Fate/if   作:大葉景華

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一話一話をどこで区切るのかが難しい……。 構成等アドバイスがあれば賜りたいです。


第三特異点 女神の島

聖杯を持ち、人間の体でありながら、サーヴァントと互角以上に戦う女海賊フランシス・ドレイク。 彼女の船に乗り、点々と存在する島以外消えた大海原を探索することに決めた。

 

「とは言ったものの……。 これからの方針って結局決まってないよね」

 

「そうですね、この時代を狂わせている方の聖杯はどこにあるか判明していません。 キリシュタリアさんの方の特異点はあまりにも広すぎて大人数でレイシフトしたそうです。 だからこっちの方のサポートは少し疎かになるそうです」

 

それはレイシフト前に聞いていた。 こちらと向こうの人数の違いがキリシュタリアがメンバーを選出するときに最も障害となった事だ。

 

「ロマンに聞いても聖杯の場所は探知できなかったしね。 今、カドック達が船員達に色々聞いてくれている。 もうすぐ帰ってくると思うけど……」

 

と、話していたら丁度オフェリアが戻って来た。 マシュが駆け寄る。 俺が前の特異点でカドックと背中を預けあって戦ったことや、丁度男女比の関係で、この特異点に来てからは俺とカドック。 オフェリアとマシュの組み合わせで行動することが多くなっている。 ドレイクの好意で俺達に二部屋あてがわれたから、部屋割りも男女で分けている、

 

「オフェリアさん。 お疲れさまでした。 それで、どうでした?」

 

「ありがとうマシュ。 ドレイク船長が依然戦った異常に強い海賊船が怪しいと話していたわ」

 

とオフェリアがマシュに話していたらカドックも帰って来た。

 

「あ、カドックさんも戻ってきましたね。 お疲れ様です。 成果はどうでしたか?」

 

「ああ、海賊がこの近くで立ち寄れない島があると噂していた。 もしかしたら魔術的な防壁があるのかもしれない。 探す価値はあるだろう」

 

「流石カドックさんです! これで行くべき場所が定まりましたね!」

 

そのことはすでにドレイクに伝わっており、進路もその島のあるだろう場所に向かっている。

 

「……カドック。 貴方のサーヴァントキャスターでしょ? 聖杯の魔力リソース使って広範囲の索敵出来ないの?」

 

と、オフェリアが腕を組みながら言う。 それはカドックの代わりに突然現れたアナスタシアが答えた。

 

「無理ね、ある程度は私も出来るけど私は近代のサーヴァントなのよ。 しかも私自身にそんな逸話なんて無いし。 私がサーヴァントとして成り立っているのはこのヴィィがいてくれるからよ」

 

そう言っていつも手に持っている人形の様な物を掲げる。 オフェリアがため息をつくのをよそにアナスタシアはカドックの腕を取って甲板の方に向かう。

 

「行きましょ。 私、海鳥が見たいわ」

 

「なら一人で行けばいいじゃないか! 分かった。 分かったって! 引っ張るなよ」

 

不機嫌そうなオフェリアとオロオロしてるマシュと俺が船室に残っている。 なんだか気まずい……。 すると、甲板が騒がしくなり、カドックの叫び声が聞こえる。

 

「藤丸! 敵だ!」

 

甲板に飛び出すと、既に戦闘は始まっていた。 大砲の轟音が響き、水柱が何本も立ち上がる。

 

「カドック! 何がおこったんです?」

 

「オフェリア。 見ての通りだ。 真っ向から打ち合っている。 聖杯持ちのこっちと互角に戦えるって事は恐らく向こうも魔術的なブーストがかかっているだろう」

 

ドレイクが指示を取り、何とか応戦しているが、素人目で見ても互角どころか押されている。

 

「あんたら! 悪いけど、手を貸してくれないか! また奴が出たんだ!」

 

「奴って?」

 

「噂の海賊船だよ! 何発撃ってやっても効かない厄介なジジイさ!」

 

