機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「クイーン様………この娘達は一体………?」
突如連れてこられたクイーンと同じ位の年齢の少女達を見て、バザードは恐る恐る問いかける。2人の少女はネオ・ジオンを纏めるクイーンの前であるにも拘らず、持参したバラの花にキスをしたり、のんびりと伸びをしたりと、かなり自由に振る舞っていた。
「この子達はそうね………一言で言うなら私の「戦友」かしら?」
「は、はあ………。」
「だから、私の下僕であるなら、この子達の下僕でもある。それを理解しておきなさい。」
「わ、分かりました………。」
「というわけで、アンタ達、この下僕ちゃんに自己紹介してあげなさい!」
どことなく楽しそうなクイーンの言葉に、まずバザードの左手にいたバラを愛でていた青髪のショートの女性が、恭しく礼をする。
「お初にお目に掛かります、下僕殿。我が名は「ナイト・スーン」。以後、宜しくお願いします。」
「よ、宜しくお願いします………ん?」
そこでバザードは違和感を覚える。
何処かで聞いた事があるような気がするフルネームだ。………ナイト・スーン………スーン?
「気付いた?この子はね、嘗てハマーン・カーンが率いていたネオ・ジオンの兵である「マシュマー・セロ」と「キャラ・スーン」の子供なのよ!」
「はぁッ!?」
思わずひっくり返りそうになるバザードの姿を楽しみながらクイーンはくすくすと笑みを浮かべる。その無邪気な様子は年相応の少女だった。
「驚いた?」
「お、驚きました………。こう言うのは何ですが、まさか、あの2人に子供がいるとは思っていませんでしたから………。」
「そうでしょ、そうでしょ!勿論、実力もかなり高いから助かってるわ!」
「お褒めの言葉、ありがとうございます、クイーン。」
敢えて騎士としての姿を保ち続けているナイトの様子を見て、バザードは信じがたい気持ちになる。
彼の知識が確かなら、マシュマー・セロもキャラ・スーンも、その性格に問題があった為に、第一次ネオ・ジオン抗争の終盤にハマーンによって強化人間にされ、命を落としたはずだ。
だが、その2人の間に恋愛感情があったという話は一言も聞いた事が無い。ましてや子供なんか………。
「正直に言うと、やはり信じがたい気持ちです………。私の目の前に、あの英雄達の子孫がいるのですから………。」
「うふふ、じゃあ、もっと驚かせてあげる。ほら、アンタも名乗りなさい!」
「やっとアタシの番?忘れられたと思ったわ。」
今度はバザードの右手にいる退屈そうにしていた少女がポンポンと足を叩きながら答える。青紫のロングの髪を持つこの少女はどんな秘密を持っているというのか?
「下僕ちゃんだっけ?………アタシは、「ルーク・ルカ」。以後宜しく。」
「よ、宜しくお願い………します?」
バザードが思わず疑問形になるのも無理は無い。ルーク・ルカ………ルカ………このフルネームはまさか………。
「あ、あのクイーン様、ルーク様というのはもしかして………。」
ガクガクブルブルと震えながら思わずルークを指差してしまったバザードの無礼な振る舞いをむしろ楽しみながら、クイーンは最高の笑顔で答える。
「気づいちゃった?そうなのよ、この子………なんと「ジュドー・アーシタ」と「ルー・ルカ」の娘なのよ!」
「バカなぁああああああああああああああッ!?」
頭を抱えて最高にヒステリックに叫ぶバザードの姿に、これが見たかったとばかりに腹を抱えるクイーン。自分の事を呼ばれているのに退屈そうな態度を変えないルークや、あくまで無関心な態度を崩さないフェイト、ピューリー、ナイトの3人の存在が、更にコミカルさを加速させる。
「ま、待って下さい!これ、笑いごとでは無いでしょう!?何で敵対してた連邦軍のエース達の………ガンダム・チームのパイロット達の子孫がいるのですか!?」
「あら?他人のプライベートに踏み込むのはいけないわよ、下僕ちゃん?」
「た、確かに私の立場で言うのも何ですが………ネオ・ジオン再興の士気に関わる問題になりませんか!?」
「だから、アンタを含めた一部の人だけに特別にフルネームを教えてあげてるの。私にとっては戦友なんだから、そこは見逃してあげて欲しいわね。」
「は、はぁ………。」
バザードはそう言いながらも頭の中で思考がグチャグチャになりそうになる。
ジュドー・アーシタは「ZZガンダム」を。ルー・ルカは「Zガンダム」を駆使し、ガンダムチームの一員として第一次ネオ・ジオン抗争で戦った事で有名だ。戦後は恋人同士になった2人で木星へと向かった………という記録を知ってはいるが、子供がいるなんて初耳である。
(いや、待て………?)
