Fate/if   作:大葉景華

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ネタバレ注意


運命の分岐路

「マシュ。 彼は?」

 

先頭の金髪の男が俺に目を向ける。 その目線に敵意が無いのが分かると、とりあえず胸を撫で下ろす。

 

「ヴォーダイムさん。 彼はついさっきカルデアに到着した最後のマスターです。 名前は……」

 

マシュが俺を紹介してくれようとしたが、ヴォーダイムと言われた男が制した。

 

「いや、彼の口から直接聞きたい。 いいかな? 最後のマスター」

 

「……はい、大丈夫……です」

 

「んもぅ! そんなに緊張しなくても大丈夫よぉ! 別に取って食べたりしないわ!」

 

後ろからそんな声が聞こえる。 剃りこみを入れた長めの髪型。 口調から女性かと思ったけど体系的にあれ男だぞ?

 

「ペペ」

 

ヴォーダイムが窘めるように言うとペペと言われた男? は下がった。

 

「さて、こちらのメンバーが失礼した。 改めて自己紹介をお願いするよ」

 

「はい。 藤丸……立香です」

 

俺が自己紹介……て言っても名前だけだけど。 兎に角名前を伝えるとヴォーダイムは噛み締めるような顔をする。

 

「ふむ……いい名前だ。 私の名前はヴォーダイム。 キリシュタリア・ヴォーダイムだ」

 

さっきのマシュと同じように手を差し出してくる。 俺の手をマシュとは違ってしっかりと握ってくる。

 

ふと、ヴォーダイムの右手の甲に赤い印がある事に気づいた。

 

「あの……ヴォーダイムさん。 その手の甲の赤い印は?」

 

俺が聞くとヴォーダイムが答える前に後ろから少しボサボサの銀髪の男が出てきた。

 

「そんな事も分からないのか? これだから外部からの魔術の何たるかも知らないペーペーは嫌なんだ」

 

む、確かに俺は魔術がどうとか全く分からないけど。 何だあの敵対心剥き出しの言い方は。

 

「カドック」

 

「……ふん」

 

カドックと呼ばれた男が手をかざす。 カドックの手の甲にもヴォーダイムとは形が違うが赤い印がある。

 

「これは令呪だ。 僕達マスターは過去に生きた偉人を使い魔、サーヴァントとしてこの世に呼び出す。 この印はサーヴァントをこの世に繋ぎ止める楔であると同時にサーヴァントに絶対の命令を課すことが出来る魔力の塊だ。 見てろ」

 

カドックが手をかざすと令呪と呼ばれた印が赤く光り、空間か震え出す。

 

「何を?」

 

「カドック! まさか君、ここでサーヴァントを呼び出すつもりか?」

 

「この世間知らずに魔術の世界を教えてやるだけさ。 さあ来い! キャスター!」

 

カドックがそう叫ぶと目の前の空間からいきなり女の子が現れた。 見た目はただの女の子なのに、本能が告げる。 あれは人間とは根本が違う生き物だ!

 

「これが僕のサーヴァントだ。 サーヴァントは本来の名前

真名を呼ぶのを避けてそれぞれ割り当てられた七種類のクラスで呼ぶのが普通だ。 僕のサーヴァントは魔術師のサーヴァント。 キャスターだ」

 

キャスターと呼ばれた女の子は俺を1瞥しただけでフンと顔を背けてしまった。

 

「ねぇ、マスター? もしかしてあの坊やに私を見せびらかすためだけに私を呼び出したの?」

 

「なんだ、文句あるか使い魔」

 

「別に」

 

そう一言だけ言うとまたすぐに消えてしまった。

 

「カドック。 サーヴァントはただの使い魔ではない。 信頼関係を結ばないといつか後悔するぞ」

 

「ふん。 僕は僕のやり方があるんだ。 エリートには分からないだろうね」

 

カドックがヴォーダイムを睨む。 カドックが今にも噛みつきそうな剣幕なのにヴォーダイムは涼しい顔だ。

 

「……まぁいいだろう。 その話はまたいつか。 さて、藤丸君だったか。 私の事は気軽にキリシュタリアと呼んでくれて構わないよ。 君の事も立香と呼んでいいかな?」

 

「あ、ああ、大丈夫っす」

 

「そんなに固くなることは無いよ。 丁度時間もあるし今から少しお茶でも……おや」

 