そうこうしている内に船を横に着けられた。 板が渡され、敵の海賊が乗り込んでくる。

 

「マシュ! アルトリア! 応戦だ! 殺さないようにお願い」

 

その言葉を聞いて、マシュとアルトリア。 そしてオフェリアのセイバーが飛び出した。 確かに、普通の海賊程度ならだれが出ても一瞬でカタが付くはずなのに、どの海賊も瞬発力、筋力共にサーヴァントに引けを取らない。 明らかにおかしい。

 

「カドック。 オフェリア。 多分これは……」

 

「分かっている。 明らかにおかしい」

 

「そうね。 恐らくこの船に」

 

そう。 ここまで人知を超えた事が出来るなら、それは聖杯以外にあり得ない。

 

「カドック。 オフェリア。 船の守りを任せてもいい?」

 

そう言いながらマシュとアルトリアに合図を送る。 二人の返事を待たずに向こうの船に飛び込んだ。

 

やはりそこにはサーヴァントがいた。 大斧を持った男を先頭に、曲剣を持った女海賊とその横に銃を持った女海賊の二人組。 そして一番後ろには長槍を持った中年の男と明らかに海賊の長であろう服装の男で最後だった。

 

「おやおやぁ? あのBBAじゃなくてこーんな小さい子供が来たでござるなぁ? まぁ拙者ショタ属性はないでござるけどまぁしょうがないでござるなぁ。 おんやぁ? 後ろにいい感じのメカクレ属性の子といい感じの女子がおるのぉ。 拙者、年増に興味は無いでござるがメカクレの子はまだいけるでござるぞぉ

でゅふふふふふふふふ」

 

……うわぁ。

 

「先輩。 私、盾持ちとして前に出なければならないのは理解しています。 しかし、どうしても前に出ることが出来ないんです」

 

マシュは意外と積極的で、戦闘も嫌いだと言ってはいるがなんだかんだ俺達を守ろうといつも最前線に立ってくれていた。 そのマシュが今にも盾を放り出さん勢いで震えながら俺の後ろに隠れている。

 

「マスター。 早く指示を、早くこの下郎を剣の錆にする許可を」

 

反対にセイバーは剣を構えて前傾姿勢で今にも飛び出しそうだ。

 

「アルトリア、ステイ。 流石にこっちの人数が少なすぎる」

 

「でゅふふふふふふふふ。 意外とそこの坊主はやるようですなぁ。 しっかーし! 拙者もなかなかどうして意外とやるのですぞぉ」

 

その言葉を合図に斧を持った男がゴールデンハインドに飛び乗った!

 

「まずい! カドック、オフェリア! そっちにサーヴァントが!」

 

「っち! 悪いがこいつは恐らくバーサーカーだ、抑えるのに手間取るだろう。 そっちの変態海賊はお前だけで……」

 

「こんの! ティーチ! 良くもアタシの船にこんなむさくるしい野郎を!」

 

そう言いながらドレイクがこっちに飛び込んできていきなり銃を打ち込んだ。 その銃弾は二人の女海賊に阻まれた。

 

「おっと来たなBBA。 お前みたいな年増本来興味は無いんだけどまぁしょうがないでござるなぁ。 さっさとあのロリっ子ちゃんを渡しな!」

 

あのロリっ子? ハインド号には子供はいないはずだったんだけど……。

 

「やかましいね!」

 

と、叫び銃撃を打ち込みながら俺に耳打ちをする。

 

「一旦引くよ。 合図したら嬢ちゃんたちと船に戻りな。 アタシもその後戻る」

 

「分かりました。 でも隙は俺たちが作ります」

 

「頼もしいねぇ。 じゃあ行くよ!」

 

ドレイクが銃撃をし、船に跳び戻る。 俺もマシュの手を握ってドレイクに続きながらアルトリアに魔力を注ぐ。

 

「アルトリア! 頼んだ!」

 

