レイシフトでの軽い酩酊感が覚め、まぶたの向こうからカルデアでは感じる事の出来ない強い光を受ける。
目を開けるとそこは果ての見えない平原だった。 頭では理解していたが、魔術師でもない俺にこの現象を説明する言葉は一つしかない『タイムスリップ』と。
「せんぱ……いえ、マスター。 大丈夫ですか?」
隣から戦闘用になって身の丈を超える大盾を持った俺の相棒にしてサーヴァント。 マシュの声が聞こえる。
「ああ、俺は大丈夫。 ……なんかフォウ君もいるけど」
白い毛をモフモフさせたなんの動物か分からないフォウ君も無事レイシフト出来たようだ。 しかし、それ以上声は聞こえなかった。
「……キリシュタリアとカドックは?」
「いえ、私達がここにレイシフトした時にはもう既にいませんでした。 戦闘痕も無いことから、レイシフト時の空間座標にズレが生じたと考察します」
「……とりあえずカルデアに連絡しよう。 マシュ、頼む」
「はい、マスター」
マシュが端末を操作するとカルデア所長のオルガマリーの顔を中心に、ドクターロマン。 ダヴィンチちゃんの顔が見える。
「藤丸、マシュ両名。 レイシフト成功しました。 しかし、キリシュタリアさんとカドックさんの姿が見えず……」
「ああ、それについては心配要らないよ。 どうやら座標がズレてしまった様だね。 ここから数キロ先の所にいるよ。 合流ポイントを指定するからそこに向かってくれ」
「いい? キリシュタリアとカドックがいないんだから下手に自分で判断しない事! 特に藤丸は一番魔力が無いくせにマシュとセイバーの二人の魔力供給のパイプ役なんだからね」
と、ありがたいお言葉を頂いて俺達はポイントに向かった。
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と、歩いている途中に崩れかけている砦を見つけた。
「うわ……ボロボロだね。 これも戦争のせいなの?」
「いえ、百年戦争と、言っても実際に百年間戦争していた訳ではなく、この時期は休戦中のはずだったのですが……」
と、話していたらカルデアから通信が入りロマンの怒鳴り声が響く。
「二人とも! 直ぐにそこから離れるんだ! この生態反応は……ありえない! 龍だ! ドラゴンが来るぞ!」
空に轟く咆哮が聞こえると同時に、砦の中から砦と同じくらいボロボロの兵士達が疲れきった様子で表れ、僅かばかりの迎撃体制を取ろうとする。
「マスター!」
「うん! マシュ! アルトリア! 皆をまも……」
「バカ! やめろ、藤丸!」
「所長!? どうして! このままじゃ砦の人達が!」
「余計な戦闘はするなって言ったでしょ! 彼達には申し訳ないけど、ここは迂回して先にキリシュタリア達と合流するの! これは命令よ!」
「……嫌だ! 目の前の人を救えないなんて! 何のための英霊だ! マシュ! アルトリア!」
俺の声と同時にマシュと霊体化していたアルトリアが飛び出す。
しかし、二人がドラゴン達に切り掛る前に砦と俺達の逆側から、誰かが飛び出して来た。 その人物は十数メートルのドラゴンに飛び乗り、手に持った得物でドラゴンを屠る。
「あれは……?」
「藤丸君、あれはサーヴァントだ! とにかくあのサーヴァントを援護して!」
「分かった!」
俺が指示を出すよりも先に二人は突然の乱入者に対応して謎のサーヴァントを援護する。 十数匹いるドラゴンが全滅するまで十分程度であった。
突然現れたサーヴァントに俺達が駆け寄ると、向こうの方から声をかけてくれた。
「助力に感謝します。 あなた達はサーヴァントと、そのマスターですね」
どうやら女性のようだ。
「ああ、カルデアのマスター。 藤丸立香です。 こっちはデミ・サーヴァントのマシュと、アルトリアです」
彼女は鎧に身を包み、白く輝く旗を持っている。 金色の髪は束ね足元に迫るほどだ。
「自己紹介ありがとうございます。 私はジャンヌ。 ジャンヌ・ダルクです」
ジャンヌ・ダルク!? そのくらい有名なら俺ですら分かる! フランスの聖女なら確かにこの地由来の縁で聖杯から召喚されても可笑しくないはずだ。 サーヴァントの強さはその地での知名度に依存する。 この地での彼女はほぼ最高クラスの力を発揮出来るはずだ。
思わぬ戦力の確保に驚いたが、彼女の顔を見たらもっと驚いた。
彼女の顔立ちは、俺のサーヴァント。 アルトリア・ペンドラゴンと全くと言っていいほど同じ顔だったのだから!