もう一度ルークを見てバザードは首を傾げる。
彼女の見た目は大体10代前半に見えた。この事を踏まえて考えると、第一次ネオ・ジオン抗争の時に身ごもっていても年齢が追い付かないように思える。
外見年齢が高いだけで、実際の年はもっと低いだけなのかもしれないが、やはり気になる。
(何かがおかしい………。)
頭の中を整理し、考え直そうとした時である。
クイーンが玉座から立ち上がり、フェイトとピューリーに何かを要請する。
「折角だから、この子達の搭乗機を見に行きましょうか。バザード、もしアンタの言う通りに一時撤退を考えるなら、しんがりを用意しておかないといけないものね。」
「は、はぁ………ありがとうございます………。」
そのまま、クイーンに連れられファルメルⅡ内部を進んで行く。
集まったネオ・ジオンの艦の積載モビルスーツの交換や修理が行われている為、ここ数日で大きく格納庫の内装は変わった。勿論、このファルメルⅡもその限りであり、新しい機体が運ばれていた。
「下僕の身分で言うのも何ですが………機体の戦力としてはどの程度通用しますか?」
「戦友だもの。連邦のハイエンド機に対抗できるだけの物は用意したつもりよ。」
そう言ったクイーンは格納庫の扉を開け、苦笑いを浮かべる。
「尤も、今のネオ・ジオンの事情も踏まえると、あんまり「大っぴら」にできないのが難点だけれどね。」
見上げた先に置かれていたモビルスーツを見て、バザードはまたひっくり返りそうになった。
――――――――――
『30バンチ近郊 リン・ボウ内部』
『よーし、準備よし、発進いつでもよし!………気を付けろよ、どんな奴らが待ち構えてるか分からないからな。』
「スヴェイヌさんもありがとうございます。」
格納庫のリ・ガズィ・カスタム内でユメは出撃準備を整えていた。
今回の作戦は、ヤザンの提案通り、彼とユメ・エル・ビーチャの4人だけで30バンチに突入するという物だった。
『レミオス、艦を任せるぞ!』
『了解です、ヤザンさん。また帰って来たらシミュレーター付き合って下さい。』
『言うようになったな!しっかり鍛えてやる!』
モニター越しにニヤリと笑ったヤザンがまずカタパルトからゼク・ツヴァイを発信させる。その後はエルのフルアーマー百式改とビーチャの量産型ZZガンダムが出撃する番だ。
『ユメ、スヴェイヌさんの改修した所は上手く稼働しそうかい?』
「大丈夫、エル。心配はいらないよ。」
『相変わらずオレ達には不愛想だよなー。もっと甘えていいんだぜ?』
「別にいい………。」
『チェッ!』
正直余計な事は言われたくないと感じるユメの前でエルとビーチャも発進していく。最後にユメのリ・ガズィ・カスタムがカタパルトにスタンバイ状態になった。
「ユメ・ビアンノ。リ・ガズィ・カスタム………飛べる!」
そのままモビルスーツ形態のまま発進したユメはリ・ガズィ・カスタムを艦の外で待っていた3機の傍でモビルアーマー形態に変形させる。
そして、その機体の上にヤザンのゼク・ツヴァイが乗り、横にエルのフルアーマー百式改とビーチャの量産型ZZガンダムがつかまる。
『んじゃ、ボチボチ行きますか。』
『何が待ってるか分からないからね。油断するんじゃないよ!』
『さっさと終わらせたい物だな………ユメ!』
「了解………!」
ユメはリ・ガズィ・カスタムを加速させると30バンチへと一気に向かって行った。