機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「アロード!18機のモビルスーツの特徴はどうだ!」
『17機はギラ・ドーガですが、内4機はランゲ・ブルーノ砲を装備したギラ・ドーガ重装型です。ザクⅢと共に後方に下がって支援砲撃をする構えを見せてます。』
「ザクⅢもか?………敵の指揮官様は後ろで眺めてるのが好きと見た。」
ゼク・ツヴァイのコックピットの中で、ヤザンはアロードからの情報を整理する。後方でお高く留まるタイプの指揮官は、彼はあまり好きでは無い傾向が強い。とはいえ、こちらの戦力を考えれば、前線に出て暴れまくって貰うよりは助かるとも思った。
「よーし!ならば、ハイメガの雨を降らせてやれ!シーサー!ぶっ放していいぞ!」
全体を指揮するヤザンは、後方部隊に支援砲撃を要請する。だが………。
ピピピピピッ!!
「ッ!?」
バシュゥウウウウウウゥゥゥンッ!!
ヤザンは咄嗟に回避行動を取る。
見ればゼク・ツヴァイのいた空間を、「後ろ」からハイ・メガ・キャノンの光が通過しているではないか。
「おい!シーサー!敵と味方の区別もつかないのか!?エフィテマも照準補正の手助けをしろと言っただろ!?それとも、そんなに俺が嫌いか!?」
『嫌いだけどふざけてない………。シーサーがターゲットを誤っただけ………。』
『も、申し訳ございませーーーん!!』
ヤザンは頭をかく。貴重なハイ・メガ・キャノンでの不意打ちを外す所か、味方の指揮官機を狙うだなんて前代未聞だ。しかも、メタス改はこれを撃つとしばらく排熱で何もできなくなる。お荷物どころの話では無かった。
「ビーチャ、手本を見せてやれ!」
『今ので警戒されてるし、俺の力じゃ1機が限度だぜ、ヤザンさん。』
「それでもいい!デブリ越しに吹き飛ばせ!」
『あいよ!』
その言葉通り、後方のビーチャの量産型ZZガンダムが簡易ハイメガ・キャノンを放つ。
バシュゥウウウウウウゥゥゥンッ!!
その光はヤザン………を狙う事なく、彼の言った通りデブリ越しに1体のギラ・ドーガを吹き飛ばす。
更に、それに続いてユメがリ・ガズィのメガ・ビーム・キャノンを、エルがフルアーマー百式改の大型携行武器であるロング・メガ・バスターを放ち、1体ずつ敵機を破壊する。
その様子を見ていたレミオスが思わず呟く。
『凄いな、歴戦の英雄達は………。』
「惚けてるな、お前達のレベルが低すぎるんだ!」
『んじゃ、オレ達のデキる所見せないとな!』
マックの前向きな言葉に………しかし、ヤザンはイヤな物をヒシヒシと感じ取っていた。
(白兵戦でどれだけコイツ等が戦えるか………。)
ランゲ・ブルーノ砲の射程に入った所で、ヤザンは散開の指示を出した。
――――――――――
「気を付けろよ、マック。ネオ・ジオンは追い込まれたネズミだって聞く。追い詰められると何処に噛みついてくるか分からないってヤザンさんが言ってた。」
『普段のお前らしからない言葉だな。………それ位分かってるって!』
『ね、ねえ2人共、落ち着いてね。』
レミオスはキクハのスタークジェガンの援護を受けながら、マックと共にビーム・ライフルを撃ちながら色々考えていた。
シミュレーターのような個人戦では無い。敵は波状攻撃を仕掛けてくるし、味方との連携も大事になる。増してや自分達はまだまだ技量が足りない。
(1体1体確実に………。)
グスタフ・カールの機動性を活かしながら彼はギラ・ドーガを撃ち抜く。それに負けてなるものかと、マック機もビーム・ライフルで敵機を撃ち抜いた。
「マック!そっちの調子はどうだ!?」
『問題ないさ!………クッ!』
だが、ここで異常が起こる。マックがビーム・ライフルで狙ったギラ・ドーガがシールドで防御してしまう。これにより敵機のバランスは崩れるが、彼は深追いしてしまった。
『確実に落とす!』
「ッ!?待て、マック!」
ビーム・サーベルで確実に斬り払ったマック機だったが、レミオスはその影に隠れて別機がショックアンカーを移出するのを見た。
彼は思わずバーニアを吹かし、マック機を突き飛ばしてしまう。
「ぐわあああああああああッ!?」
左腕に巻き付いたアンカーから電流が流れ、レミオス機のグスタフ・カールは機能を停止してしまう。
