Fate/if   作:大葉景華

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作業環境が変わったためお見苦しい点があるかとは思いますがご容赦ください


第一特異点 竜殺しの英雄

血に飢えた槍兵が迫る。 眼前に槍の先端が迫り俺の顔に刺さるまで数瞬と言った時に、間にアルトリアとマシュが割り込んで来て防いでくれた。

 

「マスター、下がって! マシュ。 援護を!」

 

「はい! マシュ・キリエライト、行きます!」

 

冬木の時とは違い、シュミレーションルームで二人で戦う訓練は積んでおり、戦闘の素人である俺が見ても上手く常に敵のランサーを挟む陣形を組んで戦っているのに敵を崩せない。

 

「くっ……!」

 

「このっ……!」

 

「ふむ、余を孤立させ叩く戦法は間違いではない。 貴様らの失態は一つ。 戦力を見誤った事だ。 小娘二人程度で余を打倒出来ると思ったか!」

 

槍の一振りで二人を吹き飛ばす。 キリシュタリア達に視線を向けるも、向こうでも戦闘が既に始まっている。

 

黒ジャンヌの乗る竜をジャンヌとカイニスで抑え込こんでいる。 カドックとキャスターはもう一人の敵サーヴァントと睨み合っている。

 

「何よそ見している! ボンクラ! お前は二人のサポートをしろ!」

 

「あら、貴方こそよそ見をする余裕があって?」

 

「お生憎だが僕のサーヴァントは優秀でね! お前程度キャスター一人で十分なんだよ!」

 

「ふーん。 カドックは私の活躍より藤丸の方がご執心なのね」

 

「お喋りしている余裕はないわ! 貴方の生き血を啜るところを貴方のマスターに見せてあげる!」

 

「出来るものなら。 ヴィイ! やりなさい!」

 

キャスターと敵のサーヴァントの魔術が飛び交う。 と、キリシュタリアの方から爆発音が轟く。

 

「キリシュタリア!?」

 

思わず叫ぶも、煙の中からキリシュタリア達が現れる。 傷は負っているが、三人とも致命傷は受けていないようだ。

 

「大丈夫だ。 だが、あの竜が厄介だ。 あれは聖杯によって産み落とされた魔竜『ファブニール』だ。 戦うこと自体は出来ても殺し切るには強烈な竜殺しの逸話をもつサーヴァントが必要だ」

 

「ああ、サーヴァントは逸話から力を得る」

 

「その通りだ。 勿論。 アルトリアやカイニスも竜を打倒した事はあるかもしれないが逸話として昇華するほどでは無い。 ここは一回離脱するべきだ」

 

「それはそうだけど……どうやってここから逃げるんだ? むしろこのままじゃ全滅……」

 

「いえ、何か来ます!」

 

ジャンヌが叫んだと同時に薔薇の花びらが吹き荒れ、お互いの陣営を二分する。 そこに現れたのは馬に乗った少女と、痩せており指揮棒を持った長身の男の二人だった。

 

「さあ、今の内に! 逃げましょう」

 

「君は?」

 

「自己紹介は後ね。 アマデウス。 お願いね!」

 

「分かったよマリア。 宝具『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!」

 

影から現れた楽器を持った人物が大音量で演奏を始める。

 

「ぐぅううう!? この音……は!」

 

「なんて不快な! 殺してやるぅ!」

 

「今だ! 逃げるぞ!」

 

キリシュタリアの叫び声に弾かれたように全員が街の外まで走る。 薔薇吹雪と音楽が収まる頃には俺達は無事に逃げる事が出来たようだった。

 

「逃げられたか……」

 

「ワラキアの王ともあろう方に慈悲の心があったとは知りませんでしたよ」

 

「あの盾の娘。 奇妙な感覚があった」

 

「恐らくはデミ・サーヴァントなのでしょう。 それより、彼女達を負いますよ。 ライダー。 後を追ってください」

 

「…………分かったわ」

 

ライダーと呼ばれた女性が消える。

「ランサー。 アサシン。 今回は見逃しますが次はありませんよ?」

 

「言われなくてもだ。 次こそはアイツらの血で余の槍を染めあげよう」

 

「いけませんわ王様。 あの少女の生き血は私の物ですから」

 

「いい加減にしなさい。自由にふるまえと言っても戦う相手くらいは間違えないように」

 

「……ふん。 よかろう。 この女の血はあやつらの後としよう」

 

「それも彼らがライダーから逃げ切れたらの話ですけどね」

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

「カドックのキャスター、敵の追手は?」

 

「……一騎いるわ。 それ以外はいないようね。 単独で追ってきたの?」

 

「よほどの馬鹿か、よほどの実力者か」

 

「どっちにしても戦うしかなさそうだな。 キリシュタリア」

、ああ。 カイニスとアルトリアで向かい打とう。 アナ……キャスターは後方支援。 マシュとジャンヌはマスター達の護衛を頼む。 相手は単騎で我々五騎に挑んでくるんだ。 死なないようにを意識して戦うんだ」

 

「わかった。 えっと……所で、さっきは助けてくれてありがとう。 君たちもサーヴァントだよね?」

 