アルトリアの剣から風が迸り、ティーチ達の動きを止める。 風が収まったときには俺たちはすでに逃げ出していた。

 

しかし、問題はまだある。 船にまだ敵のサーヴァントがいるのだ。 斧持ちのバーサーカー。 オフェリアのセイバーが今は抑え込んでいるが、戦況は厳しそうだ。

 

「オフェリアさん!」

 

マシュが飛び込み、二人の間に割って入る。 今度はマシュにありったけの魔力を注ぎ込んで、強化する。

 

「はあああああああああああ!」

 

盾のからの障壁で、バーサーカーを吹き飛ばす。 何とか距離を取り、体制を立て直し、陣形を取る。

 

「あんたらは下がりな! 戦いは任せて全速で逃げるよ!」

 

その言葉に海賊たちは出来る限り空間を作り、ティーチの船から出来る限り遠ざかる。 こっちの船の方が速いから逃げるのは出来そうだ。 出来る限り遠ざかればこのバーサーカーへのパスが弱まり、ある程度有利に戦えるだろう。

 

「カドック、相手の特徴は?」

 

「典型的な暴れるだけが能のバーサーカーだ。 恐らくこれほど離れれば宝具も満足に打てないだろう」

 

「よし、マシュ! そのまま抑えといてくれ! オフェリアのセイバーは攻撃の準備を!」

 

俺の声に反応してセイバーが後退し、魔力を溜め始める。

 

「セイバー。 お願い」

 

「承知」

 

オフェリアの声に短く応え、超高速で敵に刃を突き立てる。 セイバーの姿が見えるころには、バーサーカーは霊核を砕かれ、その姿を消していた。

 

「す、すっごい」

 

「キリシュタリアのカイニスなんかには劣るけど、私のセイバーだって中々やるのよ」

 

少し誇らしげにオフェリアが言う。 流石セイバー。 あれ、そういえば……。

 

「ずっと気になっていたけど、オフェリアのセイバーって真名は何なの?」

 

オフェリアは少し腕を組んで考えたけど、首を振る。

 

「さっきの戦いは評価するわ。 でも、やっぱり真名を気軽に晒すのは……」

 

「いや、今回は僕からも頼む。 やはり真名が分からないと連携が上手くいかない可能性がある。 確かに自分のサーヴァントの真名を晒すのは抵抗があるだろうが、頼む」

 

カドックも頭を下げると、オフェリアは首をひねって考える。 そこまで意地を張る理由はないけど、真名は教えないと言った手前、プライドが邪魔をして言うに言えないのだろう。

 

「……マシュ」

 

「ハイ! オフェリアさん。 やはり、私たちには教えていただけないのでしょうか……。 前に出るサーヴァントの皆さんを守るのは私の務め。 それで真名を教えていただけないという事は私がまだ未熟だからでしょうか……」

 

マシュが近づいて上目遣いでオフェリアに頼み込む。

 

「s、そんなんじゃないわよ。 ……。 もう、分かったわ。 あなた達のサーヴァントの真名を知っていて

私だけが隠すのもフェアじゃないわね」

 

マシュの説得(泣き落とし)で折れたものの、まだ理由を並べて言い訳をする。 さっきまでは俺にきつい視線を送っていた彼女が、今はマシュの一挙手一投足アワアワしている。

 

「ね? 教えるから、泣かないで? 」

 

マシュがオフェリアに見えないように俺達にこっそりピースを送る。

 

「私のセイバーの真名は北欧の勇者。 ファブニールを倒した伝説のある、魔剣グラムを振るう英雄。 シグルドよ」

 

ジークフリートと同一視される北欧の英雄シグルド。 前の時代で共に戦ってくれた彼と同じ、もし区は全く違うとされる人物。

 

「そう。 当方の名はシグルド。 オフェリアの剣となるものだ」

 

仮面を外した彼の顔はジークフリートとは全く違う顔であった。

 

