機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
『サイド1宙域 リン・ボウ内部』
「へー、シミュレーターでの動きのキレが良くなったんだ。」
「ああ。やはり1回「勝利の美酒」を味わって自信が付くと違うもんだな。」
リン・ボウの通路内でヤザンはエル・ビーチャ・ユメの3人と会話していた。
ヤザンのアドバイスを受けて初勝利を収めてから、レミオス達は少し顔つきが変わったように思えた。一人前の戦士と言うにはまだ早いが、それでも確実にレベルアップしてきている。
「お前達を抜かすのも時間の問題かもな。」
「そりゃ、笑いごとじゃないな………。」
ヤザンの軽口にいつも軽口を言っているビーチャは少し苦笑いを浮かべる。ヤザンがそれだけ言うのだから、やはり元々の素質はあったのだろう。
「ヤザンさん、これなら、30バンチにも行ける?」
「いや、それは無理だ。………というか、全員で30バンチに突撃したらこの艦の護衛がいなくなる。アイツ等は後方に回す。」
ユメの問いかけにもヤザンはしっかり答える。
結局の所、ヤザン・ユメ・エル・ビーチャの少数精鋭で突入するしか無かった。
「艦を任せるという点では、前よりは安心できるけれどな。この艦に「リゼル」があったらもう少し考えたが………。」
リゼルはZガンダムの系列を引き継ぐ可変モビルスーツだ。比較的、高性能の量産機でもあり、ユメの乗るリ・ガズィ・カスタムの兄弟機でもあった。
こういう機体の偏りに関しても、連邦の将校達は采配が下手だと思わされた。
「私のリ・ガズィ・カスタムにヤザンさん達の3機が捕まって30バンチまで行くんだね。」
「宇宙だからできる強引なやり方だ。アイザックのレーダーの射程外から突っ込んでいくから相当神経を使うができるか?」
「うん。」
「即答できる所はお前と違うな、ビーチャ。」
「からかわないでくれよ、ヤザンさん………。」
今までの仕返しとばかりにニヤリと笑みを浮かべるヤザンに対してビーチャは肩を落とす。
だが、そこでエルがヤザンに問いかける。
「そのクイーン・アズナブルっていうのは、ちゃんと30バンチ内部にいるのかねぇ?」
「分からん。逃げているなら盛大な追いかけっこが始まるだけだ。中で待ち構えているなら倒せばいい。………但し、護衛はヅダだけとは限らんぞ。」
「コロニー内だからファンネルとかに制限が掛かるのが救いだけれど………。」
色々と可能性を考えるユメは強敵が待ち構えていると内心思った。そして、その考えは、他の3人も同じだろう。
「ま、とにかく生き残る事を第一に考えるんだな。勇気と無謀は違う。戦いが終わったら、親子でしたい事もあるだろ?」
「………だから、親子じゃない。」
わざとふざけているヤザンの言葉に、ユメは憮然とした。
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『30バンチ内部 ムサイ級ファルメルⅡ』
ファルメルⅡの中でクイーン・アズナブルは自分の元に集まるネオ・ジオン残党兵達の処理をしていた。皆、「アズナブル」の元で戦える事を誇りに思っている者達ばかりで、人によっては涙を流す者もいた。
その1人1人を迎え入れ、謁見を終えた後、彼女は思いっきり伸びをして足をパタパタさせる。
「姫、よく我慢されました。」
「声明ってアレだけ効果があるのね。涙を流す兵士達を見ると、少し気の毒に思ったわ。」
「それだけネオ・ジオンへの想いと連邦への恨みだけで生きてきたという事です。」
この場にいるのはフェイトとピューリー、そしてクイーンが「下僕」にしたバザードだけだった。
………さて、戦力はある程度整えた。次はどうするか?
「下僕ちゃん、意見!」
「は、はいぃッ!?何故私!?フェイト大佐やピューリー大尉のほうがいいのでは!?」
「外の意見も聞きたいのよ。仮にも指揮官やってたんだから答えなさい!」
恐々とするバザードは、指さすクイーンの指示にどうすればいいか考え込む。もうすぐラー・カイラム級の戦艦が自分達を討伐しに少数精鋭でやってくる。その対処を考えれば………。
「じゃ、じゃあ真面目に言いますから、撃たないで下さいね………。」
「撃たないからさっさと答えなさい。」
「逃げるべきです。」
「言い切ったわね。………理由は?」
なるべく動揺しないように真面目な顔をしたバザードの言葉に、クイーンだけでなくフェイトやピューリーも注目する。
「まず、大将が出ていって万が一の事があったらこの組織が崩壊します。」
「私の実力が足りないって言いたいの?」
「ま、万が一ですって………でも、あのゼク・ツヴァイのパイロットと対峙したら………。」
「……………。」
その万が一の可能性を考え、クイーンは渋い顔をする。確かにあのパイロットは強敵だ。リ・ガズィ・カスタムの感応したパイロットも次は何かしらの対策を立ててくるだろう。
「幸い、敵の艦は1隻。追いかけてきそうな高機動機も1機。………クイーン様の組織力は下僕として見て回りましたが、規模は想像以上に思えました。多分、他にも拠点はあるでしょう。まずはそこに部隊を動かし宇宙に残る残党兵達を合流させるべきです。」
「この30バンチを捨てるのは、連邦の外道行為で犠牲になった人達の想いを考えるとね………。」
「仮にここで徹底抗戦してラー・カイラム級を落としても、次にクラップ級が山のようにやってきます。そうなると物量差で確実に負けるでしょう。集めたネオ・ジオン兵達も無駄死になります。」
「成程………ラー・カイラム級が追ってきている今の状況はまだマシって事ね………。」
これに関してクイーンは素直に意見を受け入れる。
連邦は物量作戦に頼りがちだ。だからこそ、その力でネオ・ジオンの組織はいつの時代も潰されてきた。
では、連邦がこちらを甘く見ている内になるべく力を付けるにはどうすればいいのだろうか?
「バザード。アンタの考えだと、この先どう行動するべきだと思ってるの?」
「地球を拠点にしている連邦政府を慌てさせる事で、宇宙での戦力を充実させる時間を稼ぐ。………それが私の答えです。」
「つまり、地球のネオ・ジオン兵に暴れまわるように声明を出して………。」
「いえ………。あの、誠に申し訳ないのですが………連邦が狙っているのは旗印であるクイーン様の命なのです。」
「………あー、分かって来たわ。」
バザードの意志を直訳すれば、要はクイーン・アズナブルが囮になり、地球に降り立てばいいという事だ。
そうすれば地球のネオ・ジオン兵の士気は高まるし、上手くいけば力のあるパイロットを集める事ができるかもしれない。
そして、連邦政府を脅かす活動を起こせば、その間に宇宙で準備が整う可能性が高くなる。意見としては筋が通っていた。しかし………。
「姫、私は反対です。」
「あら、フェイト。私の身を心配してくれるの?」
「当然です。地球に降りる間に宇宙の戦力を整えるには、私やピューリー大尉が奮闘しなければなりません。姫の身を護る存在がいなくなります。それに地球に降りると戻ってこれる可能性は………。」
「行き来に関しては大丈夫よ。連邦はアナハイムの事、味方だと思ってるみたいだし。護衛としては下僕ちゃんと「あの子」達を連れて行くわ。」
「………本気なのですね?」
「本気よ。………旗印としてやる事やっておかないと。」
少しだけ陰りを見せたクイーンであったが、フェイトはもう止めなかった。彼はピューリーに指示を出すと、彼は部屋を出ていく。
何事かと首を傾げるバザードの前に、2人の少女が連れてこられてきた。