「ええ、私は真名をマリーアントワネット。 この国、フランスの王妃よ。 こっちの素晴らしい音楽を奏でる人は……」

 

と、マリーが指揮棒を持ったサーヴァントを紹介しようとするも、男の方が制止する。

 

「自己紹介は自分でするよ、マリア。 僕の名前はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。よろしく、優秀なマスターとそのサーヴァント達」

 

「ああ、よろしく。 君たちははぐれサーヴァントで一緒に戦ってくれるんだよね?」

 

俺がそう聞くが、二人は苦い顔をして首を振る。

 

「確かに私たちは聖杯によって召喚された主無きサーヴァントだけど戦闘能力はほとんどないから一緒には戦えないわ。 できてせいぜいがさっきみたいに横槍をいれるくらいね」

 

直接的な戦力にはならないらしい……。 でも仲間が増えるのは心強い! その事を踏まえてキリシュタリアとカドックと俺で作戦を練る。

 

突発的な戦闘を除いたら初めての戦いだ。 無意識のうちに拳を握りしめている。 すると右手をマシュが、左手をアルトリアが包んでくれる。

 

「大丈夫です。 一人ではありません」

 

「その通りです。 確かに私たちがあなたと戦った経験は少ないですがどれも強敵でした。 そしてそもどれも勝利してきました。 騎士の誇りにかけて此度の戦いもあなたを勝利に導きましょう」

 

「……ありがとう。 俺、少し不安だったんだ。 なんのとりえもない俺が、こんな戦いに参加していいのかって。 でももう迷わない。 マシュ。 アルトリア。 キリシュタリア。 カイニス。 カドック。 キャスター。 皆がいるなら戦える」

 

その言葉に皆が頷いてくれる。 するとキャスターが前に出て手を差し伸べる。

 

「その心意気よ。 もうあなたをただの一般人とは呼ばせません。 そしてそのような戦士に真名を明かさないのは失礼に当たります」

 

「おいキャスター」

 

「黙りなさいカドック。 皇女たる私に恥をかかすつもり? 藤丸立香。 私の真名はアナスタシア・二コラエヴナ・ロマノヴァ。 ロマノフ王朝最後の皇女よ」

 

「ロマノフ王朝……。 確か昔のロシアの事だったよね」

 

「ええ、博識ね」

  

「もういいだろ? それより、問題は追ってくるサーヴァントだ」

 

「あ、ああ。 この先で森から抜ける。 そこでなら数の優位を活かせるだろう」

 

「分かった」

 

全員打ち合わせの通りの所に着いたところで敵のサーヴァントが追いついた。 向かうはアルトリアとカイニスとジャンヌ。 そして離れたところに俺とキリシュタリア、そしてマシュが盾を構えている。

 

「どうする。 先に動くか?」

 

「いや、ジャンヌは守りに特化したサーヴァントだ。 先手に回るより応手に回ったほうがいいだろう」

 

 

と話していると向こうのサーヴァントが名乗りを上げた。

 

「サーヴァント。 バーサークライダー。 真名をマルタ貴公らの首を上げる名だ」

 

「マルタ……。 邪竜タラスクを退治した聖人だ。 そんな人物まで狂化してしまうなんて。 流石は聖杯の力か……」

 

「でも、戦うしかないんだよね?」

 

「ああ。 聖杯を依り代に召喚した時にマスターとなる黒ジャンヌが狂化を施したのだろう」

 

「ええ、私を見事倒して御覧なさい!」

 

そういいながら杖を構え人間には不可能な速度で迫る。 それを当初の予定通りにジャンヌが受けアルトリアとカイニスが挟撃する。 しかし、理性を失う代わりに強力な戦闘能力を授かっている狂化サーヴァントの力は凄まじく、杖の一振りで三人を吹き飛ばす。

三人から距離を取ったマルタは一直線に俺たちに向かってくる。 マシュが飛び込んで突進を受けとめる。

 

「通しません!」

 

「大した盾ね。 使い手である貴方の心が折れない限り決してその盾が砕けることは無いでしょう」

 

「先輩には手を出させません!」

 

「マシュ! くそっ!」

 

「だい……じょうぶです。 先輩達には触れさせません。 それがこの盾を持った時に誓ったんです!」

 

マシュの気迫に押され、一瞬マルタの攻撃の手が緩む。 その瞬間の遠くで狙いを定めていたアナスタシアが逃さなかった。

風を切る音。 数瞬遅れて肉に氷が突き刺さる鈍い音。

 

「……見事ね」

いくらサーヴァントとは言え、体に大穴が開いてしまっては消滅するより他無い。 末期の瞳が俺を向く。

 

「良いサーヴァントを持ったわね」

 

「ああ」

 

「この先の村に竜殺しの逸話を持ったサーヴァントがいる。 恐らくマスターはもうすでに向かっているでしょう」

 

そう言い残して聖女マルタは消滅した。 堕ちた聖女によって召喚された竜を御した英雄は何を思って第二の生を受けたのか。 真相は分らぬまま俺たちは言われた町へと歩を進めた。

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