機動戦士ガンダムU.C.0097 YUME IS BORN 作:擬態人形P
「いや~、ホント、ユメは強いな~!流石オレ達の自慢の子!」
「それ、本気で言っているのなら、ぶん殴っていい?ビーチャ。」
バトレイヴでゲモン達と戦ってから数日、家で朝食としてエルの作った焦げた目玉焼きを食べながらユメはビーチャと会話していた。
形式上は親であり英雄であるビーチャとエルだが、その昔話はかなり情けない物である。
軍人として馴染めず、大人を困らせた少年少女達。ビーチャに至っては敵に寝返ったり、仲間を売ろうとしたり、と、とてもじゃないが周りに言えないような事ばかりしている。
そんな人物達を親と呼べるわけがなかった。
「ユメ、学校はどう?」
「別に………強化人間と普通に接してくれる人がいるわけないよ。」
「諦めが早いな………。もうちょっと笑顔でみんなに話しかけてみたらどうだ?」
「私の自由は私が決めるからビーチャもエルも黙ってて。」
「ちえっ。」
エルも交えて会話をするが、ユメの態度はそっけない。学校ではいじめられる事は無かったが、怖がられる存在であるのは否めなかった。そこに関してビーチャもエルも心配はしているが、ユメは彼らに心を開こうとはしなかった。
(ズケズケと踏み入られたくない………。)
心に入られるのはイヤだった。特に、こんな情けない男と不真面目な女ならば余計だ。自分の居場所はここじゃない。そんな気持ちになる事もある。だが………。
(じゃあ、私はどこに行けばいいんだろう………。)
それが分からない以上、ユメは心の奥底にある「モヤモヤ」を振り払う事はできないと感じていた。
「んじゃ、オレは展覧会に向けて「メタス」の改造を仕上げるかな!」
「MSA-005………このコロニーで廃棄処分になる所を譲って貰ったっていうボロボロの試作機体、直す意味あるの?」
「思い入れがあるんだよ、オレ達にとって。ユメも手伝うか?」
「いい。今日は休みだから出かける。」
「気を付けて行くんだよ。今日は街中で観艦式もあるらしいからね。」
「夕方までには帰るから。」
そう言うとユメはカバンを持って出かけた。
――――――――――
シャングリラの街中はパーティのような盛り上がりを見せていた。連邦の「ラー・カイラム級」の巨大な新造艦が降下してきて色とりどりのクラッカーが至る所から鳴らされる。市長であるチマッターは艦から降りてきた赤茶色の髪と髭が特徴の連邦軍の軍服の人物と握手を交わした。
「よく来てくださいました、「ガルハルト・バーンハルト」艦長。」
「いえ、チマッター市長もお元気そうで何よりです。」
「これが、地球連邦の新造艦「リン・ボウ」ですかな。」
「はい。………意味は「誓約」。地球と宇宙の民に貴方達を守るのは連邦政府だという誓いを立てる為にこの名がつけられたのだとか。」
そう言い、2人はラー・カイラム級の新造艦を見上げる。その中から「プロパガンダ」の為に用意されたモビルスーツが次々と搬出され、リン・ボウの前に並べられていく。その先頭には白いガンダム顔のモビルスーツもあった。
「ほう………。」
「嘗ての「ホワイトベース」や「ガンダム・チーム」を参考にした………こう言ったら何ですが、ごちゃ混ぜ部隊なんだとか。こっちとしては、積載量がかさばるばかりで、ピーキー過ぎて使いこなせない機体ばかりですよ。」
「苦労してますな。「ラプラス宣言」によってミネバ・ラオ・ザビが台頭した事によって、連邦のプロパガンダも必死になってきているのでしょう。」
「軍人である以上は、従うしか無いですからな。………まあ、ここで羽を伸ばします。」
「どうぞ、ゆるりと。」
チマッターはそう言うと、ガルハルトを案内した。
――――――――――