キリシュタリアの視線の先にいたのは、さっきの男。 レフだった。 無意識のうちに構えてしまう。

 

「やぁ、ヴォーダイム。 探したよ」

 

「私達に何の用ですか? レフ・ライノール」

 

「いや何、貴重なAチームの動向を把握するのも私の仕事の一つでね」

 

「それは結構な事で。 これからこの立香君とお茶をするので、失礼。 立香君。 行こう」

 

さっきのカドックに喧嘩を売られた時ですら涼しく流したのにレフ相手だと分かりやすいくらい敵対してる。

 

「あ、はい。 マシュも行こう」

 

とマシュの手を取ってこの場を離れた。 レフは最後まで俺達をにこやかに見送ったけど、どうしてもレフの事を信用出来ない……。 あのゾワッとする感覚は何なんだろう……?

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

「……さっきはすまなかったね。 見苦しい所を見せてしまった。 どうもあのレフ教授は苦手でね」

 

招かれたのはキリシュタリアの自室。 流石Aチームと言うべきか、広々としていて食器も金がかかってそうだ。

 

「いえ、俺も何となくあの人は苦手です」

 

俺がそう言うとキリシュタリアは少し微笑んだ。

 

「そう言って貰えると幾分か気が楽だよ。 しかし、ペペやオフェリアはいつもの事だが。 カドックとマシュが来るのは珍しいね。 勿論歓迎するよ」

 

ここにはキリシュタリア。 俺。 マシュの他に眼帯を付けた茶髪のセミロングのオフェリアと呼ばれた人とさっきのカドックがいる。 カドックは俺とキリシュタリアが呼んだから来たって感じだけどオフェリアさんはしれっと付いてきた。

 

「先輩が行くなら私も参加させて頂こうかなと。 ……迷惑……でしたか?」

 

マシュがおずおずと尋ねるが、カドックがまた噛み付くように言う。

 

「迷惑なもんか。 こいつ、ほぼ毎日訓練の後に涼しい顔して僕らをお茶会なんてものに誘うんだ。 こちとら凡人組にとって訓練だけでヘトヘトだって言うのに」

 

「カドックは少し気を張りすぎな所があるからね。 私なりに解してやろうと考えたんだが……。 逆効果だったみたいだな」

 

「全くだ。 次からは遠慮して欲しいね」

 

「でも、俺はキリシュタリアだけじゃなくてカドックとも話してみたい」

 

俺が言うとカドックのあの目付きが今度はこっちに向いた。

 

「なんで僕がお前のようなつるんでいて特にならない人間と愉快にお話しなければならないんだ?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「ほら見ろ」

 

「んもぉー! カドックったらまたそんな事言っちゃって! 折角今回はマシュちゃんも参加してくれたんだから楽しくやらなきゃねー!」

 

「ペペロンチーノさんはいつもキリシュタリアのお茶会に参加しているんですか?」

 

「やぁねぇ! ぺぺって気軽に呼んで? ね!」

 

グイグイ来るなぁ……。 ふとペペの手を見ると、やはり甲に赤い印。 令呪がある。

その視線に気がついたのかペペが令呪を見せながら話す。

 

「そんな物欲しそうにしてもだめよ。この令呪は私だけのもの。 立香ちゃんにもすぐに契約してくれるいいサーヴァントが現れてくれるわ。 その時に手の甲にちゃあんと令呪が浮かび上がるわ」

 

「こんなズブの素人と契約してくれるサーヴァントがいればの話だけどな」

 

「んもぅ! またカドックったら!」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

そうこうしていてお茶会もお開きとなったけどせっかくだからとキリシュタリアがカルデアの中を案内してくれた。 オフェリアさんとマシュもついてきたから四人で適当に話しながらキリシュタリアが各施設や人員の説明をしてくれる。

 

「ここはメイン電源室。 基本的に立ち入ることはないけどね。 そしてあの奥からは生活スペースだ。 全てのスタッフに個室が割り当てられているよ」

 

「へー。 カルデアってこうして見るとかなり大きいですね?」

 

「そうね。 カルデアは魔術で空間拡張しているのよ。 外には隠蔽の魔術もかけてあるからあまり出歩かないようにね」

 

「そうなんですね。 ……所で、カルデアってどこにあるんですか? さっきから窓の外は猛吹雪しか見えなくて」

 

