機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
リン・ボウ内の格納庫では、ノーマルスーツを着たエルが機体の様子を確認していた。
そこにユメが入ってくる。
「ユメ、アンタも機体の確認をしに来たの?………って、何かあったみたいだね?」
「別に………。」
「まあ、話したく無ければいいよ。アンタは思春期なんだし、色々思う事はあるだろうからね。」
エルは特に気にした様子は見せず、色々と自機として選出した黄金の機体を確認していく。
「FA-100S………フルアーマー百式改、使えるの?」
「ヤザンさんが断ったからねぇ。ユメがリ・ガズィ・カスタムを使うのならば、アタシがこの機体を使うしかないでしょ?」
エルはポンポンと愛機となったフルアーマー百式改の左肩近くの増加装甲部にペイントされた「百改」という「漢字」を叩きながら隣を見る。そこにはオレンジ風味のジム顔の機体があった。
「MSZ-013………量産型ZZガンダム。他のハイエンド機に比べたら性能は低いけど………ビーチャは何でこれを選んだんだろう?」
「他に乗れる物が無いからねぇ。火力は十分だから使おうと決めたんじゃないのかい?」
「FA-007GIII………フルアーマーガンダムMk-Ⅲの首から上が吹き飛んで無ければ使ったのかな?」
赤と白のカラーが印象的なフルアーマーガンダムMk-Ⅲはシャングリラの戦いにおいてRFヅダに首から上を吹き飛ばされてしまった。修復にはかなり時間が必要とされるらしく、実戦配備は難しいらしい。
「レミオス達が扱えれば即刻渡すんだけれどな………エル、調子はどうだ!」
「バッチリだよ、スヴェイヌさん!」
ユメ達の所に黒髪のスポーツヘアの男がやってくる。リ・ガズィ・カスタムを取った時に一悶着合った人物で、「スヴェイヌ・ホートブル」というのが本名だ。
スヴェイヌはリン・ボウの整備班長を務めているらしく、これらのハイエンド機やレミオス達のグスタフ・カール等の機体の整備全般を任されていた。
「一応、何があるか分からないからメタス改は勿論、アンタ達の家にあったジム・ストライカーも乗せといたぞ。積載量が多いのはラー・カイラム級の美点だからな。………シャングリラ内部の戦闘で空きもできたし。」
「………何機撃破されたの?」
「3機だ。ネイル、ロド、バルダーがやられた。」
肩を落とすスヴェイヌの様子を見て、ユメはいたたまれない気持ちになる。一般人への被害は最小限に抑えられたそうだが、それでも戦い散った者達は帰ってこないのだ。
「ま、それが戦場に出る者の覚悟だ。アンタ等もやられるんじゃねぇぞ?こんなつまらない事で親子の仲が引き裂かれるのはゴメンだからな。」
「別に親子じゃない。」
「あ?そうなの?」
渋い顔をするユメを見て、スヴェイヌはエルを見る。
エルはやれやれと言った感じで苦笑いを浮かべていた。
――――――――――
『シャングリラ近辺 チベ級ラッシュ』
「で、あのシャングリラ内に連邦の新型艦があるんだな、プロホ。」
『左様でございます。バザード大佐。』
シャングリラから離れた所で、赤いチベ級のカタパルトに白いモノアイのザクが配置される。
そのコックピットに座る巨漢の男がプロホと呼ばれたスキンヘッドの男に豪胆な笑みを浮かべながら話しかける。
『クイーン・アズナブル達がプロパガンダに利用した艦。落とす事ができればこちらにネオ・ジオンとしての求心力を集める事ができるでしょう。』
「真のネオ・ジオンの支配者をスペースノイド達に問う事ができるというわけだな。この作戦、俄然燃えてきた。」
『その成就の為に、この「プロホ・インダート」、尽くしましょう。』
「期待しているぞ、全機発進!この「バザード・ディオンヌ」様に続け!」
その声と共にバザードのモビルスーツと多数のギラ・ドーガがチベ級から発進した。
――――――――――
「チベ級に18機のモビルスーツ………ギラ・ドーガって事はユメちゃん達の話だと割り込みをしてきたほうのネオ・ジオンかな?」
『流石に改造機のヅダはまだ来ないだろう。指揮官は?』
「多分、先頭にいるAMX-011………ザクⅢです、艦長。」
EWACジェガンに搭乗してシャングリラの近くのデブリに隠れていたアロードは、右腕部のカメラ・ユニットと左腕部のセンサー・ユニットで情報を解析していた。直接戦闘は苦手な彼であったが、こうした解析はお手の物だ。すぐに発艦命令を送るようにガルハルトに要請を送る。
(いよいよ始まるんだ。僕達の本格的な戦いが………。)
アロードはデータを送り続けながらそう感じていた。
――――――――――
『さて、ユメ。アロードの情報だと、あの割り込み野郎が来てくれたらしいぞ。』
「茶化さないでよ。別に、敵の種類は問わないから。」
リ・ガズィ・カスタムのコックピット内でユメはヘルメットを被りながらビーチャの軽口を流す。とはいえ、感情的に考えれば、あの感応した赤いギラ・ドーガのパイロットに比べればやりやすいのは確かだった。
「ヤザンさん。私達のフォーメーションは?」
『オレとユメが前に出る。ビーチャとエルはそのサポートだ。』
『ヤザンさん、レミオスです。言われた通り、キクハとエフィテマはスタークジェガンに換装しました。どう組みます?』
『レミオスとマックとキクハで中距離支援。エフィテマとシーサーはアロードと合流して後方支援を行え。』
『よし、レミオス。撃墜数で勝負しようぜ!』
『マック、ダメだよ。レミオス困らせたら。』
『シーサー………メタス改は扱える………?』
『お、オレなんかがこんなの使っていいんですか!?』
出撃前だというのに各々が自由に語り過ぎている。これに対し、エルが全員に喝を入れる。
『全機、しっかりしな!下手な事は考えず、生き残る事を第一に戦うんだよ!』
『エルの言う通りだ。バカをやらかす奴はオレが直々に後ろから撃ってやるから、しっかりと背筋を伸ばしていろ。』
『は、はいいいいいいいいい!!』
シーサーの奇声を聞きながらユメは機体の最終チェックをする。その間にシャングリラのハッチが開き、カタパルトも解放される。前方にまた、あの本物の宇宙が映った。
『先頭はユメだ。………戦力がこんな状態だから頼りにしてるぞ。』
「了解。ユメ・ビアンノ。リ・ガズィ・カスタム………飛べる!」
カタパルトからユメを筆頭にモビルスーツ隊が宇宙へと発進していった。