シャングリラの外のデブリの1つの裏………コロニーからは隠れる形で、数体のモビルスーツが待機していた。その機体はいずれもモノアイが特徴的で、ネオ・ジオンの物だという事が分かった。
『………で、本当にシャングリラに連邦の新造艦が来たのよね?』
「仰る通りです、姫。」
『姫は止めて。』
「では、「クイーン・アズナブル」。」
『………やっぱり姫でいい。』
モニターに姫やらクイーン・アズナブルやらと呼ばれた金髪のボブの少女が映る。その仕草はいかにも退屈そうであった。その姿を見ながら青髪の青年が更に言葉を発する。
「連邦の新造艦や「ガンダム信仰」を破壊したという功績を立てる事ができれば、ネオ・ジオン全体の指揮が上がります。更には姫を「正当なジオンの後継者」と信じる者も増えるでしょう。」
『んで、人を集めてミネバに対抗するわけね。………もうちょっとカッコいい大義は持てないのかしら?』
「そうですね。姫の元に兵が集えば様々な事できます。まだ下積みの段階………と思って貰えれば。」
『私を人柱にして楽しい?』
「楽しくは無いです。………でも、必要な事です。」
『はあ………。』
ハキハキと言い放つ青年の言葉を受け、クイーンは仕方なく頭をかく。あまり行儀のよい姿では無かったが、ここは言わないでおく。
『じゃあ、作戦を始めるわよ。』
「ご命令を。」
『「フェイト・ブレイド」、「RFヅダ」出撃しなさい!』
「ハッ!」
フェイトと名を告げられた青年は、青い愛機………RFヅダのバーニアを吹かし飛び出した。
――――――――――
ユメが向かったのはゲモンの所だった。そこでは巨大な青いモビルスーツ………と言うには大きすぎる機体が鎮座しており、ゲモン達ジャンク屋連合の手で必死に組み立てられていた。
「RMS-142………ゼク・ツヴァイ。」
「ヒヒャヒャヒャヒャ、ユメ!親父の所から逃げてきたのか!」
「……………。」
バトレイヴの恨みを晴らすようなゲモンの声を受けて睨み付けるユメだったが、半分は事実だけに、特に何も言い返す気は無かった。そんなユメの後ろから野獣………ヤザンがやってくる。
「何だ、親父達を手伝ってたんじゃないのか。」
「だから親じゃない。………からかわないで。」
「素直じゃないガキンチョだな。」
そう言って、ヤザンはユメの横に並んでゼク・ツヴァイを見上げる。ゼクシリーズは、地球連邦軍製のモビルスーツとしては珍しいモノアイの機体だ。小惑星ペズンで開発が進められたのだが、とある騒乱で計画がうやむやになってしまったらしい。
「とある闇ルートからコイツの設計図とボロボロの素体を手に入れたらしくてな。今度のジャンク屋一同の展覧会で注目される為に恐竜のような機体を作ろうと思ったらしい。」
「ゲモンさんらしいね。」
「ビーチャはその展覧会にお前の乗っている中古品で買ったジム・ストライカーに加えて、メタスを改造した物を出そうとしているらしいじゃないか。」
「こんな大きなのに比べれば大した事無いよ。」
「あっちは1人で作ってるんだ。現実は受け入れないと後悔するぜ?」
「……………。」
正直、ヤザンのほうが、人間ができているとユメは思っている。何故かあの2人よりもこちらの方が、馬が合うのだ。以前、ヤザンにそれを言った時は笑われ、お互い戦士として刷り込まれたからだと諭された。だが………。
(お前の親は、お前を野獣にしようとはしてないだろ?)
そう最後に告げた言葉は、何故か寂しさを感じた。あの2人は親じゃない。でも、周りは何で………。
「だから、ホラ、帰った帰った。ここはガキンチョの遊び場じゃねえよ。」
「………分かった。」
ユメはヤザンに背を向け引き返す。ビーチャを手伝う気にはなれない。でも、今の街中に行く気も起きない。どうすればいいのだろうか。そう思いながら歩んでいた所で………。
ドゴォォォォォンッ!!
シリンダー型コロニーであるシャングリラのドックの入口が破壊される音が響いた。