「先輩。 ここは南極大陸です。 国連が極秘に買い取って時計塔の魔術師が設立した施設がここ、カルデアなんですよ」

 

「時計塔って? ロンドンの?」

 

「そう。見た目はただの時計台だが、中は……そうだな。 例えるなら魔法の学校だな」

 

「へぇー。 昔読んだ子供向けの小説にも魔法学校があったなぁ。 そうかぁ。 俺も一応魔法使いの端くれってことになるのかな?」

 

「そもそも、魔法使いではないですよ。 私達は魔術使いであり、魔法使いでは無いんです」

 

「へ? そうなの? 魔法と魔術ってどう違うの?」

 

「それは……おっと。 ここは医務室だ。 ドクターはこの時間ならここにいるだろう。 せっかくだから顔合わせくらいしておこうか」

 

そう言ってキリシュタリアが医務室のインターホンを押す。

数秒後に出てきたのは長い髪を無造作に後ろで束ねた白衣の男だ。

 

「ああ、キリシュタリア。 どうしたんだい? おや? 君は……それに、マシュ?」

 

「どうも、藤丸立香です」

 

「なるほど、君が最後のマスターか」

 

「マスターって言われても自覚とか全然なくて……」

 

「初めは皆そんなものだよ。 せっかくだから中でお菓子でも食べめるかい?」

 

さっきお茶したばかりだけど。 まぁ少しなら入るかと思い入ろうとしたら、通路の向こうからキリシュタリアを呼ぶ声が聞こえる。

 

「ヴォーダイム! あなた! 今までどこに行っていたの?」

 

「ああ、すまないね。 オルガマリー。 立香紹介するよ。 ここ、カルデアの所長のオルガマリー・アニムスフィアだ」

 

「はぁ……どうも、藤丸立香です」

 

俺が一応の名乗りをするも、オルガマリーと呼ばれた人は俺を無視してキリシュタリアに詰め寄る。

 

「クリプターの会議が終わったら報告に来なさいっていつも言ってるでしょ? どうしていつもオフェリアが持ってくるの? 大体いつもいつもあなたがフラフラしているせいで他のチームにも示しが使いないし何より!」

 

そこで初めて俺を見た。 苛烈と表現しても足りないような目で俺を睨む。

 

「今日は何!? こんなボンクラとじゃれついていたって言うの?」

 

ボンクラ……今日はよく罵倒されるなぁ……。

 

「オルガマリー。 立香を招き入れたのはここの職員。 引いては君だ。 確かに彼は補欠だが。 レイシフトも出来るはずなんだろう?」

 

「それよ! このボンクラ! レイシフト適正100パーセントなのよ!」

 

「本当か? ……それは。 そうだな。 かける言葉が見つからないよ」

 

キリシュタリアまでもが俺を見てため息を着く。

 

「あのー。 レイシフトって……何ですか?」

 

「はぁ!? さっきの説明会で言ったでしょう?」

 

「説明会?」

 

カルデアについてからはずっとマシュやキリシュタリア達と一緒にいたから、そんなものがあった事すら知らない。

 

「……まさかあなた、説明会サボったなんて言わないわよね?」

 

威圧感がすごい……。 なんて答えようか。 と思っていたらキリシュタリアが前に出る。

 

「彼を責めないでくれ。 私が引っ張り回したのが悪かったんだ」

 

すると、オルガマリー所長は毒気が抜けたような顔になる。

 

「はぁ……。 まぁいいわ。 なら着いてきなさい。 明日からレイシフト開始だから確認もしたいし」

 

そうしてオルガマリーを先頭に、俺。 マシュ。 キリシュタリア。 オフェリアの五人でレイシフト部屋に向かった。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

所長がパスワードを入力し、扉を開けると機械の駆動音が鈍く響き、冷蔵庫のような冷気が流れ出る。

 

「寒っ! なんでこんな寒いんですか?」

 

「レイシフトをする用のコフィンは稼働するとかなり熱くなるから、冷房は二十四時間体制で警備も万全よ。 ロックの解除ナンバーを知っているのは私と、私の右腕のレフだけ」

 

レフ。 その名を聞くと心がざわめくのは何でなんだろう? キリシュタリアもやはり表情が強ばる。

 

「このコフィンは特別性よ。 全員分特注で作ってあるのよ。 勿論あんたなんかには勿体ないけどね」

 

と、所長がコフィンの説明をしていると外から足音が。 振り返るとそこに居たのはレフだった!