『レミオス!!』
マック機はアンカーを流すグスタフ・カールもビーム・サーベルで斬り落とす。
しかし、そこに遠くから重装型のランゲ・ブルーノ砲が飛んできて、マック機の左腕をシールドごと吹き飛ばす。
『チィッ!!』
「………逃………げ。」
『できないよ!!』
レミオスの意識が遠のいていく。
そこでキクハ機のスタークジェガンが信じられない行動を取る事になった。
――――――――――
「セーフティ………解除!」
キクハのスタークジェガンは何と遠くからランゲ・ブルーノ砲を撃つギラ・ドーガ重装型に向けて、肩のポッドから6発のミサイルを全て放つ。
この砲火の雨には敵機はどうする事もできず、その場で爆発を起こす。その様子を最後まで確認せずにキクハはレミオス達を狙う機体をサーチする。
「まだ、いる!」
『待てキクハ!早まるな!!』
肩のポッドをパージして高軌道型ジェガンになったキクハはハイパー・バズーカを捨て、ビーム・サーベルを2本抜き放ち、更に奥に控えるギラ・ドーガ重装型2体に向け突進していく。
「はあああああああああ!!」
その加速の前に思わずビーム・マシンガンを撃つギラ・ドーガ重装型達であったがそれをきりもみ回転するように動いて躱し、2体を素早く薙ぎ払った。だが………。
『戻れ、キクハ!敵陣に入り込み過ぎだ!』
「ッ!?」
マックの通信を受けてキクハは回避行動を取る。仲間を立て続けに倒されて怒り狂ったギラ・ドーガ3体がキクハ機を狙っていく。
「バルーンで………!」
キクハは胸部からダミー・バルーン移出して何とかしようとするが、それはメガ粒子砲で吹き飛ばされる。見れば、敵母艦であるチベ級から3連装メガ粒子砲が放たれていた。
「安全地帯!?安全地帯は!?」
パニック状態になりそうになった彼女はいきなり飛来して来た物に機体を掴まれる。
見れば、それはヤザンのゼク・ツヴァイであった。
――――――――――
『ヤザンさん………?』
「後で反省会が長引きそうだ。………しっかり見てろ。」
それだけを言うと、ヤザンは高軌道型ジェガンをサブアーム1本で引っ張りながら、ギラ・ドーガを翻弄する。その状態で、ビーム・スマートガンで2体を同時に射抜く。いわゆる「2枚抜き」と言える技であった。
更にそこにビーチャの簡易ハイメガキャノンが飛んできて残る1体も吹き飛ばされる。
『………凄い。』
「ゼク・ツヴァイの6本のアームに感謝するんだな。………この機体じゃなければ、こんな事はできなかったぞ。」
『あの、レミオス達は………。』
「マックに引っ張らせて下がらせた。後はお前達の言う「英雄」に任せろ。」
チベ級のメガ粒子砲を躱しながらヤザンはキクハと共に下がる。
そこに入れ替わる形で、ギラ・ドーガ4体を倒してきたユメ達3機が前線に出てきた。
――――――――――
「ぷ、プロホ!?何でギラ・ドーガがこんなに早く全滅する!?数ではこちらが勝ってたぞ!?」
『お逃げください、バザード様!敵の戦力が強すぎます!』
「逃げるってどこへだ!?」
ザクⅢのバズーカと口部メガ粒子砲を連発しているバザードはこちらに接近してくる3機のモビルスーツ達を見て慌てふためく。そこには出撃前の豪胆な姿はもう無い。最初は敵のバカさ加減もあって全てが上手くいくと思ったが、終わってみれば予想外だった。
『とにかく、遠く………!』
そこでプロホからの通信は途絶える。
チベ級ラッシュのブリッジがリ・ガズィ・カスタムのビーム・キャノンによって射抜かれたのだ。
「ぬおおおおおおおおおおおおおッ!!」
それを見てバザードのザクⅢは一目散に戦場から逃げた。
当然、後ろから3機のモビルスーツ達の砲火が飛んでくるが、デブリの影響もあって、奇跡的に逃れる事ができた。だが、この先の行き場は………。
「お、覚えていろおおおおおおおおッ!!」
絶望に包まれたバザードは、只、それだけを叫ぶしか無かった。
――――――――――
「逃げられた………。」
『運のいい奴だなぁ………。でもまあ、推進剤が切れて宇宙の藻屑になるのがオチだろ。』
『とりあえず、チベの生き残ったネオ・ジオン兵を拘束して帰還するよ。………帰ったらヤザンさんのお怒りが待ってそうだしねぇ。』
「確かに………。」
色々問題のある戦場を駆け抜けたユメは、先行きが不安になった。