「君たちの戦いは当方も聞き及んでいる。 しかし、当方にももう一人の竜殺しの英雄と同じかどうかは分からない」

 

とにかく、一旦はあいつらから逃れたけど、どうにかしてあいつらに対抗できるような何かを探さないと……。 そういえば

 

「ドレイク船長。 あっちの海賊が言ってたロリ? って誰の事なんですか?」

 

俺の質問にドレイクは苦い顔をする。

 

「それがねぇ……。 アタシにも分からないのさ。 でも知らないっていうのもシャクでねぇ」

 

他の海賊達にも聞いてみたけど、詳しい情報は得られなかった。 それにしても、小さい子を探すって……。 このいつも以上に広い海でどうやって……!

 

「ねぇ、ドレイク。 一人用の船で小さい子供がこの海を渡るなんて無理だよね」

 

「勿論さね」

 

「ならさ、どこかの島にいるはずだよねぇ。 そしてあいつが探してるくらいだからサーヴァントだよね。 で、サーヴァントなら島に隠密の魔術くらいかけるよねぇ」

 

「……なるほど。 丁度いいねぇ。 このあたりが噂の島の近くのはずだねぇ」

 

それなら、ここから先は俺達の出番だ。 マスター達がカドックに魔力を送り、それを

アナスタシアに。 そしてアナスタシアも聖杯と俺たちの魔力を使って最高範囲でレーダーを張る。

待つこと数分。 俺達でもティーチの海賊船でもない魔力反応が見つかるのだが……。

 

「反応がおかしい?」

 

「ええ。 サーヴァントであることは間違いないのだけど……」

 

とにかくその島に向かうことにした。

 

その島にたどり着き、魔力の隠蔽をはぎ取ると、その名も無き島が現れた。 小舟を出し、俺達とドレイクだけで上陸した。

 

「さて。 くだんのお姫様はどこにいるんだろうね?」

 

「お姫様なんていないわ。 いるのは女神だけよ」

 

声のする方向に振り向くと、さっきのバーサーカーと同じくらいの巨体の男と、その男に肩車されている女の子がいた。

 

「えっと。 君達がこの島を隠していたサーヴァントでいいの?」

 

「ええ、良かった。 あのむさ苦しいおじさんじゃなくて」

 

「ティーチを知っているの?」

 

自称女神は首肯する。 すると、カドックが俺の袖を引っ張った。

 

「おい、何気軽に話しかけているんだよ。 あいつがほんとに神ならとんでもないぞ?」

 

カドック曰く、英霊召喚システムでは神に値する存在は呼べないらしい。 英霊と神霊は根本から違うらしく、さらに神霊も基本呼びかけに応じる事はないらしい。

 

つまりこのサーヴァントは英霊の身でありながら神を名乗る不届き者か、本当に召喚された神のどっちかだという事だ。

 

「ええ、私は本物よ。 真名はエウリュアレ。 私が英霊になった時に神格が大分落ちて本来の力は出せないのよ」

 

と言ってももとより彼女は戦う力のないサーヴァントで、それも召喚された理由の一つと考えられる。

 

「えっとつまり……」

 

「ええ。 貴方たちの船にの手上げてもいいけど戦うのは嫌よ」

 

と、まさかの戦闘拒否宣言。 しかし、ドレイクは快諾。

 

「こんな美人が船に乗ってくれるなんて最高じゃないか! 野郎どもの士気も上がるってもんよ! で、そこの女神さんの付き人みたいになっちまってるいい男よ」

 

エウリュアレを肩車している男は真名をアステリオス。 通商をミノタウロスと呼ばれる男だった。

 

「えっと。 ミノタウロスってギリシャ神話とかの牛男だっけ?」

 

俺の疑問にカドックが部妙な顔をして答える。

 

「ああ。 まぁ、そんなもんだ」

 

そうして、女神エウリュアレとアステリオスの二人が仲間になって再びゴールデンハインド号を出航させた。


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