 

「レフ!」

 

「教授……」

 

「あら! レフ! 来ていたのね? 丁度この新米マスターにコフィンとレイシフトの説明をしていたのよ」

 

オルガマリーがレフに駆け寄る。 思わず制止しようとするが間に合わない。いや、そもそも何故レフ・ライノールと言う男をここまで警戒するんだ?

 

「いや何、レイシフト室が開いているから少し気になってね。 所で、ロマンはどこだい? 用があるんだが」

 

「ロマン? ああ、あいつがいると空気が緩むから立ち入り禁止にしているのよ」

 

「それはいけない。 彼はなんだかんだやる男だよ。 私のお墨付きと言う事で立ち入りを許可してはくれないだろうか?」

 

「まぁ、あなたがそこまで言うなら……」

 

「なら、今すぐ彼を呼ぼう。 彼はあまりここに明るくないんだろう? なら、明日に備えてロマンにもここを見学させておいた方がいいだろう?」

 

「そ、そうね。 あなたが言うなら間違いないわ。 レフ」

 

そう言って手持ちの端末を操作する。

 

「さて、私は君たちと話がしたかったのだよ。 ヴォーダイム。 藤丸君」

 

そう言って俺達の前にやってくる。 思わず一歩下がりそうになるが、レフに腕を掴まれる。

 

「何をっ!?」

 

「何も逃げることはないだろう? 少し話をしようじゃないか? 最後のマスター?」

 

腕を掴まれた瞬間分かった。 こいつは人間じゃ無い! 根拠はないけど、キリシュタリア達とは気配の質が違う。 クリプター達も人間離れしているけど、こいつは人間から離れているじゃくて化け物に近いの部類だ!

 

「……っ! 離せ!」

 

ようやく振り払い、レフを睨みつけるとキリシュタリアも俺のそばに着く。

 

「酷いな藤丸君。 そこまで邪険に扱われる謂われはないと思うがね?」

 

「どうだろうね。 あんたは信用出来ない」

 

「先輩? どうしたんですか? レフ教授はオルガマリー所長が唯一信用するお方ですよ? 勿論。 私も全幅の信頼を置いて……」

 

「マシュ、こっちに来るんだ! 下がれ!」

 

マシュの腕を握りこちらに引き戻すと、右手が焼けるように痛む。

 

「ぐっ!? 腕……が!?」

 

「……困ったな。 君もマスターに目覚めてしまったか」

 

「……レフ?」

 

所長が不振そうにレフによろうとする。

 

「失礼しまー……って、ええ!? 何だいこれは!? 何があったんだ!?ヴォーダイム君? これはいったい……?」

 

「話は後ですドクター! 所長とマシュを連れて退避を! オフェリア! クリプター達に連絡を……!」

 

「遅い!」

 

レフが叫び、文字通りに膨張する!

人間の殻を破り、本来の姿を取り戻そうとするが、人間の様な形をした肉塊の時点で止まる。

 

「何!? ……ぐ! これは……魔眼……か!?」

 

「オフェリア!」

 

「もって数分です! 早く!」

 

オフェリアさんが眼帯を外しその下の右目でレフを睨みつけている。 その目は普通それではなく宝石の煌めきを放っている。

 

「分かった! 所長。 マシュ。 早くこっちへ!」

 

「は、はい! 先輩も!」

 

「逃がすかぁ!!!」

 

肉塊が蠢き、俺達と所長達を分断する。

 

「くそっ!」

 

「オフェリア! セイバーを!」

 

「無理です! 魔眼への魔力を少しでも削ったらすぐに動き出します!」

 

「く……ならば!」

 

キリシュタリアが右手を構える。 カドックがさっきサーヴァントを召喚した時と同じ!

