ、と言って指さしたのは陸上部のとある生徒だ。 一年生ながら優秀な成績を残しており、全国大会にも出ている。

 

「ああいう人ってもう人生の目標が決まっててそれを疑わずにやっていくんだろうなぁ」

 

「……。 どうだろうな。 案外いろんな悩みを抱えていてしかも誰にも相談できずに悩んでいるかもよ」

 

「そんなもんかね」

 

「そんなもんだよ」

 

「……。 なぁ、献血いかね?」

 

「良いけど……。 いきなりなんで?」

 

「いやさ、俺たちはあいつ見たいに今すぐすげー事出来ないじゃん? でも俺らの献血で誰かすげー誰かが助かったら実質俺らすげーじゃん?」

 

「なんだよその理論。 ……まぁいいや。 行こうか」

 

立ち上がり、ズボンに付いた誇りをはたく。 友人が持ってきてくれているカバンを掴み、駅前の献血ステーションに向かった。

 

 

「……で。 その献血ステーションの人がカルデアの職員で、その献血が実は魔術師の検査も兼ねていたって事」

 

そうして話を〆た。

 

「俺はここに来れて良かったと思うよ。 まで何も出来ていないけど、きっといつか皆の役に立ってみせるよ。 だからこれからもよろしくね。 キリシュタリア」

 

キリシュタリアは紅茶を一口飲んで、カイニスにアイコンタクトを送り、書類をまとめる。

 

「なら立香。 私の友人として早速手を貸してほしい。 次の特異点。 同時に攻略する。 一つのリーダーは私が。 そしてもう一つは立香。 君に任せたい」

 

真っ直ぐに俺を見つめてくれる。 今までここまで俺を見てくれた人はいない。

 

「俺は……」

 

ちらり、と右腕の令呪が目に付く。

 

「分かった。 やるよ。 任せてくれ」

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