「来てくれ! ランサー!」

 

キリシュタリアの令呪が光り、 白い甲冑に身を包んだ巨大な槍を持った白髪の女性が現れる。

 

「ランサー、命令により推参した! で、キリシュタリア! なんだよこいつ!?」

 

「レフ教授だ。 いや、レフ教授だったものかな?」

 

「こいつをやればいいのか?」

 

「ああ、頼む」

 

「笑止!? たかがサーヴァント一匹程度で私が止まるとでも!?」

 

「ほざけ! 化け物!」

 

そこから先は到底目で追えるスピードでは無かった。 白銀と淀んだピンクの線が飛び回る。

 

「速い!」

 

「くっ……ダメだ! 立香! 逃げろ!」

 

「えっ?」

 

俺が疑問の声を上げた瞬間、ランサーと呼ばれたサーヴァントが壁まで吹き飛び、ずるずると力なく崩れ落ちる。

 

「そんな……!? キリシュタリアのサーヴァントが!?」

 

「オフェリア!」

 

「だめ……です!」

 

レフが少しずつ膨らんで巨大化していく。

 

「立香! 逃げるんだ! 早く!」

 

「でも! キリシュタリアとオフェリアさんが!」

 

「私達はいい! 早く! ……ランサー!!」

 

キリシュタリアが叫ぶと再び令呪が光る。 すると再びランサーが起き上がり槍を構える。

 

「やってやるよ! くそがああああああああああ!」

 

ランサーの槍から炎が上がり、鳥の形をとる。

 

「くらいやがれ化け物おおおおおお!」

 

「ほざけ使い魔あああああああああ!」

 

レフの一撃とランサーの炎が衝突し、部屋が爆発する。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

意識を失っていたのは数秒だろうか……?

警報が鳴り響くなら目を覚ますとレイシフト室が燃え上がっていた。

 

「ぐ……くそ、キリシュタリア! 大丈夫?」

 

「ああ……大丈夫……だ。 しかし、ランサーが……」

 

見るとキリシュタリアの白いマントには赤黒い染みが浮かび上がっている。

 

「キリシュタリア! 血が!」

 

「致命傷ではない……オフェリアは?」

 

「私も大丈夫です。 事象のピン留めもしました。 ですが……」

 

レフの動きは鈍くなっているけど、確実に大きくなっている。

それにつれて俺の右手の痛みも酷く鋭くなっていく。

 

「ランサーはだめだ。 霊体化して休ませないと霊核がもたない……。 オフェリア、セイバーは?」

 

「もう出しています!」

 

見ればレフの周りを全身を甲冑に身を包んだ長身の男が飛び回っている。

レフは既に人型ではなく柱状になり、目の様なものが見える。

 

「あれは?」

 

「私にも分からない。 しかし、オフェリアのサーヴァントだけでは手が足りないようだ。 立香、君のサーヴァントは?」

 

と言いながら俺を見るが、残念ながら俺にはサーヴァントがいない……。

 

「ごめん……俺には……サーヴァントを召喚する方法なんて……! もしかして……!?」

 

ふと思いついて右手に目を向けると手の甲の痛みが形になる。

キリシュタリアがやったように見様見真似で手をかざす。

 

何故か、頭にとある言葉が浮かぶ……。 俺の……サーヴァント……。 誰でも良いとまでは行かないけど……。 今この状況を打破して、キリシュタリアとオフェリアさんを助けて、レフを倒すだけの力を持つ誰か! 来てくれ!

 

「最後のマスターか! させるかあああああああ!」

 

レフがこちらに攻撃しようとする。 しかし、オフェリアさんのサーヴァントが身を呈して庇ってくれた。

 

「セイバー!」

 

「当方は無事。 しかし、これ以上は……」

 

「ありがとうオフェリアさんのサーヴァント。 後は任せて」

 

前を見据えて呪文を詠唱する。

 

素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

空間の魔力を感じる。 レフからのような邪悪なものでは無く、透き通るような。 まだ何者にもなっていないような……そんな魔力を。

 

閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する。

 

魔力による風が吹いてくる。 魔力が実態を持ち始めた証拠だ。

 

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

頭に思い浮かんだのはマシュだった。 彼女は無事だったのだろうか?

 

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

 

マシュの事を無理やり頭から振り払って最後の言葉を繋ぐ!

 

汝 三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

目の前の空間に魔法陣が敷かれ、長刀を持った青い服を来た金髪の少女が現れる。

 

その少女は一振でこちらに迫り来るレフを吹き飛ばす。 そして、こちらを振り向く。

 

「問おう。貴方が、私のマスターか」

 

レイシフト室の赤い炎と対比する様にどこまでも青い服に炎の光を受けて煌めく金髪。 その碧眼はどこまでも強く前を見据えている。

これが俺と俺のサーヴァントとの最初の出会いだった。

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